雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
突入した夏休み真っ盛り…そして突入した第イチ体育倉庫、そこにある古めかしい跳び箱に隠されたダンジョン。
その中で新種のモンスターへと挑み…骨の折れる勝利を手にしたダンジョン部は、人数分の切符チップを手に入れ、ついに自陣の部室エリアへと帰還を果たした。
砂浜に憩うお疲れムードの中、これから起こるイベントを察するムードの中────
自信満々に盛った彼女は積極的強引に彼の手を引き……彼が連れ込まれたのはいつものスイカテント内。
生々しい息遣い近づく…元気な赤目に追い詰められた青年は瞬く間に襲われ、慣れた手順で服を脱がされていく。
重なり合う体温は熱く高まり…つながって溶け合う…。
もう既に補給行為は始まっていた。
「あああぁっせんせっひゃめ♡」
「ひゃーめないっ♡なんといってもナッツやっすみ~! 絶対的夏ちゃんの季節だからなー♡祝討伐スカルドラゴンそして祝はじまった夏のダンジョン部部活動初日ぃここはイッパツ♡あらためて! カイト生徒の可愛らしいおちんちんは夏ちゃん先生のナカにみっちりぎゅー♡♡だ! それそれえいえいっ!」
「ひゃめあああああ♡♡」
そう元気に告げてギアを上げた──腰使いが激しくなり、甘い刺激がとめどなく打ち付けて押し寄せてくる。
夏ちゃんの膣は食べた海都のペニスに隙間なく馴染み、中の肉襞で表現通りにみっちりと覆い逃さない。
リズムよく打ち速くなっていく…やわい尻が打ち付け、鼓動も高鳴り速まる。
すっかり滑りの良いぬるぬるの結合部から溢れる蜜液が、雌尻を上下するピストンのいきおいに押し出され跳ねる…いやらしい音が紅潮する彼の耳を伝う。
ノリのいい騎乗位ピストンで密着前傾しながら、先生が近い。
先生という存在がこんなにも近い、近すぎる。
もう何度も経験するこの青と赤の見つめる景色だが、一向に慣れることのない海都は与えられる気持ちよさに喘ぎ、彼女の緑のジャージにつかまるばかり。
それはもう何度も繰り返された2人の間にある許された行為であり、リードする先生が甘える生徒のために残していたやさしさでもあり逃げ場でもあった。
他の人には見せられない…そんな甘えた男子生徒の姿を先生はバッチリその赤目で見ている。
はげしい甘い快感に流され、もう我慢はできない。そんな泣きそうな表情をしているのを夏ちゃん先生は見逃さない。
ギラギラとうるさく輝く赤目を細めて、とろけるようにワラいながらじーーっと見てくれている。
「いいぞぉ先生の中にびゅくびゅくびゅーしろ♡」
この補給行為において溢れ出ようとするモノを我慢をする必要はなく、もう我慢できやしない。
許されるままに海都は射精した。
びゅーーーーっ……びゅくびゅく……
最後の瞬間は2人より密着しながら、
密着騎乗位からさらに倒れ抑え込むように海都の体を抱きしめる。
火照ってこもった体の熱をさらに近くで分け合い、熱いザーメンが夏ちゃん先生の中にそそがれていく。
海都は与えられる気持ちよさのままにザーメンを漏らした、回復オーラ入りのザーメンは彼女のうごめく肉襞から内部へと染み渡っていきぽかぽかと癒える多幸感が広がっていく。
雷夏はしあわせそうな恍惚の表情でワラい、熱い生徒の劣情を受け止め…カラダの芯から癒えていく感覚を味わい噛み締めた。
「んンッ♡────ハァハァ…ふふふ夏ちゃん好き好きーっていっぱいぎゅーしてびゅーできたな♡」
「あぁぁ……ひもひぃ…」
ひどく寄り添う左の耳元に先生のやさしい声がちかい、乱した青い髪のいいニオイが鼻をくすぐる。
まだぎゅっと抱き合いながら、心地よい快楽の浅瀬に浸かり…ぬくもる……汗と汁の染みた緑ジャージと白のカッターシャツと、互いにひっつけたお腹とお腹、胸と胸の間がぽかぽかとあつい。
しばらくそうして生徒を覆って寝ていた先生は左手首に付けていたDウォッチを見つめた。
「87%──んやんやほぅほぅ…よしもう一回だ♡」
「えぇ…せんっ──!? ンンーー♡♡!?」
繋がったままでいた射精後のペニスはまたすぐに硬くなった、不意をついた夏ちゃん先生のキスで。
恍惚から正気に戻りつつあった海都はその驚きひらいた口に栓をされ、滑り込む柔らかい舌と元気に動いてねぶる舌にふやかされ……またすぐにダメにされていく。
ながいながいキスがつづき、
やがてまたスイカテント内から外へと、楽しそうな鳴き声がイチャイチャとさわがしく────。
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▽
ホームセンターで買い設置した日除けのパラソルの下でぐつぐつと煮込まれていくカレー鍋を見守る、そんな空虚な時間がやっと終わりをつげた。
例のスイカテントからだいぶ遅れて出てきた青年は海をみつめながら、すこし乾いた白のカッターシャツを着直し背伸びの運動をした。
ひとつながい息を吐き、
振り返ろうとしたときには──気を抜いていた手を取られていた。
おどろく青年はぐいぐいと引っ張られる、黒髪とグレースカートの怒った肩背の導くままに────
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▽
共に進入するや否や慌てたジッパー音が鳴り、陽光を遮った。
スイカテントへと逆戻り……また閉め切られたこの狭い空間で。
『べ、別にこれは嫉妬とかそういうの…じゃないし! そ、そういう部のアレ…じゅんばんだし! 雷先生は先生で部長だし先生と争う気なんてないし! ただちょっとあのしつこく復活した骨ドラゴンの骨にぶつかってダメ…あし怪我したかなぁ…って……って楽天くんきいてんのォ!??』
スイカテントに入るや否や海都がきいてもいない事をきかされていた。
ツンツンと恥じらい早口で言っていた、彼女の話した内容の7割程は海都はなんとなく理解できたので。
さっそく彼女があしを怪我しているということでその箇所を見せてもらい、確かにすこし打撲したようなうっすら青い痕が一箇所見受けられた。
さらに、ニヤニヤと笑う青髪に…借りたDウォッチで月山は現在の自分のシールド値も確認してそれを彼に提示した。
なんとも用意周到ともいえるデータはそろっていてあとは彼が決める…察するだけの状況をつくりあげることに無事成功した。
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▽
あしを怪我した女子にさせるわけにはいかない……海都はこの先リードしなければいけないことを察し決意した。
履いたままでいた運動靴をそっと脱ぎ、大人びた黒いパンツを下ろしていく──紺色のソックスと座るグレーのスカート、恥じらい徐々に広げた秘部が露わに────
きんちょうの男子生徒は高鳴る鼓動でツバを飲み込み──
あやしく照らす赤いムードの中、おなじ白いカッターシャツを着た2人は衣を擦らして交じり合う。
奥までゆっくりと挿入し見つめ合った────かるくうなずいた月山を見て、またゆっくりと正常位で海都はナカを突いていく。
分泌していく蜜がぬちゃぬちゃと掻き出され絡み合い、よりスムーズにつながり馴染んでいく。
『んっんっ…』と漏れ出る女子のちいさな喘ぎ声にこのまま進んでもいいとわかり、
やがて手のひらを上に差し出された月山の両手を、ソレが何なのか知っていた海都はこたえて握った。
重ね合わせてぎゅっと握り合った両手の効果か不思議と、我慢できずに合わす腰が速まっていく。
若さにまかせるような海都の容赦のない正常位ピストンに──
「ちょあぁっ♡あぁっ♡♡」
「あぁあ♡つきやまさんっつきやましゃんッッ♡♡」
若い2人…月山も海都もこの三箇所で結合する単純な気持ちよさに耐えることはできるはずもなく────
月山の強張り絶頂する体に、海都は射精した。
あまりの気持ちよさに体のあちこちに力が入る、握る手は強く痛いほどに…膣はぎゅっと締まり迎え入れたペニスを締め付けていく。オーガズムに達して、目をしぼり閉じ、縮こまるように強張った体で……海都のペニスで貫かれてついに白濁を出された快感を、月山は彼より一回り小さいそのカラダでゼンブ受け止めた。
くしゃくしゃになるほど打ち寄せた大波に、白くながくながく塗り潰されて────
繋がってたしかに満たされた。あふれた。
男女ある時期…青春の只中でしか味わえないものがあるらしい。ぽかぽかとぎゅっと……満たされすぎているとも感じるこの補給行為あらため、ただのセックスに。
(ハァハァ……きもちよすぎてこれが青春の…女子の…ハイスコア? みんなこれなの……あたま…こげそう……)
やがて青くかわいい目をふたつ、とろんと開いた。
「ら、らくてんくん…」
「な、なんすか……つきやま…さん?」
「…よんだだけ」
「……」
「ちょっとぉ……なんかナカで硬くなったんだけど」
「えっ!? いや……ですね」
「……ですねって! ──ふふ」
「「あははは」」
ひどくあついテント内で絡み合い、終わる。────汗ばんだ若い男女は見つめ合い──笑い合う。
どこか抜けたいい雰囲気に、ずっと繋いでいた手が離れていたことに気付く。
気付いた彼女はさり気なく、またおなじように彼に差し出した。
その恥じらいを超えた彼女の可愛らしいおねだりに、彼は伸ばしたその手を────
『いやー青春の甘い繋がりは! 特権は! やはり羨ましいな♡』
勢いよく開いたテントのジッパーから吹き込んだ夏風が、場に篭っていた甘いムードを換気していく。
手のひらをペタリと合わせた2人はその明るい方をフリーズし見ている。砂地に立つとてつもなく明るい青と赤と肌色をすこし隠すエメラルドと、
「んやんやここらで夏の!夏ちゃんの!青春の!おすそわけだ♡いっちょ、なつかしのララナツ再結成といっこおおおおおう!!」
サイドテールにした青髪の美女が纏っているのはあのフリル満点のかわいいエメラルド色のセール水着。そんな姿がなつかしいというよりはもはやトツゼンとしか生徒2人には言いようがない。
さりげなく右手にかざされたハンガー掛けのもう一着、月山雨楽楽はその提示された新たな状況に……。おちんちんを突っ込まれている己の状況も合わさりツッコむ言葉がすぐには見当たらない。とても明るい青い乱入者に向けてあきれてわらい──従うしかなかった。
すやすやとヤドカリはねむり…ぐつぐつとカレーは煮込まれていく…
祝スカルドラゴン討伐&生還後のダンジョン部女子たちの補給行為は──満タンにそそがれても衣装を爽やかな夏物にチェンジしつづくようだ。
青い天に上る何度目かの元気な太陽……シンリョクに吹くしなやかな青嵐が夏の訪れを祝っている。
ようやくはじまったかと思えばあたりまえに過ぎ行くみんなの夏休み、今年一度きりの夏。
だがまだみんな始まったばかり、すすんでいく今日という日もまた暑く、しらない風は吹いている。
緑蜜高等学校ダンジョン部の一員である楽天海都の活動は命懸けの部活動だけではなく、あの夏のように元気でしなやかでうるさい人物のもとから一旦離れ……
この夏、この日は、この緑蜜市の、まだ行った事のない場所へと野暮用を兼ねて訪れていた。
▽栃木県緑蜜市焼き物ロード▽にて
この落ち着いた色合いの通り頭上にある看板や、いくつもある風にはためく旗には、〝焼き物ロード〟そう書かれている。
延々とつづく…先を見ても全貌が見えないほどに果ての無い…焼き物オンリーの商店通り。
そして世はかきいれどきの夏のシーズン、いつもの光景に観光客旅行客もプラスされいつもより活気づきにぎわうこの通りに、
青のジーパンとグレーの半袖シャツを着た、私服姿の楽天海都がいた。
ここ栃木緑蜜に越してきてからカイトママが仲良くなった緑蜜焼の若い職人マゲハさんとの仕事のお話ということで、海都もこの焼き物ロードへとお付きでやってきていた。
焼き物職人とクレープ屋の店主が2人だけで話すというお話の内容は…なんでもここに焼き物カフェなるものを開く予定であり、そのためのメニューやコンセプト諸々の相談であった。
邪魔するわけにもいかず手伝えることのない海都は現在自由行動。マゲハさんのススメで焼き物ロードにある緑蜜焼やその他のお店をずらっと見てきたら? と提案され、なんともニコニコの笑顔で自分の作った焼物を押し売りするつもりはないらしい。
器が広いのか、余裕があるのか、些細なことなのか。
少しその笑顔が意味深にもとれた海都は言われたその通りに──マゲハの焼物店から外へと繰り出し、現在ひとり日中の店前に佇んでいた。
(気に入ったものがあれば買ってくるようにってミッションみたいに言われたけど…緑蜜焼のことは何も知らないんだけど俺……。それに何を買ったかプロに聞かれたら困るようなのは買えないような感じで……なぜかきんちょうしてきた……。いや、とりあえずまよってても行かないことには、右か左どっちから…せめよう……?)
左右の果てをゆっくりと確認し、1人の青年がこれからのプランを悩ましげに突っ立っていると────
「おおー。こんちはニチアンボーイ」
「え?」
その容姿は見るからに外人さんであった。
センター分けの艶めく金髪に黒いサングラス、
前を7分ほどしめた水色の薄生地パーカーにショートデニム、
……栃木であまり見かけたことのないタイプの外国人が目の前にいる。
突っ立っていた海都の前に突っ立ちその外国人は陽気な挨拶をしている。黒いサングラスをしていてもとても明るい表情をしていることが読み取れる。
「このロクロマワス、やってますかぁ?」
「ええっと…」
どうやら店前に立っていたじぶんは緑蜜焼の店員だと思われているようだと…道端で外国人に問われた海都は困った。
(ろくろまわす? たぶんろくろ…あぁ緑蜜焼の体験コーナーか何かで来た人みたいだ。よりによって地元民じゃなく余所者の俺が聞かれちゃったけど…俺も詳しくはないこれから緑蜜焼を知ろうってところだったんだけど……っすね……)
その金髪女性のみせたスマホの画面には【緑蜜オヤジの緑蜜焼体験会。必殺ロクロマワシ! 焼きまで己の手で目で体験しろ!】と書かれていた。
若き女性職人のマゲハさんではないのは明らか、ラーメン屋ばりに腕をガッシリと組んだいかつい親父が映っている。
困り顔の海都に助け船としていくつかマゲハさんが挙げた、お勧めされていた店の中に【緑蜜オヤジの緑蜜焼】があったことを思い出した海都は、じぶんの右手側の果てを指差し説明した。
「! ああっとそれならたしか…たぶんここじゃなく通り過ぎてて──」
「わおっ! 予定変更でぇーす。デートまーす」
「え、ちょっと!?」
余って気を抜いていた左手を左手側に引っ張られた。
トツゼンつよく逆手側に引っ張られてしまった海都は慌てた足取りで崩れた体勢を立て直す。
立て直し立ち止まろうと少し抵抗してみるも、ずーーーー、足裏が道に擦れて減っていく音がつづいた。
「ちょ、ちょ、ちょっといきなり困りますって────ええ!? トマら──」
「いきまーー」
どこへ行くというのやら【緑蜜オヤジの緑蜜焼】が腕を組み構えて待っている方向とは全くの逆方向に……
これ以上抵抗しても靴の裏が減っていくだけ…この強引さの種類はどことなく身をもって体験し知っているところ…状況を悟った海都は立ち止まることをやめ、仕方なく金髪の赴くままに付き合うことにした。
▼
▽
「わぁッイカヤキィーン!」
イカヤキィーンではない、それは湯気立つイカ焼き、焼きたてほやほやのイカ焼き。
出店のお兄さんから海都へと、海都から受け取ったその串をさっそくグラサン女はノリよく豪快に──
「あっ!」
「さっそ──あちゅあちゅふぬッ!??」
「べぇー……やけどしたでぇーふ…」
「あはは…」
常人よりぽってりとした口元をタレの茶色に汚し、かるくヤケドした舌をべっと外気に垂らした。
その始終を中途半端に手を伸ばしながら見ていた海都はおもわず笑い、
(なんかずっと明るくておもしろい人だなぁ……あっ先生に──)
「カイト次のヤキモノいくでぇーす」
「うわっちょ!? ってもうイカ食べっ──」
ここは緑蜜市にある焼き物ロード。緑蜜焼だけではなく、焼き物ならなんでもござれの通り道。イカ焼き、たこ焼き、世話焼きな日亜人、大判焼き──とおりすぎていく────もちろん道端のポイ捨ては厳禁、とがった串の指し示すノリノリな方へと────────
「オォ、この味ぃ…この渋みぃ…このわっふぅこそ…せいひつでぇーす」
外国人がたのんだのは宇治抹茶ロールケーキ。
たしかに和風であり目を閉じもぐもぐとすれば静謐であるのかもしれないそのお味。
昨今は日亜人よりも外国人のほうがありがたがっているらしいそのお味。
この古風なカフェテラス席で金髪グラサンの外国人がフォーク片手にそれをたべるのはとても似合っているといえる。
【焼物喫茶リョクミ】:
すごく力の強い金髪に手を引かれてやってきたのは黒く味わい深い古木の席で味わう抹茶系統の様々なケーキや甘味や飲み物、さらに普通のコーヒーなどが売りの古風な雰囲気のカフェ。
そして焼物喫茶とうたうだけあって、緑蜜焼の皿やコーヒーカップ。小棚に飾られればインテリアとしても。
この渋みのある様々な緑色の焼物の味わいは、古風な空間を照らし深くいろどる光る苔のようである。
(なるほど、これって…あ、そういえばリョクミってところもマゲハさんにおすすめされてたんだった…! ……既に焼物喫茶やってる店があったんすね? 緑蜜焼の器で味わうから焼物喫茶?……ひょっとしてこのカップってここで買えるのかな?)
海都の思うとおりに、ここでは出された緑蜜焼のカップや皿を買うことができる。なお、原則として出されたカップや皿しか買えないという謎の裏の縛りがある。黒髪に着物姿のうなじが美しい店主のリョクミが、ひとりひとり訪れた客の顔を見て選んだその日さいこうのカップであるかららしい。それ以外を選んだ客には……心を無にして笑顔で売るらしい。
「──ごちぃ…! わおカイト、気になりまっか?」
「いや、なんか良いかなって…ちょっとだけ」
青と緑がたがいの境界がわからないほどにいつの間にか妖しく混じり合うその取っ手のある小さなコーヒーカップ。海都は実際に手に取ってコーヒーの香りを嗅いでゆるやかに飲み干して────これがいいものだと、自信はないけれどもそう思ったのであった。
「じゃあソレおごりまぁーす」
「……え? いやええっと!ちょっとおもっただけなんであはは」
「イカヤキィーーンのお礼でぇーす、お勘定まかされて!」
「え、え、えっとまじすか……」
「まじす、マスターオカミ、おかんじょでぇす」
お勘定、響く声で呼び出された喫茶のマスターであり女将みたいに奥ゆかしい黒い着物をまとったリョクミはすり足でゆったりとあわてない。
お勘定は37,600円。そのうちケーキとコーヒー代がいくらだったかは記憶に定かではない。
快活な金髪オンナはカード決済で即決であった。
ためらいなく済ませてサングラスを外し、披露した一瞬のウインク。
お客の輝かしい金色の瞳と、黒髪からのぞく店主の深い緑の瞳は一瞬をながながと見つめ合う。
【焼物喫茶リョクミ】の店主リョクミは笑わない、口角をわずかに上げるだけでとどめた。さいこうのモノを提供しさいこうのモノが選ばれ売れる…その悦びを客前で爆発させるのは下品だからだ。
サングラスをかけ直した金髪は上質な紙袋を戸惑う青年に明るい笑顔で預けた。
やがて古風なテリトリーから去っていくそのお客様の背を見守っていく。
ちらっと振り返ると黒着物は頭を下げている、程よい角度を保ち佇まい優美である。
「ふふふなんともせいひつでぇーす」
「っすね…(かってもらってしまった……)」
やがて下げた頭の角度が深々くしなったのは────下品な笑みで笑っていたからだ。
焼物職人でもあるマルチな才能の持ち主リョクミは笑わないが笑う、そこそこのコーヒーを淹れたその日さいこうのカップが売れたからだ。
黒い着物のマスターに見送られ、海都となぞの外国人旅行客の焼き物ロードはつづく。
★この世界の言語背景★
日亜語はアーメリガ語とおなじく世界最古の言語であるエスト語を基にしているのでその国で独自発展派生した発音や単語や漢字、基本的文法の違いやズレを少し覚えアジャストするだけですぐに言葉は7割ほど通じるようになる。が、海都がばったり出会ったこの女性は多少のナマリがあるようだ。全世界の言語の礎となるエスト語はこの世界が元はひとつだったときの名残らしいが……人類の人類言語学の研究の末の真相は未だはっきりと定かではない。信用たる文献がまだまだ足りない調査研究しがいのある、とても浪漫のあるものだと果てないミステリーを追い求める学者たちはいう。
★★