雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
合流ポイントに誰もいなかったセリー・ヴェーバーは、各々が合流ポイントの渦前に残していった特殊オーラテープの×印を目印にまた進んでいった。
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『────べらさぁん』
「はへ…はへぇ♡……」
『イザベラさん起きてくださァーーーい』
イザベラはセリーの操る毛糸にこちょこちょと鼻頭をくすぐられ、くしゃみとともに飛び起きた。
「ハヘッっくちゅ!??」
「何がはへはへ♡ですかぁ、作戦こどう中ですよ。ハヘ顔してないでしかりしてくださぁい」
「…………。犬の敵」
「第一声がソレですかぁ。アハハ、こちにもでましたよイザベラさんのつよさなら問題はなかたよですね」
「やったのは、このこ……」
「オー、カイトボーイが? それは中々やりますねー感心です。そしてやることもヤリまくってたよです、感心感心ノラセックス、アハッ」
「……だけ……」
イザベラは急いで乱れた服装を直して、最後に落ちていた帽子を深くかぶり身だしなみをととのえた。
そしてセリーは地にぐーすか寝息を立てて寝転がっていた海都をひょいと担ぎ上げた。
「回復オーラはとってもとっても我々にとってもサブスペース部にとっても貴重でーす。イザベラさんもすみにおけないですね、アハハ、ナイスセクシー成果でーす」
「人体実験…してた…だけ…」
「アハッ、それは大事なことでーすソデスネシカシィ……(問題は今のオーラ力でどこまで薬効があるかですねー、どちらにせよカイトボーイにはこの調子でイパーイ成長してもらぁえると面白くなるかもでーす。アソレニィ、アーメリガよりこのせいひちゅのダンジョンの方がヨポドーふざけた邪魔がすくないかもしれませーん。ドラヤキ博士もいますし)……ってなにをやってるのですかぁ? イザベラさぁん…???」
「こうしないと敵の特殊オーラ攻撃で動けない…。今…。だけ…」
いつの間にやら荷物をまとめたイザベラは様子がおかしい。
そもそも歩き方が大変おかしい。
セリーが訝しみ驚くのは、蜘蛛のような影の多脚を生やして、本体の足をひきずりながら移動する奇妙な
海都から感染した痺れ毒のオーラの影響か、それとも足腰が思ったように立たないだけなのか、とても間抜けな影生物となり地を先に移動していた。
「あははイザベラさぁんはおもしろいですねぇー。ではイタンかえりまちゅ、そなに急がず荷物をこちらに貸すでーす。ん──カシヲつくたくない? アハハ、貸すでーす」
海都を俵担ぎにしたセリーとイザベラは骨の領域の合流ポイントへと向かい、一足早く部室エリアへと戻るルートを取ることにした。
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志願者たちが骨の領域の調査に向かう中、修行に励む者たちがいた。
▼ダンジョンドウジョウ▼にて
神牙流道場を模したダンジョンドウジョウはムスイの要望を聞き、余っていた部室エリアに建築モンスターのブロックんたちにオーラを補充し作らせた新たなエリアである。
いくつかの実物の写真を種にし、神牙流道場をここまで精巧に3Dドット絵にしたような出来栄えは中々である。
《シデンレイラのボトル遊び》:
空き瓶にオーラを注ぎ込み自分の世界を作り上げていく。主に瓶内で様々な課題を設けながらオーラの扱い方を遊び学んでいく修行メニューである。
緑蜜市道の駅で売っている緑蜜サイダーの空き瓶を使用している。
万能オーラ色の共通概念を既に設定してある月山雨楽楽はもっぱらテトマズの練習である。
しかしただの電子ゲームのテトマズではない。
ちいさな瓶内でテトマズオーラブロックを生成しながら、積み上げていくという…超高難易度ミニチュア版独自ルール満載のテトマズを目をオーラを良く凝らしてプレイしていく。
同じく居合わせた牛頭梢はというと、とにかくチップの遠隔操作術をより鍛えるために瓶を浮かす練習をしている。まずは空き瓶を3本同時に宙に念力のように浮かせながら、遠目で見守るシデンレイラがフリップに出すお題の三角や直線などの絵の通りに並べていく。
「クローンこずえ、月山ぁあ、ちまちまやってんねー」
「ちまちまって割と真剣なんだけど…」
「んー、真剣なんて誰でもできるじゃん、はは、」
「はぁ? なんか…なんで、真剣と遠い人に言われてもなんだけど」
「あー、んじゃ、」
月山と牛頭梢ふたりがシデンレイラのボトル遊びに集中している中、ふらっと後ろから現れたド神子は急に2人が遊んでいた4つの瓶をオーラで操り奪い、宙に一直線に浮かせた。
そして水平に並べた瓶を真横一文字に切り裂いた。
瞬く間に抜刀し、瓶の上すれすれを掠めた。
すると瓶の蓋が一斉同時に回転しながら弾け飛び、空洞の中に騒がしい変化が起こった。
四つのオーラが、床に一直線に並んでいる。
雷が中央に流れとどまりつづける。
ボトルの口一杯に過不足なく水が張り満たされる。
丁寧に積まれていたカラフルブロックの上に小石が降り注ぎ積まれる。
静かに瓶底からゆらゆらと火が灯りつづけている。
「これが真剣、ね、」
「はぁ??? 真剣ってより冗談なんだけど!? (積んだテトマズにお邪魔隕石が…)」
「おぉほぉーー、ちょっこし惚れたってやつ?」
生徒たちは驚きながら道場床ブロックに並べられた4本のボトルアートを眺めている。
いつものパジャマ姿の剣士が真剣を手に取り、一太刀に起こした神技のお手本に、牛頭梢からゆっくりな拍手が送られ、月山は降り積もった石ころをまじまじと見て何かを考えだした。
そんな中、遠目に見守っていたシデンレイラの元へとド神子が近づいていった。
壁にクールにもたれかける白黒衣装の人物は微笑み、寄ってきたパジャマの天才剣士へとそのままの姿勢で声をかけた。
「積極的ですね。てっきりライオンはトレーニングをしないものだと。もうボトルのお遊びをマスターしたのですね」
「はは、冗談は褒めるにしてもやめなよ。まっ、こないだのホネホネ音頭はひとりでもいけるとおもったんだけどねー、思ったよりヤァバイ骨だったわ、はは、そんで、このまま色んなカルシウムとりつづけたど神子の伸び代のしょぼさしだいでは天下三剣もありかなって」
「天下三剣……ボーンクイーンとの闘いで、雷夏と赤髪のムスイの剣に助けられたと?(雷夏に外連味たっぷりできかされた新鮮な武勇伝ですが)」
「ははは、あながちまぁね。良い保険には入っとこうと思ってね。ド神子も気付けば30じゃん? なまじ天然と天才の育成の成果っての、こないだバチバチにでちゃってるから、ここらでみんなのセクシーどみこ先生爆誕もまぁじめにありじゃん? まぁ、じみに? せくすぃー」
「……。そうですね。この世界の天才が本腰を入れて教えるとなれば、なら私もそろそろ次のページには──お役は捲られて御免かい。フフフ、せくすぃー」
「なんで? パンダフルウーマン、その伸び代つよいじゃん? あーはは、──ヤル? あなたとわたし、はは、ゼクシィー」
古井戸神子はそう冗談を言いながら手に暇にしていた剣をバッチリメイクの彼女へと向けた。
「フフフ。そのワルツの誘いはこの前断った気がするかい…。ゼクシィ…(のオーラ)」
冗談顔で笑う女剣士がその切先をなかなか下さないのは何故なのか。
嘘で冗談だと言うのならば先程からシデンレイラというお役に設定された死の予感が反応しっぱなしなのは何故なのか。
手持つ…三角図形の描かれたフリップにはもう先がない、○でも×でもないその最後のおどけた意図せぬ返事の一枚。
困惑のポーカーフェイスを微笑いうかべるシデンレイラは壁にもたれかれたまま…………やがて熱されすぎた瓶が遠くで破裂する音を聞いた。