※この作品はR-18です。

雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!!   作:山下敬雄

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ウミウシバトル

石柱が地を這うその巨体に薙ぎ倒され、身を隠す術はひとつひとつ…やがて全て無くなり。

エンカウントした巨大ウミウシモンスターとの鍾乳洞内での戦闘は既に始まっている。

 

幾本も剣を折り一本につき一度きりの失敗するか成功するかまだ定まらない苺茅の剛剣を浴びせるも、青いウミウシはその鰭を泳がせ止まらない。そしてまた毒針ミサイルがウミウシの体から拡散され仇なす害敵にたいして放たれた。

 

溜め込んでいた毒属性の体組織を飛ばす危険な横殴りの毒雨を、勇み前に踊り出た海都がシールドを展開し防いだ。

剣と力は十分でも飛び道具の対処には慣れてない苺茅にその攻撃をかんたんに当てさせはしない、ふたりパーティーの中での自分の役割を戦いながらもなんとか見つけて海都は効果的に動いていく。

 

「海都くんそんなに前に出るとあぶないよ?? お姉ちゃんは大丈夫だから!」

 

「やややっぱそういうわけにもっっ!! 俺これをやらないと、いつも月山さんに顔向けできないんで!! ッせめてこれぐらいは……!! ってとん──だ!?? あのおおきさ──ガッ!?」

 

盾で毒雨の音色を受け流している間にも、敵は動いていた。

まさかの動き、地をその場でウェーブしながら、軟体生物が天にぶつかりながらも────落ちてくる、そのちっぽけな盾に見合わない大きさで見上げる海都の元へと。

 

そんな巨大ウミウシがジャンプでじゃれつき地を圧殺しようとしたところを──

 

「【剛・水】!!!」

 

同じく跳躍し打ち込んだ横殴りの剛水ノ剣が巨体を弾き飛ばしてそのふざけた落下ポイントを反らした。

巨体が地を打つ震動に慌てながらも海都はそのウミウシがのたうち暴れる危ういポイントから避難していく。

 

「お姉ちゃんにも任せて!!」

「も、もちろんっす! はぁはぁ……は、ハイ!!」

 

まるで海獣対怪獣。

力負けするどころか、ビンタを喰らわすかのようにウミウシを退ける。剣を砕きながら剛力を魅せる勇ましい背姿で振り向いた苺茅に、海都は大声で返事をした。

 

 

▼

▽

 

 

巨大モンスター相手にもただただチカラ押し。

苺茅の剣はそんなまっすぐな剣だ。

相手が誰であろうと何であろうとその力を使わないことはない、切っ先のヤジルシを浴びせ斬るそれだけで足りるのだ。

 

しかし、彼女に足りないものがここにきて露呈してしまった。

正面から切りつけたウミウシは後ろ天へと首をあげ仰け反るも、再び溜めた体を地に落として再加速しながら襲い掛かる。

苺茅も砕けた剣の代えの剣を召喚し構えようとするが──手にまさぐる武器チップがもうない。

戦闘に集中するあまり、お姉ちゃんとして奮闘するあまりの凡ミスか。

初のダンジョン初のウミウシモンスター相手にそんなことを計算して戦ってはいなかった。

 

構える剣がない──やはりそれは剣士にとって致命的。

巨大ウミウシの突進を止める術は──────

 

やはり、ピンチをかぎつけ前に出た海都の盾しかなかった。

 

「あのときのバウさんを相手したときのようなッ。盾から隠した翼は開かないのか!! ウソだろ、俺だってえええええ!! ロボット大国の千葉県でえええええ!!」

 

しかしそんな小盾で叫ぼうとウミウシの暴走列車は止まらない、このままでは土俵際で耐えるどころか壁に痛々しくもろともぶつかる未来が待っている。

 

巨大ウミウシの角にただただ細身の人間が押されていく。

赤獣のバウ相手になんの気まぐれかひらいた翼は、依然その卵盾の殻に閉じたまま、あてが外れてしまった海都はただぶちかまされながら叫ぶしかなかった。

 

しかしそんな力が入りすぎた彼の背に、ぴったりと寄り添う白いワンピース姿の水色髪。

 

「大丈夫!! お姉ちゃんが!! 支えてるから!!!」

 

苺茅は海都をうしろから助けた。その剛力で彼とともに密着の一体となり盾となる。

 

「いちごさん!? すんませんッッなんかもうッこれしかなくてえええええ!!!」

 

「これで十分だよ海都くん!!! お姉ちゃんが支えてるからぁぁぁああ!!!」

 

「ありがとうございまああああああああうおおおおおおおおお!!!」

 

暴走をつづけるウミウシに押されながら、守るべきものはいつの間にやら密着し力を入れるお互い様に。

そんな状況と想いと叫びがそのひび割れる純白の盾に呼応したのか。

殻を破るように、まばゆき発光とともに、隠された翼がその盾から開かれた。

 

そして奇しくもふたり重なり合うオーラが、予感をさせる。

このまま力の限り叫び放てと。

人を守れば守るほどに、ピンチを凌げば凌ぐほどに、盾というものはその真価を発揮する。

 

「「【ゴッチャ剛水ビィィィィム】!!!!」」

 

それは溢れんばかりの水のヤジルシ。

ただ太くただ放つ水流の矢となり、翼を広げ覚醒した純白の盾からだくだくと流れた。

 

腹底から溢れたオーラをのせた魂の叫びとともに、ひらいた翼はやがて散りゆき、鍾乳洞内に降るはずのない雨が降りしきる。

 

噴射した剛水の矢に一転押し返されたウミウシは、壁に激しくもたれ…………角をしおれさせて、ダウン。

 

まだやまない雨にぽつぽつと打たれながら、海都と苺茅はぼーっと襲い掛かってこないその場にへたり休む巨大ウミウシを見つめた。

 

 

「あそこまで…かました……んすよね? か、勝った? んすよね!!」

 

「うん……勝ったよ! 勝ったんだよお姉ちゃんたち!! 海都くんがミゾレちゃんをざばーーーーーんって吹き飛ばして!!!」

 

「うおおおおおおおおいちごさん、ま、まじなんすよね!! あの巨体を土俵際にぶちこんだの夢じゃないっすよね!!」

「マジだよ海都くん!! 夢じゃないよ!! お姉ちゃんだよ!!」

 

「「あはははははは」」

 

 

勝利の光景…その流れをいまいちど確認し合いながら、2人は両手を合わせあって喜びあった。

やがてお姉ちゃんからの飛び付くようなハグを受けるも、海都はまだまだ信じられないジャイアントキリングに成功した闘いの成果の高揚感に気持ちからあふれる笑いがとまらなかった。

 

 

 

そんな中。

素晴らしい技の余韻で降った歓喜のひと雨がやんだそんな中。

 

 

「あはははは────────え?」

 

 

抱き着きながら気持ちよさそうに目を閉じている苺茅と、おどろき思考停止しフリーズした海都の元に。

抱き合う未知の生物を取り囲むように、統率の取れた槍の穂先が鋭く向けられている。

 

人間たちが迷い込んだ水の息吹のするダンジョンに、二足二手カラフルな貝殻の鎧を装着した貝間(カイマ)たちが現れた。

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