雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
閉じられた貝殻の中はまるで果てが虹色にひかる白い彼方の異空間。その実際の大貝の大きさよりも中はもっともっと広い。オーラ量と想像力によって設定されかつひろがる幻想じみた空間の広さは貝間としての実力を表しているともいえる。
そんな不思議な空間でたたかっている。
これで第8回戦目。大いなる海の主と海の都と名乗る
いかようにも抵抗してかまわない、そうかるく挑発するように言ったウツボ姫に閉じ込められた……貝殻の中の空間から抜け出すために海都はその勝負を固唾をのみこみ受けざるをえなかった。
水タバコのパイプから、煙がモクモクとひろがり拳を固めてカタチを成しまた攻撃を仕掛けてくる。
レア盾を構える海都はその煙拳に殴られていく。
ミサイルのように煙の尾を引きながら接近してくるその変幻した攻撃は油断ならない。やがて悠然と浮かぶ煙溜まりから両腕よりも多い何手もの攻撃に枝分かれし、四方八方から手痛く殴りつけてくるのだ。
殴り飛ばされながらも多少は慣れてきた探索者の端くれは、純白の盾で濁る拳を受け止めて耐える。そんな前進しない戦い方で自分の身を必死で守り抜いていると──ウツボ姫は今度は飽きてしまったのか殴らない。
煙拳はパーにして、ぱーっと広がっていく。しかしそれは助かったのでも飽きたのでもない。
くゆらせる煙の本来の性質が、海都の視界を呑み込むように漂い集ってきた。
いかに先ほどより硬さと攻撃力の失せた煙とはいえ圧倒的なオーラ量の煙にその口と身を覆い晒されては彼の理解の及ばないままにまたおねんねさせられてしまう……海都は先程7回戦目まででやられたことを思い返す。
(【ココア斬り】のビームソードを団扇にして煙を風に流しても、煙はまたすぐ殴ったりまとわりついたり襲い掛かってくるだけだったから……あ、ナラッ)
「なめらかになるまでかきまぜるっっ【
海都は地面に打ち込み展開したいつものクレープフィールドを、銃口から成したココア色のビームソードでかき混ぜた。ブッ刺したココアと渦巻くミルク色が混じり合いその異空間の地に変化が起こる。
クレープ液をしっかりかき混ぜるようにただひたすら────すると地に描いた鮮やかな渦は勢いを増し、煙を地に吸い上げていきやがて全てを吸いつくした。
いつまでももくもくと素知らぬ顔はできない。煙たい風はその地にかき混ぜられ穿たれた流れに逆らうことはできない、風の向かう方向へと全て当たり前のように引き寄せられていった。
白く澱んでいた視界はすっかりクリアに冴えて、海都の目にはパイプから口を外したウツボ姫がいた。
「煙の弱点は風じゃ、煙のストロングポイントも風じゃ。打ち破れぬ万能ではあるまい、かようにオーラをそそぎただの煙にできないことはできてもただの煙の性質が完全に失せるわけではないのじゃ。いくらオーラを食わせは吐いて制御していても呼び込む強力な風の流れにはノって従わざるをえんな、ハハハハ。ところでその技はなんじゃ? ずいぶんでたらめをしおるの? ここは小さくも大きくもできるワシの起点物質内、いわば異界もどきじゃぞ? それに風穴をかきまぜながら開けるとはのぅ(話しとる間にもう修復したがな)」
「えっとあんまり言ってる事が俺にはむずかしくて分かんないっすけど……ド神子さんが『こうやってぇ地面ごとかきまぜたらつぅよいよ?』とか最近ぼそっと言っていたんで……俺もなんとか後追いで真似しただけの…ハイッ」
ド神子がボーンクイーン戦でみせた雷水炎属性オーラを適量で混ぜ合わせた【ライジングクレープフィールド】略して【RCF】。ボーンクイーンの支配する骨草の劇場ともいえる強力な異界に穴を焼き上げた技である。しかし元は海都の技【策咲クレープグレープ弾】を味わい見たド神子が勝手にアレンジしたものでありその性質が似ていることもあってか、敵の有する異界にブッ刺しかき混ぜて穴を広げるといった無茶な料理工程も同じクレープ状の敷物を展開することのできる2人には
「ハハハハ奇妙なことをすると思えばおぬしの師匠譲りの技じゃったか。それはきっとなかなかふざけた食えぬヤツよのぉ」
「ふざけた食えぬ…えっとたぶんそのとおりの…」
「よしじゃあ、お次にいくとするかの」
「え!?? あの! え!??」
「
閉じられ噛まれ、未知の煙の拳に打ちのめされ、煙たい視界に気絶をし、また噛まれ、また起こされてやっとこさ────何度繰り返しても彼が失敗しても成功をしても、飽きやすい姫は飽きることはなかった。
またオーラとともに吐き出しくゆらせる煙は、今度はおおきなおおきな魚影をカタチ作っていく。
再び煙たくなってきたこの閉じられた広い貝の部屋で、
楽天海都は驚き唖然としながらも、そうしながらも思い出したのは今は遠く離れた誰と誰の事か……重ね合わせた理不尽なチカラを前に彼は独り頷く、少しひび割れたがまだ闘えるその純白の盾を再び構えた。