雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
理不尽なたたかいには日常的に慣れていた。そういう時に怠けた態度で手を抜くと余計にひどい目にあうのを海都はその身に重々よく知っていた。
その後もウツボ姫の容赦のない遊びに立て続けにやられつづけたが、不屈の精神というよりは前述の精神で楽天海都は自身に余るオーラと体力の限り煙たい試練に挑みつづけていた。
『この泳ぐ獲物はその程度の洞では満足しまいぞ?』と繰り出された技は【
龍のようにしなやかに宙を動く大魚は、海都のオーラ量と技でかき混ぜた渦程度では吸い取ることはできない大きさと活きの良さであった。
一筋縄ではいかない。先程纏わりつく煙を吸い上げた手段が今度は何度やっても通じない。そして今回の挑戦も同じように宙を獰猛に泳ぐ煙靭に海都はその圧に機動力を削がれ易々と追い詰められていた。
そしてひび割れの目立つ盾で……避けることのかなわない海都はまた受けることを選んだ。
煙のウツボが牙を剥き、海都を襲う。
その翼を忘れたちっぽけな盾のままでは無謀にも似ている、とても少年の体躯ではその灰色の大魚の喰いっぷりを受けきることはできない。
そう思われた──誰の目にも。
(やっぱみんな強すぎる……俺なんてもう……もうやるだけ巻くしかないっっ)
重ねしかけた仕掛けを今延ばし練り上げる。
変幻するのは煙だけではない、彼がいつもそれは幼い頃から地道にやってきていたことだ。
舞い上がった地にへばりついていた白生地は筒状になり、やがて熱熱に赤く焼き染まる。
長い尾をひく灰魚の全身を包んで、巻いていく。
届かぬ牙を剥きだしに暴れるモノに最後はその緑に発光する盾をもって蓋をした。
同時に炸裂する数多の棘が筒内に捕らえた煙靭の全身をハチャメチャに貫いた。
「【
まるで矢をいれる弓の靭に、泳ぐウツボを捕らえ入れたように。楽天海都は煙の大魚を包み焼き串刺し、最後には猛進しながら蓋をして、色鮮やかに料理しきった。
そのオーラを塗り替えられとどめることができなくなった灰煙はただ淡く霧散していく。
また澱む空気をクリアにし、クリアした少年の姿が……タバコをくゆらせるのをやめ、ウツボ姫の細め睨んだ目の先に緑輝かしいオーラを放ち映っていた。
「ほぉ」
「なかなかよいじゃろう。一目その白貝を頼りに守りに主軸を置いていると思ったがそれでいてなかなか思い切りのあるアグレッシブな動きをしよる。さっきの仕掛け技の制御もずいぶん大胆に改善もしたようじゃのぉ。それに、────よいよい…。きえた貝柱どもまでとはいかんが、よいよい…」
吸い飽きた不味いパイプを手にくるくると回しながら、ウツボ姫はひとりまるで吟味するかのようにそう言った。
反面海都はどっと疲れた様子でただただ本当にこれでやり方が合っているのか、不安気な表情をしてウツボ姫の表情をじっと見ていた。
「してワシのオーラを遮断できることにいつ気付きおった?」
「やった……のか……え!?? オーラを…しゃだん? ──痛てっ!?」
ピンとこない表情で傾げた海都の首を煙拳が上から忍び寄りかるく小突いた。
「たわけ。おぬしの珍しいその海藻のようにゆらぐ回復オーラとやらでワシの育てた【煙靭】の顎をさっき効果的に砕いたじゃろ。ワシが吹き込んだオーラ色をおぬしのオーラ色が包みとらえて塗り替えおったのじゃ、だからワシはおぬしのオーラに汚された煙をそれ以上リサイクルして操れんかったのじゃ。いいかの、より深き闘いはそのオーラ量だけでは決まらん…随所に要求されるのは──一瞬光らせるキレキレのセンスと──隠し磨いた鋭い技と──仕留めたい獲物との相性を睨みのぞむ眼と──ソレをあわせて噛みつき一気に引き込むタイミングじゃ。ここまで噛み砕いて言わんとわからんとはなァぁ? 相当なたわけのうつけの蟹味噌じゃのぉ!! ハハハハ」
「ぁはは……っす……え…かにみそ…??」
海都は自分が夢中にやったことにあとからウツボ姫のその慧眼とその大海のように見聞広きフィルターを通して説明され、熟考しながらやがて理解が半分ほど追い付き頷いた。
しかし同時に威圧感のある見た目にしてはシデンレイラさんのような細かな説明を整然とするこのウツボ姫の怪しさが、
より一層……深く増してきたように……海都は感じた。
知らない場所で知らないことばかり、だがどこにいても強き者の元で理不尽に振り回されてしまう楽天海都はまたひとつダンジョンで闘うための