雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
⬜︎
【クラゲハウス】
ぷかぷかと水中を漂い浮かぶおおきな海月たち。
透明クラゲはその中に野菜植物さらに土までを詰め込み、室内の海の塩分を適した数値へと調整する。
いわば濾過装置でありビニールハウスのような室内環境を一定に保護する役割も果たす。
これにより普段は水中海中で育ちえない様々な作物を同じ海に浮かべ、ゆったりとミネラルたっぷりの一味違う美味しい野菜へと育てることができる。
⬜︎
鯛貝笑海が所有する秘密のエリア、シープラント。
そのプロジェクトの立ち上げ管理までをひとり任されている女性の名はクラリ。彼女の手を引く方へと泳ぎついていった海都はクラゲハウスの中で育てている作物の味や栄養価その他用途などの説明を熱心にきいていた。
次々と海を泳ぎながらクラゲハウスから別のクラゲハウスへと味見しながら移動した。
そこには全然知らない野菜の名や、どこか海都の知る限りで似ている野菜もあった。
そして海都は手のひらにのせた、小さな白い粒たちを口に頬張ると────
「!? ────これってぇ……」
「ソバやよ」
「え、そば!?? ……ってですよね!!!」
「そやよ。そばよ。そばの実よ」
「え、でもなんで!? 海にそばが…というか、そばの実がここに…(しろい…?)」
「世海旅行中にある剣士さんからもらったん。それを粉にして舐めながらそのかた旅してたみたい。それぐらいとっても栄養価が高いやよ。ん? 気に入ったらぁもっとたべてみる?」
「剣士…」
剣士と言われ、3人の顔をぼんやりと思い浮かべた海都であったがすぐに頭をぶんぶんと横に振った。
そしてあらぬ考えよりも舌の上にまだ残るその味に──
「あ、もちろん!!! あのそれって!!! ────────」
▼▼
▽▽
思わぬ新鮮な収穫を手にしたシープラントを後にし、
あらたに丁寧に詰め込んだ…リュックの重さのワクワクとドキドキをその背に引っ提げて、海都は海を馬のように駆けた。
▼鯛貝笑海の洞 新商品開発室▼にて
彼はそれを作ったことはない。だが、彼の耳には流れる──口ずさむ。
粉末状にした魔法の粉を水に溶かしながら、その歴史を今ひも解いていく。
「そばにいてそばこ、それでも旅に出る、大空の淡雪、海へとけてゆく……クレープの元は────ガレット」
ダンクレーで伸ばし焼き上がった白きそれは、貝皿に盛られた。
ひどくシンプルに焼き上がったそれを、レモンを絞り垂らし極シンプルにいただく。
三角に折りたたまれた白は熱さに慣れた職人の手で、彼の口元へと運ばれていく。
「────────…………まだかたい…だけど、ここから進化させる…」
しんみりと黙り口内にまだ残る、その香りを、その生地の味を味わいながら。
彼は脳内でリピートするように繰り返す。
いつも店に、キッチンカーに、今は緑蜜道の駅前に構えながれるあのメロディーを……。
「そうか……そうだァ! あの唄はきっと! ヤルのはきっときっと!半端な再現なんかじゃなかったんだ! きっと浅瀬をかきまぜながら驕っていたんだ。もっと深く深くそんな人が積み上げて重ねていった深く深くにあったんだ……! そう…俺の目をむけてなかったクレープの歴史を今さかのぼる! そうすれば……そうなんだろ母さん! クレープグレープグループ!!!」
硬く結んでいた若葉色の頭巾がほどけ落ちるほどの──気合気迫。
石の洞に反響する少年の雄たけびが、吹き抜けていく。
その少年の背が依然よりすっかり何層も重ね増したやる気に満ちているのを、影からみた。
ぞろぞろと物陰から顔を出していく鯛貝笑海の面子はニヤニヤと笑っていた。
彼がぶつかっていた第二の壁を打ち破ったのはクレープの原形である〝ガレット〟。
そば粉で練り上げたガレットが新たに重ねたクレープ道へと、異海の地でひとり奮闘する半人前のクレープ職人である彼を大いなる流れへと導いていったのであった。
【クレープの唄(CGG)】
作詞CGG
作曲CGG
クッレープグレープグループ!!!
そよ風に走る まちのなか
あなたの心に とどけたい
そばにいてそばこ それでも旅に出る
大空の淡雪 海へとけてゆく
やがて春にはきえてしまった
あなたをもとめて
ちりめん模様のガレット…
シュクレサレシュクレサーレ
希望の唄にのって 大人びていいじゃない?
それがわたし流
シュクレサレシュクレサーレ
巻かれては惹かれ合う
だってわたしたちは…
クッレープグレープグループ!!!