※この作品はR-18です。

雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!!   作:山下敬雄

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開幕貝柱カップ

ビラはまかれた。腹にビラを貼った魚の広告たちが外海中を一斉に泳ぎ走った。

その報せは外海の環境に浸り棲まう隅々まで届き、復活した久々の祭典に眠っていた強者たちがその秘かに研いでいた己の牙を見せ──笑った。

 

 

ついに始まった貝柱カップ。

娯闘海で一番大きな建造物、海中闘技場にて白熱する海の戦士たちの闘い模様が取り囲む歓声と野次に煽られて、海のフィールドを泳ぎぶつかり合い己のプライドに噛みつき合っては敵を倒さんとヒートアップする。

 

そんなグループ予選突破を賭けた熱き闘いが繰り広げられている中、別会場の旧海中闘技場にて行われている〝グループ雲丹〟出場総勢6名の第一試合が始まった。

 

『さぁ始まりましたグループ雲丹第一試合、東洞の暗がりから入場したのはワカメ色のなぞ生物、ラックテン・カイト選手!!!』

 

「──しっ!」

 

『同じく西洞からのそりのそりぺちぺち……現れたのは鋭い眼光を浮かべる────────ヒョウアザラシのヒョウちゃん!』

 

「え???」

 

『実況はお馴染み私、滑舌カツオのカゼカツがなめらかぁーーーにッお送りしておりまする!!!』

 

「ひょっ?」

 

水中にひびき伝うマイク貝から発せられた滑舌の良い実況よりも、『ひょっ?』と可愛らしく首を傾げてご挨拶した子アザラシが対戦相手とはなんの冗談なのか、気合いを入れていたラックテン・カイトは見えてきたその姿に驚き困惑してしまった。

 

「え?? あの…なんで闘技場に普通のアザラシが…? ええ???」

 

「ひょひょぅぅ!!!!」

 

可愛らしいアザラシは傾げていた首を元に戻し、眼光を怒らせた。さらにその場に垂直に泳ぎ立ち、よぉく視界に入れた獲物へと狙いを定めた。

 

『おっと開始の合図を待たずしておっとおっとぉ!? のオットセイではなくなんとおおおおおおそのままリングアウトーーーーーーー!!! いきなり炸裂しました【ヒョウちゃんファングぅぅ】!!! これはいけません豪速で泳ぐアザラシの高い泳力を舐めていたのか!!! 武器を取り出す暇もなく怒ったヒョウちゃんがワカメマンの首根っこをつかまえて子猫をかっさらう親猫のように造作もなく闘いの場である護水エリア外へと連れ去り瞬殺だぁーーーー!!! ところで猫ってなんだぁーーーーなんなんだぁーーーーそのタコみたいな響きの生き物!!! でもでもヒョウアザラシだからちょっとぐらいはネコってもいいよねぇーーー!!! ってこのタコ!!! 誰が名付けたヒョウアザラシ!!! とまぁヒョウアザラシのヒョウちゃんの衝撃の秒殺勝利劇で始まったグループ雲丹、次の────』

 

噛みついた獲物のワカメを華麗豪快に投げ捨てたアザラシは喜び泳ぎ回る。さらに観客へとそのちいさな前足で愛らしく手を振りかえしている。

 

第一試合楽天海都はヒョウちゃんに負けてしまった。

海中闘技場デビュー戦はまさかの海中をアザラシの泳ぎに振り回されてのリングアウト、訳もわからない銃のチップを取り出す間もなく闘いは決し、勝利貝を手にすることはできなかった。

 

 

 

▼

▽

 

次戦つづくキラーラジュニア戦。

 

「あはっ、こっちこっちぃざっばーーーん!!!」

 

「おわっ!? んぶぶ──!??」

 

『またもリングアウトーーーーーーー!!! 秒殺ワカメマンことラックテン、またしてもリングアウトで負けてしまうーーーーー!!! 攻撃らしい攻撃をする余裕もなく、鯱少女のスピードに翻弄され最後は母親譲りの技【デビルオルカテイル】に叩き落とされ完敗だーーーー早くもこのグループ有力最弱候補かぁ!?? お相手に勝利貝をご提供するだけのクソワカメなのかぁーーー!!!』

 

その男は子供相手に銃口を向けることはできない……。

しかし子供とはいえ、その尾っぽで叩かれるのはすごく痛い……。

 

楽天海都はいいところなしで、リングアウトで鯱少女のキラーラジュニアに秒速の二敗目を喫した。

 

「いぇーーい! ママぁみってるーータコにつづいてワカメマンもシャシャシャのブイブーーイ!!!」

 

 

▼

▽

 

 

つづく試合。三試合立て続けに執り行われ、出場者たちにしっかり休んでいる暇はない。

 

泳ぎくぐりぬけた東洞から護水内へと入場した楽天海都は気合いを入れて、若葉色の頭巾を巻いた。

既に二敗ではもうきっとあとがない。

(俺は……先生なら……)

そんな思い決意を硬く──結び上げた。

 

『その頭に巻いたワカメはなんなのか、海藻臭い気合をしっかりと巻いて、いざ?果たして今度は一味ちがうのかこの男? その板についた負けっぷりにある意味人気が出て来たのか、集ったシーフードたちのよくない笑い声がワラワラぶくぶくとこの旧闘技場を覆ってきております!!!』

 

「お前が最弱ワカメ野郎タコか? コッココタコココ!!! 勝利貝はいただいたも同然だな」

 

「……」

 

「なんか言えやゴラァ!!! タコスケ!!! 俺の二敗はお前の無様な二敗とは重みが違うんだよぉーーーーーーオレ様をその気持ち悪ぃワンチャンある雑魚の目で見んじゃねぇーーーーー!!! スキアリ〝すぴーーーーーーー!!!〟」

 

アタマが茹で上がるような赤に染まったタコの貝間は開始の合図を待たずに墨を吐いた。

黒く汚れた海の試合会場は海都の視界を瞬く間に染め上げて奪った。

額に気合いの頭巾をしたものの、いきなりの形勢不利。

そしてそこからすかさず、ロングレンジで連打する蛸拳。しならせうならせ伸ばしまくり、ただひたすらに墨の中に閉じ込めたターゲットを滅多打ちにし搦手とスタミナとオーラ度外視の手数のある速攻を同時に仕掛けた。

 

「タタタタタタタタタタタタココココココココ!!! お前みたいなノロマなヤツが貝柱になれるものかこのタコ!!! テメェの足は何本だ言ってみろおおおおおおららぁ!!! 馬鹿の雑魚の身の程知らずは海底にぐしゃぐしゃにへばりつきながら一生ワカメでもやってろ!!!」

 

『これは一方的かぁーーーー!!! ハマればしっかり強いココタコの墨拳!!! さぁてどんな血のお味をごていきょ──おや? おややや??? こ、これは?』

 

「コココココココ────こぉ!!??」

 

その幾多の吸盤にかえる手応えが────打ち付ける度に何故かどんどんと短くなる。

ココタコはずいぶんと短くなった己の足の数を口をO字にしながら唖然と数えた。

 

「タコなら────────さばける!!! 【タココアぁ】!!!」

 

「なんでしばいてたオレがぶつ切りにぃぃい!!!」

 

「ご提供おおおおおお!!!」

 

「スッ、スルなぁーーーーー!!!??? オレのタコ足ぃぃーーーーー!!!!!」

「たこ焼きぃぃーーーー!!!」

「きゅばぁーーーー!??」

 

墨黒を抜け出しまっすぐに突貫した。

ぶつ切りに浮かぶタコの足の数々、抵抗し伸ばした悪あがきさえもココア色のビームソードでぶった斬る。

 

勢い熱意は止められない。

緑頭巾は怯え竦むお客様に肉薄し、最後に豪快にぶった斬ったタコの全身を保護していたバブルシールドがシールドブレイク状態になり、出場者の全力と安全を保つ海中闘技場に張られた護水の異界効果でリング外へと弾き出された。

 

 

「いや、全力でお客様を叩っ切る……」

「先生なら! 相手が誰だろうと! きっと…絶対的に!」

 

『なんとなんとタコを叩き切ったのはワカメ!!! いやワカメというのは失礼もはやグリーンモンスターぁぁ!!! なんだなんだ何があったというのか見違える動きいけすかないタコをぶつ切りのバブルクラッシュ状態にさばいたそのクールな動きぃぃ!!! あ、タコ野郎の墨でゼンゼン見えなかったけどぉぉこの三敗タコ野郎イカになっちまえ!!! 失敬──なんとなんとのなんとのおっととぉーのオットセイは二回目の二枚貝ぃぃカオスとお笑いただようグループ雲丹第三試合にして初勝利の勝利貝をもぎ取ったのは〝グッリーーーーんモンスター〟一味も二味もシマアジも違うラックテン・カイトの海中爆誕だぁーーーー!!!』

 

最後に護水内に立っていたまさかの勝者はこれ見よがしにはその勝利を喜ばない。

銃口から伸びたビームソードは失せてゆく。

冷たい嘲笑混じりの歓声はいつしかうるさい実況に煽られ熱のこもったものへと変わっていた。

 

1勝2敗。気合いを入れ直した楽天海都は対戦相手のココタコを鮮やか豪快に料理し、貝柱カップ予選グループ雲丹のはじめての煌めく勝利貝を手にした。

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