雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
グループ予選、決勝の洞に進む代表1名の切符をかけた闘いは終わった。
旧海中闘技場での熱き闘いは終わったが、彼はまた縫い目の増えた若葉色の頭巾をしっかりと結び────挑む。
ダンクレーとフライパンの両刀で、耳に入れた注文通りにお客様それぞれの顔をおぼえクレープを熱心に焼き上げていく。
「それにしてもキラーラ相手に最後のはなかなか惜しかったなぁタコスケ? マァ気を落としなさんな。一日に二度ジャイアントキリングは起こらんさココココ」
「あははは……あ、それタコ入りの生地で…!(練り込んだやつ…)」
「コココなかなかびみ──オマっ!??」
「ひょっひょぅ♡はにゃみゃむ…」
「ワカメマンのくれぇぷ世海で二番目に好きーーーー!!!」
「二番目…あざっす!!!」
「不味い噂が立ってヒラヒラの焼き加減と種類を増やしたってわけかい。こうして王様気分でアタシ好みにしていいのは──なかなかわざわざなズルだね? シャシャシャ」
「はい! いっそお客様の好みに選んでもらう方がいいかなって! それでまぁ…日々勉強って感じでメニューを考案してます!」
「へへぇー。海でおしゃれなクレープを食べれるとはねぇー。ここさいきんシーフード三昧には飽きてたからたっすかるぅーー」
あのグループ雲丹の面子が食べにきてくれた。
開戦海鮮街道CGG前、ここに集う────
キラーラ
キラーラジュニア
ココタコ
ヒョウちゃん
そして──
「「「だれだっけ」」」
「ひょ?」
「んぼっ!?? …た、闘ったでしょうが!!! みんなのマンボウお姉さんことンボー・マラスカット様よ! てか総当たりの一巡したでしょうが!(アザラシまで疑問るな!)」
第三戦で海都がココタコにつづき倒したンボー・マラスカットまで提供された彼のクレープを味わっている。闘い競い合った者たちであるが、今は同じものを食べながら笑いあっている。
「あ──【食感天国】、【漬けマグ】×2、【海苔塩ポテトクリーム】、【海イチゴクレープ】、生地はタコせん風と、クラシックふたつ、マリンがひとつに、ウツボ級がひとつ、以上っすね────っし!」
騒ぎ声と店前に陣取った豪華面子、それと海道をただよう甘い匂いに釣られたのか、押し寄せる波のようにやってきた客からの注文が入った──彼はクレープを焼き続ける。今日はいつもよりもっと笑顔で。
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▽
ここは獲海のどこか、集団生活するシャチたちのコミュニティにお邪魔する。
新たなアイデアそして貝間たちの求める食感のさらなるヒントを得るために。
楽天海都はキラーラの洞へと訪れた。
『学びたけりゃアタシの海に来な』先刻グループ雲丹の面子が集った自分の店前でキラーラにそう言われた海都は腹を決めて教えられた見知らぬ海流に乗り、娯闘海から彼女の棲む場所へとおもむいたのだった。
水境を抜けたら空気が中に満たされている、そんな光景にも慣れた。
壁石、天井、家具にいたるまで全てが黒と白で統一されている、シックでかっこいいそんな部屋におそるそる入った海都。
彼は黒いテーブル前の椅子に腰掛け、ただただじっと彼女の後ろ背としっぽのうごき、鋭いナイフ捌きを見届ける────
「これが本当の【食感天国】さ」
「う────うまっ…!!!」
「当たり前サ。戦闘馬鹿だとでも思ったかい? 貝間は戦闘している時間よりこうして生きて自分の殻に籠っている時間の方が圧倒的に長いのさ。坊やも熱心なのは闘うだけじゃないだろう? だからアタシに惹かれてここにきた──そういうことサ、シャシャシャ」
「な……なるほど」
2分も待たずに手早く出てきた。
焼き上げたクレープに巻いた海の幸、宝石箱のように色とりどりに輝く具材が見目だけではなく、食感──中身まで楽しめる。噛めば噛むほどに美味しい、まるでパレードのように口内が楽しい食感の数々で満たされていく。
こだわり抜かれた具材食材新食感に、海都はじぶんの店で売っている【食感天国】は偽物と認めざるをえなかった。それほどに美味しい体験をこの一巻きのクレープに彼は噛み締めている。
キラーラジュニアを育てている母親鯱だけあって、高い戦闘力だけではなくその料理も一級品。
闘技場では見せないまさかの裏の顔に海都は驚き感心し、彼女の言葉にうなずく。
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海都はキラーラが作り上げた大巻きの食感天国をすべて平らげた。
(最後まで飽きない。これが本当の食感天国……海の幸の扱い方────)
「おぅ平らげたかい? シャシャシャ見かけによらず喰いっぷりだねェ……ところで知りたいことはそれだけでよかったのかい?」
「えっと…はい? んとぉ……あ!!! やっぱりクレープ生地のことも!!!」
「シャシャシャシャしゃー、本当にその反応だと料理のことしか頭になかったようだねぇシャシャシャ。────闘いの方は興味なしかい? マッタク新鮮な馬鹿だねェシャシャシャ」
「え、たたか……」
机越しに片肘立て、ニヤリと睨むその眼光にのんびりクレープを食していた海都は何故か……鯱女の白黒とはまったくちがう青髪赤目の存在をハッと思い浮かべてしまった。