雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
グリーンキャップ討伐。そしてその後不安だったDSシールド値を回復し次のステージへと進み、帰りの切符チップを3枚集めることに成功した。
無事生存目標を達成し月山雨楽楽、楽天海都、シデン・レイラ、めぐり合わせた各位、ダンジョンから現世への帰還を果たした────その激動激闘の日から1日後。
新たなこの日、学校は【花見の日】でお休み(国民が優雅にのほほんとお花見をする日)。緑蜜高校の一行はそんな休日の理由となるコンセプトをありがたく無視し、常夏のビーチへとやって来ている。
ダンジョン内の変わらぬ良好な天気の下に、グリーンキャップ討伐&ダンジョンからの生還祝いの……まぶしいエメラルド水着を纏った、〝お詫び夏ちゃん先生〟がそこにいた。
「まったくぅひどいじゃないか回復系男子生徒カイトくん♡この夏ちゃん先生にだまってレッドキャップの親戚とバケツに穴があくほど乳繰り合って楽しんでいたなんて」
「いや別に楽しんではまったく……なくて……。ちちくりぃ…じゃなくて今回もほんとたいへんで、めっちゃ死にかけて……っすね」
激闘を物語るボス級の戦利品、何故か消えずにのこっていた穴あきの大バケツは砂浜に飾り置かれた。そしてこの日電話で呼び出された楽天海都は、その青髪赤目の元気な美女と久々に遭遇していた。
「はははははダンジョンにハマりすぎて死にたがるとは若いなぁ。──しかしのしかしだぞ、運が良かったなシデンレーラに助けられるとは!」
「え、シデン・レイラさんのこと知ってんすか先生??(先生も聖タクのファンなのかな?)」
「知ってるもなにも私が絶賛モンスターの群れとたのしんでいるときに、たまぁにダ~ンジョンに邪魔しにくるんだ。言ってみれば今は……そうッ商売敵みたいなもんだな♡(セイタク?なんだそれは?週刊ジャイアントの新連載か?)」
「……しょ、しょうばいがたき……(なんのしょうばい……)」
「はははあの強さと技量だ、何度かダンジョン部にスカウトしたんだけど断られてな。ざっと、二十と……三度ぐらいになるか」
「にじゅうと、さん度!? それ多くないすか……あぁでもわかりますシデン・レイラさんってほんと先生並につよ……あ」
「なにぃ?? この絶対的な夏ちゃん並だとぉ? はーーん、カイト生徒そうかそうか」
「いやっ、いえっ、ごごめんなさ」
「許さん♡」
「え!? えええええ!? ちょっマっ」
「ダぁメっ許さん♡」
笑いながら指関節をコキコキと鳴らし始めた雷夏は楽天海都に襲い掛かった。その力量の差は歴然、いつものように暴走する先生の魔の手から生徒が逃れられるはずもなく……。
「てかちょっと…なんで私まで水着(着せられて…値札ついてるし…えいっ)──しかもここナニ? 栃木にこんな…ちがったダンジョンに、こんなひろいビーチとかやばくない……。てかちょっとあの人ナニやって……いちおう」
月山雨楽楽は何かにすこし目覚めてしまったようだ。拾った楽天海都のスマホで乳繰り合う2人の補給行為を撮影していく。「これぐらい東京の子は普通に集まってやっているのでは?」そう頷き、ビーチチェアに座り、オレンジジュースを曲げたストローで飲みながらほのかに赤面する顔を冷やしていく。
「あ? なんだこの蚊に刺されたようなアトは」
「え、え、えっと」
「ははーん、これは夏ちゃんに対する挑戦状だな。商売敵め、よぉし雷夏ちゃんが全部全箇所塗り替えてやろう♡」
「あああああああせんせまっ♡あっ♡」
「待たん♡ちゅーちゅぷる♡」
なおも襲い掛かる雷夏、このビーチの景色に似つかわしくない制服姿をした男子生徒をひん剥き、シデン・レイラにつけられた赤い印を見つける……。あちこちあるそれを訝しみ見、やがて合点がいく。なぜかより一層興奮した青髪はじぶんの獲物に噛みつき──灼けた砂浜はほこりをたてた。
▼
▽
何か気でも変わったのか腕を組み斜め上に向けた赤い瞳は……押し倒した海都をよそに、そそくさと歩き出し、今、あつまった女子2人で話し込んでいる。
そして話がまとまったのか──
やがて上体を起こした半裸の海都は、いつの間にか並び立つ2人の水着美少女を見てしまった。
「期間限定美少女ユニット、【エメラルドマーメイド】だ♡」
「え、えめま?」
「そして【ナツ・エメラルド】」
「そ…そして【ララ・エメラルド】、はぁ」
「せーのっ…」
「「わたしたちは【ララナツシマイ】だヨっ」」
右、左、おのおの素足片脚を上げ、キャピっと両手の甲を見せるキュートなガッツポーズをつくる。さらに示し合わせたように対称の動作を披露する、水面鏡合わせの姉妹がそこにいる。
「は…はぁ……?」
「反応が薄いなこれほどの水着姿だぞララナツのぉー、なにかひとつ感想でも言わないか♡」
「ふぅんま、それぐらいは必要なんじゃない聖タクの無駄に長い感想文なんかより…」
いつもの青髪赤目だがいつもと特にちがうのはその髪型。ぴょっこりとびだしているのが可愛い右のサイドテールにしている。色々と年頃の雄には目に毒な夏ちゃんのエメラルド水着ver.であり、
黒髪セミロングに地球色の青い瞳。こちらもララナツ姉妹というどこからかわいてきた架空のコンセプトに合わせて左のサイドテールにヘアゴムで可愛く束ねた。いつものメガネは東京から仕入れたONOFFモテテク情報を駆使し、さっき外している。
すこぶる健康な夏ちゃんよりは背が低いが身長164cm、女子にしては少し平均より高いがそれほどでもない普通である。胸は夏ちゃん先生と比べたら自慢するほどではないが……平均以上はある。
エメラルドの水着、フリルがふんだんにあしらわれた可愛らしく瑞々しい味わいを放つその水着。ホームセンターで処分価格2着で2680円のお安い価格であったとは思えない。この美少女2人がひとたび纏えばその価値は〝数10倍〟へと跳ねあがるのだ。
期間限定美少女ユニット【エメラルドマーメイド】の【ララナツ姉妹】……まだあまり設定の固まっていない2人の、まぶしすぎる姿がセットでそこにあった。
そして、そんな2人から求められる一介の男子生徒の気の利いた返答とは──
「え月山さん…いや…は、はい……そそそれは…ハイ、いいっすけど……」
「まったくぅこれだからタマシイ童貞は♡相変わらずシャキッとしないなぁ、そらっ」
「たったま、ど? ちょっせんせッなななんでぇあああ」
「それはもちろん新入部員歓迎祝いと、愛しい緑蜜生徒たちのダンジョン帰還祝いだろう?」
「まっ、助かったのは事実だしこれぐらい…あってもいんじゃないの…? なぜか私まで鼠と巨人まで戦うハメになったのはアレだけどぉ…だまって受け取ればぁ? 楽天くん」
「いやっ、ちょっと…あっああああ♡」
再び白い砂浜に押し倒された海都は──お着替えさせられていた500円の臙脂色の水着をまさぐられる。夏ちゃんのやらしい手つきがしばし這いまわり、そのまま「えいっ」と脱ぎ捨てられた。
もうすでに、
「こちらの方がシャキッと堂々しているな、フフ。生意気に準備万端のようだ♡」
「はぁ、エメマーの水着ですでに勃起してたってこと? さいてい」
「ええ!? えめま? っあっ♡ああああ」
「キュート、清楚、正統派路線のエメマーのララナツに勃起するとひゃ、度し難いにゃちゅべちゅっちゅ♡」
夏は急に乳首を舐め始めた。右の乳首に幾度か愛しそうにキスし、舌を押し当てていく。さらにそのまま下腹部に左手を伸ばしまさぐり……シコシコと手淫を始めた。
いきなりの雷夏先生の攻めに声を漏らしてしまう。これだけでも続けられればすぐに達してしまう、海都は増幅する甘い刺激を受け取りながら。だが、さらに────
「ちょっとぉもうダメそうじゃんほんといちいちひくすぎんだけど、ったく。あえぇ…ちゅぶちゅちゅ──ちゅっ♡」
姉夏に早くもいいようにヤられている男子を見て、見ていられずに自分も参戦した。ララナツ姉妹の雨楽楽は余っていた左の乳首に、同じくキスし架空の姉の達者なテクを真似していく。
「ああああ月山ひゃんんらめぇあああ♡」
「らかららめじゃなくへひくしゅぎちゅっ♡」
「あっあっああああ」
「そうだぞまったくぅひくちゅぎだ♡ぢゅーーるるちゅじゅれるる」
夏ちゃん先生だけでも許容量オーバーの舐めシコる同時刺激に、そこにさらに加わった月山の左からの甘い吸い舐めるたどたどしい刺激で、過剰の上乗せがされる。
左右からの乳首舐め、そしてあわさり絡まる細い指と指2人の手コキで、ペニスは悦び汁を垂らしすべりよく上下されていく。
もう……早くも耐えることはできない。左右からエメラルドビキニの美少女が密着し、それぞれの胸が押し当たる。サイドテールのかわいい青と黒髪の姉妹が鏡合わせのように……ダメと言っても耳に入れずつづける。やがて激しさを増し唾液に濡れ我慢汁に濡れ、つづいていく乳首舐め手コキにこの一介の男子生徒が耐えられるはずもなく……。
大射精。
左右の敏感なトリガーを舐めしゃぶられながら、怒張したペニスから大興奮の証が噴き上る。
「びゅーびゅーーーー」っとたかくたかく、込み上げた気持ちよさが一気に噴出し、白濁を左右2人にまき散らした。
「興奮しすぎだ髪にまでかかったぞふふふふ♡」
「きゃっ!?──うわっめっちゃぁ…………ちょっとぉぉくさいんだけどさいあく♡」
「あぁあぁひよひよすひ…ぃ……ぁぁ……♡」
重力に「ぱたたた」と墜ちていったザーメンを浴び汚されていく、身体、艶髪、かわいいおそろいのおニューな水着。
左右からじっと見つめる赤目と青目の栃木一の美人姉妹に笑われながら、合わせた彼女らのお手手まんこに挟まれ、快楽の汁を思いっきり放出した楽天海都は……熱い砂浜に抱かれながら、ぼやぼやと気持ちのいい脱力をしていき……目を閉じていった────────。
まだ続く、自分の所有物に対してつけられていたシデンレイラのもの、きえないあかい印を上書きするためという共通のどうでもいいミッションを持ち。
首筋、鎖骨、お腹、へそ、つま先まで……
サイドテールがあどけなさを演出しかわいらしい、エメマーの2人姉妹で協力し、吸血鬼も顔負けの吸い付く接吻行為をつづけていく。
じょじょにじょじょに、急激に、また追い詰められていく。全身をついばむ美少女ユニットのキスの雨に、海都の敏感で自制の効かないカラダでは耐えられない。
ふやける程にキスされて…のぼりつめていくおおきな快感の波が──ちかづいてくる──。いたずらな人魚姉妹に、やり場無い両手をぎゅっと指を絡め、握られ、とろける海の方へと引き込まれて────
「あぁあっああああああむりぃいいむりゅうぅうう」
「むりゅぅぅ♡じゃないもうおぼれて射精せ射精せ♡」
「「ちゅっぢゅーーーーっ」」
「あぁあああ♡♡♡♡」
ふたりの手でしごかれ楽天海都はあえなく射精した。射精時にあまりの気持ちよさにおもわず彼女らの手を強く握り、先生と月山は甘える彼のそれを許し、握り返す。
キスの雨の仕上げはより敏感に勃起しねだっていた、お預けされていた右左の雄乳首にキスをした。さらに当然、もうずっと止まらない我慢汁と、手汗のぬめり気を贅沢にまとう手淫をしながら。吸い付くやわらかい彼女らの唇と舌に興奮して、硬くなった乳輪を乳頭をぜんたいを甘やかされながら。天にも昇るような、そして底へと沈むような、射精の快感に海都は長々と浸り溺れた。
「ンッ!? ぢゅぷちゅ──……またこんなにめっちゃだしてる…んだけど」
「ちゅぷん──フフよほどこの期間限定美少女ユニットの補給行為が気に入ったんだろう♡」
「ふぅん……期間延長する?」
「絶対的姉妹アイドル、ララナツは安くないぞおー、ちゅぢゅー♡」
「あ…あぁぁ……」
コンセプトがふんわりとアッチコッチしている期間限定…エメラルド色のかわいい水着姿の、雷夏先生、月山雨楽楽同級生。眼下のだらしのない恍惚の雄の表情を見届けた2人は、目を合わせ汗を滴らせ立ち上がる。はりきりつかれた身体をぽかぽかの陽気に今、背伸びしながら立ち去っていった。
やがて、水をかけあう青髪と黒髪2人の美少女とおおきなヤドカリ……が、遠目にいる。それは見ているだけで羨むほどとてもたのしそうであり、たのしそうな笑い声を聞きながら、楽天海都はネムリについていった────────。
▼
▽
首筋に電撃のように走る──冷たいサイダーを灼けた肌に押し当てられ、喰らい、目を覚ます。夏ちゃん先生のマブい笑顔がそこにあり、ありがたく冷たいそれを受け取る。
えらく乾いた喉に炭酸がバチバチとハジケて痛い。だが生き返るほどおいしい。
道の駅で売っている地元緑蜜の手作りサイダーの瓶であった。ガラスのほそながいセカイに太陽の陽が透き通る、泡粒がのぼる────。そんなおもむろに太陽に翳した透けガラスに、元気な赤い目が、クールな青い目が、つどう────。
「というわけでダンジョン部にようこそ、歓迎だ新入部員♡」
「(なんか順序ぎゃくじゃないすか……)え、月山さんダンジョン部に入るの??」
「うん、ちょっとしつこいから入ってもいいかなぁって、うん(断ったら毎日教室までお弁当食べに来るとか言い出すし…バラしたらってちょっと言ってみると……目がすーんてしてマジだった、っこの先生ヤバくない? まぁイロイロとだいぶいまさらな気もするんだけど…)」
ふたたびこの3人。夏と海都と雨楽楽。
冷たい飲み物と海での水遊びで一度はしゃいだ暑さをクールダウンし、再集結した。海都もおもむろに痛むその腰をあげ……なにやら先程の補給行為の前にしておくべき重大な話を今現在進行形ではじめている。
それも、ダンジョン部へと新たに入部するという月山雨楽楽のショッキングな話である。
自分はまだ一応入部していないつもりである海都にとっても、その夏ちゃん先生を通しての正式な報告は誠にショッキングであり、あれだけ月山はそのダンジョンで不平も垂れていた気がするのに、今耳に入った入部する理由ものほほんとしたものに彼には聞こえた。
「しつこいから入ってもいいってなんすか……いやッほんとにダん」
「ダ~んじょんっ★──☆いやいやまさか緑蜜に【万能オーラ】持ちがいたとはな。この夏ちゃんのくりくりなお目目をもってして見逃してしまっていたとは。ふふ【万能色】は色が偏ってないからとくにダンジョンに入ってみないと気付きにくいんだなぁこれが」
「「万能オーラ……って?」」
「なんだぁ? 2人して口をそろえて妬けるな(ユニットでも組むつもりかぁ楽天と雨楽楽で
☆★☆
牛頭梢はなんかド級のセンスを感じる灰色オーラ
じゃんけんでいえばアイコって感じだ
雷夏ちゃんはご存じ雷たいぷの青オーラ じゃんけんでいえばグー
楽天海都はご存じだ♡回復系の濃い♡緑オーラ じゃんけんでいえばパー
というわけだ。
そしてお待ちかねツッキーの万能なないろオーラ じゃんけんでいえば…まぁ要するに、ばーんっ♡
★☆★
〝ばーんっ♡〟
雷夏はおとなしく突っ立ち並ぶ生徒たちを右の手銃で撃ち抜き、お茶目にアイドル級の悩殺ウインクを披露した。……以上でわっかりやすいと噂の説明のほどを〆た。
((なるほど…ゼンゼンわからない……なんでじゃんけん…ツッキーってなに?))
並び立つ生徒男女はどことなく不満げな表情に見える。腰に両手を置いて息を大げさに吐いた夏ちゃん先生は、よりさっきよりも噛み砕き補足するようにつづけた。
「なんだその物足りげな顔は? ……そうだな──いいかー! 要するに雷夏ちゃんの性格は絶対的なグーだ、カイト生徒の性格はグーをつつむ癒しのパー、ツッキーの性格はツンデレだ」
((よけいわからん…))
(私だけなんでツンデレ指定? もうじゃんけん要素がないんだけど…しかもそんなにツンデレじゃないし、ねぇ?)
(は、はい…しかも俺そのグーで妙に殴られてるんすけど…)
得意気に左のパーを右のグー拳で何度も合わせいい音を響かせている。先生の話をよく集中して聞いたはずが、より混乱した生徒はひそひそと…夏ちゃん先生には聞こえないように耳元で話し合っている。そんな生徒たちの初々しい反応を見て赤目をおおきく見開き、うんうんと首を縦に振り、大袈裟なジェスチャーをしている。生足を砂浜に突き刺し堂々と立つ雷夏先生は、それで説明が十分うまくいった気でいるようだ。
「おっちょうど牛頭梢もきたな。ぺちゃくちゃと突っ立ちここでただ背を焼き習うより、とりあえず次は実戦だ!」
「「ぺちゃく……?ええ!?? 実戦!?」」
「ぜぇはぁぜぇはぁ──、おぉ?」
「フフ」
唐突も唐突、先生はさらっと元気に口にする。唐突に出てきた「実戦」そのワードが何のことかが生徒2人には分からない。だが、彼女、先生の笑みを見ているとなぜだか……。漂う不吉な予感だけは生徒2人にひしひしと伝わった。
またダンジョンにいくのか?
ぞんぶんに死にかけた昨日の今日でまた?
これから?
冗談!
入らなければ…
それともまたなにか良からぬことを?
まぶしい夏ちゃんスマイルに向け、不穏な疑念が渦巻く。
灰色髪のイエロービキニがずいぶんと豊かなモノを揺らし、駆けてきている。
場は燦燦とした陽気が取り残されるほどに……混沌を極めふかめていく。
★☆★
休日。
今日の日亜国はお休み、花見の日ですか。
家族団らんで花をいっしょに愛でるのもいいですが、こんなありがたい休日の朝はテラス席でフレンチトーストを食べましょう。
ええ。はい。フレンチトーストです。
そして小説を、あのバケツのサイクロプス戦の熱を今書き起こすときです。
昨日からうずうずと焦らし、もんもんすやすやと寝かせた甲斐があるものですね。
この予感…すらすらと筆が進みます。
ふっれんっちとーふほをふふみまひゅ
んーーー、おいしいぃい。
☆★☆
黒髪をクラウンブレイドにしてまとめたその女性は、喫茶店のフレンチトーストを食べる。フレンチトーストをコーヒーで流し込む。凛とした姿勢雰囲気でフォークとナイフをあつかう。
休日のテラス席で晴天の下、栃木緑蜜の雄大な緑山々の景色を正面に、そのままこのシーンを切手にでもできそうなくらいとても絵になる。
そんな贅沢な風景の最中で、一口甘い栄養補給を終えてまた書きだす。ノートパソコンのキーを小気味よくブラインドタッチで弾いていく。
彼女の物語は彼女の中にあり、そうしている間はとてもしあわせで疲れもしらないところである。今一度、あのバケツのサイクロプスと夢想し戦う彼女は、煌びやかな衣装を身に纏い美しい戦士となり──白熱集中。
そうして彼女の熱にコーヒーも冷めていく間に、町内放送がながれる。時刻は午前10時ちょうど、独特のすこし聞き取りづらい音声が風にながれてくる。このおだやかな町の情報を耳に集めるのにも、この場は適していて無駄がないのだ。
『ぼんどせれくしょん金賞受賞~緑蜜ボンド』
「いいことです」
『全国小学生絵画コンクール最優秀作品賞受賞~ますこだいき」
「ならべるにはすごすぎます」
『春をおいこせ夏ちゃんゼリーぃ~ 緑蜜道の駅新店【クレープグレープグループ】にて新発売~』
「なるほど春は追い越すものですか盲点でした。ゼリーは飲み干す? いや食べる? たべほす」
『シデンレーラぁおまえの正体をぜったいてきに知っている~。ダ~~~んじょん』
〝カタッ ガタッ〟
パソコンは勢いよく閉じられ、心地の良い夢想から醒める。フォークとナイフがはしたなく白い食器に音を立てた。
いったん外したメガネレンズを拭いたが、耳に聞こえたふざけた文はきえない。
代金以上の紙幣を一枚、冷めたコーヒーカップの下に置き、彼女はいそぎ席を外した。
▼
▽
『ちょうど牛頭梢も着たところだここにダンジョン部がひぃふぅみぃ……さっそく全員で雷夏ちゃん先生とチャンバラだ!!!』
おかしい……。生徒たちに対して、真剣にかつお茶目も含むそんな表情で、手持つ真剣を現在向けている先生がいた。彼女は確かにそう言ったのだ。
そして────
剣は宙をくるくると舞い、砂浜に突き刺さる。すごく軽い、痺れる透明な柄を構えた黒髪の美少女は、汗をだらりと垂らし……その場にフリーズする。やがて竦んだ両膝をがっくりと、地に下ろした。
どうにも当たらないバズーカを撃ち込んでいた灰色髪の新参生徒は、事前にヤドカリのこんちゃんと作っていた自作の白旗を掲げた。ひらひらとそれが海風になびく。「抵抗の意思はない、だから蹴らないでほしい」と、真っ白な色でアピールする。
腹筋を蹴られた──海都はやっと砂のついたその腰をあげていく。数十メートルは飛ばされていた……自身の背中が引いていたという砂跡を見て、かなりの苦笑いを浮かべた。
そしていつの間にやら、こちらに手を差し伸べ、元気に笑う赤目が近い。海都は手汗が滲んだ砂付きの右手で、その雷夏先生のやさしさを掴み従った。
「なるほどなるほど、うんうんっ。ダメダメだな♡」
「ちょっとぉぉ……無茶でしょ……ほんとにこれで手加減したの?」
「らくてんかいとめっちゃハジケる、ごずこずえ白旗間に合う」
「あのぉせんせい……なななんでこんなことを?(めちゃくちゃハラ痛いんすけど……)」
「なななんでぇ♡? どうした負けた途端にそれかぁ? さっきまでアレだけ3人で雷夏ちゃんをぼこぼこにレイプすると意気込んでいたじゃないか♡!」
((それは負かさないとダンジョンにいどむって言われたからじゃ……レイプ言ってない))
雷夏先生をこの真剣チャンバラの勝負において負かせなければ、これからダンジョン部は鼠や巨人モンスターのうじゃうじゃとひしめくダンジョンに挑む予定である。しかし、「先生は絶対的に生徒たちに対し手加減をし、生徒たちは夏ちゃん先生の額に鉛玉をぶち込もうが、刀で腹を斬り裂こうが、一向に構わない全力で来るがいい!」そんな……生徒たち側が圧倒的に有利な条件のもとに行われた真剣勝負であった。
が、結果は散々。
生徒たち3人も3人ならばとわりかし勝つ気は満々であったようだが、現実は雷夏先生が赤子の手を次々とひねるような一方的にも見える試合展開であった。
「なっちゃん大人気ない、全然当たらない、ちょっこしむりげー」
「ははははは、当てようとする意思と殺気は大いに感じ取れたが。まだまだだな! 牛頭ちゃん梢ちゃん♡しかしのしかしだ! ツッキーもガンばかりを撃って逃げるのはダメだぞ。使える剣はしっかり握らないとダァメっ♡それとも先生との付き合いを焦らす作戦か何かかぁ??(おもわず剣ごと飛ばしてしまったぞ♡すまない♡)」
「はぁ……あんなのの相手なんて冗談でしょ。だからなんで私が前なの……──ねぇ楽天くん?」
「えっ!? いや、その、だだって月山さんはぁ……そうっ! かなり運動神経がいいんで……!」
「はぁ?? なにそれ小学生みたいな理由?? そんな良くないしなにいってんの? はぁー?」
「そうだぞラクテンきゅん! しっかり狙って夏ちゃんを蜂の巣にしないから、ツッキーの万能なばーんっ♡も牛頭梢のドきゅーんなバズーカも随分無駄になっていた。その銃と金玉はお飾りかぁー? まったくぅ」
「ええ……いや先生をいきなり撃つなんてそんなの無理にきまって……」
「どっちの味方だ?」とでも言いたげな、ため息と白い目が誰かから向けられている。少したじろいだ楽天海都はその僅かな殺気に、股間を何故か抑えていた。
「ははは、まったく先生とダンジョンが大好きなのは分かるが八百長はなしだぞ、カイト生徒♡」
「いや、そういうわけじゃ……ほんとに撃とうと思ってもウ」
「手助けが必要かい?」
「てな、えっ!? シデン・レイラさん!?」
「おっ、来たなシデンレーラ。どういう風の吹き回しだ」
いつの間にか居た。ビーチチェアに寝転びトロピカルジュースを優雅に飲む、スタイルの良い脚をクロスしている。注目の視線がそこに集まり、サングラスをもったいぶるように外す。
おもむろに立ち上がり、白黒の三つ編みを夏のポニーテール仕様にしているシデン・レイラは部活ビーチへとその姿を現した。今日のファッションは自身の白黒の髪に合わせた白黒の交差するクロスホルタービキニを選択、首前で紐が交差したタイプのシンプルなデザインながら大人セクシーな水着姿である。
生徒皆はまさかの人物のクールな演出での再登場におどろき、雷夏は遅れてやってきた目的の人物をニヤニヤと見つめた。そして、シデン・レイラは一瞬目を細め、鋭い星色の眼光を依然にやつく赤目に対して飛ばし、おどけた口調でつづけた。
「どういうも何も獅子くんたちの住む異世界ガイアで最近よからぬ噂が広がっているようでね。ワタシの姉妹世界ガライアから、ここまでやってきたしだいだよ。カミナリナツ」
「おぉ、だれかしらないけど4人。これでかみなっちゃんせんせにかてるぅ、ちょっこし!」
「実力者きちゃったけど…これ、心強いじゃん。ふぅん、雷先生覚悟できてる?(てかこの灰色の子だれなの? おっぱい…)」
「うおおおおシデン・レイラさんがいれば先生に勝てますよ! ……あ」
またまずい台詞を勢いで吐いてしまった海都は、雷夏先生の表情を重いクビをきしませ動かし、引き攣るその顔でうかがう。
「フフフ、なにぃ!! なぁんて♡怒りはしないぞむしろ褒めてもいい。足りない力を経験値のある助っ人で補うのも立派な戦略だ! と、どこぞできいたことがある。はっはっはいいぞ、ならば全員まとめてこォい!」
先生は海都生徒にウインクし、砂浜に温め刺していた剣を取り、4人の顔をそれぞれなぞり口角をぐっと上げた。そして、例の白黒の人物の前でその切先は止まる。
「ふふふワタシに勝てる気なのかい? 裏金を回して小田舎のお暇な町内放送のお爺ちゃんをメロメロにできても、シデン・レイラは端金では靡かないさ。カミナリナツ!」
「はっはっは、なんのことだかしらんなぁ? ちなみに金でなびくならいくらでも積むぞ夏ちゃんは! その腕、そのオーラ、まだまだ興味があるからなっ!」
「お断りだと言ったさカミナリナツ。だが今日は黙っちゃいられないね、花見もフレンチトーストもいちじお預けさ、ふふッ」
胸元にさし置いていたサングラスはかっこよく投げ捨てるもの。どこからか今出したトレードマークのマントを露出度のたかい水着の上に羽織った。そんなヤル気満々で応えたシデン・レイラは、向けられた剣に対して己の双銃を構えた。格好良く翻したマントの巻き上げた砂ぼこりで、後ろの生徒たちは、「ごほごほ」と咳き込み……。
それでも眼光鋭くばちばちと睨み合うのは、雷夏、シデン・レイラ両名。
果たしてこれから行うことになるであろう派手な催しは、4対1か……1対1か?
新たな人物を加え、より濃くなってきた闘いの予感に、うしろで緊張しただならぬ強者たちの姿を見つめる海都の汗がだらり…………一筋流れ滴り落ちた────。