雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
▼幻想黒海オーラ闘技場 黒ウツボの牢▼にて
特別巨大な黒貝は深き海底に縛られ鎮座する。
そのナカに広がる世界は悪の世界。
その秘密の異界の存在は罪を犯した悪に近しい者しか知ることはない。
今、鎖に繋がれた半分蛇のような存在は蛇尾をうねらせながら、牢の外にある小麦色の食べ物を見つめた。
それは手の届かない場所にあり、彼女が決して触れることさえできない。
「ククク、悪の種なぞ。噛み砕く欲望の名に過ぎん。我を縛るモノは我がいずれこの美しき牙でスベテ噛み切る、この閉ざされし海庭もしゃぶりがいがなくなってもぅたぞシロよ。フム──どれどれ、その前に、ダラケ浸かった愚か者どもとちょうどいい悪と牙の欠けた妹に一波踊らせてみるとするか。波にのまれて残ればよし、足りねば我が食い尽くし、黒海ウロボロシーを新生しまた我の領海へとし我を畏れ閉じ込めた天につづく貝どもの柱まで、喰らい味わうのも一興か。…異物か時のながれか──此度の味は悪くはない、クククククははははは」
牢の向こうの小麦色は忽然と消え、
彼女宛てに渡された黒のレターは塵となり海底の長穴から天へと舞い上がり、とけてゆく。
その高笑う声は外海へは響かない。
その身、その危険な思考は一片たりとも外を出ることを許されない。
厳重に閉じた巨体貝から震える黒いオーラが漏れ出ていく────────。
▼黒海A級閉間収容所▼にて
罪を犯した者たちの総称〝
いつもは勤勉なカサゴ顔の看守は魂が抜けたようにぼーっと立ち止まり動かない。
ぽっかりと開いた牢に、ぱっかりと開いた黒貝、そこから出てきた青髪の閉間は焦点の合わないカサゴ顔から鍵束を奪い取った。
まぬけな看守にあっかんべーと左目を見開かせ最後のご挨拶を済ませた青髪に、その青髪の女と同じようないかつい鼻ピアスをした黒髪の女はぼそぼそ声で語り掛けた。
「黒ウツボは? オーラをたどって解放しにいく?」
「ダメ!!! ほっときゃいいのよウニーク! 全部バンちゃんのものなのよ! シラナイ波がキてるの! 感じなさいよ…!ゾクゾクするキラキラがぁバンちゃんを呼んでるの! 余計なことをするな!!!」
「それでも随分とあの貝のナカのへんな世界にいた訳だけど、恩とかは」
「ナイナイナイナイ…ないっ!! こんなところドブ水よ!! バンちゃんに、バンちゃん海賊団には狭すぎる!! このバンちゃんがこんな磯臭いところで閉じこもっていたら肌も艶もカビてしまうじゃないの! ねちっこい声を聞いただけで反吐の出る!きもいウナギ女とはおさらばなのよ! 今度あったら口からさばいて東の島のサシミーにしてヤルわ!!! 会うことはないけどねーー!!! あはははははは一番波に乗ったバンちゃんの勝ちぃーー!!! べぇーーーーー!!!」
(やっぱりこのこ、もとからダメなのね。────つぎのお宝は頭にあうネジだといいね、バンちゃん)
バンちゃん海賊団はウニークをはじめ続々と仲間たちと合流し、舌を出しはしゃぐバンちゃんを先頭に黒海閉間収容所を元気と狂気とオーラを解放し……駆け抜けていった。
類は友を呼び、悪は悪を呼ぶ。
海賊だけではない突如内側から魂が抜けたように機能不全に陥った黒海から、閉じ込められ抑圧されていた悪どもの歓喜が渦巻き久方ぶりの海の冷たさへと流れ出ていく────────。
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▽▽▽
▼獲海 荒れ果てたサンゴ邸▼にて
倒した賊は捕縛用の貝の中へと最後にマジナイの鍵を設定し、ぴったりと殻を合わせて閉じ込めた。
「これで起きたとしてもしばらくは出られないはずです」
何気ない日常の最中、思いがけない突如の急襲に合うも、サンゴと海都のふたりは賊の5人をそのオーラと技と武で返り討ちにすることに成功した。
「ふぅ…いったい何がどうなって…」
「ここの顔ぶれではありません。中には私が連れ帰った顔もありました」
「連れ帰った…それってぇ」
「とにかく私は娯闘海へいきます。買った個人的なちいさな恨みより、ちょうど今は貝柱カップの最中騒ぎにまぎれ狙われやすい可能性があります。敵の規模は分かりませんがすぐに鎮圧する必要があるでしょう」
「えっと俺は!」
「ここは私に用がある敵が来る可能性がありますですのであちらの海流に乗り、そのまま王海に行けばウツボ姫様がいる限り絶対に安全です」
「えっとじゃなくて! それより俺も行きます! 娯闘海! これぐらいならな、なんとか俺でもヤレそうですし! それにCGG、俺、店の方も気になりますし!」
「────うん。では話すより急ぎます!! 遅れれば置いていきます!! 仕事ですので!!」
「ハイっ!!!」
迷っている暇は1分たりともいらない。
2人はそれ以上の話をやめて、荒れたマイホームから娯闘海へつづく海流へと走り泳ぎ向かった。
今度は繋ぐやさしい彼女の手はない、海都は急ぎスピードを上げるサンゴの背を共に泳ぎ追っていく────。
▼
▽
星が飛んでいる。鉄の星が回転しながら襲い飛んできた。
走っていた真横、店の影から不意に現れた鋭く回転する鉄星を海都は白盾で咄嗟に受け止めた。
海都が盾でガードし宙へと弾かれ空中姿勢制御の乱れたところを、サンゴは素速く連携し手持ちの槍を突き刺してさらに鉄星のナカをオーラの泡でぶくぶく肥やし満たして、その機能を狂わせ停止させた。
「うわっ!? ──こ、これは……」
「HITORIDEですね」
「ひとりで?」
「黒海を見張る自動防衛システムです」
「黒海ってたしか近付くなって言ってた刑務所的なヤツですよね?? そのシステムがなんで俺たちを襲って!?」
「詳細は分かりませんが、噂によるとオーラを補充して動いているシステムです。既に施されていたマジナイをとき、オーラを塗り替え乗っ取ったところでしょう」
「オーラを塗り替え…それってウツボ姫さんの言ってたような…ことか!」
「そういうことです。そしてこれはただの場を混乱させる時間稼ぎ要員その証拠に砲門があるにもかかわらず単純にぶつかる攻撃行動しかしてきていません。目的はおそらく貝柱の────やはりあちらにオーラが密に集っています進路の出てきた敵を潰しつつ急ぎましょう!」
「ハイ! あ!えっとお客様とかは!?」
「貝間は殻にこもれば自分の身を堅く守ることができます、さっきの賊にした応急処置と同じようなことです個々のマジナイで戸締りすれば心配ありません! 今は!」
「な、なるほど!! わかりました!!」
正体不明の悪意は徐々に姿を現し、荒れた流れに逃げず逆らい向かうふたりを阻もうとする。
サンゴと海都は操作精度の甘い鉄星を砕きながら開戦海鮮街道を急ぐ。
既に残骸が浮かび、砂に汚れた視界がただよう道を2人で協力しながら急ぐ。
オーラと熱気、嫌な予感の集う娯闘海で1番目立つ巨大建造物を目指して────。