雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
灼けた砂にせわしない足跡が重なる。打ち寄せる波風よりも激しく荒れ始めた戦場で、戦いのボルテージは偽物の太陽の光に背を押され熱くなっていき、敵を討つため、今、秘めた思惑と技が煌めく。
「フフ、慣れたか! 週刊ジャイアント、アニメ漫画の主人公みたいにッ!」
「アニメじゃないッ! 漫画じゃないッ! 慣れるわけないでしょっ【テクニカルスピン】!」
「うおっ──」
相変わらず力強く元気な玄人の剣と、汗水垂らしタイミングを測るビギナーの剣はぶつかった。合わせた刃に生成した白い【凸オーラブロック】は火花を散らし、回転しながら接した青赤の強固な敵ブロックをいなすよう、戦況を瞬間で変えてしまう。
戦闘前にシデン・レイラからたまわった助言は「立ち向かい決して立ち向かわない」。月山は打ち合いながらその意味に気付いた。剣と剣がぶつかれば、敵のその身に当てれなくとも使い道はあることに。
万能ブロックを反時計回りに90度回転させて相手の剣撃をいなす。そして右側を難なく取れた、さっきまでの邪悪な笑みが失せ、面を喰らっている横顔が月山の視界に映る。ここまで来たら迷う必要はない、月山雨楽楽は隙を見せた雷夏に噛みついた。
しかし、雷夏は左真横から来る若い剣筋を、左手に握る剣を持ち替え受け止めてしまう。不利な体勢から信じられない膂力とスピードを見せ、大人気なくこの刹那のやり取りに押し勝った。
完全に意表を突き一本取ったタイミングだった、だがこれをやってのけるのが雷夏。慢心はしていない……この敵に対してそんな余裕はないと本能と経験でまだ若い彼女にも分かるのだ。無情にもここでも味わうは純然たる力量の差、月山はそのまま必死に振り下ろした剣を弾かれ、吹き飛ばされた。
「先生撃ちます! 【熱熱(以下略)】!」
「また『撃ちます』と言って撃つのかははは、…いいね! なんだッ──それは!」
熱々な技が飛んでいく。クラスメイトの月山が必死で作り出した隙を、今度は逃さない。しっかりとハンドガンを両手に握り、以前まで迷いのあったトリガーは迷いなく引かれる。
楽天海都は堂々と「雷夏先生を撃つ!」と宣言したのだ。
みんなの緑蜜ダンジョン部顧問、みんなの雷夏ちゃん先生として、男子生徒の熱い誘いを避けるのは絶対的に野暮。ブドウ弾から花開き展開されていく赤い円形クレープ、今放たれた熱意と真剣の産物のそれを、雷電のオーラを纏わせた剣でぶった斬った。
真っ二つに破られ左右に熱と熱は分かれていく。切り分けられた雷夏が注文していないクレープ技の残骸は、風に勇ましく揺れる青い髪を追い越していき当たらなかった。
しかし、失敗したアタックそれさえも3人はバトンリレーのように繋いでいく。それこそが3人である強み。敵の見せる隙から隙へと、際限なくアタックするのだ。またもどこからか放たれた援護バズーカの殺意を、雷夏は身のこなしで避け──
「また噛み付くかツッキー! ん、速くなった? はっはっは、戦いの中で急に成長に次ぐ成長か。漫画カァァァ主人公!!」
「当然ッ、一回でちょっとやそっとで勝てないでしょ! 1回1回じゃなく、10回!そこそこで負けて11回目!!全力で勝てばいいからァ! これで文句なし! ほんのちょっと漫画じゃん!でもいいでしょーー【スピード……アップ!!!】」
全てはこの瞬間のために。身を削りながら【Sショット】を自身に打ち込み、スピードを極限までアップ。息を吹き返した月山は将棋の香車の駒のように、得た勢いで真っ直ぐシンプルな剣筋で青髪に突進した。
その凄まじい刃と気迫を当然、真正面から受け止めるも、勢いあまって砂地を「ずざざざ」と派手に荒らし滑っていく雷夏。狡猾にもあえてこれまでの10戦で見せなかったDスキルチップの使い方を披露し、黒髪をヘアゴムでポニーテールに纏め、ギアを上げた美少女は敵である青髪の踏ん張る足ごとを砂地に引きずり圧倒する。
「はははそれは盲点だぁ、夏ちゃん盲点だぁ!!! そういうのもありだったんだなダンジョン部! いいぞいいぞぉ♡」
「ツッキ…じゃなく月山さん撃ちます! 【巻く膜(以下略!)】!」
「だからイチイチ言っちゃダメでしょ! でもこれでさながら【ハイパーモテギャップ月山雨楽楽】っ、雷先生覚悟できてんのッぉ!」
戦いの中で次々とエメラルド水着の美少女は変貌を遂げ、ギャップは作られた。格段に戦闘力とスピード、それだけでなく内に秘めていたテンションを上げ、煌めくオーラの力を解き放った。
幾度も打ち合っていく。何合も。剣と剣は火花と青となないろのオーラを散らし、歯を食いしばり、艶肌にためていた汗を飛ばし、強敵というものに、いざ挑む。
歯を食いしばりあい、必死な女子生徒の汗を浴び、強敵は笑う。
「硬さにスピード万全でハイパーというわけか! はっはっは、いいね!──じゃあ【ハイパーモテ夏ちゃん】」
海都の援護射撃で失ったシールドを回復さらにシールドを強化。背にさしたS字ブロックは月山生徒の翼となり海風を纏いスピード全開。
しかしそんな彼女に対抗してまた1段階ギアをあげる。この女教師はもったいぶらない。生徒の本気に見合う力を解放した。
雷夏が栃木、
打ち合い、打ち合い、また大いに打ち合い。月山雨楽楽の若い剣術、その軌道剣筋を全て、なんとなんと叩き返し盛り返した。
赤目を見開きニッと笑う。勢い増す電光石火の狂気を受け止めるには荷が重い……。高校1年女子はこの馬鹿げた底の知れないチャンバラには、さすがにこれ以上酷くなるようなら付き合ってはいられない。
月山雨楽楽はそこそこに賢い、11回も試合すればわかる。予感はしていた、きっとこのモードでもこの獣には遠く敵わない……。そして、「ここだ!」と決断した。
「やはり盛り上がるのは師弟対決だな! 絶対的にバチバチとくるぞっ!」
「冗談はゼッタイ冗談! 【冗談はテクニカルスピン】!」
「またそれか! おもしろいが、そればかりでは手羽先の小手さk…ナニ!?」
雷夏の振りかぶった剣を受けとめる素振りは月山雨楽楽のフェイント。握る剣を消費し、引き換えに、凸オーラブロックへと変換した。その場から地を滑り回転、回転、のこりスベテのオーラ量を込めた大回転。戦場ビーチに今までありもしなかった規模の砂嵐を起こした。
雷夏に剣を持たないかよわい生徒は斬れない。
強引に迫られた択はひとつのみ、肉体の全レスポンス、全力をもってして、寸止めせざるを得ない。
激しい動きをピタリと止める力とは、激しく動きつづけるよりも易くない、それは当たり前のことだ。
青い瞳は不敵に笑う。あの狂ったぐらい元気な雷夏が苦笑いを見せる程に────。凸オーラブロックがスピンし巻き起こす砂嵐は雷夏をそのまま吞み込んでいった。
「これでやったのか……?」そんなことを思っているものはこの場にはいない。ここは部室ダンジョン、オーラの魔法砂嵐にその身を削られようとも、
────視界は明けていく。
健在する青髪は、剣をその場に突き刺し杖代わり。一歩も動かず生徒の全力をスベテ飲み干した。
されどまだ視界を彩る砂埃は少々厄介、ひらかれていくあのギラつく赤目。やはりこれだけではダンジョン生まれの雷夏を倒すことはできない。
〝これだけでは〟
「しらぬぞんぜぬツッキーのことちょっこしもっちょり、LOVE、【牛頭ーカパーティー】」
本命は、灰色バズーカ娘。
高校生1年パーティーの立てた最後の作戦は決行された。
オーラを込めたあちこちに撒いていったバズーカチップは宙を浮き花開き起動。
灰色のオーラそれは未知であり、何の因果か牛頭梢に与えられたただならぬ支配のオーラである。
戦いながらひとり悠々と十分に寝かして練られた、その力のほんの一端を今解き放つ。
遥か天から垂れ下がる──常人にはみえない灰色の糸に操り人形のように吊るされた…バズーカチップ。その砲口はスベテ、雷夏先生だけを開き見つめている。
「フフフ…………これはとんだパーティーに迷い込んだにちがいない!!!」
【牛頭梢主催牛頭ーカパーティー】
数多の砲弾は青い一点を目指し飛んでいった。咲き誇る灰色爆炎の花が、必死な足跡だらけのビーチを焦がしていく。
▼
▽
咲き乱れた灰色の花の中に────いつまでも咲き誇る青い花がある。いかずちを放つ花は、二刀の剣をついに散らしそれは海風にさらさらと流れていった。向けられたチャンバラの範疇におさまらない、ただならぬ殺気すらも彼女には心地よい熱い雨。
その赤瞳は生徒たち3人の方を見つめる。見慣れた白旗はぱたぱたと今靡き、それを見て先生は腰に手を当て大袈裟な高笑いをした。
これまで雷夏とのチャンバラあわせて11戦。11戦目に全てを懸けて挑んだものの、結果、すべてに敗北した。そんな生徒3人は大量の汗と苦笑いを浮かべるしかなかった。
結局、緑蜜ダンジョン部顧問の雷夏ちゃん先生はとても強かった。
「はぁ強すぎるんだけど……手加減ってなんだったのぉー……(条約無視じゃん条約)」
「ぜぇはぁぜぇはぁ…………ちょっこしむりげー……でぇす」
「──ぶわっ!? ちょ牛頭さんだいじょぶすか??」
「ちょっこし抱っこ、らくてんかいと…」
「え、え、そ、そうか! お、おっけーっすスイカテントまでェ運びます!」
「ちょっとぉ! ナニやってんの! 酔わせた女子をあのやらしさ全開の東京テントに連れ込む気?」
「ええ!? ややらしい…? いやいやそんなつもりは……えぇ(東京テントってなに…)」
敗北を喫した感想もほどほどに、ふたりは先ほど力を出し尽くした牛頭梢の巨体をスイカテントまで手を貸し運んでいった。
そんな彼ら生徒を見つめる瞳がもう1人。
意味のない恰好だけのサングラスは既にかけていない。必要のなくなったマントはビーチに突き刺した槍に結んで日除け代わりの屋根にしていた。
(月山雨楽楽はテトラマーズ、なつかしのテトマズですか……。前代未聞のことですが万能色である自分の能力を知らず分かりやすいゲームルールのようにしたのは幸いです。結果、戦いの中で自身の強みを理解しつつ成長しています。動きの筋も悪くはない。技スキルもひとつひとつ個性立てて無駄がないもの、組み合わせてこうするんだという彼女のビジョンと意図がはっきりと分かりますね)
(楽天海都は少々やさしすぎるところがあり心配ですが逆に従順ともいえますが……もうどうにも雷夏に依存しすぎな気が……まぁ少し滑稽な荒療治となりましたがいいでしょう。あと武器をハンドガンに絞ったのは良い事です。射撃センスもそこそここのまま目の前の手本を真似すればまだまだ成長するでしょう。それに世にも希少な回復オーラ色なので無理して前に出る必要は…きっとありません、ね?)
(そしてこの牛頭梢、今回雷夏には通用しませんでしたがとても非凡な…いえド級なセンスの持ち主……。チップを複数枚同時に遠隔で糸吊りのように操るのは並大抵のことではありません。既に遠隔で操れると聞いたときは驚きましたが、オーラの操作に余程優れているようです。それに……彼女のオーラ色も気になるところです)
(そして……雷夏、また腕を上げているようですが……。なんとも滅茶苦茶しますね、生徒相手にここまで全力で返答するとは……ただの負けず嫌いな気もしますが……。結果としては、あまり認めたくはありませんがダンジョンのビギナー同然だった生徒たちにとって、この1戦、いえ11戦が、いい経験になったのは間違いないでしょう)
両者バチバチと睨み合っていた2回戦開始前。空気を察して、雷夏が彼女シデン・レイラをここに呼んだ意図を深く読み察して……。狙いをつけていた双銃をやんわりと気の抜ける溜め息とともにさげ、マントを再び翻し退いた。
それ以上のプロレスにはブック通り付き合わず、ダンジョン部の生徒たちに雷夏を倒すための戦い方とダンジョン探索者としての基礎力を伝授する指南役へとついた。
そしてかれこれようやく与えられた役目を全うしたシデン・レイラは集中観戦で渇いた喉に、トロピカルジュースを流し込もうと思ったが、既に空の味であった。
突き刺さるストローが2本、じゅーーーっと飲み干しながらこちらを笑う赤目のおちゃめな女が近い。
「ぢゅーーーちゅっ──。よし、待たせたなヤろうか!(うまいなこれ? なにあじ?)」
「…ふふふ、いらないねそんなの(ブルーベリーチョコホイップ味)」
11戦目明けの雷夏はまだまだ12戦目もヤル気満々。何も伝わってはいなかったようだ。
11戦目にて温存していたオーラ量を使い過ぎた牛頭梢に2人は肩を貸し、スイカテントまで運び込んだ。
狭いテント内の影に寝かせた色々と汗ばみ艶かしい……色々とスケールの大きい、黄色いビキニ姿の若肌がいる。
そんな横たわる姿とどうしても目のいく黄色い双丘を見つめる男子の腹を肘で小突いた。見るからにやらしい色合いの東京テント内に連れ込まれたら危険、そんな知識をどこからか輸入していた月山雨楽楽は彼に釘を刺した。
「えっちなことしないでよね」
「ええ? いやそんなつもりじゃ……」
「おぉ、べつにいいよちょっこし補給してくぅ? らくてんかいと?」
「ちょっとぉ11戦もやって1発も食らってないでしょ灰色っあんた!(すぐなぞの白旗上げるし)」
「おぉ、バレたツッキン? ノーダメだけど脳はダメあははぁ」
「はぁ? ツッキンってだれぇ?」
「あたしも灰色じゃないでぇすっ、なっちゃんいわく牛頭ちゃんもしくは梢ちゃん? もしくは牛頭梢フルでよばれることがおおい」
「はいはいこずえちゃんね。こずえ」
「おぉこずえかぁ、だいたい珍しいから牛頭さん、うっしー、ごずりん、だからそっちはちょっこし新鮮だぁツッキン」
「はぁ新鮮もなにもこんなのフツウじゃん。(それにここにいるのはたいがい珍しいとおもうけど私含め…ってごずりんってなに)──って楽天くん何見てんの? はやく男子は出てって東京テントから、ほらほら、分かってると思うけどここでほ…補給したらあの先生『さぁてシールド値もMAXになったことだしダンジョンいくーーっ♡』とか言い出すんだからねぇ! 私のことまたすぐボッ…して襲わないでよね! これはあえて回復しない策なんだからァ!」
「えぇ? あ、あぁなるほどっ! って俺月山さんを襲っては…」
「はぁ? ヤル気まんまんだったわけぇ?」
「いやいやちがちがまったくそんなわけでは!」
「マッタクそんなわけでは? はあぁ??」
「ええ、なんでぇ……(どうすりゃいいの…)」
「あははらくてんかいと、ちょっこし詰む」
「…………」
どう答えても月山雨楽楽に噛みつかれてしまう楽天海都はテント内に置いてあった飲み物だけ手に入れ、東京テントだと言い張る…雷夏先生がホームセンターで買ってきたスイカテントの中から出ていった。
追い出された男子はひとりとぼとぼと外をあてもなく歩いていると、
ヤドカリのこんちゃん、ヤドコンちゃん、がその自慢のコンセント貝殻に何やら大がかりな機器を接続している。
ピコピコと電子音が今耳に流れる、楽天海都は訳の分からない光景を目撃してしまった。
▼
▽
雷夏のしつこい誘いをどうにかのらりくらり
「
「ハァハァ、お熱いね! 【ルクラブ6】」
(こちらとてブランク明けですよ! 今の雷夏は最初に会った……彼女が中学生のときよりずっとつよい。先程の戦いで疲れているとはいえ、もう【ルクラブ3】では受けきれません。興味本位で引き受けるのではありませんでしたね……ひぃふぅみぃ…おもえば8歳差ですか…歳は考えるべきでした! しかし体調はこのところすこぶる悪くはありません!)
「あくまでその技にこだわるのかい?」
「フフ、どうもあなたには最初に覚えていた“これ”で過去の記憶ごと打ち勝ちたい! 絶対的にぃぃぃいい」
「ぐっまだ上がるのですねッこちらとてッこのたて【ルクラブ10】! ──────ッ」
栃木神牙流の時空剣技、時空を超えると言われる隠された秘伝をダンジョンで培い鍛えたオーラを用いて現実に引き起こす。雷オーラはより濃く荒々しく彼女の今の限界まで注がれ伝う、肉体のレスポンスを極限まで上げた。
そして【
【ルクラブ3】1枚では到底【ルクラブ6】2枚の盾でもその荒ぶる雷剣は6つ葉を焦がす。【ルクラブ10】剣撃を受け取り、溜まっていた幸運オーラを支払い、こちらも今の全力で雷夏の本気に答える。
華麗にされど釣られて不格好に咲き誇った10枚の葉と、荒々しい雷剣がぶつかり合う────────
砕け散った盾、
ミドリ葉が粉々キラキラと宙を舞い
そして刀は満足したのか──迸る青い熱が失せやっと砕け散った。
爆ぜた並々ならぬ雷の衝撃で、尻餅をついた────。殺陣としては格好のつかない幕切れに、シデン・レイラはおもむろにその腰を上げていく。
「ふっやるねカミナリナツ」
手を差し伸べる、大きく育った青髪の少女に。天を見上げる赤い目はシデン・レイラを向き、その手をとる────変わらぬ無邪気な笑みをみせた。
「あはははは、あぁ! ──引き分けだなっもう1ッ本」
「そうじゃないだろ…」
相変わらずの言動に…神妙な感じで挑もうとしていたシデン・レイラは気が抜け、つい苦笑いを浮かべた。やがてなんとなく手を離し、手を借りていた雷夏はぽすりと砂地に音を立てる。
『せんせいーーーーー』
そんな気の抜ける場面に突然、慌ただしい足音と青年の声がきこえてきた。何事だとチャンバラ明けの2人して振り返った。
「おっなんだ? 今いいとこなんだぞ」
「ふぅ…そんなにカニみたいに走って来てなにかい?(ふぅ…助かりました楽天海都)」
「はぁはぁ……──、や、ヤヤドカリが攻めてきて!!!」
「「ヤドカリ……? ヤドカリィィィ!??」」
息切らし膝つきながらも指し示す。青年がさした方向には──綺麗な青海を泳ぎ、色とりどりの貝殻が上陸してきている。もう既に何匹かのヤドカリのモンスターがこのビーチへと攻め込んできているのだ。
「ほんとだヤドカリ、あぁたしかガライアにも似たようなのがいたよ。そいつは港町の釣り人の釣り糸を切る常習犯でね。貝殻の特徴まで書いた指名手配をされていて、なおかつひとつひとつ個性的な貝殻をしているのでコレクター的需要があってね、討伐報酬がおいしいんだよ(…おもしろいですね、帰って聖タクにも取り入れましょうか?)」
「ふふふ。まーた宿を乗っ取るために嫌がらせに来たようだな。懲りない連中だがはははははまだまだハジケ──」
「あのぉー……ほんとに急いで! 先生、シデン・レイラさん!! まじ月山さんが」
クールに顎に手をやりヤドカリの進軍を見守る2人に、さすがにふざけている場合ではないと先生たちに助けを求めに使い走った海都は、どうでもいい雑談をさえぎり叫んだ。
『ちょっとおおおナニやってんの楽天くんん!!! はやく東京テントまで援軍んん!!! ちょっとおおおきゃっ痛ッ──なんなのこのヤドカリいいい強いし、なんで安全なダンジョンって言ってたのにこうなってんのよおおお! しかもなんでまた私が前ッ! こんのッ!! つっこむ貝殻は【テクニカルスピン】!!! ちょっと雷先生ッシデンレイラっはやくッ何やってんのよッッ楽天くんおっそいッッはやく私を守れえええええ』
スイカテントであり東京テントにて。すでに中でダウンした牛頭梢を守るべく、テントを背にヤドカリと交戦中である月山雨楽楽は、オーラブロックと迫るヤドカリを弾き飛ばしながら、必死にがなり叫んでいる。
「ええ!? 俺が前ムチャぁ…」
「私が無茶してんだから隣席の男子が無茶しないでどうすんのっ!! てかなんでしれっと私に無茶させてんのよッ」
前で剣を手渡され握らされる……。月山は後ろでハンドガンを握り、そのいまいちヤル気のない彼の背に狙いをつけている。振り返る海都はその背に汗を垂れ流しながらも、月山女子のために前を向くしかなかった。
「つ、月山さん俺剣使えないんすけど……!」
「はぁ? はぁあ?? そんなの私もじゃん、ほらいったいったヤドカリ来るよっ!(東京じゃ男子が前なんだからっ)」
「(どういうこと…)やるしかないのか……! うおおおおおおって先生! シデン・レイラさん腕組んで見てないできてくださぁああああいい!!! ってうおおおおヤドカリぃぃぃ来ンナァっ! 【熱熱クレープ(以下略!)】ってワザ出ないぃぃ!?? なななんでぇうおおおおおおおおお────────」
⬛︎
スベテのラヴはまた彼らのダンジョンへとつながる。
これはスイカテントまたの名をやらしい東京テントでの、女子生徒2人と男子生徒1人のいちゃいちゃが始まってしまったという……青春のダンジョンを進み分岐したふたつのルートのうちの一つ、名付けて【青春のラヴイベントB】である。
選んだ穴へと進み暗がりとモヤは明けていく────────
「東京じゃこっちがあこが…一般的なんだからァ!」
「えっと、は、ハイ…」
なぜこんなことになったのだろうか。赤い果肉を模したテント内で────海都は月山に正常位で挿入した。
じゅうぶんほぐし濡れた膣の中へと、既に準備万端であったペニスは入っていき、みちみちとした肉襞の期待感をゆっくりかきわける……。そのまま奥に奥に進み──ついに、すっぽりと海都のペニスは月山の膣内へと全て収まった。喘ぎ、息を継ぎながら、異物を全て受け入れた彼女は、ぎゅっと閉じていた目を開き、今、彼の顔を見た。
「ふぅ、んっ、んっはいって……る」
慣れぬモノを受け入れ──きつく締まる……。その美少女の秘部へのただならぬ挿入感で、恍惚とした表情の海都は余韻もほどほどに勝手に腰を振りはじめてしまった。
「月山しゃんぁああひもひぃはぁ月山さんっ!♡」
「ちょ、ちょと…痛ッっ────」
「あ!? え月山さんごめ……」
月山の苦しそうな声と引き攣った表情を見て、海都はハッと我に返り……無我夢中ではじめていた彼女へのピストンを止めた。
すこし息を整え余裕のできた月山は海都の顔を見つめて、なんと怒ってはいない。緊張でグーに握りしめていた手を解き、そのひらいた両手をふわりと、彼の方へと……
「いいからっ手…して」
「え? あ、はい。これでいいすか?」
彼女のしたいことを察した海都はその手をそっと握りしめた。互い違いに指が絡まり合わせっていく。それで安心したのか、少しさっきより和らいだ表情の彼女は言う。
「んっ、そのままさっきの…つづけて」
「は、ハイ…いきます」
月山はそう要望し海都はそれにすぐ返事をし応えた。止めていたピストンを再開した。今度は勝手な独りよがりではなく、彼女と一緒に彼女のことをもっともっとよく見て、つながり気持ちよく男女で交わり刺激しあっていく。
「ふぅー…んっなれてきたかも、あっあぁ♡ちょ♡っ──」
次第また勝手に速まっていく雄のピストンを受け入れる。まだ異物感のある自分の身体が愛液を分泌し、きゅっと膣壁を絞めながら彼のペニスを覚えはじめ、慣れはじめ、すこしずつ適応しようとしている。
両手を恋人のようにしっかりと繋ぎながら…それで緊張感が和らいだせいか、挿入して間もなくの時より気持ちのいい……ペニスによる刺激快楽を堪能できている。
エメラルドのフリル水着を着た青い瞳の美少女。まだまだ始まったばかりの学校生活でそれも隣の席のクラスメイトの女子に挿入し、セックスしている。
その目の前に寝転がる事実だけで、海都は大興奮してしまい頭がバカになってしまったようだ。腰の動きがさらに激しくなり月山の蜜壺をやらしい水音を立てて一生懸命に突いていく。月山もその雄々しい動きを受け入れ喘ぐばかりで余裕はない。海都の手を握る力がまた強くなり、思考が身体の内側からピンク色へ染まっていく。
「ハァハァ月山しゃんもうひもちすぎてでちゃいッ──え? 月山さん!? あああっ♡」
「東京の子はみんなコレしてるんだから! っん♡♡♡ああァッ♡♡♡♡」
「ああぁもうでるでちゃいますってああああああ♡」
寸前で本能にあらがい腰を引こうとしたが、引く腰をホールドされて引けない。そして限界を迎えた楽天海都は月山雨楽楽の膣内深くへとそのまま射精してしまった。
開いていた脚を彼の身体にからめて手を彼の手にからめて……ゼンブが絡まりあって、滅茶苦茶になっていく。彼とより一体となる。気持ちいい、よりこうした方が気持ちいい。とめどなく打ち寄せる快感多幸感の波に脳天まで打たれていく。
涙を両目にためた、いっぱいいっぱいで苦しくて、それでいて恍惚の顔がある。そんな表情をしていた美少女月山は、自分をはじめて満たした彼の、その顔を見つめながら……。その手をぎゅっと、いつまでも離さないでいた────────。
(やばいこれぇ、一生ハイスコアかもぉ……)
月山雨楽楽は…彼とのセックスの想像を超えた地球が裏返るような……あまりの刺激快楽と幸せが交錯し、そのまま目を閉じダウンした。
『ねぇらくてんかいと、らくてんかいと。わたしもあの体勢がいい』
『はぁはぁ……──え?』
▼
▽
なにか声を聞いて目が覚める。
鳥のさえずりのようにもおもえたがそうではなかった。
もっとエロティックなかんじの……女と男の声だ。
補給行為後のダウンから目覚めた月山雨楽楽は目撃した。
牛頭梢と正常位で交わる彼の姿を。
「え、ちょとなにやってんの……え? はぁ……?」
「おはよツッキンここからは牛頭梢…ちがた。こずえのターン、らくてんかいとちょっこしお借り、んっ♡」
「って、手ェ……!? そ、それ私と同じやつぅぅ!」
「ん、栃木女子のあこがれ♡あっこれねっちゃりいいかもぉ♡」
「ちょっとぉおお…ちょっとおおおお東京ホールドまで!」
「あぁ牛頭しゃんもうっ♡でちゃうぅ!!!」
「いいよんっんきて♡らくてんかいと♡らくてんかいと♡んっんっ♡」
「私のハイスコアなんだけど……さ、さいあく…」
一生に一度のオリジナルの体験をそっくりそのままコピー。手を絡め足を絡め真似されてしまった……しかもおまけに名前を呼びあっている……。なんともいえないセックスの傍観者、月山雨楽楽は溜息を吐きながら、イラついた気晴らしにそのありえない模様をスマホで撮影していくのであった。
このじかんはなんなのだろう……彼との行為後のこずえがノリよくカメラ目線で息切らしピースをしている……。『はぁ? ちっ』かるく舌打ちをしながら、彼の気持ちよさそうな表情にフォーカスする。
用途通りにやらしい行為が行われていたスイカテント内は、なぜか少しもやもやと曇り模様であったが……。
後に、牛頭梢がこっちょり撮影したらしき月山と海都との性行為の始終を収めた「記念モノ」があると耳打ちされ、判明。今更敵ににぎる握手はないが、そんな弱みのブロックを握られたままではいい気はしない。一刻も早く自分のスマホの元へと
⬛︎
後から見物していた2人の大人も加わり、懲りずに現れたヤドカリの群れをキレイに平らげていった。手厚く守られていたスイカテントの入り口から顔だけひょっこり出し、片付いた光景にサムズアップした灰色髪。
怪訝な表情で、むっと、月山は牛頭を見返す。
そして続々と同じ近場のホームセンターで買い揃えた水着姿の役者たちは集結していく。
ずけずけと近付いてきた青髪赤目に対し向き合い、「ざくり」……月山生徒は砂浜に剣を突き刺し立てて威嚇した。しかしその青髪も同じように得物を突き立て向かい合い笑っている。
かつては「エメラルドマーメイドのララナツ」という架空の設定の姉妹として仲良く活動、チャンバラで剣と剣を打ち合うまで密であったものの、今はその高みからニヤつく姉役の笑みが冗談きついものである。
ポニーテールにしたうなじのじっとりとした汗を右手で拭っていき、灼かれ地味にヒリつく肌の痛みに嫌気がさす。月山は深く長く吐くため息から……なかなか助けに来なかった元姉役に対し、抱いていた不満のほどを淡々と述べていく。
「はぁ…はぁぁ……つかれた……ちょっと雷先生死にかけたんだけどナニしてくれてんの? はぁ?」
「んや? 良いうごき良いバトルだったぞツッキー! ヤドカリがスピンして仲間につぎつぎぶつかっていくのは、おもしろいじゃないか!(アレもテトマズか?)」
「んや? じゃないんだけど…ゼンゼンうれしくないしちょっともおもしろくないし(アレはきっとバルカンノイドでしょ、東京で2番目に流行ってる)それで、結局また私が前なんだけど。──ねぇ楽天くん?」
「い、いや、だってぇやっぱり……俺の剣じゃヤドカリにまじでまったく攻撃通らないんで。3回へし折られましたし…無理かと……」
「はぁ? あのときネズミのゲロビ防いだ盾は? かっこ…援護防御はッなんだったわけぇ? はぁあ? なんで私の後ろでちょこちょこちょこまか撃って隠れてんのよ、さいあく」
「いやアレはラッキー武器で手元にはもうないからぁ(ゲロビってなに…)……あっ! そんなことよりそうだ!」
「そんなことじゃないんだけど、ねぇ?」
「いやいや月山さんちがくて!! それよりッ」
噛み付く狂犬と化した月山の牙をなんとか苦笑いでなだめて抑え込み、楽天海都は先生に報告すべきあの不可解な光景のことを思い出し、それを慌てた口調で伝えていく。
「先生、俺見たんすよあのコンセントのいっぱいあるヤドカリがなんか変な見たことのないッアンテナの通信機器に接続して! 絶対アレ怪しくてッ敵のヤドカリモンスターを呼ん…」
青年は必死な形相で伝えていったが……両腕を組みながら生徒の話を聞き入っていた雷夏は、途中、その首をこてっと傾げる。
「はぁ? ふむふむなんだと? ──ナニいってる私のヤドコンちゃんがそんなことするわけないだろ? 絶対的にぃ」
「ん、わたしのこんちゃんはそんなことしないよらくてんかいと」
「そうだぞダンジョン部の仲間を疑うなんていくらカイトきゅんでもイケナイぞ♡」
次いでテントから表に出てきた牛頭梢も雷夏先生に同調する。ヤドコンちゃん、こんちゃんの名付けの親である2人は絶対的に疑ってはいない。既にコンセントだらけのイカした殻をしたヤドカリは良いペットであり、スマホの充電もできるダンジョン部の便利な仲間なのだ。そんな風に…海都との認識の相違によるただならぬ仲間補正がかかっていた。
「ええ!? いや俺ッッ見て! ほらっアレっ!!! アレで……」
「ん──なんだホットプレートか、はははカイト生徒の目にはアレがヘンな見たことのない通信機器に見えるかはは今日は相当お疲れだな♡」
「おぉあっ、焼きそば焼いてる。くんくん──ヤドカリ夏ちゃん焼きそばとほぼ同じ」
「たしかにこの匂い、この具材、ほぉ猫並みに物覚えがいいとはなさすが私のヤドコンちゃんだ!」
「ええ……そんなばかな……ええ猫並み? 猫とかヤドカリが焼きそばなわけ……」
ヤドカリはホットプレートのプラグを自身のご自慢の殻に接続し、トングを操り豪快にヤドカリ夏ちゃん焼きそばを焼いている。牡蠣と海老の入ったあの大いに夏の海を感じる焼きそばだ。
そして楽天海都がたしかに見たはずの機器はそこにはなく、遠くの砂浜で何か爆発音がしたような気がしたがそれもこの喧騒の中ではあやふやでたしかではない。
「なにやってんの楽天くん……。ヤドカリなんて殻で突進して剣でタイミングよく弾き返されてスピンするのが精一杯でしょ…(おなかすいたふぅん、これ変な甲殻類の汁入ってないよね?)」
「獅子くん、ヤドカリが通信機器をあやつることは常識的に考えればできるはずはないさ。せいぜい焼きそばを焼くのが手いっぱい、いやハサミいっぱいかい? ふふふ、どれどれワタシも出来上がり次第いただこうか。東の島ヒッポンのピッポングリフ祭りでもワタシは出店のハイハイエルフ族の親父がこれを焼いているのを見てねなんでも店名は1000年やきそばっていうらしく1000年焼いているのにちっとも上達せず味はイマイチらしいさ、だがなんでも食せば寿命が8年伸びるとかなんとかでも怪しいだろ? いくらエルフの中でも特に長寿種のハイハイエルフとはいえ踏ん張って700年生きるのがせいぜい逆に表裏のマジナイでこの1000年やきそばを
月山とシデン・レイラまで冷静さを欠いた様子の彼の言動はいまいち信じるには難しく。逆にヤドカリのなかなか応援したくなるようなぎこちない手つきで、焼きそばが焼かれていく珍光景を応援するように見物している。
もはやどこにも味方はいないのか。海都がごらんと開いた両手のアピールは吹く海風と濃く香ってきた焼きそばの匂いでなぜか虚しく……。
ついに「自分自身にそう思いたいバイアスがかかっていてそう見えただけなのではないか……」「暑さにやられてよからぬ幻覚でも覗いてしまったのではないか……」と、己のことを疑い出す始末に。やがて、ぐるぐるとあらぬ思考が巡りはじめた楽天海都は────それ以上考えるのをやめた。
ヤドカリは汗水垂らしながらソースを大量にぶちまけ必死で焼きそばを焼く。その光景が珍しく笑えるらしく、頭をからっぽにした海都も最後にはそれを見て笑っていた。
vs雷夏戦から部室ビーチのヤドカリ退治──
働き働きひじょうに空腹だった彼らは出来上がったヤドコンちゃんが作った焼きそばを食べた。具材をぶち込んでソースをぶちまけて焼く、たしかにその単純な料理工程はヤドカリにも可能であった。青海苔、鰹節、紅生姜、唐辛子、追いソースなど各々で微細調整すれば味の方も全く問題ない。夏ちゃんが作ったオリジナルのものと若干のクオリティの差はあれほぼ同じである。
そんな美味しい美味しい焼きそばを食べながら──悪いヤドカリモンスターが嫉妬し度々嫌がらせに来る程の澄んだ青い環境を見つめる。
緑蜜ダンジョン部は住まう
砂浜に残した足跡や焦げ跡は大人も子供も混ざり合い全力であそんだ証、波打ち際にキラキラとひかる綺麗なチップの数々は後で手分けして回収された。
青い海の彼方から来たるヤドカリモンスターを討伐後、ヤドコンちゃん作の焼きそばをダンジョン部の各々の胃袋におさめた。雷先生と途中飛び入り参戦したシデン・レイラの指導で今日一日だけでも色々な経験を得て吸収し成長した緑蜜ダンジョン部の生徒たち。
広々青々とした部室でのチャンバラバトルに、失ったシールド値の補給に…。さすがに今日という日は予期せぬイベントが盛りだくさんでご満腹、かつ疲労困憊の生徒たち。
顔も見知らぬ仲であった牛頭梢と月山雨楽楽は2人、ひみつのおしゃべりや愚痴をしながらいっしょに第イチ体育倉庫へと帰っていった。
続々と帰っていく、この部室ビーチには今3人。
お開きの雰囲気だったので自分もと帰ろうとした学生の背は、肩は────帰れないことを悟る。
のしかかりつかむ、その手に────────
其処で幾度も補給行為が繰り返されたからか、いつしか「やらしい東京テント」と揶揄されつつある赤い果肉のスイカテント。その内では既に、女性2人が若い男を強引に連れ込み……また襲われてはじまっていた。
「「ふーゥ」」
「あぁあぁああっ」
左右からなまぬるい吐息が彼の耳に同時に吹き込まれる。
「こら夏ちゃん先生が大好きって言え♡」
「獅子くん違うだろ? もうワタシにメロメロのはずさあんなにいっぱいキスしてきもちよくびゅーって出していたじゃないかい」
既に押し倒されていた海都は、なにか訳の分からない小競り合いに巻き込まれていた。
語り掛けられる、問いかけられる、「雷夏先生と聖タクのシデン・レイラ、果たしてそのどちらの方が好きであるか?」という問いに対する返答を意地悪にも求められるが、楽天海都が即座に答えられるはずもなく。
ただ2人のそのタイプの異なる魅惑的な声が、息遣いが、接近しすぎている。リアルで過激な情報の吐息が、彼の耳から彼の脳へと伝い充満する。
さらに、持て余していた手ですでに……勃つペニスをさすられ指先でやさしく意地悪される。雄の思考を霧散させ放棄させるような快楽のサンドウィッチに、どうしようもなく、喘ぐばかりである。
「ほら夏ちゃん側のほうがきもちいい。そうだなぁ夏ちゃん側が気持ちいいって素直に言えたらまたキスしてやるぞ、カイト生徒の大好きな夏ちゃんキスだ、たしか今日はまだ…だったな? フフフ」
「こっちの方がいいに決まっているさ。シデン・レイラの秘された房中術はまだまだあるというのにそっち側にいってしまうのかい? ナラ、ワタシもその残していたその唇をそろそろ奪ってあげようか? ふふふ」
ひとつしかない海都生徒の身体を勝手に分け合う、左の雷夏と右のシデン・レイラ。脚を左右から太腿に絡められ、その水着姿の2人の肢体から逃れられない。海都に自由と選択肢はなく、ただただ延々とつづく意思の強い女性2人のアソビに付き合わされてしまっている。
答えれば楽になれるかもしれない、遊ばれているだけ。だが彼が答えられないのを知っているかのように挟み込んでふたりイジワルをつづける。
すりすりとしていた手つきはいつしか変わり、指先でつつまれ手淫されていく。濡れていたのは全部天然のローション、海都が焦らされ続け興奮が膨らみ溜め込んでいた我慢汁、それを今纏いやらしい水音が立つほどに手淫は速まっていく。
左右からの念仏は相変わらずつづき。行為がエスカレートし激しくなっていく。密着した元気な青とおどけつづける白黒の水着美女たちの、左右から押し寄せ与えられる刺激にもう────彼は当然耐えられない────
答えられず。2人に耳をキスされながら、ちょうど最後をむかえた。
「「ちゅーぢゅーーー」」
「あああああああ♡♡だっ、…だっあっあああああああ♡♡♡♡」
我慢できるはずもなく左右からさいごのトリガーを吸われて吹き込まれ、楽天海都は射精した。
いきおいよく射精する。自身の鳩尾のくぼみまで届く程の大興奮の射精を。
吸い付き吸われる。なまあたたかな舌までスイングしうごく。長い長いふたりの激しい耳キスに与えられる淫らな情報は、海都の快楽フォルダのキャパシティをとうに越えた。
あたたかい吐息に湿り、
耳奥の迷走神経を突き入れる舌が直接刺激する、
あげくちんぽのように愛され吸われる両耳の器官に、
情報の処理が追い付かない。
唇よりもセックスよりも一番脳にクる…近い……無防備な耳のナカに快楽多幸感は渋滞し、じゅるじゅると分泌される唾液の音に染め上げられていく。
思考はまっピンクに染まりどうしようもない──ふたりがはなれていく────
「ぢゅるぢゅー~──っぱ…。ふぅフフフ、やっぱり夏ちゃん先生が絶対的にナンバーワンだなっ♡、ははははははまったくぅこんなところまでキスさせたがるなんて♡なんか桃みたいに甘かったぞ♡ぢゅー(ちゃんと洗ってるか?フフ)」
「ちゅぱっ──、んー。すごいトバしたねぇ獅子くん…ふふふ焦らすから思わず耳のナカまでエスカレートして印をしてしまったよ、これでもうこの右耳はシデン・レイラのものさ、ちゅっー♡」
「あぁ…………あっ、あっあああ────」
またふたりに、かっこいい雄らしい射精後のご褒美のキスをされる。ザーメンの代わりに漏れていく青年のあまい声がスイカテントにこもりひびいていった。
▼▼
▽▽
むわっとしたニオイがたちこめるテント内から解放感あふれる陽光へと────
無法地帯のダンジョン(部室)で補給行為兼ちょっとしたおアソビを終えた2人は外に出て、手を身体を天へと伸ばす。
おおきな欠伸をし、さらに吐いた息とともに下ろした両手。シデン・レイラより数歩先の砂浜を歩いた雷夏は振り返らず……腰に両手をえらそうにあて、目の前の海を見つめた。
「さァて、これからダンジョンに行かないかシデンレーラ。さっきの悪い方のヤドカリたちじゃ少し物足りないところだったろ。夏ちゃんはそこそこ満腹だが、ついていきたいというのならかまわないゾぉ?」
「相変わらずだねカミナリナツ。どうしてそこまで果てのまったくみえないダンジョンにこだわるのかい? 君たちの世界の【WASA】とよばれる冒険者ギルドでも穴から抜けられなくなるまえに、いや穴に飲まれる前に偉い学者たちの提言妄言をよく聞き、この青い殻に閉じこもったというのに」
「相変わらずナニを言っているかはよく知らんが…? 〝ダ~ンジョン〟だからな! WASAがぜんぶ窓を閉じていちゃ、風通しが悪いだろう?」
「──またピンチなってもただじゃ助けないよ。この表裏のオーラの死の予感も、キミがちかくにいると鳴りっぱなしで不便で困っているのさ? それこそ今ここで、死ばかりで宝のないダンジョンに鍵をかけてもいい。────もう一度問うよ、なぜキミはダンジョンにもぐるんだいカミナリナツ?」
「そんなこと────、ダンジョンは果てなくつよくなれる、そして目一杯このカラダでこのカタナで暴れられてたのしいからなっ!」
雷夏は振り返る。
そこに死の予感はない、あるのは赤くギラつく女と少女の瞳。とおい幻影が重ね合わさるほど、シデン・レイラが雷夏と出会った頃と変わらないモノであった。
レアチップであるダイヤのガンは、狙っていた青髪の背が振り返ってもなおも銃口を向け続ける。──やがてシデン・レイラはまたがらにもない意味のないことをしたと笑い、腰のホルダーに武器を収めようとしたが、水着の今は無い事に気付く。
おどけた態度で誤魔化しそのまま歩き、やがて彼女を追い越し──海をみてシデン・レイラは語りつづける。
「ふふなら報酬としてこの青いお宝をマルマルくれるというのなら、ワタシはそうだなっ…──前向きにかんがえてあげるよ」
「んや? はっはっは──それは無理だ、この部室ビーチは緑蜜高校ダンジョン部のものだからな! たとえ先輩風をふかしまくるシデンレーラでも渡さない。そうだっ逆に施設利用料金と焼きそば代をむしり取ろうと……ちょっうっど★思っていたところだ!」
「カミナリナツ、お忘れかい? ワタシはあの焼きそば…おかわり一回しかしてないさ」
「はっはっは────笑える。さて、私のおかわりはまだだぞ……?」
冗談を言い振り返ると、首筋をトントンと刀の棟でリズムよく打つ青髪赤目がいる。
その場で笑って終えるだけの冗談にしては、ただならぬヤル気を見せつけている。
笑いながらも内なる闘志が漏れ出でる……彼女の持つ青いオーラで可視化され漲っている様子だ。
オーラを秘めたままの冷静なシデン・レイラは、ぷらりとあそばせていた腕で、目先に置かれた問題の漲る青を見つめる。
「お熱いのはいいが、世間はまだまだ春吹くハルカゼ。冗談は……春のアイスクリームさっ!!!(一足お先ぃ!)」
レアと普通の双銃は雷夏の足元を連射し狙った。地に雨打つような弾丸は激しい砂埃を引き起こした──。一足早く、不意撃ちしたその間に、シデン・レイラは雷夏を、冗談の連射で煙に巻き去っていった。
(なるほどやはり彼女はこのようにッ──変わりませんね。もうかれこれ挑み続けて何年、モンスターか悪魔にでも取り憑かれているかと心配しましたが…挑む理由もまったく変わらず。15年前ダンジョン救出隊の一員として活動していましたが、この緑蜜で雷夏と出会い、奇しくも彼女を見守るという薄い理由で羽を休めながら勝手につづけていたのは私の方かもしれません。そして雷夏は緑蜜の跳び箱に結びつき秘されたダンジョンに挑むために、あのゆるゆるな校長のゆるゆるな試験を受け……教師になったのでしょう……私は違います、純粋真っ当に聖タクのつづきを書くための手段ですので、よりディープなネタさがしですのでぇッふふ────なぜかしつこく追ってきてますねぇッ! 大型犬を飼うとどのご家庭もこうなのでしょうかッ、ええっ!)
弾丸、雷、伸びる槍に砂浜を斬り裂くイチゲキ。ダイヤの弾丸に、雷をしのぐクラブの盾。
おおよそこの激しい光景はハメを外しがちの夏のビーチでも、ルールを超してはしゃぎすぎている。
始まってしまった少女のようにも思える大の大人たちの追いかけっこを、スイカテントから静かに現れた青年は……なんとも言えない表情で見つめていた────。