雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
『こちら海中闘技場決勝の洞、運よくブジな実況席より。客はなく、熱気はなく、異様。みんなどこへいったのか、釣りあげられることもなく…。うるせぇうるせぇシーフードどもが天からのミエナイ釣り糸にねこそぎ引き上げられたのか、はたはたはたまた気まぐれな渦潮にのまれたのか、取り囲む客席は現在小魚雑魚一匹なし、うるせぇイカすのが約一匹。寂しいのかサシミィのかシジミィのかしかし、護水内は決勝の洞第三戦のさかなしつれいさなか突如あらわれたイカれた乱入者たちにより今────』
魚が口を寄せ饒舌にかたる貝殻マイクは、突如いきおいよく砕け散り実況席のカゼカツは実況机の下に驚き泳ぎ隠れた。
赤色のオーラメガネをかけた銃士ガガーネットは遠方のうるさい喉を狙撃し潰し、ずれた頭のシャンプーハットを正し奇妙な男の顔で微笑った。痩せっぽちにキュートなソバカス、ゆえに彼でも彼女でもそれはガガーネットなのだ。
痩せっぽちの銃士ガガーネットにつづき太っちょのフンフンは右の平手を何倍も大きくし海を扇いだ。扇いだそれだけで危うい海流となり、纏わりつこうとしてきた貝間の戦士たちを壁石へと痛く吹き飛ばした。
海老を殻ごと食べながら栄養補給し歯を剥きだしに巨漢はワラう。右を太らせても左手首のミサンガは切れていない、ゆえにバンちゃんの言うように太っちょではないのだフンフンなのだ。
護水外に痛々しくはじきだされた戦士がまたひとり。
護水内で力なく倒れる戦士がまたひとり。
突如乱入した賊どもを掃除するために、入場の洞をくぐり己の出番関係なく乱入した選りすぐりの戦士たちも奴らの前では返り討ちの結末を迎え続けるだけであった。
実況もままならない闘いはつづくもののそんな様変わりした海中闘技場、闘いの舞台である護水内で。
周りの戦士があっけなくヤラれつづける中ひとり残ってしまった若き少女の戦士は、メンタマを剥きだしに話す青髪の女と口論になっていた。
「だからぁー、カサゴ顔をプレゼントしたのはあたしなの! こうやってこうやってぇ──ネ? あははははは」
倒れていたハゼ顔の戦士がおもむろに起き上がり、青髪の女に近づき泳ぎ握手する。ぐるんぐるんと魚目をあちこちに回しながら。
睨めっこも下手なハゼは平手打ちをくらい、バンちゃんの視界からはじかれ失せた。
「バンちゃんの仲間はおしゃれなテトラシティのフンフンポポーチガガーネットウニーク! オマエなんてしんない! 嘘をつくな! 嘘をついていいのはわたしだけなの!!!」
「えええウソじゃないのにぃー!! なんでなんでぇええ? 自分だけ嘘ついていいなんてりふじんっていうんだよ? おっかしいのー」
「いいのよ、バンちゃんだからァ!!! バンちゃんの嘘はキラキラしてるでしょその証拠に隣町のあの娘にも全然バレてないものそのこのパーティーにも呼ばれたりしてバンちゃんも街を優雅にキラキラ泳いでいた黄色いドレスでおめかししたんだからアハハッハアハ──汚い嘘つきは!!! 許さない!!! ガガーネット!!!」
「どぅえぇっ!? なんかボタンまちがえたぁ!? こうなったら──えいっ2コンさして、──アレ?」
「バンちゃんの仲間はバンちゃんのもの! わたしのガガーネットに汚いオーラで触るな泥棒黒猫!!」
ガガーネットのうなじに忍び寄ったオーラの配線は挿さる前に弾かれ失せた。その海賊たちの強固な繋がりを、細い線で盗み繋ぐことなどできない。バンちゃんが許すことはない。
「うっそぉーーーれじすとぉーー!!? これヤバピンっ──」
オーラメガネに映る間抜けな標的は既にロック済み。ロックオンのマークが少女のおでこに浮き出る。銃口から放たれた逃れようのない赤い弾丸が鎖に縛り上げられた少女を撃つ。
必中のトリガーを弾き、
やがてシャンプーハットがずりさがる。ずりさがるピンクの波打ち幕をあげて、ニヤつく細目に映るガガーネットの視界には────
白い貝。
その輝きは、固め放たれたオーラの銃弾をも飛沫と変えた。
必中の運命は間に挟んだ円い白貝にあたり、くだけて、防がれた。
危機を察し舞い降りた緑のブレザーが海に似つかわしくない黒猫フードの少女を庇い、守り動いた体だけをなんとか放たれた危機一発に間に合わせた。
唐突なワカメ色と白貝の登場に気を取られていると、さらに唐突な槍がバンちゃんの仲間突っ立つウニークを舞い降り襲う。
「浅い、はずした」
「あぶない、私か」
背を抉ろうとした鋭い槍の襲来に、そのまま背の大きめの瓢箪を手持ちながらウニークは振り返る。その回転をつけた大振りに、サンゴは勢い余って地に突き刺さった槍のしなりを利用して己の身をうまく跳ね避けた。
サンゴはすかさず、もう一度槍を起動して仕掛ける。
離れ突き刺さっていた槍はサンゴのオーラに呼応し砂を潜り、ひとりでに予想外の下からの攻撃をつづける。また執拗にウニークをターゲットにして────。
しかしそんな危険な海底から出でた槍は、バンちゃんの手にがっしりとその柄を掴まれた。
ウニークの胸元に突き刺さる前にオーラを纏いオーラで握りしめるバンちゃんの手指がその鋭利な穂先をそれ以上に進ませなかった。
「またバンちゃんのバンちゃんの仲間を!! ちょこまかつぎつぎうるさいっ! ウニークを襲ったこんなの要らない! 貫かれろ!! 自分が向けた槍でえええ!!!」
穢れたオーラで槍の制御を奪い、怒ったバンちゃんはサンゴへとすかさずお返しした。
勢いよく投げ捨てられた槍の穂先はお返しとばかりに避けようとするサンゴの胸に向きつづける。
「自分の槍の扱いはわかる」
オーラを泡にし近付いてきた鋭利な穂先を撫で上げる、泡で洗い流されて穢れたギザギザのオーラはこそぎ落ち、槍は元通りの主の元へと。
サンゴは腋の間を貫いた槍を華麗に回転させながら、再び地に降り立った。
「キラキラの泡がわたしのオーラをッっ、なんなのーー!!!」
「おじょうずってヤツだとおもう、バンちゃん」
「ええなになに!?? まいいや、ナイス援護防御おおおナイスグリーーンまんっあはははーーいまのいまのッッ心臓どってハネたーーあははははは」
「え援護防御ぐりーんま……ってそれより!なななんで闘技場のお客様がさっぱり…! この敵は…!?」
「賊…海賊! 黒海に収監されていたはずのA級閉間です…!」
「バンちゃんのバンちゃん海賊団の邪魔をするの!!! そんなの! おもしろくないヤツラ!!」
状況をのみこめない体だけ援護防御に入った海都は背の黒猫少女のはしゃぎ声に耳を傾けている場合でもなく狙いつづける痩せっぽち男の銃口を注視し、サンゴはウニークの手持つ瓢箪をチラ見しつつ水中に乱れ浮かぶ青髪の方を見る。
怒りオーラを増した今にも噛みつきそうな形相のバンちゃんに、右手をおおきく肥やしはじめたフンフン、バンちゃんのお腰にかけたウエストポーチのポポーチはワンと鳴き、ウニークは瓢箪の傷跡をそっと撫で上げた。
集う、悪と貝間と人間と。
続々と護水内に登場したサンゴと海都は個性ユニークなバンちゃん海賊団に対して、己の槍と盾を構えなおし今対峙する────観客のいない海中闘技場はより一層異様な雰囲気へとオーラとオーラが渦巻き変わっていった。