雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
泳いでは追いつく。水中護水内で槍と曲刀を交えながら、青髪黒髪ピンク髪のもつれ合う激しい攻防は続いていた。
「これ見よがしなアワアワと肌艶とピンク髪がなんだってのよ! しつこい!そんな顔してウニークに纏わるナ!!! ウニークもとろとろするナ!!!」
「はーい、バンちゃん。バンちゃんみたいにテキパキしてみる」
「バンちゃんみたいにできると思うな!!! バンちゃんはネっっ、バンちゃんなの!!! アハハアハ!!!」
「…!」
(やはり執拗にこの瓢箪持ちを守る。引きつけたはいい。しかしこの2人の放つオーラの力強さと静けさ…それに貝間でもないのにここまでの泳力を得ている……A級閉間…一体何を)
執拗にウニークを狙うことを試みたサンゴは目論見通りバンちゃんを含む2人を引き付けることに成功した。しかしバンちゃん海賊団の中でもオーラ量の特に高い2人に中々攻めを通せないサンゴはそれでも貝間である泳力のアドバンテージを活かし、トップスピードに乗った槍と中距離からの泡オーラの射出による多角からの鋭い攻めを継続していく。
そんなサンゴが狂悪と未知の海賊コンビを相手する一方で────
振りかぶった手が大きい気がする。
しかしそれは気のせいではなく、盾を構え海都を大きな影で覆った。
巨手が迫る、その構える白盾より何回りも大きい巨手が叩き潰さんと真下に打ち下ろされた。
小さな白貝をすっぽりと飲み込んだ巨手は──穴空きひどく痛がり風船のように萎みながら離れていく。
【策咲クレープグレープ弾】真剣に構える盾を知らずかフェイクにして、海都はそのトラップ技を迫る巨手に対して起動炸裂させた。敷かれた円形クレープフィールドから聖なる白槍が突き出し、守るべきを守り海都に敵対する者を貫いた。
しかし息と息の隙間を縫うように狙い撃つガガーネットのオーラ弾を、海都は必死に盾をし背の黒猫少女を守りつづける。
「これが生のゲームあははこうこうこうでこう、あははははじゃあこれにしよぉっカセットふぅー!」
緑ブレザーの背が頑張りと踏ん張りを見せるなか。突如上に飛び立った黒猫は前ポッケに息を吹き込んだカセットを差し込み、纏いを青鮫のパーカーへと変える。
ガガーネットは突如飛び上がった黒猫を反射的に撃つが、そこは既に猫の尻尾でもなくサメの鰭のうしろ。
それでも撃つ、狙い撃つ。弾丸が既にオーラメガネの効果でロックオンした彼女をしつこく追い続ける。青鮫のパーカーに着替えたのしげに泳ぐ彼女を赤い弾がぐねり進路を合わせ振り切れない魔弾、必中のマジナイとなり追い続ける。
しかしその鮫の舞に気を取られていたのか、スナイパーのしていたシャンプーハットは不意にずり下がり視界が塞がる、さらにあたふたするガガーネットに巻きついたオーラコードが足元をすくい、こかした。
急ぎ視界を覆うシャンプーハットの波打ち幕をあける、すると────
青鮫の少女が手を振っている。そして砂地を背にした銃士の男の臍に一気に泳ぎ突っ込んだ。
しかしダメージはそれほどない。鮫に食われるよりも全然痛くはない。所詮元気にはしゃぐ女の子にぶつかった程度。
そんなかわいくしょぼい攻撃を仕掛けた鮫が鮮やかな虹色の糸を引きながら離れていく。
しかし既に包囲済み、赤い弾は無慈悲にも少女のお遊びに追いつき必中の運命をその数と状況で示している。
砂を払いおもむろに立ち上がった男ガガーネットは乱れたシャツとシャンプーハットをただしその哀れな鮫少女に銃口を向けて、ニヤリ微笑み必中のトリガーを引いた。
しかし指令を下したはずの赤弾はその場にとどまったまま進まない。きゅっと細目を見開いた男は見つめてみる。見つめてみて虹の線をたどっていく……臍の緒が虹色とはきいたことがない、男は勝手にずり下がったいつものシャンプーハットを上げて訳もわからず2、3の瞬きをした。
「あははは、おヘソはレジストできないんだぁははは──じゃじゃーーん、全弾発射ぁあ!!!」
虹色のオーラコードを直接ぶっさしコントロールの一部を奪う。例え海賊団の繋がりは強くとも、所詮臍の緒の繋がっていない他者の集まり。
たのしげに水に浮かぶ少女は握ったレトロコントローラーのボタンを連打する、すなわち全弾発射。
えらく待機していた赤弾は次々と青く染め上がり、ロックオンマークのあちこち浮き出た痩せっぽち男の全身を次々と撃ち抜いていった。
そして海都も、厄介な狙撃にさらされることがなくなり自由を得る。果敢に巨漢の海賊に詰め寄り、飛び上がった。
また塞ぐように迫る巨手に対して、ここぞの確信を得た海都は迷わない。
その重いトリガーを弓のように両手でひいた。
撃ち放たれるピンクの閃光は、拡散しながら巨手巨漢もろともを派手に射抜いていった。
沈むシャンプーハットの取り巻き海賊子分に元気に手を振り鮫少女は泳ぎ戻っていく。
ビームを撃ち放った衝撃で水中を乱回転していた海都は────青い鮫に飛びつかれて、いっしょくたに抱き合い回転しながら……なぜか海底の砂にまみれていた。
「いえーーい! グリーンマン! ナイス防御力! あははははー巨人もたおしたーーナイスプレイやるーーー! すごいすごぉーーい!!! あははははははあはははは生のゲームさいこおおあはははは」
「おわっ!? え? …っす!」
思わぬ味方を得た海都は黒猫少女あらため青鮫少女と協力してバンちゃん海賊団の手下フンフンとガガーネットを護水外へと弾き出し倒した。
そんなヒートアップした良プレイの喜びを少年少女が分かち合っているなか────
落ちてきた。
砂を派手に撒き散らしながら、やがて見えた揺らぐピンクの髪とひび割れた槍の穂先の貝が、砕けて静かな水中をただよっていく。
「ふがいなく非常に厚かましい指示だと思いますがアレのどちらか1人を数十秒ほど…足止めお願いできますか」
「は、はい!!! もちろん!まかせてください! あ! 今回復しますサンゴさん!」
ちらり振り返るサンゴの真剣な瞳に海都は強く頷き、傷付いたピンクシェルアーマーその背に緑のオーラ弾を言われずともいつものように撃ち込んだ。
やがて地に降り立つ相変わらずの怒り顔の青髪船長と表情乏しい黒髪子分、限られた同じ闘いの場で一際のオーラ圧を放つバンちゃんとウニークを相手に。
サンゴは槍を地の砂に突き刺し、穂の貝を新しく生成し直す。
海都は白い盾でもう一度アレを撃てるかを、己の残オーラと構えるレア盾に問い……これからすべきことを焦りながらも思考していく。
リーダーは宝を求めて邪魔するヤツに怒りを向け、
子分はこの水に秘められし宝のありかを密かに探り、
海扇部隊の隊長は海をただよう悪をただちに鎮圧すべく、
彼は彼で状況に流されながらもその構えつづける盾で何かを守るべく、
鮫パーカーの少女はまだひとりあははと元気に笑っている。
ここは戦士と戦士が思う存分己の全力をもってして闘うための舞台、娯闘海海中闘技場。
乱戦に次ぐ乱戦の第二ラウンドは敵と味方と部外者、互いの熱を高めまた始まろうとしている────────。