雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
決まった、攻撃。
覚醒し変容したサンゴの新たなシェルアーマー、そして圧倒するオーラ武装の連続行使。
オーラテッポウをまともに受けた青髪の女海賊がついに泡を吹き白い泡にまみれながら沈んでいく……。
これ以上の綺麗な直撃はない。サンゴが打ち放った高エネルギーと熱量が数多の泡を起こしその威力を物語っている。
身勝手な悪が今沈みゆく様を眺め……。
サンゴがひとつ息を吐こうとしたその
何が起こったのか分からず吹き飛ばされたサンゴは水中姿勢を正し、やがて白い泡粒のさわがしい視界が明ける。
すると見えてきたのは────それは見間違えではない。
「【トルモイタトゥー】ぅ…!!! ハァハァ…これでバ、バンちゃんのおともだちぃぃ!!! アハハハハ!!! …アハッ…ハハはは!!!」
「…!」
サンゴは驚いた。勝負ありかに思われた白泡にまみれ白目を剥いていた女海賊が、今じぶんと同じ武装を左手にし自分に向けているのだ。鼻血の赤を水中に溶かしながらも、その海賊はそっくりコピーしたように色違いの黒いシザーグローブを向けていた。
そして怪訝な目をしたサンゴが良く見ると海賊の剥き出しの左肩素肌にはそれまで見たことのなかった紋様が妖しく光り刻まれていた。
(身に刻むオーラの紋様…それがあの海賊の貪欲さ成長力とここにないはずの刃まで手に入れた正体、その一端だったということですか…)
【トルモイタトゥー】
類は友を呼び、集めた宝は宝を呼ぶ。
バンちゃんのお気に入りの宝はたまた技問わずその身に刻み、己のモノとすることができる。
いちど盛大に直撃したサンゴの【オーラテッポウ】の威力とフォルムをバンちゃんは気に入り左肩に消えないタトゥーにし、なんとお友達にしてしまったのだ。
また……再び睨み合う宝珠持ちの2人が────考え引き起こした行動は同じであった。
重く開いた鋏のトリガーが勢いよく閉じる。一瞬に生み出され射出された両者の高エネルギーの衝撃波が凄まじい音と光と気泡を立ててぶつかりあった。
一瞬に引き起った激しい海流に吹き飛ばされた両者はすぐにまた姿勢を整え睨み合う。
まさかの同時撃ち、さらに同じ技、同じ武具で。
目をおおきく見開き笑う海賊と真剣に瞳を凝らした隊長は睨み合いながら、やがて緑と黒の鋏が折れどちらも壊れた。
「アハハハハチョキとチョキはおあいこおおおお!!!」
「でもねデモネえええ!!! 慣れているのは、バンッッちゃんの方ッッ!!! キラキラしているのはバンちゃん!!! バンちゃんがお姉ちゃん!!! アハハハ……はぁぁえァア……────」
また息を吹き返したように大声を張り上げる青髪の女海賊は面と向かったおあいこのサンゴに対して、自身が優位だと何故かしきりにアピールしだした。
そして突然じぶんの口──喉奥にみずから手を突っ込み入れだした。
えずきながらも奇妙な行動を取り出した海賊をサンゴは警戒し睨んでいると…………。
「べぇええあぁぁ…………。ハァハァ……アハッ…はぁ……!!! キラキラぁ…みぃいいいいいいっケ!!!!!!」
「…!? ──やはり! そういう!!」
先程の台詞の意味を喉奥から出し切りイカれた海賊はハッタリではないと、唾液たっぷりに証明する。
取り出した、見つけたあらたな宝は【髑髏銃】。
銃身の少し長い、古びた骨董品のような見た目の得体の知れない銃がバンちゃんのナカから現れたのであった。
「ンンンん??? タマは…タマはどこなのよウニーク!!! 銃のタマあああああああンンンンンン!!!! ────ア、そうだ!!! そうよそうよバンちゃんのキラキラを撃っちゃえば…アハハハハハアハッ!!!」
同じ覚醒を遂げたサンゴにはその銃の弾薬をさがす海賊がとつぜん何を閃き、どんな悪事を今しでかそうとしているのか恐ろしいことにも分かってしまった。
「まさか宝珠を……弾に…」
バンちゃんは腰のポポーチに手を突っ込みゴソゴソと手探り漁りだした。
その危険な香りのただよう光景を見たサンゴは辺りを素早く窺いながら、────見つけた。
「頼めますか……! 私にできるだけおおきな砲を!! そのオーラで!! これが最後の指示です!!!」
「砲!?? わ、わっっかりましたぁーー!!!」
サンゴは見つけた真剣に自分の闘いを見守っていた彼のその顔を。
そして下した最後の指示は理不尽で無茶であったかもしれない、だが彼は驚きながらもすぐに彼女の言う事に大声で頷いた。
クレープ屋の倅にゼロから砲を作れなどとどだい無茶な話であったが、彼は兼ダンジョン部、言われた通りにオーラを練り上げ、技を練り上げ、海にできるだけ大きく敷いた白いヒラヒラを掻き混ぜ練り上げて────為さんと試みる。
そして────
先に思い立ち、先に練り上げたキラキラの小さな粒が骨董品の銃へと装填されてゆく。ちいさな丸い銃口から見上げる斜め上に、今一発狙い放たれた。
「キラキラの…【髑髏銃】ぅ!!! ぅウひっ!!!」
ターゲットに対して素直で真っ直ぐな弾道を描くちいさなキラキラが……進む度、瞬く間にみるみると大きく大きくなっていく。
圧縮していたエメラルドオーラの塊が放たれながら銃の口径以上の大きさにぐんぐん育ち、やがて禍々しくマーブル状に黒ずんでいく。巨大にまでなった黒翠のタマが、今まさに水に浮かび佇む麗しのターゲットを飲み込もうと……。
「「【ゴッチャ…パールストライク】!!!」」
対して、なんとか間に合わせた……それは白い大筒。
何層も重ねたクレープを筒状にし最後に純白の盾で蓋をし底にする。それは海都がウツボ姫との異界での特訓でも繰り出したことのある技の工程に似ていた。
そのときよりももっと大きく、できうる限りのオーラで何層も合わせて頑丈にした突貫作業で完成した大筒は。弾をすでに盾底まで込めて、今サンゴと海都ふたりの号令、叫ぶ声で発射された。
大筒から発射されたピンクの大玉は、遅れど負けじと髑髏銃から放たれた黒翠に煌めくオーラの塊とぶつかり合った。
しかし、負けじと踏ん張るも押し退けることは叶わない。逆に黒翠の大玉が無情にも、ピンクのオーラ玉を押して、圧して、浮かぶ2人に近づいていく。
なおも成長を続けるバンちゃんのオーラが、弾にし撃ち放ったオーラの塊であるバンちゃんの宝珠がサンゴと海都の視界いっぱいに…………眩く迫る。
「アハッアハハッ、まっぶシィぃぃ!!! ゼンブ…ゼンブ!! バンちゃんのおおおおお!!!」
まさにクライマックス。終わりゆく本日最高の最後の美しい煌めき、その光景に最高潮に昂る女海賊は銃口を齧りながらその味を狂い味わい…悦に浸る。
『一度でダメなら、二度。ビビらずかませば問題なしだろニチア人?』
絶体絶命のピンチの最中、そんな言葉が何故か彼の頭によぎる。
それはきっと無責任なアニメのような台詞であって、きっとアニメじゃない。
海都はその目その身その記憶に知っている、重ねた技がやがて極大の青い雷になることを────。
激しい運命のさなかを共にする彼と同じように、サンゴもまた気付く。アレだけ重く開かずにいた宝の中身がひとつだと思い込んでいたことに────。
「「【ゴッチャパールストライク…………】」」
「「【デュアル】!!!」」
「おおぉ…オオオ!?でュアッ────!!???」
撃ち放たれた二発目は白きオーラの塊。
一度でダメなら、二度。
まさに土壇場の土俵際、足し合わされ重なり合って膨らんだ極大のオーラは……怨念も不吉も狂気の色も全て勇ましく呑み込みながら……やがて底までたどり着いた。
混沌さえ浄化する光り輝く光景が、漂い浮かぶ貝間と人間ふたりの目に燦然と映っていた────────。