ファイナルファンタジー8 セルフィのトイレ事情 作:北村 貴之
ここはフィッシャーマンズホライズン。
海のど真ん中に存在する、コンクリート製の建物が多くそびえるのどかな街だ。
そんな街の中で、スコールたちは海の魚を釣っていた。 空は快晴で雲ひとつない。
そのため、眩しい太陽が、釣りをしているスコールたちを照らしていた。
釣り餌をつけた釣り針を、海へと投げ入れ、魚が喰らいつくのを待つ。 これが釣りだ。
「なかなか釣れないね~」
少しうんざりしながらも、セルフィはいつもの調子で仲間たちに話しかけてきた。
「まぁ……、簡単には釣れないよ」
そんな彼女の隣で、リノアが退屈そうに呟く。
スコールも釣りは初めてだったが、なかなか思うようにはいかないものだなと感じていた。
ゼルもアーヴァインも黙々と海を見つめて竿を握っていた。明朗快活なゼルもこの時ばかりは流石に真剣な眼差しで正面の竿を眺めていた。
それもそのはず、彼らはまだバケツの中には1匹も魚がいない。 釣りは釣り上げるタイミングやコツだけでなく運も重要となる。
魚たちがエサに喰いつくまで、ジッと待つしかないのだ。
「あ、見て!」
そんな時、セルフィの声が周囲に響き渡った。 キスティスの竿が大きく揺れている。
魚が餌に食いついたようだ。 慌ててスコールたちも彼女の方を見やると、そこには大きな魚と格闘しているキスティスの姿があった。
「先生!手伝うよ」
スコールがキスティスの後ろに周り、彼女の持つ竿を掴む。 キスティスも釣られているのではなく、魚を引き上げることに集中し始めたため、そのタイミングを見計らってスコールは竿を引いた。
「ありがとう、こいつ結構重そう…!」
キスティスがそう礼を言うが、両手は竿を握るのに必死だった。 少しでも気を抜いてしまえば、せっかく捕らえようとした獲物に逃げられてしまう。
スコールは自分より力の弱いキスティスをサポートしようと、足に力を入れて踏ん張り、一緒に竿を引っ張っている。
「先生気をつけて!」
「わかってる!」
「あ、なんか魚が浮いてる!」
キスティスの近くにいたリノアが、そんな声を上げた。 それを聞いて、スコールはキスティスの足元にあったバケツの中を覗いてみた。
するとそこには、大きな魚と格闘するキスティスから逃れようと必死に藻掻きまくっている魚の姿があったのだ。 それを見て、セルフィたちも一斉にキスティスの方へと注目した。
そんな彼らの視線の中、キスティスとスコールはさらに力を込めて竿を引いた。
「よし!ここは一気に力をあわせて引き上げましょ」
キスティスがそんな声を上げ、スコールもそれに呼応するように力を入れる。
「じ、しゃあいっせーので」
「わかった!」
「じ、じゃあ行くよ。せーのっ…!」
キスティスの掛け声とともに二人が勢いよく竿を引くと、水面から大きな魚が姿を現した。 その姿を見て、アーヴァインが喜びの声をあげる。
「やったー!釣れた!」
キスティスの竿の餌を食いついていたのは、大きなクエだった。
現実世界では和歌山あたりでよく捕れる魚だ。
スコールとキスティスが釣り上げたクエはバケツに収まらないほどの大きさだった。
「ちょっとお願い!漁師さんを呼んで、こいつが収まりそうな入れ物を持ってきて!」
「わかった!」
ゼルはキスティスに言われた通り、近くにいる漁師を呼びにいった。
キスティスたちに釣り上げられたクエは地べたでバタバタと跳ねている。
「キスティ!こいつっておいしいの?」
アーヴァインが興味深そうにキスティスに聞いた。すると少し時間をおいて、彼女は答えた。
「えーっとそれは…。漁師さんに聞いてみましょ」
そんなやり取りをしていると、セルフィがなにやら、意味深に海に向かってお尻を突き出している。
突如海面にお尻を向けているセルフィに、すぐさまスコールたちは反応した。
「あ、あの…、セルフィ?」
キスティスたちは、頭に疑問符を浮かべてそう尋ねる。 すると、彼女はくるりと回転し、笑顔でこう言ったのだ。
「こっちは豪快に撒き餌だよー!」
その言葉に、スコールは心の中で呟いた。
(……まさかと思うけど)
そのまさかだった。
セルフィはパンツを足首までおろし、生のお尻を海面に向けているのだった。
つやつやで触りたくなるきれいな形のお尻が太陽に照らされて光っている。
「あ、撒き餌って、こういうことね……」
キスティスがその光景を目の当たりにして呟く。
セルフィの突然の奇行に、スコールはただただ驚くばかりだった。
(いくら釣りとはいえ……)
そんなことを考えていると…。 セルフィのお尻の穴がひくひくと胎動し、そこから勢いよく、ぶりぶりと音をたてて、茶色い塊が海に放たれ始めた。
その茶色い塊は、海の中をクネクネと進みながら、魚をおびき寄せていた。
「うげっ!こんな所で…!」
それを間近で見ていたスコールが驚愕の声をもらす。 わかっていたが、いざ生で女の子の排便している所を見てしまったら、驚いてしまうのも無理はない。
アーヴァインはセルフィのうんちが排出されているお尻を凝視している。
幼い頃から好意を抱いていた女の子がうんちをしている光景。
しかし、セルフィのうんちは不快に思えなかった。 むしろ神秘的にも見えてしまっていた。 海に放たれるセルフィのうんちに、多くの魚たちがたかっていた。
イワシやアジといった魚たちが、栄養たっぷりのうんちをパクパクと食べている。
その光景はスコールたちもしっかりと確認していた。
「あ、網持ってきてぇ」
うんちを出し続けているセルフィがお願いをした。
リノアが大きな網で、たかっている魚たちを捕獲する。うんちを餌にした魚たちは、リノアの網に捕らえられ、次々とバケツの中に入れられていく。
そして…。 セルフィはうんちを出し終えたようだ。
「ふ~、すっきりしたあ。お外でのうんちはやっぱ最高だね」
ガッツリとその光景を仲間たちに見られてしまったが、むしろ出し終えた後の爽快感が勝っていた。
セルフィはポケットティッシュでお尻の穴を丹念に拭き、その紙は海に投げ捨てた。
それを見ていたスコールは、キスティスに質問しに行く。
「先生…、お尻を拭いた紙、海に捨てても大丈夫…?」
「ほんとはダメだけど、ゴミ箱に捨てるのもなんか…、ね」
キスティス自身もわからなかった。
セルフィの糞便につられてやってきた大勢の魚たちは、6人のバケツの中でひしめいていた。
青々とした鱗を持つ小さい魚たちは、いきなりのご馳走につられたと思いきや、このご馳走を用意した張本人は、うんちをしていた女の子と気づき、魚たちは絶句していたことだろう。
「セフィ、バケツの中に入った魚たち、当然……」
少し憂鬱そうな顔でアーヴァインが聞いた。 彼の質問に対し、セルフィは答えた。
「ん?食べるでしょ?」
彼女のその一言に、キスティスとスコールは思わず驚いた顔をし、互いを見合った。
たしかにこの後、近くに釣った魚を調理してくれる店があるため、そこで食事をとる予定はしているが…。
そうこうしていると、ゼルが戻ってきた。
年老いた老人と一緒に、クエが収まりそうな入れ物を持ってきて帰ってきた。
「悪い悪い!遅くなった」
ゼルがみんなに謝罪した。
そして、先程は空だったバケツに大量の魚がいることをすぐに確認した。
「おや?こんなに魚が…、一体どういう」
不思議そうな顔をゼルがする。 少し気落ちしているようなスコールが、
「知らないほうが…、いいと思う」 と力なく答えた。
結局魚は10匹以上が釣れたため、この魚たちは近くの食堂に調理してもらうことにした。
キスティスとスコールが見事釣り上げたクエはお鍋、刺身として調理された。
新鮮な魚を、刺身にし、それをいただいた。
「わぁ~っ!おいしい!」
セルフィは感動した声をもらし、料理に舌鼓を打った。
…しかし、事情を知らないゼルを除いたスコールたちは箸があまり進まなかった。 それもそのはず、クエよりはるかにサイズの小さい魚たちは、先程セルフィが出した便につられてやってきた魚たちだ。
ということは、セルフィの腸内から排泄された糞便を間接的とはいえ腹の中に入れてしまっているということだ。
いくら新鮮で美味しくても、そう考えてしまうとなかなか箸が進まないというものだ。
天国なのか地獄なのかわからない食事の時間を、スコールたちはただただ気まずい雰囲気で過ごしていたのだった。