端的に言って、神原駿河はいわゆる『メール調教』と呼ばれる行為にはまっていた。中学生の頃に手を出してから今日まで、毎日一回送られてくる調教メニューを欠かさずこなしている。
今日ももちろん、ご主人様から調教内容が記載されたメールが届いていた。受信時刻はいつも通り正午ぴったりである。
放課後、神原は家に着くまでは我慢しようと頑張っていたが、帰りがけに某先輩カップルのいちゃつく様子が目に入ってしまい、抑えがきかなくなってしまった。
神原は校内でもあまり人が利用しないトイレに駆け込むと、期待と興奮で鼻息を荒くしながら、『本日のメニュー』というタイトルのメールを開いた。
「......っ!!!!」
『メールを確認したら即座に自慰を開始すること。触っていいのは胸のみで、1時間休まず続けること。絶頂は明日のメニューが届くまで固く禁じる。もちろん、事後報告は忘れずにすること。以上』
「(全く、ご主人様は何を考えておられるのだ? メールを読んだら即座に自慰を開始だなんて、ついうっかり人がいるときにメールを開いてしまったら、私は人生破綻のどん底で自慰するはめになるではないか!)」
神原は心の中でそんな抗議の声をあげつつ、メールを読み終えたら即座に制服のシャツをまくり上げ、両乳首をつまんで激しくこねくり回し始めた。
すでに期待で硬くしこっていた乳首は、直ちに神原へと多大なる快感を与える。
「んんっ……! んう、あっ……はぁんっ……! くぅっ……っ、ふぅ……!」
現在、神原がこもっているトイレはほとんど人が来ないとはいえ、全く来ないというわけではない。
神原もそのことは重々承知しており、そしてだからこそ余計に興奮をかきたてられてしまう。
こんな最高のシチュエーションを無駄にしてはならないと、神原は自らへの責めをますます激しくしていった。
「ふぁっ……んぁっ! ふぁぁんっ……!」
自慰とはいえ、乳房と乳首を力任せに変形させられるという感覚は、神原のマゾヒスティックな性欲を存分に満たしていく。
ぎゅっと、乳首をひねるたびに、神原の腰は面白いくらいにびくんと跳ね上がった。
神原が自らの乳房と乳首にかけている圧力は痛みへと転化するのに十分なはずだが、神原の感覚器はすでに『痛い』という感覚全てを性的な快楽に置き換えられるほど調教しつくされていた。
むしろそれくらいの刺激がなかければ、いつのまにやら小指の先ほどの大きさまでに変形した神原の乳首は満足できないのだ。
「(あぅ♥♥♥ ダメ! ご主人様、イッちゃう♥ イッちゃダメなのに、不肖、神原駿河、イッちゃいます……っ!)」
神原の頭の中に『刹那主義な神原』が現れ、ご主人様への謝罪を口にしながら身勝手にもそのままオーガズムを享受しようとする。
しかし、絶頂の波が押し寄せてきたその瞬間、ふっと両手の動きが止まった。
神原の頭の中に『サブミッシブな神原駿河』が現れ、ご主人様の命令を忠実に実行するため、無意識のうちに手を停止させたのだ。
「(あ♥ ああ♥ あああ♥ ああああああああああああ♥)」
刹那主義な自分とサブミッシブな自分のぶつかり合い、さらには絶頂へ差し掛かってからの寸止めというこの上ないスパークが同時に起こり、神原はアへ顔をさらしながら一時的な機能不全に陥る。
わずかに残された思考領域で、もう少しでイケたのにというもどかしさと、寸止めできたという達成感とに板挟みにされながら余韻に浸っていると、ポケットに入れていたスマホが何かしらの通知を報せるバイブを発する。
その瞬間、神原の強靭な精神力が神原の脳を強制的に復旧させた。
「(はっ!! なんてことだ。私は今、自分勝手にもご主人様の命令を破ってしまったのか! 何たる、何たる不埒!)」
神原は意識が戻るやいなや、自分を罰するように利き手での乳首いじりを再開し、もう片方の手でスマホを確認する。ふとスマホの時計を見ると、自慰を開始してからすでに15分が経っていた。
時間を確認したらすぐにスマホをポケットに戻し、神原は両手での責めに戻る。
神原にとっては、まだ15分しか経っていないという絶望ではなく、もう45分しか残っていない名残惜しさの方が上だった。
それに、10秒に満たないわずかな時間とはいえ、自慰の手を止めてしまったという罪悪感もある。
※ちなみに、通知はR18な同人通販サイトからでおり、神原が先日購入したR18グッズがまもなく配送先に到着する旨の中身だった。
「(ご主人様! 申し訳ございません。不肖、神原駿河、ご主人様の命に反して、自慰の手を止めてしまいました。この罪は、残りの時間決して責めを緩めないことで償わせていただきます!)」
神原は心の中で一方的にそう誓うと、乳首と乳房に自分の持てる全力の力を込めて、激しくこねくり回し始めた。
滑稽極まりないが、自分でも驚いてしまうほどの力で、神原の乳房と乳首は限界を超えて変形させられる。
「んああぁ♥ はぁんっ、くぅぅっ、んんんん♥♥」
もはや声が漏れることを気にしてはいられないほどの責めと快感だった。神原は目をぎゅっとつぶり、歯を食いしばって絶頂を先延ばす。
だからといって、神原の自らへの責めは止まることはない。例え本当に乳房がもげようと、神原は構わず乳房のなくなった胸部を責め続けるだろう。
「(はぁ♥ あ、あああっ! き、気持ちい♥ 気持ちいいよぉ……!)」
神原はそこから乳首いじりをさらに激しくした。すでに限界まで勃起していた乳首をさらにその先へとつまみ上げ、乳房がちぎれそうなほどの力で引き延ばす。
「(ああっ! あ、あっ……♥ だ、だめ……! イクっ……!!)」
そうして再び絶頂に差し掛かったその瞬間、神原は今度は自分の意志で、その責めをほんの一瞬停止させる。
「(あああ♥ あああああ♥ ああああああ♥)」
神原は再び心の中で絶叫をあげながらも、今度はなんとかフリーズせずにオーガズムへと至る波を乗り越え、余韻の冷めやらぬまま自慰を再開した。
神原はご主人様に一方的に心の中で宣言した通り、制限時間が来るまで気が狂いかねないような強度で自慰を続けた。
無我夢中で自慰と寸止めを繰り返し、やがて頭の中は真っ白になって、痛いのか気持ちいいのかもわからなくなった頃、神原は唐突に手の動きを停止した。
「はぁ、はぁ……んっ♥♥♥」
神原は肩で息をしながら、虚ろな目でスマホを確認した。時刻はちょうど、自慰を開始してから1時間が経ったところだった。
「はは、まったく、我ながら、サブミッシブとしての私は忠実なこと、この上なしだな......」
疲れのせいか、つい言葉に出してそうつぶやきながら、神原は報告の写真を撮るためにスカートとスパッツを下ろし、シャツのすそを胸の上までめくった。
カメラモードをセルフィにして画面を確認すると、胸は完全に腫れあがり、ところどころ内出血で青黒く変色している。それでも神原の乳首は、いまだに物足りなさそうに固く勃起していた。
脚は小鹿のようにがくがくと震え、股間からは汗なのか愛液なのかわからない液体が垂れて床に水たまりを作っている。
挙げ句の果てに、顔面は涙や唾液でドロドロに汚れており、さながら襲われた後のような有様だった。
「うむ、我ながらよくやった」
しかし、そんな有様でありながらも神原は恍惚の表情を浮かべ、倒錯極まりないセリフを満足気につぶやく。
大事なところがきちんと映るように画角を調整し、報告用の写真を撮った。
「(ああ、ご主人様。不肖、神原駿河、本日のノルマを達成いたしました♥)」
神原は心の中でそう報告すると、今日送られてきたメールに返信するかたちで調教報告を送信した。
「ふう、それでは、片付けるか……」
神原はスマホをポケットにしまうと、自分の体液でできた水たまりを掃除するため、道具を取りにトイレの扉を開けた。
と、その瞬間、ポケットの中でスマホが通知を報せるバイブを響かせた。神原はすかさずスマホを確認する。
「(なんと! ご主人様からではないか!)」
通知はやはり、ご主人様からの返信を報せるものだった。神原はさっそくそのメールを開く。
『ご苦労様。概ね、調教をこなせたようでなにより。ところで、私の命令を一つ守れなかったようだが、 罰としてその汚い水たまりを自分の口で舐めとりなさい。以上』
「(ああ♥♥♥ ああ!♥♥♥)」
神原は歓喜した。
◆閑話休題◆
言うまでもなく、神原は画面の文字を理解した瞬間、喜びに打ち震えながらトレイの床に這いつくばり、そこに広がった汚水へと口をつけたのだった。しかしそれはまた別の話、というやつである。