※この作品はR-18です。

真剣で肉欲に溺れなさい!【完結】   作:寝坊助

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どうも寝坊助です

数年の時を経て、ハーメルンに帰って参りました

さらに投稿一発目がR18

あ、これ続かねーなと思った方、僕も同じ気持ちです

一応短編のつもりですので、長く続きません

でも内容は濃くイキたいと思っております

では、どうぞ





水城ユウという男

 

 

 

 

 きっかけはありふれたものだった。

 ヒーロー番組で悪者をばったばったと叩きのめす戦士が映るテレビを齧り付くように見ていた。強くてかっこいい、そんな姿に憧れた、そんな普通の少年らしい動機が原因だった。

 少年、水城ユウはとある道場の門を叩いた。

 川神院。日本の武の総本山とされるその場所は、日本の最終兵器(リーサルウェポン)と称される。他にも、強者が多く属している川神の土地が人外魔境と言われる由縁とされる場所である。武を生業にする者達にとって、川神院とは聖地にも近い場所であった。

 強くなりたい。そう思う川神に住むユウが、川神院に白羽の矢を立つのは当然のことだろう。ここで武道を学び、自分もテレビのヒーローのように強くかっこよくなりたい、そう思っていた。

 しかし、今となってはこれこそが間違いであったと、将来ユウは後悔することとなる。

 

 水城ユウは天才だった。

 教わったことは数度繰り返せば完璧に自分のものにし、一つ教われば二つ、二つ教われば三つと、次々と川神流を会得していく。自身も確実に強くなっていく己の強さに確かな実感を感じて、武の世界にのめり込んでいった。

 そんな彼に彼女が目をつけるのに時間は掛からなかった。

 

 川神百代。この川神院総代、川神鉄心の孫娘だ。同い年の彼女は、まだ幼い小娘でありながらもこの川神院での苦行に耐え、強さを手に入れた武道家達を寄せ付けぬ強さを持っていた。

 まさに川神鉄心の再来。いずれ武神と呼ばれるようになる百代は、本日の鍛錬を終えたユウの前に立った。獰猛な獣のような瞳をギラつかせ、人差し指をむけてこう言った。

 

「お前強いな!私と戦え!」

 

「ああ、いいよ」

 

 この時の自分の選択を心底後悔する。

 実力をつけて湧いていた驕りが、彼を不幸へと突き落としたのだ。

 

 

 

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ーーーーーー

 

 

ーーー

 

 

 朝。

 窓から差し込む光が目に当たり、俺は深い眠りからゆっくりと覚醒した。まだ頭が少しぼんやりするものの、早朝鍛錬をこなすために起きあがろうと体に力を入れる。

 しかし、出来なかった。

 起きるどころか、寝返りも打つことも出来ない。少し体の筋を動かせば、ギシリと何かに縛られているかのような感覚に襲われる。

 俺は深く、深くため息を吐いた。この拘束の感覚の正体を分かりきっているからだ。

 首を曲げて視線を少し下に向けると、そこには誰もが羨むような絶世の美少女が眠っていた。その寝顔はまさに天女。彼女はまるで大切な宝物のように、俺の身体に抱きついていた。

 武道家らしからぬ細い手足を絡めて全身を密着させている彼女の名は、川神百代。

 こう見えてこれまで負け知らずの、武神と謳われる最強の武道家だ。鍛え上げた肉体は美しく、ボンキュッボンのボディラインを作り上げている。そんな体を満遍なく密着させ、90を超えるバストが俺の胸に押しつけられ、むにょんと形を変えていた。

 男なら天国に感じてしまうシチュエーションであろう。しかし、幼い頃から武神・川神百代の無茶振りに耐え続けた俺にとって、今の状況は飢えた猛獣の横で眠っているようなものだ。

 その証拠に俺を捕まえる腕や足に力が入り、ミシミシとその身体を締め付けている。

 まずい、このままじゃシャレにならない。

 

「おい、百代。起きろ、俺を離せよ!」

 

「ううん」

 

 逆に力がさらに強まる。抵抗する俺を逃すまいと、四肢による締め付けが強固なものとなってしまった。

 当然、俺を襲う圧迫感はやがて痛みに変わっていく。百代の力加減のなさ、容赦のなさは昔から理解している。眠って意識がないから制御もクソもない。

 数秒後の自分の姿を想像する。全身をバキボキに折られこの世を去るという、恐ろしい姿。こんなこと絶対にあってはならない。あえて百代の顔に自分の顔を近づけて、大きく息を吸った。

 

「起きろバカッッ‼︎」

 

「うお⁉︎」

 

 耳元で音声を上げて、無理矢理こいつを眠りから覚ます。

 流石の武神でもこれには応えるようだった。

 驚愕のあまりビクリと体を震わせた百代の拘束が緩んだ一瞬を、俺は見逃さなかった。すぐに脱出し、布団から離れる。

 

「痛った〜……おいユウ、酷いじゃないか。美少女の耳に大声なんて」

 

 何が美少女だ、俺には猛獣にしか見えん。と、心の中で悪態を吐いて立ち上がる。

 

「勝手に人の布団に入り込んで、全身をへし折ろうとしたお前より温情だよ。つーかなんでいつも俺の布団に入ってんだ!」

 

「え〜?あれ〜?おかしいな〜?ここは私の部屋だったはず?」

 

 なんてわざとらしいのだろう。

 というかこのやりとりも何度目だろうか。

 この状況になるのは二度や三度じゃはなかった。

 

 百代との出会いは幼少の頃。日々力が強くなっていく自分の強さに自惚れていた。たとえ総代の孫でも余裕で倒すことができるだろう。そう確信していた。

 結果は惨敗。目にも止まらぬ正拳突きが腹に叩き込まれ、宙を三回転してから気を失った。

 初めての試合で鼻っ柱をへし折られてからの俺は、あいつを一方的にライバル視した。それに対して百代も快く受け入れていた。

 大人ですらその強さに恐れ慄く中、実力に差はあれど同年代の競い合う相手がいるのは、とても喜ばしいことだ。と、後から総代から感謝されたのを覚えてる。

 俺自身もあの結果は良かったと思っている。あの時、敗北を知らなければ自分はどんどん傲慢になっていったと思う。その点だけはこいつに感謝していた。

 こうして自分を見つめ直し、やがて鍛錬の果てに壁を超えることができた。武を極めた超人達の一人となることが出来たんだ。

 

 話を戻そう。百代が俺に対する態度が変わったのは、中三の終わり頃からだ。

 あの頃までの俺達は同門のライバルとして、日々切磋琢磨互いの武を磨いていた。しかしいつしか俺の布団に入ったり、身体を密着させてきたり、風呂場に突撃してきたりするようになった。

 そして俺は確信した、

 

「全敗してる俺をおちょくって楽しいかよ」

 

 そう、百代は俺をバカにしている。

 初めての試合から今まで何度もこいつとは戦ってきたが、勝つことは叶わなかった。

 腐っても俺は壁越えだ。百代と途中までは互角にやりあうことができる。しかし、最後の最後で膨大な気のゴリ押しでいつも負けてしまうんだ。

 そんな俺をおちょくっているに違いない。

 

「はっはっは、お前ホント鈍いよな」

 

 そう確信している俺を、百代は布団から顔を出して頬杖をついて笑う。その表情には若干の呆れが混じっているようにも見えた。

 俺はその呆れの真意がなにかはわからないが、とにかく不快に感じた。

 

「今に見てろよ。その王座から引きずり下ろしてやる」

 

「ふふ、楽しみだ」

 

 心底嬉しそうな百代を尻目に、俺は部屋から出た。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ーーーーーー

 

 

ーーー

 

 

 

 ユウが部屋から出て、私は布団に潜り込んだ。ユウの匂いが染み付いているこの布団、あいつに抱きしめられているかのように感じられて最高の気分になる。

 ユウはきっと、私の恋心のこもったうっとりとした目で見つめられてもその意味を理解していないのだろう。

 まったく、鈍い奴め。

 

 私、川神百代は水城ユウが好きだ。

 心の底から大好きだ。

 あいつとの出会いは、有望な門下生の噂を聞いたのがきっかけだった。私と同年代で、才能に溢れた武人だと。

 当時、すでに大人さえも敵ですら無くなっていた私はこの退屈を拭い去るために強いやつを探していた。

 そして、噂のそいつが気になって勝負を仕掛けた。結果は私の圧勝。こんなもんかと、つまらない幕引きだった。

 しかし、あいつは折れることはなかった。むしろ対抗心を燃やして、さらに武道にのめり込むようになった。

 私の強さを目の当たりにした奴らは、大人であっても、男であっても腰を抜かすヘタレばかりだった。

 あとは説教ばかりするジジイ、武道とはどうのこうの長ったらしい話をするルー師範代。師匠の釈迦堂さんは気が合ったが、今は破門されてどこにいるのかわからない。

 風間ファミリーの男連中も、学園の男連中も、きゃーきゃー私を持ち上げるばかりで、ぶつかってくるやつはいなかった。可愛い女の子の声援なら嬉しいが、男の声援なんて鬱陶しいだけだ。そんなことする暇あったら自分を磨けよ。

 そんな中、ユウだけは私に挑み続けているんだ。

 私だけを見て、私を目標として、真っ直ぐに曲がることなく挑み続けている。

 やがてあいつは壁を越えた強さを手に入れた。

 そこからは私とユウの実力はほぼ五分五分になった。少し気を抜けば、一気にやられてしまうかもしれないという緊張感も感じられるぐらい。だがそのスリルが心地いい。やはり戦いは、どちらかが勝つか負けるかわからないのが一番面白い。

 それにあの強さは、私を倒すために手に入れた力だ。

 

 これもう愛だろ!

 

 私をまっすぐ見つめるあいつの目を見ただけで、ふふ……下品だがちょっと、濡れちゃうんだよな。

 こんなふうにアプローチしてるのに、あの鈍感は気づきもしない。

 全く……

 

「そろそろ、実力行使にでるか」

 

 ペロリと舌で唇を濡らす。

 私をこんな気持ちにさせた責任はとってもらうぞ……絶対に逃さないからな、ユウ❤︎

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ーーーーーー

 

 

ーーー

 

 

 一振り、また一振り。振る度に風切り音が鳴り、次に衝撃が小規模で俺を中心に発生する。

 今手にしているのは木刀。

 川神流は徒手空拳だけじゃなく、薙刀や刀などの武器術、気を用いた術など幅広い分野を扱っている。

 その中で俺が選んだのは、川神流剣術だ。

 色々な武器術を試してみたけど、刀が一番しっくりくる。気を用いた術は、俺自身がそこまで器用じゃないから身体能力向上に力を入れることにした。

 気で体を強化して、磨き上げた剣術で相手を倒す。シンプルイズベストな戦法。

 すると、後ろから知った声が聞こえてきた。

 

「ユウ、今日も精が出るのう」

 

「総代」

 

 素振りを一旦止めて振り返ると、そこには長い髭を蓄えた老人が立っていた。老人と言っても、その身に満ちる気は常人のそれじゃない。

 この人がこの川神院の総代、川神鉄心だ。

 

「しかし気に乱れが感じられる。何かあったか?」

 

 流石というべきか、俺の気の乱れを総代は容易く見抜いていた。

 木刀を肩に当て、ふぅと息を吐いて応える。

 

「あんたのお孫さんをどうにかしてほしいんですけど。また俺の布団に潜り込んでましたよ」

 

「何じゃ惚気か?」

 

 ピキリ、頭の中で何かがひび割れる。

 瞬間、脱力していた体に一気に力を入れて総代に飛びかかる。肩にかけていた木刀を振り下ろし、気を込めて鋒を叩きつけた。

 が、その一太刀は鉄心の体をするりと通り過ぎて空を切った。

 さっきまでそこにいた総代の体が霞のように霧散する。残像だった。本人はすでに超スピードで俺の背後に移動していた。

 

「親として教育者として!あの傍若無人をどうにかしろって言ってんの!」

 

 危うくこっちは死にかけたんだぞ。

 それをあたかも惚気なんて言われるのは、どうしても腹が立った。あんなのはイチャつくなんてものじゃない、ただの捕食だ。

 そんな俺の心からの訴えを聞いても、鉄心はやれやれと呆れ返るのみだった。

 

「それは未だに百代の気持ちに気づかんお主にも、問題があることじゃと思うがの」

 

「どこが⁉︎被害者なんですけど!」

 

 いつもこうだ、訴えても埒が開かない。俺は気を紛らわせるために、再び素振りに戻った。

 

「あのままじゃ嫁の貰い手なんて、一生来やしませんよ。次期総代としていいんですか?あれで」

 

「なら、お主が嫁に貰ってくれんか?」

 

「絶対嫌です」

 

 確かに武人として尊敬はしてる。

 しかし人間としては認めちゃいない。

 異性としても見れなかった。

 確かに絶世の美人でその肉体は極上とも言っても過言じゃない。チャンスがあれば、男なら誰だって飛びつくはずだ。学園にだってファンもたくさんいる。そいつらの中で百代の体を好き勝手に貪る妄想をしている奴も、いるにはいるだろう。

 多感な時期の男子学生からしてみれば、あの美貌は劇薬に違いない。

 あの美貌を手に入れたい。

 豊満な胸を揉みしだき、しゃぶりつきたい。

 プルリとした唇に舌を入れて貪りたい。

 そして彼女の秘裂に自分のものをねじ込み、性欲のまま蹂躙するのだ。

 恍惚の笑みを浮かべるのは、世界最強と謳われる武神、それを向けられる自分を想像してティッシュを消費する。

 うちの学園にいるやつらは、そう言うのが多い。

 

 しかし、俺は川神百代のヤバさを身をもって知っている。だからそういう目で見ることはなかった。

 

「はい!素振り終わり!学園行ってきます!」

 

 木刀を元に戻し、俺は学園への支度のために部屋へ戻って行った。

 

 

 

 

 去っていく優秀な弟子の背中を見て、鉄心は惜しそうに髭をなでる。

 

「ふぅむ、惜しいのう。ユウ以外に百代を貰ってくれる男はおらんのじゃが…」

 

 東の土地は男よりも女が強い。

 自分やルー師範代など強い男はいるにはいるが、全体的にみれば女の武人の割合の方が圧倒的である。

 ゆえに自然と、この地では男が軽んじられることが多い。そんな中で現れたのが水城ユウだった。

 才能に溺れて、自身の力に自惚れる時期があった。その姿にかつて破門した師範代、釈迦堂の姿を重ねてしまっていた。

 しかし、早い段階で百代に鼻っ柱をへし折られたのがいい結果を生んだ。今ではそんな自分を乗り越えて立派な武人へと成長している。

 数少ない壁越えの武人。しかも男で百代と同年代、なにより互角の実力を持つ猛者。

 婿候補としてこれ以上ない相手である。

 しかし残念なことに、ユウ自身に百代にそう言った感情を持つ気はないらしい。

 

 孫にして次期総代の川神百代。

 学園ではもう三年で、あと一年で社会人としてみられるようになる。何とか卒業までにいい相手が見つかればいいのだが…。

 

「ユウ以外におらんのじゃがの〜」

 

 

 

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ーーーーーー

 

 

ーーー

 

 

 

「何なんだよどいつもこいつも」

 

 愚痴を吐きながら川神学園への通学路を歩く。

 どうにかあの武神の暴走を止めてくれと訴えたものの、祖父である川神鉄心ですらも自分の味方をしてくれないという結果に終わった。

 次はどうしようかと悩んでいると、変態橋の方から大きな騒ぎ声が聞こえてきた。

 正式名称は多摩大橋と呼ばれる大きな橋だが、そこにはなぜか変態の出現率が高くトラブルも多い。故にこの街の住人は、自然とこの場所を変態橋と呼ぶようになった。

 見れば、大勢の川神学園の生徒が集まっている。生徒だけじゃない、他の一般人もそれを見ようと混ざっていた。

 これも川神ではいつもの光景だ。

 

「うへぇ……」

 

 ソレを見て顔を顰める。俺を含めた大勢の視線の先には、地獄絵図が広がっていた。

 河川敷を埋め尽くす大勢の不良達。おそらく武神、川神百代の噂を聞きつけて討ち取って名を上げようと考えたやつらだろう。

 ちょっと喧嘩が慣れた程度で数を揃えれば勝てるという軽率な考え。そんな勝算は見ての通り打ち砕かれていた。

 

「今日は何作った?トーテムポール?レゴブロック?うわ、関節がやばい方向に」

 

 今回の百代の芸術?作品に頭を抱える。

 襲ってきた不良どもを叩きのめす……までは良かったんだが、倒れたそいつらを組み合わせてグロテスクなタワーを建設していた。

 これが武神の力だ。その力に、生徒や一般人達は大きな声援を上げている。

 ドン引きしている俺が異常なのか?と思っていると、人混みの中から俺の存在に気づいてある集団がやってきた。

 

「あ、ユウ先輩!」

 

 真っ先に現れたのはバンダナの後輩、風間翔一。ソレに続いて七人の男女の生徒が俺の前に集まってくる。

 

「よう風間と、そのお供」

 

「お供じゃなくて、風間ファミリーだって先輩!」

 

 俺の呼び方に不満げに突っ込んだのはメンバーの中で一番ガタイのいい男子生徒、島津岳人だ。

 

「どっちも同じだろ。いちいちファミリーつけるの面倒くさいし」

 

 こいつらは百代が入っている風間ファミリーとかいうグループだ。

 風のように自由人な風間を筆頭に、物凄い濃い奴らで構成されている。そのためこの街ではかなり名を馳せており、その他のメンバーも有名だ。

 しかも女性陣は皆が武士娘。

 今河川敷で勝ち名乗りを上げている武神を筆頭に、その川神院の門下生の義妹、天下五弓、ドイツ軍人の娘、最近川神四天王入りした剣士。

 明らかに一学生グループが持っていい戦力じゃないよな。百代だけでオーバーキルなのに。

 

 俺は百代と昔から長い付き合いなために、こいつらとも顔見知りの間柄だ。だからだろうか、食らいつく島津をはいはいと流す俺に、風間がまたいつもの勧誘をしてくる。

 

「なあなあ先輩。いい加減、風間ファミリーに入ってくれよ〜。長い付き合いじゃねーか」

 

「嫌だね。いつも言ってるだろ、諦めな」

 

 風間とのやりとりはいつもこんな感じだ。

 幼い頃から諦めず百代にぶつかってくる俺の根性を気に入ったらしく、ことあるごとにメンバーに入れようとしてくる。

 だが俺はそれをいつも拒否する。あの頃は百代に勝つことだけにムキになっていたからだ。中学の頃は、武道にのめり込みすぎで学校の成績が落ちたこともあった。そのせいか今では武道と勉学をバランスよく両立できるようになり、成績もSクラス上位をキープしている。

 成績が落ち着いたら入ってもいいかな〜、って思っていたが、中3から百代の様子が変わったため拒否した。あいつと同じグループに入るとか、絶対に嫌だ。布団の中でも殺されかけたんだ。放課後やプライベートまで一緒になるとか、確実に命がいくつあっても足りない。

 

「え〜!ユウ先輩なんで入ってくれないの?」

 


 頬をぷく〜と、膨らませて可愛らしく駄々をこねるのは川神一子。百代の妹だが、義妹だ。

 俺自身、詳しい話はよく知らないが、親が他界して慕っていた百代の妹になったらしい。姉と違って、活発ないい子だ。ホント、百代と同じ性格にならなくてよかったと心底思う。

 

「俺もう高校三年だぜ?受験生なの。お前らに構ってる暇ねーんだよ」

 

 本心半分、嘘半分。

 本当は百代のいるグループに入りたくないからだ。もちろん受験生だからというのもある。もっともらしい理由でこの話を切ろうとすると、

 

「言ったでしょキャップ、ワンコ。もう諦めなって」

 

「ここまで断られたらもう無理だろ」

 

 ブーブーと、地団駄を踏む風間と一子を諦めるよう説得するのは2人。椎名京と直江大和だ。

 長年断られ続けて、いい加減諦めろというメンバーもいる。その中で、椎名の目は俺に対して敵対心を持っているようにも見えた。

 メンバーの中で、風間ファミリーへの想いが一番強いのがこいつだからだ。今年に入って新メンバーが入ったようだが、その時もかなり揉めたと百代から聞かされた。

 俺自身は知ったこっちゃないし、だからといって俺にまで敵視される謂れは無い、と思う。

 

 もう1人は直江大和。百代の舎弟だ。

 子供の頃からひょんなことから百代の下僕になったことから、ファミリーの中では一番俺と付き合いが長いのは多分こいつだ。

 なんでも軍師と呼ばれていて、知略と人脈を駆使して戦うらしい。ソレが発揮されてるところは見たことないが。

 

 様子から見て、この二人は俺が風間ファミリーに入るのをよく思っていないようだ。

 俺的に見て、椎名はファミリーへの依存から。

 直江は、知らん。

 

「おーう!私抜きで何してんだ!」

 

「姉さん……」

 

「うお、モモ先輩……」

 

 不良達を叩きのめし終えた百代が、河川敷から一飛びでこちらに飛んできた。話し合っていた俺らの輪の中に無理やり入り込み、俺の隣に陣取る。

 俺と百代が隣り合わせになったことで、野次馬の中にいる一部の女子からきゃーきゃーと黄色い声が上がる。

 

 ……ちげーよ、そんなんじゃねーよ俺達は。

 頼むから変な妄想するのやめてくれ。

 なにやら裏では美男美女の武道家カップルなんて呼ばれているみたいだが、俺にとっちゃたまったものではなかった。

 

 

 

 

 

 

 直江大和はこの時間が苦手だった。

 みんなとともに歩む登校時間。それはいい、だがそこに一人の異物が紛れ込むことが何よりも嫌だと感じていた。

 

「お姉さまも説得して〜。ユウ先輩、ファミリーに入ってくれないのよ〜」

 

「なにい?ここまでくると筋金入りだな。ユウもファミリーに入れよ、楽しいぞ?」

 

「いや、だから姉さん。ユウ先輩は入らないって……」

 

 そうこれである。

 本人は上手く隠しているようだが、大和は百代に好意を抱いていた。舎弟になったのは不本意だったが、長年一緒にいたことで、日々美しくなっていく彼女を間近で見続けた。この結果、恋心という特別な感情を抱くようになったのだ。

 

 美女である百代を狙う異性は多い。

 そんな中で同じファミリーのメンバー、舎弟という立場。これはライバル達に対して大きなアドバンテージと言えよう。

 川神百代に最も近しい存在、それは自分だ。誰にも犯されることのできない聖域に自分はいる、その事実が絶対の安心感を生んでいた。

 だが、それを脅かす者が2人いる。

 

 1人は、リーダーである風間翔一。

 スリルと冒険を愛するこの男が色恋に目覚めた時は度肝を抜いた。しかも相手は姉である川神百代。

 川神学園が誇るイケメン四天王、エレガンテ・クワットロの1人という、思わぬ恋敵の出現だった。

 

 もう1人は、水城ユウ。

 今目の前で百代の腕で首を掴まれ、無理やり引き寄せられている。異物の正体で、一番危険視すべき恋敵だ。

 川神百代に最も近く、最も遠い存在。

 ライバルという、自分とは違う無二の立場を持つこの男は、最も近しい異性とも言えよう。

 幸いなのは、ユウは百代に好意を抱いていないということ。寧ろうっとおしがっていた。今だって拘束から逃れようと足掻いている。

 だがもし、もし彼が百代を異性として狙うようになったのなら……勝敗は明らかとなってしまう。

 それだけは避けなければならない。

 だからこそ大和からしてみれば、この男がファミリー入りするのは面白くない話なのである。

 

「入らないね。百代、お前も三年ならちゃんと卒業できるぐらいは勉強しろよ」

 

「耳の痛いこと言ってくれるなよ〜」

 

「おい、引っ付くな!離せバカ!」

 

「ッ……!」

 

 百代がユウを引き寄せて無理矢理胸に押し付ける。

 それを見た周囲の反応はそれぞれ。他人の色恋に敏感な女子連中の黄色い声援、百代ファンの嫉妬の眼差し、そしてユウのすぐ近くにいる大和の悲痛な表情。翔一もどことなく面白くなさそうな顔をしている。

 とんでもないカオス。このままでは遅刻どころではないと察したユウは、ある方向へ指を差した。

 

「おい百代!挑戦者だぞ!」

 

「なに?」

 

 嘘だ。

 大和は気づいていたが、あえて言わなかった。少しでも早く、二人が離れて欲しいと思ったからだ。

 指が示す方へ視線を誘導し、その隙にユウは百代からの拘束を振り切った。

 足に気をためて一気に解放する。

 野次馬達の上を飛び越え、最短距離で学園へと去っていった。

 

「あ、しまった!待てユウー!」

 

 

 








水城(ミズキ)ユウ
川神院の門下生。
川神学園3年S組。
武道を始めたのは軽い動機だったが、なまじ才能があったためどっぷりと武道の世界にのめり込んだ。川神院に住み込みで修行している。
容姿はイケメンで、身長180cmの恵体。
使用する武器は刀。

幼い頃、自分の才能に自惚れていた時に百代に惨敗して鼻っ柱を折られる。それ以来、百代をライバル視している。
実力は壁越えクラスで、数少ない百代と互角に戦える実力者。だが、最終的に気のゴリ押しでいつも負けている。
百代からのスキンシップは、負けてばかりの自分に対しての嫌がらせや挑発と思っている。

「舐めんなよ、武神。すぐそのニヤケヅラ歪ませてやる」


●川神百代
最強の反則チート女。
ずっと自分にぶつかってくるユウのことが好き。
中3の頃から恋を自覚してアプローチしてきたが、本人からは挑発と思われている。そろそろ実力行使に出ようとしている。ヤバい。

スリーサイズ91/58/88のナイスバディ

「ユウ、やっぱりお前は最高だ!もう私はお前なしじゃ生きられない体になってしまったぞ?ふふふ、絶対に逃さないからな❤︎」
「大和?ああ、あいつの気持ちは気づいてはいるが……男として見ていないな。ってか見れないな。ユウを見ろ、腹筋シックスパックだぞ?」


●直江大和
我らが軍師(笑)
百代のことが好き。
ユウと翔一と、恋敵が多くて焦ってる。
息子はマイビッグマグナム。重い一撃をズドンと。
尻派。

「ユウ先輩、本当に姉さんと付き合ってないんだよな…」


●風間翔一
風間ファミリーのキャップ。
百代のことが好き。
大和と共にユウをライバル視しているが、大和と違って百代にぶつかっていくユウを気に入っており、ファミリーに迎えようとしている。
息子はマシンガン。連射に長ける。

「ユウ先輩に大和もライバルか〜、ハードル高えな〜。だが、それでこそ燃えるってもんだぜ!モモ先輩好きだ!」



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