弓子とのデート省いてごめんね
機会があれば書くから
「初めて来たが……こいつが……」
時は夕刻。日が沈み出して夕焼けが街を照らし出す時刻、俺は目の前の廃ビルを見上げていた。一見ただのビルだが、よく見れば所々整備がされていて他の建物と比べれば若干綺麗に見える。
背後には、風間を筆頭に風間ファミリーのメンバーが揃っていた。ただ一人、百代は決闘で少し遅れるそうだ。
「ささ、先輩入って入って!中も凄いのよ!」
「押すなよ一子……」
風間と同じく、昔から俺をファミリーに勧誘していた一子はこの件に一番乗り気だった。その姿はまるで子犬だ。尻尾が生えているもんなら、ブンブンと引き千切れんばかりに尻尾を振りながら俺の周りをグルグル駆け回っていることだろう。これが最後だからか、かなり気合が入っているのがわかる。
他のメンバーも同様だ。ここまで来たんなら、やはり俺に入って欲しいのだろう……二人を除いて。
「…………」
「まあまあ京、そんなにユウ先輩を睨みつけんなよ」
「不満なのは分かるけど、これが最後だから」
椎名だけは不満気に俺を睨みつけていた。
聞けばこの秘密基地ご招待大作戦、あいつだけは最後まで渋ったらしい。つい最近もフリードリヒのせいで一悶着あったらしいし、かなり警戒の色が強い。
もう一人は直江。
この勧誘を最後にしようと提案した張本人。
これは俺の予想なんだが、いつまでも風間が恋敵の勧誘を続けていては心休まないから、拒否なら拒否とここでキッパリと決めるべきだと考えたんだろう。
内心は、入らないでほしいと願っているんじゃないかと思う。ここ最近、あいつは俺への不信感を募らせているからな……ああ、胃が痛くなってきた。
すると、早くもトラブルが発生した。
「む、誰だ貴様?侵入者かッ‼︎」
「うぉぉおう⁉︎何だお前!」
一子に押されながらビルに入った瞬間、閃光が俺の顔面目掛けて飛んできた。おそらく斬撃。急いで急いでと背中を押されていたから反応が遅ちまった、無理矢理にでも身を捻ることで回避すると、空振りになった閃光はビルの壁にあたり衝撃音が轟いた。
当然、ビルの中から戦闘音と俺の叫び声は、外にいる風間ファミリーの耳にも入る。
ギョッとしたメンバー全員の視線が、風間へ集まる。それを聞いたリーダーはあちゃ〜、と頭を押さえた。
「しまった、クッキーに先輩の事教えるの忘れてたぜ」
「言い出しっぺだろう、キャップ⁉︎」
「落ち着けクリス。素手でも先輩なら大丈夫だろ」
「あの、ユウ先輩の心配は……」
「クッキー大丈夫⁉︎今行くから!」
「だから、ユウ先輩の心配は⁉︎」
『誰もユウっちのこと心配してねー!』
……お前ら聞こえてるからな?黛以外、誰も襲われてる俺の心配してねぇ……それどころか椎名に至っては、俺じゃない別のやつを心配をしてビルの中に入って来た。
続いて風間ファミリーの面々もビルに入って来る。そこで見たものは、廊下で秘密基地の守護者と俺が対峙している光景だ。守護者の手にはビームサーベルが握られて、その切っ先を向けている。対する俺は頬に血を流していた。
最初の一撃、なんとか回避できたが少し頬を掠めたようだ。俺は背後にいる一子を睨んだ。
「背中押されたら、避けも守りもままならねーだろーが!」
「ごべんなざーい!」
なんとか斬撃は回避できたものの、間一髪だった。頬の血を手で拭きながら、頭にゲンコツを落とす。
頭に特大のたんこぶを作り、一子は涙目だ。
そんな俺達の横を通り過ぎ、椎名は守護者に寄り添った。
「クッキー、怪我はない?」
「く、確実に仕留められる角度だったのに避けられた……こいつ、できる!」
「待て待てクッキー、この人はお客さんだ。今から風間ファミリーに勧誘するんだよ」
「なに?そうなのか?」
風間の説得を聞いて、クッキーと呼ばれた守護者はビームサーベルを仕舞う。敵対者ではないとわかると、機会音を立てながらその体を変形させて行った。
人形から、卵のような形態へと。
「それならそうと言ってよ〜、斬っちゃうところだったじゃないのさ〜」
「な、何なんだこれは?どんな出し物が出てくるかと思ったら……ロボットとビームサーベルが来たぞ?」
目をパチクリさせながら狼狽える俺に、風間が胸を張りながら自信満々に説明してきた。
「こいつはクッキー。九鬼財閥のロボでさ、うちの秘密基地のガードセキュリティだ。どうすか先輩?凄いでしょ⁉︎」
「そぉーだなー!それを先に言ってくれればなー!好感度は上がったはずだよなー!」
基地にロボット、ビームサーベル。確かに男心をくすぐる要素だ。
実際、俺も目を輝かせていた事だろう。ちゃんと事前に説明してもらえていれば。それがなかったら、こうして頬を斬られて死にかけることもなかった。
しかも後ろの方では……
「……クッキー、あいつがなにかしでかしたら、問答無用でやっちゃっていいから」
「了解したよ京!」
「ほらー!もう帰りたいんだけど‼︎」
まだ廊下だっつーのに、の心は既に風間ファミリーへの勧誘を拒否していた。
「こりゃヤベェな……第一印象が大事なのに、いきなりピンチだ」
「まだよキャップ!秘密基地の中を見てもらえれば、きっと先輩も気に入ってくれるわ!」
「そうだなワンコ!気を取り直していくぜ!」
「……第一印象が最悪なのは、お前ら二人のせいだというのを忘れるなよ?」
直江のツッコミで風間と一子は「はい…」と反省し、改めて俺は風間ファミリーの秘密基地の内部へ招待された。
ビルの五階、そこが主に基地として使われてるフロアらしい。一子が扉を開くと、そこには想像以上の光景が広がっていた。
「うぉ……」
思わず声がこぼれてしまった。
秘密基地といっても簡易的なものだろうと思っていたが、大間違いだった。中を綺麗にしているのは勿論、それぞれのメンバーが私物を持ち込んでいる。棚には漫画や小説がびっしりと並んで、ゲームの類も見られる。中心には大きめのテーブルと、それを囲うようにメンバー分の椅子とソファーが置かれていた。
当然、電気は通っていないから、夜にアジト内部を照らすためにランプがあちこちに設置されている。
本格的にも程があるだろ……空いた口が塞がらない俺の視界の隅で、風間と一子が予想通りだとハイタッチをしていた。
さらに基地内部の紹介は続いていく。それぞれのメンバーが、自分が持ってきた私物を見せつけてくる。
「先輩はゲームとかやったことある?」
「いや、ないな。トランプとか花札ならよくやるけど。それと漫画も……これ、結構古いやつじゃねーの?」
本棚から一冊を取って、適当にパラパラとめくってみる。手に持った感触やページの色合いからして、かなり読み返されているのが分かる。
しかも漫画だけじゃなく小説も、置かれているものは全巻揃っていた。
気づけば忙しなく基地内を見渡すようになっていた俺に、風間が得意顔で飲み物を勧めてきた。
「まあまあ先輩、ここはお一つ飲み物でもどうすか?コーラから、果物ジュース……お茶に水と揃ってるけど」
「じゃあ、お茶で」
「はぁーい!お茶入りまーす!」
「ホストクラブか、ここは……」
「にしてもわざわざお茶とは……花札もそうだが、先輩って渋いですね」
「まるで老人だな」
それはちょっと聞き捨てならねぇぞ。フリードリヒと直江にからかわれて、不服に頬をぽりぽりとかく。割と自覚はあるんだがな、なにせそういう性分なんだから仕方ねーだろ。
「炭酸苦手なんだよ。あの喉が痛くなるやつ」
「えぇ〜、炭酸はあれがいいのに!」
「むせるの苦手なんだよな〜」
風間から渡されたペットボトルのお茶を手にして、キャップを取って豪快に呷る。丁度喉が渇いていたし、ごきゅ…ごきゅ…と喉を鳴らして一気飲みした。
「こりゃいい、落ち着くな」
ソファーの一つに腰を下ろして、力を抜く。座り心地も悪くない。こいつらが毎日ここで集まりダベるのも分かる気がする。外界から遮断されているこの空間、何のストレスなくくつろぐことができる。
確かに、秘密基地というだけのことはある。
そんな俺の姿を見て風間ファミリーの奴らは、あと一息……と呟く。
「ふっふっふ、そんじゃあ最後にとっておきを見せてやろうじゃねぇか」
「ここよりまだいいのがあるのか?」
興味が尽きない。多分俺、半分以上虜になってるな。それはこいつらも勘付いているようで、さらに上の階へと案内された。
目指すは屋上。五階もあるから最上階はかなりの高さだ。そこから眺める景色がまたかくべつなのだそうだ。
扉を開けて、その光景を実際に目にすると……
「—————————」
言葉を失った。
風間が夕方を選んだのは、メンバーが揃うからだけの理由じゃないんだったと理解した。この景色は、夕刻の方が最も美しく見れるからだ。それぐらいに、目を奪われる光景だった。
夕陽に照らされる川神の街が一望できる。長年生まれ育った土地だが、ここまで綺麗に見ることができるスポットはそうそうない。
「ここが風間ファミリーの秘密基地目玉スポットだ!」
これが風間ファミリーの全て。
見せられるものは全て見せたられた。
俺の反応を見ようと、フリードリヒが顔を覗き込んでくる。
「どうですか先輩?風間ファミリーに入りたいですか?」
「……ちょっと、この景色しばらく見ていていいか?」
今の俺は完全に目を奪われている。ロマンチストってわけじゃないが、こんなに綺麗な光景はもう少し見ていたい。
これは完落ち確定だろう。そう思ったメンバーはニヤニヤと笑いながら、ここは一人にさせておこうと再び五階の部屋へと戻って行った。
残った俺は手すりに身体を寄せて、ゆったりとした姿勢で川神の軽視を眺める。
ふぅ…と、軽く息を吐くと……
「空から美少女参上!」
その雰囲気を全てぶち壊す声が聞こえてきた。
「お前はなんつー空気が読めない女なんだ」
最高の雰囲気が完全に台無しだ。夕陽に照らされた街並みを見た感動も消え失せた。あるのは、この空気をぶち壊した憎むべき武神への呆れのみ。
そんな本人はどこ吹く風のように仁王立ちしている。
「ふふん♪夕日の照らす屋上に美男美女、いいシチュエーションだろ?」
「さては計ったな?」
「まさか、決闘で遅れたのは本当だ。その後急いできたら、みんなの気が屋上に集まってるのを感じてな。お前の気が一人になったのを見計らって……」
「やっぱ計ってんじゃねーか‼︎」
「まあそういうな!」
と、百代は屋上に結界を張った。
半透明な気の膜が屋上全体を包み込むのを見て、まさか……と顔を引き攣らせる。そんな俺の下へ、百代が歩み寄ってきた。
「ここでヤルのか⁉︎思い出の秘密基地だろ!」
「今日、一日中挑戦者の相手でセックスできなかったからな。しかもあいつら弱すぎて欲求不満なんだよ」
いやいやいや待て、流石にここじゃまずいだろ。と拒否しても、股間を握られて従わざるおえない。
百代は四六時中、俺を犯すと言った。川神院でも、外でも、学園であっても。こいつがヤリたいと思ったら直ぐにヤる、その場でやる。徹底的に俺を落とすために犯す。それがルールだ。
(だからと言って、マジでアジトでやるか……)
椎名や師岡からの態度や、他の風間ファミリーもこのアジトには強い思い入れがあると招待された時によく理解できた。
汚してはならない聖域と言っていい。そこで行為をすると言うのが何を意味しているのか、頭の中にクッキーに斬られかけた記憶がよぎる。
「いやダメだろ。バレたら今度こそロボットにマジで斬られる」
「お前なら大冗談だ、ろ❤︎」
百代ははいていたジーパンを下ろして、下半身が露出させる。むっちりとした肉付きのある脚部と太ももを剥き出しにし、片足を上げる。武道家として鍛えたバランス力によって、美しいI字バランスを見せつけた。
身につけているのは黒の下着のみ。それをずらして俺の肉棒が入りやすいようにしており、陰唇が丸見えだ。
「うぉ⁉︎」
上げた片足が器用に俺の肩に引っ掛けられて、無理矢理引き寄せられる。俺の股間が、丁度百代の股に位置するように。
片足の状態でずりずりと百代が器用に体を動かすと、陰唇と肉棒が擦り合わさる。
むくむくと勃ち上がっていく己のペニスに、もう諦めて覚悟を決める。パンツと一緒にズボンを下ろして肉棒を曝け出した。
既に勃起しているソレを、百代の膣口に押し込む。柔らかく熱を帯びた膣肉で肉棒を抱きしめられ、堪らない興奮が全身に広がった。
つまらない決闘とは言え、戦いが終わったばかりの百代の身体は若干火照っている。気を抜けば搾り取られそうな具合のいい武神まんこは、ペニスを飲み込み擦り合わせてくる。
百代の膣はこれまでのセックスによって、肉棒をしっかりと包み込み、俺の中にある“男”を夢中にさせて来る。この膣で、これまで何発搾り取られたことか。
俺は百代を抱き、数えただけでも十発分は種付けをして疲れて眠ってしまったことを今になって思い出した。
「本当に、いやらしい女だ。お前はッ!」
くびれに手を回して腰を打ち付ける。
「あぁッ❤︎それ、いい……❤︎もっとぉ❤︎‼︎」
百代は片足の状態であるにも関わらず、微動だにしない。それはまるで柱のようで、俺にされるがままになっていることに悦んだ。そんなやつの尻を、股間を強く叩きつける腰振りをしながら何度も尻を引っぱたいていく。
「……アジトでも俺のがそんなにほしいのかよ⁉︎」
「あたり……んん!まえ、だろぉ❤︎ぶっとくて、かたくてぇ……❤︎のうこうでぇ、しきゅうにはりついて……あぁ!とれないくらいのぉ❤︎ぐちゅぐちゅねばねばザーメンを……だしてくれぇ!いつのひかぁ、ぜったいにおまえとの、あ❤︎こどもをぉ……うんでみせるから❤︎」
スパァンッ!一際強く引っぱたくと、その尻に掌の跡がついた。白い尻にはっきりとついたそれは、痛みを感じながらも百代は快感を抱く。
「お、おぉっ……出るッ」
「あぁんっ……!」
こみ上げてくるどろどろの精液。
ドヴォびゅるるるっ‼︎どくッ、どくッ……!膣奥に肉棒を突き入れ、中で盛大に果てた。尿道口から精液が迸り、子宮にぶちまけられる。
シャワーのように拡散し、精子の群れが子宮の壁を埋め尽くし、ねっちょりとへばりついてぷるぷると震える。重力など完全に無視し、強烈な粘着力でその場にとどまっている。
くっついた精液に新しい精液がくっつき、子宮内は瞬間接着剤のような精子で満たされていく。中出ししながら百代の尻を叩く振動に合わせてぷるんと震えるが、一滴たりとも子宮から零れ出ない。
息を吐きながら肉棒を膣から抜いた。
「はぁ、はぁ……これで満足かよ」
「お゛……お゛ほ❤︎」
「ダメだ聞いてねぇ」
ふぅ、とため息を吐くと手すりに寄りかかっている百代の淫靡な姿をチラ見する。
エロい、自他共に認める絶世の美女が下品に股を開きアヘ顔を晒している。男ならば誰であろうと、その様を見た瞬間に飛びつくだろう。
それは、雄である水城ユウであっても例外ではなかった。
雄としての本能が、この女を犯せと訴えている。
射精したばかりの肉棒もすでにギンギンに勃起しており、自然と百代の身体に覆い被さった。
そして…
———ちくしょう、悔しいが俺は染まっちまってる。
快楽の虜になってしまっている己の不甲斐なさに歯を食いしばった。
「おお、珍しいなユウ……お前の方からなんて……お゛ほぉ❤︎」
そして始まる第二ラウンド。
そこから第三、第四と続くだろう。
水城ユウの性欲が尽きるまで。
しばらくの間、風間ファミリーの秘密基地の屋上にてアヘ声とセックス音が響き続けるのだった。
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その後、なんとか百代の気を持ち直させてユウは五階のフロアへと降りる。あれからがっつかれてさらに十発は中出しした。そのせいか隣には肌がツヤツヤになって満足げの百代と、対してユウはげっそりしている。
ドアを開けると、ゲームや漫画、雑談など各々がやりたいことをしていた。二人が中に入ると、その手を一旦止めて視線が集中する。
最初に反応したのは、一子だった。
「あれ?お姉様いつのまに来てたの⁉︎」
「ついさっきな〜、愛しい妹よナデナデしてやろぉ〜」
「うにゃぁ〜!」
超スピードで妹の隣へ移動して激しく撫で回す姉。ソレはまるで子犬を褒めるようにわしゃわしゃとしたもので、一子は嬉しそうにソレを受け入れる。一緒に住んでいる為、ユウにとっては見慣れた光景だ。
「ほぉ〜ら、ユウも立ってないでこっちきて座れ!」
「ひっぱんなよ」
見守っていると、百代に腕を掴まれてグィッと引っ張られる。一子、百代、ユウと並んでソファーに座る形となった。
「……」
そんな三人の姿を見て不服に感じた大和は奥歯を噛み締める。誰にもバレないぐらいの微小な変化だが、確かな不満の感情を孕んだ目でユウを睨んでいた。
本当なら、姉さんの隣は俺の位置なのに……。
すると、翔一が早速本題へ切り出す。
「で、どーすか先輩。俺達、風間ファミリーに入りたいかどうか!」
「ここできっちり決めてくれ」
翔一と大和の問いに、ユウは顎に手を置く。
「そうだな……」
長年勧誘されては断ってきたが、こうして実際に秘密基地に招待されたのは初めてだ。
そして、この場を気に入っているのも確かだ。基地というには本格的すぎる内装。隠れ家というより、普通に住めるレベルだ。
落ち着いてゆったりできるし、なにより屋上での景色も何度も見てみたいと思うぐらいには虜になっていた。
だが、それでも……
「悪い。やっぱ無理だ」
やはり一番の問題は、隣に座る彼女だった。
ユウからの答え聞いて、椅子に座っていた翔一はショックのあまり頭からずっこけた。
「ったはー、またフラれちまったー!ガード硬すぎだろ先輩ぃー!」
「これでもう諦めるしかないね、キャップ」
「残念だね」と言う京の顔はとても嬉しそうだ。最初から最後まで反対派だったために、この結果には大満足である。
大和も同様に、胸を撫で下ろしていた。悔しそうに悶える翔一に、ユウは苦笑いを浮かべて百代に指差す。
「その情熱を百代を落とすのに使え」
「あ!私の前でソレ言うかー⁉︎」
「お前の前だからこそだ」
聞き捨てならない言葉に掴み掛かる百代、それをユウも真正面から受けて立つ。ギリギリと音を立てて、気の衝突が始まる。互いに一歩も譲ることなく微動だにしない。武神と取っ組み合いができる男など、この男ぐらいのものだ。
そんな二人を見て、クリスがある疑問を口にした。
「気になっていたんだが……ユウ先輩とモモ先輩は、その……付き合って……いるのか?」
「噂になっていますよね……」
由紀江も興味深そうに問いかけてくる。
水城ユウと川神百代がライバルで、昔からの仲なのは周知の事実。学園でも裏では付き合っているのではないか、ともっぱらの噂だ。
剣士としても先輩としても、何より一人の男性として淡い恋心を抱いている由紀江は、是非とも二人の関係を知りたかった。
それに答えたのは百代だった。
「いや、付き合ってないぞ。今は私からユウをアプローチ中だ。こいつ、私をフリやがったからな」
いとも平然と、まるで笑い話をしているかのような軽い口調。そんな百代の言葉を聞いた風間ファミリー全体に衝撃が走った。
全員の目がユウに引っ付く百代を凝視する。
「ええええええええええええ⁉︎お姉様がフラれた⁉︎ユウ先輩に、告白してぇ⁉︎」
「マジかよ……聞いてないよ、姉さん⁉︎」
「フラれた事をいちいち報告なんて、傷口エグるようなことしないだろ?川神大戦が終わった後に、な?」
腕に自身の手を絡ませて身体を寄せる百代に、ユウはうんざりした顔で頷いた。告白してフラれたの間違っていないが、それ以上にやばいこともしている。それを巧妙に隠していることに、心の中で大きくため息を吐いた。
そんな中で、大和はある確信を得ていた。
(ッ、やっぱり!)
大戦が終わって翌日に、百代の様子が変わった事の原因。それはこの事だったのか、と。
最近妙な彼に向ける熱っぽい視線と、過激なボディタッチ。合点がいったと同時に、ある疑問も生まれていた。
「ユウ先輩に?モモ先輩が告白して……フッた⁉︎ありえねぇ!こんな美女をフルなんて、もしかして不の———」
岳人の腹に百代の拳がめり込む。
ズン!と鈍い音を立てて、岳人は膝をついた。ズンズンと内臓に響く痛みを手で抑え、それをゴミを見るような目で百代が見下ろす。
「私の前でこいつへの侮辱は許さん。フラれた今でも私は、ユウのことを愛してるんだ」
大胆な告白に場は騒然となる。それもそうだろう。メンバーには百代に好意を寄せる大和と翔一がいる。その二人の目の前でカミングアウトするとは、酷な話でもあるはずだ。
「ま、気持ちは伝えたんだからこれから私の魅力で落としていくさ。覚悟しろ?」
「そっか〜、でもユウ先輩とお姉様が付き合うなら、私も嬉しいわ!半分家族みたいなものだもん!」
「お、姉の恋を応援してくれるのか妹よ〜!かわいいな〜、ホントお前はかわいいな〜!」
「うみゃ〜!」
再び姉が妹を撫で回す。一子にとって、川神院で住み込みで修行しているユウはほぼ家族同然だった。そんな彼が、本当の意味で川神の一員になるかもしれないのだから嬉しいに決まっていた。
しかし、中には喜べない者もいる。
「姉さん、やめた方がいいよ」
百代の舎弟、直江大和だ。
さっきまで黙りこくっていた大和だったが、もう我慢の限界が来ていた。ぷるぷると拳を震わせて、今にも爆発しそうな気持ちを押さえつけている。
耐えているのは、ファミリーの頭脳であるため冷静な判断をしなければという軍師としての矜持だ。
「どうした大和、いきなり?」
「前に先輩に聞いたんだ。姉さん、ユウ先輩の弱みを握ってるんだって?」
ユウとの視線が合わさる。
あれは屋上での話のこと。
百代の違和感を確かめる為に、大和は彼にかなり強引だが聞き出したのだ。百代に弱みを握られて、参っているのだと。
この話を切り出すなら、今だ。
「はっきり言わせてもらうけど、そのやり方は悪手だ。そんなんじゃ人は振り向かないよ。先輩も迷惑だと思ってるんだろ?」
「ああ、そうだな」
ユウも大和の言葉に同意してコクリと頷く。
ほら、と得意顔で百代に言う。好意を寄せる相手さえも、大和の味方だ。
「酷な話だけど、姉さんはユウ先輩に女として見られてないんだ。諦めた方がいいって」
「おおう、攻めた言い方するな……」
「キャップを見習うべきだよ。同じように先輩のことをキッパリ諦めて、次の恋を探した方がいい」
好意を持ったアプローチでも相手が嫌がっているのでは逆効果だ、それではモノにするどころか余計に心は遠のくだろう。フラれたのならフラれたと、勧誘を断られた翔一のようにきっぱり諦めるのが大切だと大和は言う。
そして自分を見て欲しいと。
しかし、百代の返答は……
「……お前がそれを言うのか?私にフラれても、まだ口説くのを続けてるお前が?」
「ッ……」
痛いところをつかれて、ぎゅう……と拳を握りしめる。これは選択ミスだ、自分としたことが言葉選びをミスしてしまった。
フラれても百代を諦めない大和が、百代の恋に口を挟む。それは筋が通らないだろう、と。
「私には私の落とし方があるんだ。弟よ、お前にそれを指図される謂れはない」
「本人の迷惑になってるって言ってるんだよ」
「おとなしい恋の仕方をする女に見えるか?私が。心の底から欲しているから、どんな手も使うぞ」
「……でも、先輩はやめて欲しいんですよね!」
「ああ、できれば今すぐな」
「ほら、姉さん!」
「はっはっは、断る。絶対に逃さん」
本人が嫌がろうとも、百代はその手を離さない。寧ろその抵抗を面白がってさらに力を強くしていく。
長い付き合いである彼自身も、こう言うやつだと、半端諦めて呆れている状態だ。
大和にとって、それが何よりも納得がいかない。
「なぁ、京なら分かるよな?何度フラれても、告白し続ける私の気持ち」
「う〜ん、まぁ……確かに同意できるけど……」
「ほらな、それと同じだ。大和とキャップ、お前達が私に告白してくれたのは嬉しいが、私には私の恋があるんだよ。絶対に手放したくないんだ」
「京と姉さんの話は違うだろ!」
「違わないだろ?」
「いいや違う!京は俺に助けられたから好きになったっていうけど、俺も昔は京を虐める側に加担していた。そこで俺は思ったんだ……俺が京と付き合う資格なんて無いと……」
もし、大和以外の人間が助けたなら、京はその男に惚れることだろう。それはちゃんと恋をしていると言えるのだろうか、それは違うと大和は思っていた。
「京にはちゃんとした恋をして欲しい、だから断り続けてるんだよ……」
「じゃあ、私が私の恋をするのはダメなのか?」
「本人に脈がないなら仕方ないって……」
「それはお前の決めることじゃないな」
「でも姉さ……‼︎」
「俺もう帰るぞ」
上がり続ける会話の熱、それを遮ったのはユウだった。ため息混じりに立ち上がり、出入り口のドアへ向かう。
主軸である勧誘は断った、もうこのアジトに長居する理由はない。なによりこの空気が重すぎる。吐きそうなぐらいに。
そんな彼の背中を見て、大和は問いかける。
「先輩、学園の屋上で俺の恋を応援してくれるって言ったの……覚えてますか?」
「ああ、しっかりとな」
「じゃあ、こんな“間男”みたいな真似しないでくださいよ」
「間男、か……確かにそうだな……」
大和にはまだまだ隠していることが多すぎる。その全てが、この風間ファミリーを崩壊してしまいかねない程の爆弾だ。
それを抱えているのだから、そんな評価になるのも致し方ないと、ユウは思った。
「百代、こんな俺でもまだ好きなのか?」
「ああ、大好きだ。っていうか、こうなったのは私が原因な所あるしな」
「ホンット、お前は昔から変わらず……」
———太々しい。
そう呟いて、ユウはフロアから出た。
ゆっくりとドアを閉めると、目の前にはクッキーとばったり鉢合わせしてしまった。その手には、人数分のカップを乗せたお盆を持っている。
「あれ?もう帰っちゃうの?」
「ああ、悪いな。勧誘は蹴った」
「そうなんだ、メンバーが増えると思ったのに……さっきは斬っちゃってごめんね。これ、コーヒーっぽい何かだよ」
「ありがたく貰うぜ」
“っぽい何か”、の部分が気になるがせっかく入れてくれたので頂くことにする。
秘密基地で生じた嫌な気持ちを洗い流すように、グイッと一気に飲み飲む。そしてコップを盆に戻し「ごちそうさん」と礼を言った。
ビルから出て帰路。
あたりはもう真っ暗になっていた。
街明かりが照らす方へ歩きながら、口の中に残ったコーヒーの味を呟いた。
「にげぇ……」
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