百代とユウのイチャラブデートです
ほんの数話ですけど、どうぞ
ふと、視界の隅に川神学園が入り込んだ。
懐かしい……卒業してまだ数ヶ月だというのに、学生時代がどこか遠い思い出だと感じてしまう。
何より一番記憶に残っている思い出は、川神大戦の前日。後輩から自軍へのスカウトをされた時のことだ。
思えば、あの日から全てが始まったんだよな……。足を止めて、顔を上へと向ける。視線の向こう側には、学園の屋上があった。
『俺はあいつのことを異性としては見てない!つーか見れない!だってあの川神百代だぞ⁉︎嵐が人間の姿をした全身天災人間だ!』
『お前が百代のこと好きなのは知ってる!あいつがモテるのもわかる!美人なのは間違いないからな!だがな!』 『安全圏からあいつの戦いを眺めてただけのお前らと違って、俺はあいつと真正面からやり合ってきたんだ!顔面殴られて鼻の骨折られたこともあった!隣町までぶっ飛ばされたこともあった!今朝も殺されかけた!愛せるわけねーだろ!』
「あの時の俺に今の俺を見せたら、どんな顔するかな……血反吐を吐きながら発狂して切腹、ぐらいはするだろうな」
ははは……と苦笑いを浮かべるのは、水城ユウ———ではなく、川神ユウ。
川神学園卒業とともに、川神院の長女であり時期総代、武神の称号を持つ最強の武士娘、川神百代と結婚した男である。
世界を激震させた最強夫婦の誕生。式は九鬼家と川神院総出で取り仕切り、盛大に祝われた。出席したのも、武道家だけではなくテレビで見たような政治家や有名人の顔もあった。
そんな彼らの前で……結婚式中に百代とセックスした。しかも自分から求めたことを思い出し、ユウは頭を抑えて悶絶する。
冷静になって考えてみれば、かなりクレイジーなことをやらかした。恐るべき自身の性欲である。
まぁ、百代の幻想世界のお陰で結婚式は何事もなく終了し、こうして夫婦となったのだからよしとしよう。
「今頃あいつらは三年かぁ……」
いつもユウをメンバーに勧誘してきた、風間ファミリーの皆んなを思い出す。
勧誘といっても、積極的だったのは翔一と一子と、あと百代だけ。残るは中立か反対派で……特に大和の顔が思い浮かぶ。
「今でも、あいつには酷いことしちまったな……」
どちらかといえば、ユウも十分に被害者の立場なのだが、それが言い訳にならないほどに直江大和に対して罪悪感を感じていた。
一生残るトラウマを植え付けたに等しい。
一子に聞いた話では、暫く死んだような顔になっていたが、ある日突然元に戻ったらしい。
どこか達観した、諦めたかのような薄ら笑いを浮かべて……その隣には、テカテカの肌で笑っている京がいたそうな。
喰われたな……誰もが察した。
「さてと、俺も行くか」
思い出に浸るのはここぐらいにして、ユウは再び歩き出す。
季節は冬———それもクリスマスシーズン。
学園は冬休みに入り、殆どの生徒はすでに実家に帰っている。風間ファミリーは今でも相変わらず集っているみたいだが……一人を除いて。
風間ファミリーを卒業した者、ユウはそいつと待ち合わせの約束をしていた。
待ち合わせの場所は、ある公園。
クリスマスの季節であると、中心には大きなクリスマスツリーが置かれてある。その周囲には家族連れや、恋人達が集まり賑わっていた。
ユウもその一人、恋人……というか妻とここでデートの待ち合わせ場所にしようという話だった。
そこに向かうと、既に待ち人の姿があった。
思わず見惚れてしまうほどの美女が、そこにいた。
長い黒髪、雪のように白い肌。凛とした切れ長の目と、少し厚めの唇。全てが整っており、誰もが目を離せない美貌の持ち主だ。
公園にいる多くの人々も、彼女の美しき姿に目を奪われている。なによりその人物は、知らない者の方が珍しい有名人なのだから。
彼女がユウの視線に気付き、振り向く。
ユウの存在を認知すると一瞬、彼女は怪訝な表情を浮かべていた。それは本当に一瞬だけで、すぐに優しい微笑みに変わるのだった。
「よう、待ったか百代」
「いいや、今来たところだ」
カップルならばお決まりのセリフ。
一度これを言ってみたかったんだ!と、言葉に出ていないが百代は満足そうに鼻を鳴らしている。
実際はかなり前に来ていたのだろう。背後にいる……男達の残骸がそれを物語る。
「一応聞くが、ありゃなんだ?」
二人や三人程度ではなく、十を超えるほど大勢の男が山のように積まれていた。
よく最強の称号を手にせんと挑んでくる挑戦者もいれば、その中にはいかにもなチンピラや金持ちそうなおっさんまで。誰もが顔に青あざができて伸びている。
「ナンパだ。へい彼女〜、って誘ってきたから丁寧にお断りしておいた」
「どこがだよ」
あの結婚から、百代の知名度はさらに上がった。何より強さだけでなく、その美しさに惹かれる者も出てきたぐらいだ。
事実、今の百代は美しい。
元が美女である上に、黒いチェック柄のコートに、白いセーター。下はミニスカートで、すらりと伸びる生足が魅力的である。
そして冬の厚着であろうともはっきりとわかる、たわわに実った爆乳。毎日の交わりによって、今ではバスト100を超える特大の乳だ。
例え結婚しているとわかっていても、我慢できず狙って誘おうとする男がいるのもわかる。
しかし相手は武神。そんじょそこらの雄がアピール……ましてや実力行使に出ようとも、拳一つで黙らされるのが必然であった。
「つーかさ、待ち合わせなんてする必要ないだろ?一緒に住んでるんだから」
「い・や・だ。こういうのやってみたかったんだよ。夫婦なのに、デートの一つもやってないだろ?」
「そうだなぁ。交際もデートもしてないのに、それ全部すっ飛ばして結婚だもんなぁ」
「セックスは死ぬほどしたけどな♪」
「お前のせいでな」
そう、全てはこの女の暴走が招いたのがそもそもの原因。あの川神大戦の後に起きた逆レイプ、そこから全てが始まったのだ。
あの時は、何としてでもこのイカれ女から自由になるために争っていたのに、今ではどうだろう。
惚れた弱みというべきか。やれやれと、ため息を吐いて受け入れている自分がいる。
人とは変わる者である。
「ほら、行くぞ。デートだあなた❤︎」
「ああ、百代」
差し出された手を、ユウは手に取る。
指と指を絡ませて、二人は並んで冬の街へと繰り出した。
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ーーーーーー
ーーー
クリスマスということもあり、デート先はどこもカップルだらけだ。
寒さを凌ぐために、皆それぞれ恋人と身を寄せ合っている。百代のような美女と美男なら、尚更目立つのは必然。どこに行っても注目の的となっていた。
しかし二人は気にせずに街を行く。目的地はない。ただ目についた店に入ったり、食べたり飲んだりしている。肩書が肩書きであるために、目立つのは慣れている。
こういうのは気にするだけ無駄なのだと、受け入れた上でデートを楽しむのだ。
手を繋いで歩く二人、特に百代が上機嫌なのは一目瞭然である。
普段は凛としたクールな美女が、今は恋する乙女の顔となっている。周りからすれば眼福の極みだろう。
こんな美女が、本性は好きな男を手に入れるために、肉欲のままに相手を犯す怪物だとは誰も思うまい。
そう、川神百代の全てを知っているのは川神ユウだけなのだ。
「んふふ❤︎」
さらに百代は、手を繋ぐだけでは物足りなくなりユウの腕に抱きつく。服越しであろうと、巨胸が腕に当たって潰れているのがわかる。
結婚する前のユウは、こうすると嫌そうに手を振り解こうとした。しかし、今では受け入れてくれている。それが何よりも嬉しく、自分のものになったのだと言う証明だと、百代は実感していた。
「ほら、ユウ。あ〜ん」
「ったく……あむ」
出店で買ったクレープを、ユウの口の方へ持っていく百代。
夫は苦笑いを浮かべながらも、気恥ずかしそうにそれを一口されるがままに食べた。
ストロベリーの甘酸っぱさと、バナナのトロトロの甘味、クリームとチョコの抜群の組み合わせが口いっぱいに広がる。
自然と笑みが溢れるユウを他所に、百代の顔はどんどん蕩けていく。
彼女の機嫌がいいのは、それだけが理由ではなかった。
デートという行為そのものが嬉しいのだ。百代にとってはこれが生まれて初めてのデートであるのだから当然だろう。
(本当に……幸せだ)
口元を緩めて、百代は思う。
ここに至るまで多くのことがあった。
力という強さに魅せられ、ただ強い敵と戦う快感に溺れていた。そこで見つけた生涯のライバルにして、初恋の男。
中三になって自覚しアプローチを始めたが、この鈍感男ときたらそれに全く気づきもしない。
だから我慢できずに襲った、犯した。胸の奥から湧き上がる情欲に身を任せて、嫌がるユウの貞操を喰らった。
そこからはもう激動の毎日だったな……百代は、冬の星空を見上げて小さく息を吐いた。
学校、川神院、街中、海……こいつを堕とすためにどこでも引き摺り込んでは犯した。
その過程で風間ファミリー……というより舎弟が暴走してとんでもないことをやらかしたが……。
(いや、もうこれ以上思い返すのはよそう……終わったことだし)
もう全て決着をつけたことなのだ。
実際にこうして好きな相手と結ばれたのだから、過去を掘り返したところで気持ちが暗くなるだけだ。
せっかくのクリスマスデート、楽しまなければ。
自分の全てを受け止めて愛してくれる男の妻となり、共に暮らす。
たったそれだけのことで、百代は最高の幸福を得た気分になっているのだ。
やがて、夫婦はデートの終点へと辿り着いた。
予めここに来るために行動したわけではない。ただ、のらりくらりとクリスマス一色の街を楽しんでいただけだ。
周りには、自分達と同じ夫婦やカップルが沢山いる。自然にここへきてしまったのか、それとも計画的に動いてここへきたのかわからない。
だが、デートの終わりとしてはこれ以上の場所はないだろう。
ユウと百代の前には、辺り一面に光るイルミネーションが広がっていた。
各所に設置されたクリスマスツリー達。店や壁の装飾として付けられた色彩豊かな光電の芸術に、周りからはカップルの歓喜の声が聞こえてくる。
やはりデートスポットとしては最高の場所だったようで、皆一様に幸せそうだ。
その幸せに当てられたのか、百代はポツリと呟いた。
「綺麗だ……」
素直にそう思う。戦いと肉欲に身を置いていた自分が、こんなことを思えるなんて……人とは変わるものである。
「そうだな……」
そんな百代を見つめながら、ユウも呟いた。
しかし、イルミネーションを見たからではない。隣にいる、それを見ている百代の横顔を見つめて……否、見惚れていたのだ。
彼女の姿はどんなイルミネーションよりも美しく輝いていた。
この男も同様、人とは変わるものである。あれだけ拒絶していた女に、今では心から真剣に恋している。
(あ〜ダメだ。悪いな過去の俺……俺はもう本気で、こいつのことが好きなんだ)
自然と、顔が百代の方へと吸い寄せられていく。
手を腰に回し、体を密着させて。
?を浮かべて、何事かとこちらの方を向いた百代の唇に……優しくキスをした。
「ん……!」
突然のキスに、百代は一瞬目を見開く。
しかしすぐに、嬉しそうに目を瞑り夫のキスを受け入れる。
互いに相手の柔らかい唇の感触を楽しむ。
角度を変えながら、ただ唇を合わせるだけの簡単なものからお互いを貪るような深い口付けへと変わっていく。
(好き……大好きだ)
もう我慢ができなくなったのか、百代は舌を絡め始めた。ぴちゃぴちゃと唾液が絡まる音を出しながら、夫とのディープキスを堪能する。
辺りはカップルでいっぱいで、皆二人の行為を温かい目で見守っていた。中には羨む声も聞こえてくるが、二人の世界に入っている二人にとっては雑音でしかない。
やがて満足するまでキスを交わした夫婦は、顔を離す。
唾液が橋のように繋がり……切れる。
トロンとした目で百代は夫を見つめ、ユウは百代の頭を撫でる。
その顔はすっかり蕩けていた。しかし、彼の目には確かな決意の色がある。
「もう逃がさねえぞ……覚悟しやがれ」
俺をこんなふうにした責任は取ってもらう。
もうお前は俺のもんだ。
誰にも渡さない、ずっと側にいてもらう。
そんな強い意思と、百代への愛を込めた目で……夫は妻を見つめる。
対する百代も、幸せそうに微笑むばかりである。
二人の想いは一緒だった。
「デートはまだ終わってないからな」
「聖夜といこうか、ユウ❤︎」
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