※この作品はR-18です。

真剣で肉欲に溺れなさい!【完結】   作:寝坊助

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ユウ「川神百代が欲しい人手を挙げて!」

大和・翔一「「は〜い!」」

作者「水城ユウが欲しい人手を挙げて!」

百代「既に私のものだが?」

作者「ごもっともであります」m(_ _;)m


風間ファミリーの話は二千か三千文字ぐらいで終わらせるつもりだったんだ、あとはメインディッシュに注ぎ込むつもりだったんだ…
信じてくれ



その裏で風間ファミリー

 

 

 人は極限の状態に陥ると、体感時間が長く感じるようになると言う。俺もその感覚を何度も経験したことがある。

 武道家として強敵との決闘の際は、凄まじい集中とともにそれが起こった。

 今まさにそれを体感している。

 

 全裸の女が股を開いて、勃起している俺の肉棒を秘所にハメようと腰を下ろそうとしている。その表情は武神と言うにはあまりにもだらなく赤く染まっていた。性と快楽に支配されビッチそのものだ。

 

 川神百代……今、この女が俺の貞操を喰らおうとしている。

 

 最後の砦も崩れ去った。

 なにを言っても武神の欲望は止まらない。

 もはや百代を止めるための手札は残っていない。

 あとはただ、無意味に拒絶するのみ。

 無理だとわかっていても、もはや俺のできることは手錠の破壊しか残されていなかった。

 何度もこの女に挑戦し続けて来た。どんな強敵にも最後まで諦めず、あらゆる苦行を乗り越えて超人の次元へ足を踏み入れた。

 そんな俺が、死に物狂いで四肢を動かして自由を求める。心の中では祈るように、赤子のように泣き喚き助けを求めていた。

 

 総代ッ、師範代ッ、一子ッ、直江ッ、風間ッ、だれでもいい。このイカれた女を止めてくれ!

 

 奇跡を、一粒でもいい奇跡を。

 この願いを込めて夜の星々へと訴えかける。

 しかし、部屋にはられた結界は防音防臭。例えどれだけ大声を出したとしても、外界に届くことは絶対にない。それをわかっていながらも祈らずにはいられない程、俺の精神は完全に追い詰められていた。

 そのような情けない姿でさえ、百代は愛おしい者を見る目で見つめていた。

 お前の全てを愛そう、汚れも、醜さも、と。

 

 ふざけんなこのクソ女……こんなことが許されると思ってんのか……!

 

 もはや俺の中で、川神百代は憧憬ではなくなっていた。今日までの思い出の中で形成された尊敬と信頼を裏切られたことによって、それらは粉々に砕け散った。

 今の俺の目には、川神百代は人間とは違う悍ましいナニカにしか見えていない。

 

 ぷちゅ❤︎

 

 膣口と亀頭が重なる。

 コンマ数秒後には完全に挿入される。その間、あらゆる百代との記憶と後悔が頭の中を回った。

 もし、武道なんて始めなければ。

 もし、百代と出会わなければ。

 もし、あんな約束しなければ。

 もし、もし、もし……

 

 ああ、誰か助け———

 

「ンほぉ❤︎」

 

 そんな俺の助けを呼ぶ声は、最低なアヘ声によってかき消された。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ーーーーーー

 

 

ーーー

 

 

 

 今まさにユウと百代が大人の階段を登ろうとしている同時刻、とある場所に存在するビルにて。

 見た目は廃ビルのようだが、入り口と内部は綺麗に清掃されており、人の気配が窺える窓からは明かりが漏れていた。

 

 風間ファミリー 秘密基地

 

 川神大戦でF組を勝利に導いた主戦力の集まるこのグループは今まさに、祝杯を上げていた。

 この場には1人を除いて全員が揃っており、今日は因縁のS組との決着。そしてそれに組した武神、川神百代に対してもぎ取った勝利を祝って、全員が好みの飲み物が入ったグラスを手に立ち上がっていた。

 

「そんじゃあ、俺たち風間ファミリーの勝利にッッッ……乾杯ぃ〜〜〜‼︎」

 

「「「「「「「乾杯〜!」」」」」」」

 

 リーダー翔一の号令と共に、メンバー全員がグラスを同時に打ちつけた。ガラスの重なる音がアジトの部屋中にこだまする。重なった衝撃で内部のジュースは溢れ、床や壁に飛び散ってしまう。

 だがそれを気にする者は誰もいない。

 

 今日は勝利の宴。

 

 全てを忘れて美食と美酒を味わう。

 

 何が起きても無礼講。

 

 そう、ナニが起きようとも無礼講。

 

 『勝者』の宴。

 

 中心に設置されたテーブルには、この日のために奮発して買い漁った料理が並べられている。高級店の寿司、ピザからそこら辺のコンビニやデパートで各々好きなものを選んだ弁当や惣菜、スイーツなど種類は様々。

 ドリンク類はメンバー全員が好きなものを揃え、クーラーボックスに押し込んで冷やしてある。氷も十分作られているため、キンキンに冷えた聖水が激闘を終えた武士達の喉を潤すのだ。

 明らかにはしゃぎすぎて全員が食べ切れる量ではない。だがそんなことお構いなしだ。料理が切れて誰かが買い出しに行くなどと言うことはあってはならない、食べ切れない量を用意し、それらを口にしながら今回の合戦の武勇伝を語り合うのが目的。

 会話を、熱を、途切れさせてはいけないのだ。

 

「今日の川神大戦、やっぱMVPは俺様だろ?この筋肉で何十人もぶっとばしたんだぜ」

 

「討伐数で決めるなら、自分も負けてないぞ!」

 

「アタシもよッ!前戦に出てたっちゃんと暴れ回ったんだからッ!」

 

「待て待て、大将獲ったの俺だぞぅ‼︎」

 

「あの4人は相変わらず元気だねぇ。京は参加しないの? 京も凄く活躍したんでしょ?」

 

「しょうもないから参加しない...…」

 

 全員が、今回の大戦での自分の活躍を競うように自慢しあっていた。

 この場にいる全員が1人でも欠けていたら、勝利は成し得なかった。戦闘向きではない卓也でさえも、得意なコンピューターによって大和を全力でサポートしたのだ。

 まさに全員で勝ち取った勝利といえよう。

 自分はこうだ、私はこうだと言い合う中、その輪に参加せずチビチビとジュースを飲んでいる者が。先の大戦では戦略参謀を務め、『軍師』と呼ばれるほど卓越した頭脳を持つ直江大和だ。

 

「どうしたの、大和? 何か難しい顔してるね」

 

「もしかして性のお悩み?それなら私が発散させて…!」

 

「結構です……別にたいしたことじゃないんだけど、ちょっとな」

 

 明らかに様子がおかしい。

 今回の大戦。F組の戦力だけでは勝つことはできなかった。勝利の大きな要因は、やはり大和が連れてきた助っ人であろう。

 人脈や報酬、得意の口八丁を利用して腕に自信のある者を集めて戦力を整えた。さらに不死川心への辱めによって、S組に不満を抱いていた敵兵を一気にF組へ寝返らせたのだ。

 そしてなんと言っても、対武神用戦力。

 

 四天王———九鬼揚羽。

 

 武神の好敵手———水城ユウ。

 

 川神でも屈指の猛者を引き入れて、そこに由紀江も加わり相手の切り札にして最大戦力、川神百代を抑え込んだことが一番大きい。

 まさに勝利の立役者。戦闘力を使わず頭脳で川神の猛者相手に上を言った彼こそ、MVPと言えるだろう。

 なのに何故であろうか。それを自慢げに語ることもせず、祝杯のムードもぶち壊してお通夜ムードに入っていた。

 

「なにしょげてんだよ〜!この宴計画したのは大和、お前だぜ?ほら、食え食え!」

 

「逆にキャップはなんで平気なんだよ……」

 

 軍師にして、同じ女性を愛する者同士、だが翔一は今日限り恋敵という関係を忘れて大和を励ます。

 マグロ、ウニ、イクラ、ウナギ、それらを皿に取って大和に差し出すその笑顔は、太陽のようであった。

 大和にとって、寧ろそれが不思議でならない。

 

「それはそれ、これはこれ。今は全部忘れて楽しむ時だぜ!くぅ〜、炭酸が目に染みる!あれ、辺な汁出てきた?」

 

「泣いてんじゃん!ヤケになってるだけじゃん!」

 

 そう言う大和も涙腺が決壊して涙を流し始めた。

 男の悔し涙、それを見たメンバーは何が何やらの顔で首を捻る。

 

「ねぇ、大和とキャップは何があったの?」

 

 それを知るのは、当人以外に京のみ。

 

「それがねワンコ。あの2人は、モモ先輩に告白してフラれたの」

 

 風間ファミリー全体に雷が落ちる。

 あの武神、風間ファミリーの最強戦力、世界最強の武道家、川神百代を女性として告白したと言う事実。

 しかもそれがリーダーと軍師。

 様々な驚愕と考察が頭の中で交差し固まっている中、最初に反応を示したのは、岳人だった。

 

「ようこそモテない男の世界へぇぇぇえ‼︎‼︎」

 

「「うるせぇぇぇぇぇええ‼︎‼︎」」

 

「ぶほ⁉︎」

 

 両手を広げて歓迎するように、負け犬2人を見下ろす岳人の顔面に2つの怒りの拳が突き刺さる。鼻血を流し倒れ込む岳人であったが、その顔は歓喜に歪んでいた。

 片やイケメン四天王、エレガンテ・クワットロの1人でありながら、その天然と自由人気質で女に興味はないと言い続けたリーダー。

 片や、多くの人脈を持ちその中には可愛い女の子も入っている、童顔ゆえに意外とモテる一級フラグ建築士である軍師。

 男として目の上のたんこぶと思っていた2人が、本気の恋をしての告白は撃沈という結果に終わったという現実。これが笑わずにはいられなかった。何より、岳人モテないイジりはファミリーにとって日常茶飯事である。

 反撃の時は今だと、立ち上がる。

 

「はっはっはっはっは!俺をいくら殴っても現実は変わらねーぞ!お前らの人生に、女にフラれたという1ページが刻まれたことは確実なんだからな!」

 

「岳人、醜い……凄く醜いよ」

 

「やけくそだな」

 

「くっそぉぉお!頭脳で姉さんに勝ったって証明したのにぃぃぃい!」

 

「ま〜、フラれちまったんならしゃーねぇわ」

 

 未だにこの結果に納得がいかない大和は床を殴り、翔一は若干不満に思いながらも事実を飲み込んでいる。

 実に彼ららしいリアクションだ。

 

「じゃあ、キャップはもうモモ先輩諦めるの?」

 

「それはない!」

 

 京の問いに、翔一はNOと答える。

 フラれはしたものの、その目はまだ死んではいない。寧ろ、乗り越える山を見つけた登山家の如く燃え滾っている。

 

「モモ先輩はまだフリーなんだぜ?一回の失敗で諦める俺じゃあないぜ!絶対にモノにして見せる!」

 

「それは無理だな、キャップ!」

 

 翔一の決意証明に、大和が待ったをかけた。

 現実に打ちのめされていた彼はもういない。顔に手を置き、妙なポージングをしながら立ち上がる彼の背後には、ドドドドドという擬音が見えたり見えなかったり。

 

「俺の頭脳が姉さんに勝利したと言う事実は変わらない。有能さは証明された。これからは一気に攻める。既に俺の頭には、数百通りの川神百代攻略オペレーションが構築されつつあるんだからな!」

 

「なん……だと……⁉︎」

 

「おい、何か始まったぞ?」

 

「大和完全に厨二病に戻ってるね」

 

「人のテンションって怖いわね」

 

 まだ宴は始まったばかりだと言うのに、完全に空気に飲まれてハメを外している。

 明日、自分の行いに悶絶するのは間違いないであろう。

 

 そんな2人を見たメンバーは、返って冷静さを取り戻していた。さっきまで自分達はあんなテンションだったのかと思うと、感謝である。

 だが例外はいる。

 バカはもう1人。

 

「ならばそのモモ先輩争奪戦、俺様も参加させてもらおうか!」

 

 上着を脱ぎ捨て、ポージングしながら立候補する岳人。自慢の肉体美を見せつけるその姿は、なんと空気の読めない男であろうか。

 

「いやぁ、岳人は無理でしょ」

 

「うん、無理無理」

 

「応援くらいしてくれたっていいだろうが⁉︎」

 

 大和と翔一と、どちらが百代を落とすのだろうと思っていたメンバーは、岳人だけはないと断言した。

 昔から割とアタックしてきた岳人だが、結果は当然拳と共に返事が返ってきた。

 筋肉至上主義の島津岳人。風間ファミリーの男子勢……否、川神学園の中でも実力は上位に入ると自負している。

 なのに、川神百代どころか女子勢も彼の魅力には靡かない。その面倒見の良さから一部の後輩からは慕われていると言うのに、本人の好みは同年代か年上という無情さ。

 現実は上手くいかないものである。

 

「でもよぉ、あの美貌と爆乳だぜ?男なら手に入れたいって思うのが当然だろうが!なぁ、モロ⁉︎」

 

「なんで僕に振るの⁉︎」

 

 最後の1人の男子勢に同意を求める。

 少し離れた位置にてフライドチキンを食べていた卓也は、自分には縁がない話題だと思っていたのかビクリと体を震わせた。

 大和、翔一、岳人がギラリと目を光らせてこちらの話題に引き込もうと近づいてくる。

 

「ほら言ってみ〜?お前だってモモ先輩でヌいたことあんだろ〜?」

 

「モロ〜、お前まだ皮剥けてねーだろ?一歩でもいいから大人になろうぜ?」

 

「ふ、モロ。たとえ仲間であろうとも、姉さんを狙うならお前もまたライバルだな」

 

「う〜わ下品!げ〜ひ〜ん〜!っていうか、大和はいい加減元に戻ってよぉ!」

 

 男達の猥談がヒートアップしていく。

 涙を浮かべる卓也に群がる男達。その光景を見て眼福眼福と、京はそれを肴にタバスコをかけたピザを味わう。

 うむ、最高に美味である。

 

 だが、この場にはちゃんと乙女がいる。

 我慢の限界が来た一子が、猥談に堪え兼ねて悲鳴混じりの叫び声を上げた。

 

「いやぁ〜〜!エロい話禁止ぃ〜‼︎」

 

 川神流、蠍撃ち。鋭い突きが暴走する男子勢を撃ち抜いた。その中には、何故か卓也も。

 

「なんで僕まで……」

 

「ああ!ここからがいいところだったのに……」

 

 男の花園が強制的に中断されたことにより、その光景を楽しんでいた京は名残惜しい声を上げる。

 

「お前達、流石に今のは酷いと思うぞ。モモ先輩だって一人の女だ」

 

「そうよ!お姉さまはあなた達みたいな下品な男に堕とせるような、安い女じゃないわ!」

 

 倒れ込む男達を軽蔑した目で見下ろすクリスと、その言葉に同意する一子。

 乳だのヌクだの皮だの、流石に女性の前でやる話ではなかった。無理矢理正気に戻され、大和達は一時のテンションに身を任せたことを恥ながら席についていく。

 気を取り直して、川神大戦の話に戻す。

 

「しかし、何よりも凄かったのはやはりユウ先輩とモモ先輩だったな」

 

 その話題を切り出したのは、クリスだった。

 転校したばかりであまり接点はないのだが、百代や一子からの話を聞かされて、水城ユウという男には好印象と強い興味を抱いている。

 川神流の剣士。しかも、幾度も百代に破れては立ち上がり、やがて川神最強の一角として登り詰めた彼の武勇伝は、侍好きのクリスにとって中々に唆られるものがある。

 機会があるなら、是非とも正義について語り合いたいと思うほどに。

 

「わ、私も凄いと思いました!あの剣技は、一朝一夕で得られるモノではありません」

 

『ありゃすげーわぁ、オイラ3人分の戦闘力の5倍ぐらいヤバかったぜ。ソースはオイラ』

 

 ユウの話題になると、男達の猥談に目をくらくらさせていた由紀江ものめり込んできた。普段控えめな彼女にしては珍しい。

 同じ刀を使う剣士として、由紀江はユウに尊敬の念を抱いていた。このメンバーの中で、ユウの戦闘を間近で見る機会が多かったのも由紀江だ。同じ対武神用戦力として戦場を駆け抜けた際、彼の強さはやはり助っ人を含めても頭ひとつ飛び抜けていた。

 そしてなにより、百代との戦闘。挨拶がわりに彼女を吹っ飛ばし、そのあらゆる反則級の技を刀一本で捌き切る姿は今も脳裏に焼き付いている。

 自分など戦えているだけでほぼ防戦だったと言うのに。あれは、由紀江が目指す剣士の理想系の一つだ。

 

 他のメンバーも確かに、そうだな、と相槌を打つ。実際、百代を抑え込んでいたのはユウだ。彼の働きがなければ、今頃F組の戦力は一瞬でチリと化していただろう。動きを封じただけでも、大金星とも言えるはずだ。

 その中で唯一、面白くなさそうに大和は顔をしかめていた。

 

 

「でも負けただろ?」

 

 

 空気が凍りつく。籠っていく話題の熱を一瞬で冷めさせたのは、そのユウを助っ人として勧誘した大和自身だった。

 メンバー全員の視線が、大和に集中する。一瞬、大和もしまった…と、口を滑らせてしまったことを後悔する。

 だが、男のプライドが勝手に口を動かす。

 

「俺は最初に言ったんだ。『対武神用戦力は、3人揃ったら全員で戦うように』って、なのにあの人はその命令を破った。1人で姉さんに挑んだんだ」

 

 年上であろうと、先輩であろうと、戦の指揮を取るのは軍師である大和だ。一つの命令違反が、戦況を大きく揺るがすことに繋がる。はっきり言って、ユウの選択ミスは唾棄すべきものなのだ。

 

「そんな言い方しなくてもいいじゃない」

 

「そうだ。結果的に勝ったのだからもう……」

 

「クリス、軍人の親を持つお前にならわかるだろ?命令無視は軍法会議モノだ」

 

「ううむ……」

 

 痛いところを突かれて、クリスは言い返せなくなる。

 そう、これはこれ。それはそれ。一対一に拘るのは間違いではない。だが、それは時と場合によるものだ。戦はみんなで勝ち取るもの。個人のわがままを優先するなど、絶対に許されない。

 

 結果、水城ユウは負けた。

 

 川神百代に負けた。

 

 いつも通り、学習しない男である。

 

 もっと頭を使わなきゃ。

 

「もしキャップが九鬼を打ち取るのが遅かったら、どうなってたと思う?完全にウチが負けていた。あの人は、俺達全員を危険に晒したんだ」

 

 軍師として容赦なく、当然の評価を叩きつける。

 それを聞いて、誰も反論する者はいなかった。それは全員が大和の言葉に納得したと言うことを示している。いい気分だ、やはり自分は正しい。

 

 大戦時、軍師として戦況は逐一報告されていた。ユウが揚羽と由紀江を下がらせて一人で百代と戦い出したと聞いた時には、怒りが込み上げてきた。三人で戦えば勝てるのに、これが完璧な作戦なのに。もし負けてしまい、フリーとなった百代によってF組の戦力に被害が出てしまったら、という発想はなかったのか。

 

 大和は水城ユウのバカさに腹が立った。

 

 だからF組の勝利を聞いた時には心の底からホッとしたと同時に、勝ちを宣言した翔一ではなく……水城ユウの方を向いた。

 

 そこには、予想通りの光景があった。

 

 仁王立ちし、最強を貫いた川神百代。

 

 それに負け、地面に倒れた水城ユウ。

 

 なんて無様な姿だろうと、大和は鼻を鳴らす。

 自分のわがままを優先した結果がこれだ。

 大和はユウを見下ろしている百代を、自分の姿に置き換えて投影した。

 

 個人の戦いに敗れた、ボロボロで倒れている悔しそうな顔を浮かべる水城ユウ。

 それを見下すのは、仲間を勝利に導き頭脳であらゆる強者の上を行った軍師、直江大和。

 

 この時、大和は川神大戦とは違うもう一つの戦いに勝利したといえよう。

 

 勝敗は誰が見ても明らかだ。

 

 有能なのは誰が見ても明らかだ。

 

 男として魅力的なのは誰が見ても明らかだ。

 

 川神百代に相応しいのは誰が見ても明らかだ。

 

 どうだ見たか、これが俺とお前の差だ。

 

 F組を勝利に導いただけではない。

 

 男としての勝負は、直江大和の勝ちだ。

 

(俺は水城ユウに勝ったんだ!)

 

(そして姉さんにも勝ったんだ!)

 

(男として優れていることを、証明したんだ‼︎)

 

 その想いを流し込むように、コーラをグイッと飲み込む。喉の奥でシュワァ…と炭酸が迸る。いつもならむせてしまいそうなその刺激は、今では心地よく感じてしまう。パチパチと弾ける炭酸はまるで勝者を讃える花火、喝采を送る拍手のよう。喉を鳴らし味わう、味わう、味わう。なんて美味いのだろう。これが勝利の美酒というものか。

 

 今頃、敗者は1人涙で枕を濡らしているはずだ。勝者である自分は、こうして勝利の美酒を味わっている。

 これぞ勝者と敗者の差というもの。

 それは想い人にもいずれ伝わるだろう。

 今日はフラれてしまったが、焦る必要はない。男として優れていることは、十分証明できた。あとは少しずつ、仲間達といつも通りの生活を過ごしながら、川神百代を自分の魅力で堕としていく。

 

 今、川神百代はこちらへ向かってきている。

 勢いよくそのドアを開け、自分抜きで既に始まっている祝宴に不満を漏らす。そして弟である大和の隣に座り、その鬱憤をぶつけるのだ。わざとらしく痛がりながら、あの豊満な胸を楽しむ。これが、川神百代の隣は水城ユウじゃない、直江大和のものだという証明。

 対等となり、並び立つその立ち位置は舎弟から、パートナーへ。パートナーから、恋人へ。恋人から……夫婦へ。

 

「っぷはー!美味いもう一杯!」

 

「うぉ⁉︎大和すげー飲みっぷりだな!」

 

「これが飲まずにいられるか!ほら、お前らもさっきは悪かったな!食おう、飲もう!」

 

「そうだな」

 

「もったいないし」

 

 場の空気を冷ましたことを謝罪し、気を取り直して祝宴を再開させる。奮発して揃えた美味な料理だ。食べなければ損だろう。

 やがてまたいつも通りの騒がしさを取り戻していく。由紀江とクリスは若干不満そうだが、百代がくればそれもなくなるはずだ。

 幸せな未来設計を考えながら、再びコーラの入ったグラスを呷ると、

 

「そういえばモモ先輩はまだなのか?」

 

「お姉さまは今日来ないわ」

 

 






ユウ「SOS!ヘルプミー!伝われこの想い!」

大和「ぷはー、美味い!もう一杯!」


感想欄で大和はどうなったかという質問をいただいたので、急遽ねじ込んだ風間ファミリーパートです

天の声「次こそはメインディッシュなんだろうな?」

作者「…」

天の声「おう、応えろや」




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