「遅かったじゃない」
夕飯の食材を買い慌てて帰宅したシンジに、玄関で待ち構えていたらしいアスカは、腕組みをしながら言い放った。眉の間にしわがより、不機嫌そうなことこの上ない。
「あ、うん、掃除当番。トウジとケンスケが帰っちゃったから……時間かかっちゃって」
とりあえず事実を告げる。それ以上に遅れたのには別の原因があるが、とてもアスカには話せない。
「何よそれ。あいつら、あんたに押し付けて帰っちゃったわけ? 明日、文句言ってやるわ」
ふたりが先に帰ったのは――用事があるというので――シンジも同意の上だったが、アスカの怒りの矛先が逸れてくれたので、あえてそのことは口にしない。
(ごめん、トウジ、ケンスケ)
胸中で謝罪しながら部屋に上がろうとすると、横からアスカに訊ねられる。
「そういえば、ファーストもだったわよね。掃除当番」
シンジは、どきりとして体を強張らせた。
できるだけ平静を装って――自分でもそれができていないのは自覚していたが――答える。
「えっ……で、でも、何にもなかったよ」
「誰もそんなこと聞いてないわよ。あいつは来てたんでしょ?」
アスカが怪訝な顔をする。どうやら藪蛇だったらしい。
「う、うん……」
アスカの不審の目が痛い。
シンジは、しばらくその場で固まっていたが、
「何ぼーっとしてんのよ。私、もうお腹ぺこぺこなんだからね」
「ご、ごめん。すぐ作るから」
アスカに促されて、シンジは台所へ早足で向かった。
シンジは、いつレイとのことを問い詰められるのかとビクビクしていたが、幸い食事中は当たり障りの無い会話が続いた。アスカが特にふたりのことを疑っていたわけではなかったらしい。
(後ろめたいことがあるから、疑われてるなんて考えちゃうんだよね。普通にしてなくちゃ)
アスカがレイとの情事を知っているわけではないのだからと、シンジは自分に言い聞かせた。
「「ごちそうさま」」
食事が終わり、シンジは立ち上がって食器片付けようと手に取った。が、アスカもその皿を反対から掴む。
「えっ……」
アスカの意図が分からず、シンジは混乱した。
「私が洗っとくから、シンジは先にお風呂に入っちゃいなさいよ」
アスカの言葉を聞いてシンジは、より一層混乱した。アスカが食器を洗ってくれることも、一番風呂を譲ってくれることも、今までただの一度も無かったことだ。
「なんで驚いてんのよ。あんたが疲れてるみたいだから、気を使ってあげてんじゃない」
言われて見れば今日は掃除当番に――いつものこととはいえ――家事、それにレイとのことがあり疲労が溜まっていたのかもしれない。表情にもそれが表れていたのだろう。
「あ、ありがとう」
シンジは、アスカに気遣ってもらえたことが素直に嬉しかった。と同時に隠し事をしていることに胸が痛む。
(ごめんね、アスカ……)
レイとのことを知られれば、きっと軽蔑されてしまうだろう。アスカがこの部屋を出て行くか、シンジが追い出されるか、そんな事態になるかもしれない。その想像はシンジを恐れさせた。
「じゃあ、お願いするね」
「任せときなさいよ」
笑顔で胸を張るアスカを見て、シンジの胸の中は暖められた。それは今まで感じたことの無い感情だった。
(家族って、こういうことなのかな)
照れながら、そんなことを思う。口に出せば、アスカは怒って否定するだろうが。
シンジは幸福だった。この時までは。
ゆったりと湯船に身を沈めていると、疲労が消えていくようだった。
「う~~ん」
シンジは腕を組んで伸びをした。
と、ドアの開く音がして脱衣所に誰かが入ってくる。無論アスカだろう。ミサトは、まだ帰ってきていない。
何か置き忘れたものでもあったのだろうと、シンジは特に気にしなかった。
しばらくすると、曇りガラス越しにアスカが近づいて来て、唐突に宣言した。
「入るわよ」
「ええっ!?」
静止する間もなく、シンジの目の前で戸が引かれる。
現れたアスカは、赤いバスタオルを巻いただけの姿だった。胸の谷間がちらと覗いている。
「な、なな、なん……」
気が動転して、なんでと口にすることさえできない。
「まっ、よく考えたら、あんたにはけっこう世話になってるしね。背中くらい流してあげようと思って」
「い、いいよ……恥ずかしいし」
シンジはアスカから目を逸らして、断った。
「なに遠慮してんのよ。このあたしが言ってあげてんのよ。こんなチャンス二度とないんだからね。ほら、さっさと出なさいよ」
「うわぁ、ちょ、ちょっと」
強引に手を取られ浴槽から引き出されてしまう。シンジはタオルを腰に当てて、しぶしぶ椅子に座った。
「なまっちろい肌してるわねぇ。男の癖に」
「ほ、ほっといてよ」
シンジは顔を赤くして俯いた。
アスカはスポンジにボディソープをつけると、シンジの背中を擦り始める。
「どう、気持ちいいでしょ?」
確かに自分では届きにくい場所も洗ってもらえるのは心地良い。
「う、うん」
シンジは緊張しながら、アスカが洗い終わるのを待った。
「よしっ、これでいいわね」
「あ、ありがとう。アスカ」
ホッとしたのも束の間、
「次は前ね」
「ええっ! い、いいよ。自分で洗えるから」
アスカの言葉にシンジは叫び声を上げた。
「ぐちぐち、うるさいわね。黙って私に任せてればいいのよ」
アスカの手が、シンジの腕の下を通ってお腹に回される。
「く、くすぐったいよ」
「胴回りも細いわね~」
言いながら、シンジの腹を撫で擦る。アスカがシンジの背中に身を預けるような体制になり、自然と体が密着した。
「ア、アスカ、あたってる……」
「サービスよ、サービス」
アスカの確かな胸の膨らみが、背中を刺激する。
(アスカのおっぱいが、あたってる……)
シンジの胸は高鳴った。
「あら~?」
何か面白いものを見つけたようなアスカの声。その視線の先にあるのはシンジの股間で――
「うあぁっ」
シンジはタオルを押し上げていた〝それ〟を、慌てて手で隠した。
「シンジったら、興奮しちゃってるんだ」
「こんなことされたら、だ、誰ってこうなるよ」
「ほんと、今日は特別だからね」
耳元で甘く囁いて、アスカは唯一シンジを守っているタオルを引っ張った。
「だ、駄目だよぉ!」
完全にタオルを引き剥がされる前に何とかタオルを掴む。その端でなんとか
シンジの股間は隠されていた。
「往生際が悪いわよ」
アスカの片方の手が、シンジの脇をくすぐった。
体から力が抜けて、シンジはタオルを放してしまう。膨張した性器がアスカの目に晒される。
沈黙が訪れた。
「……な、なよなよしてるわりは、立派じゃない」
アスカの声は、わずかに動揺を含んでいる。
一方シンジは、レイに続きアスカにまで局部を披露してしまった羞恥で顔を赤面させていた。
「ほら、大事な所なんでしょ? きれいにしなきゃね」
気を取り直すように言って、アスカはシンジの性器にスポンジをあてた。シンジは逆らっても無駄だと悟り――もう全てを見られてしまったのだから――されるがままにした。
「ほんとに硬くなってるのね」
感心したようにアスカが言う。
性器はすぐに泡まみれになってしまった。
「あっぅぅ」
シンジは嬌声を噛み殺そうとして、しかし完全にはできなかった。
「感じてんのね」
言葉と共に息を吹きかけられ、それだけでまた声が漏れそうになる。
このまま快楽に身を任せてしまいたい。そう思った瞬間――
「うぐぁぁぁぁっ!」
性器の根元をきつく握られて、シンジは悲鳴を上げた。
「初めてにしては、妙に慣れてんじゃない。ファーストにも触ってもらったわけ?」
耳元で告げられたアスカの声は、先ほどまでとは打って変わって冷酷で、シンジの背筋を凍らせた。
「あぁ、ち、違うよ……」
ここで認めてしまったら、もっと酷い目に遭わされそうな気がして、シンジは必死に首を振った。
「あんたバカァ!? 帰ってきてからずっと『僕は隠し事してます』って顔してて、私を騙せるとでも思ってたわけ?」
アスカの手の力がさらに強くなる。シンジは生きた心地がしなかった。
「あぅぅ、ご、ごめん……」
瞳にはうっすらと涙すら浮かんでいる。
「さあ、きりきり白状しなさいよ」
「うぅ、あ、綾波にも、触ってもらった……」
性器を潰されてしまう恐怖から、シンジは白状した。
「最低ね、あんた。ファーストに無理やりやらせたんでしょ?」
蔑むようなアスカの言葉を、シンジは否定した。それだけは勘違いされたくない。
「ち、違うよ。あ、綾波が……無理やり……」
「なによそれ? あんた、ファーストに襲われちゃったの?」
アスカの声は完全に呆れている。
「う、うん……押し倒されて……」
頷きながら、教室での出来事を思い出して、自分の情けなさに陰鬱な気分になる。
「で?」
「で……?」
意味が分からず、シンジは聞き返した。
アスカは呆れ顔をさらにはっきりさせて、シンジの性器を引っ張りながら言う。
「決まってんでしょ。最後までしたのかって聞いてんのよ」
「…………」
シンジは答えられずに、口をつぐんだ。まだ心の中で、レイと性交を行ったことを認められずにいる。
「ほらっ?」
アスカに何度も性器を引かれ、さらに幾ばくかの時間を掛けて、ようやく口にする。と同時に、溜まっていた涙が溢れ頬を伝って流れ落ちた。
「……僕は、やめてって頼んだんだ……なのに……」
「あらあら、無敵のシンジ様ともあろうお方が、女の子に犯されちゃったんだぁ」
アスカはシンジの性器を握っていた手を離すと、声を上げて愉快そうに笑った。さらに追い討ちをかける。
「あんた、ほんっと情けないわね。女に犯される男なんて、世界中探してもあんただけよ」
シンジは頭を抱えて、うずくまった。嗚咽が漏れる。アスカの言う通りだと思う。自分は最低の人間だ。女の子に迫られて、それを拒むことも、受け入れることもできなかった。ただ状況に――欲望に流されていた、だけだ。
(きっと僕なんか生きてる価値もないんだ……)
生来のネガティブさから、そんな飛躍した考えさえ頭をもたげる。
と、視界の端を何か赤いものが、上から下に通り過ぎた。
緩慢な動作で振り返ると、バスタオルが床に落ちている。立ち上がったアスカの足が見えて――
「――!?」
自省は頭の隅に追いやられ、シンジは息を飲んだ。
アスカが生まれたままの姿で――いっさい隠すことなく、腰に手を当てて――シンジを見下ろしている。
きめの細かそうな肌。年齢以上に成長した胸。レイよりも、やや濃い翳りに覆われた秘所。全てに隙が無く、なにより彼女がその美を自覚していて、恥じ入る所など微塵もないのだとシンジにも分かった。
「セックス、するわよ」
なにかゲームでも始めるような物言い。
「なっ、なんで?」
シンジの疑問の声は悲鳴に近かった。今までの経緯からどういった論理で、そんな言葉が出てくるのか全く分からない。
「なぁ~んかムカつくのよね。ファーストとあんたが、してるのって」
答えを聞いても、理解できない。シンジは困惑した。
「そんな理由で……」
「今更、できないなんて言わせないわよ」
にやっと笑い、口が三日月状に吊り上る。シンジは悪寒を覚えた。
「断るなら、あんたが犯されたこと学校とネルフで言い触らすわよ。当然、ミサトや碇司令――あんたのお父さんの耳にも入ることになるでしょうねぇ」
アスカの脅迫は恐ろしかった――なにより父に知られることが。人生最大の恥部がこれ以上漏洩するくらいなら、どんなことだってする。
「わ、分かったよ。するよ。だから……」」
シンジは懇願するようにアスカを上目遣いで見た。
怯えたシンジを見て気を良くしたのか、アスカは得意げに鼻を鳴らした。
「ふふん、それはあんたの心がけしだいね」
シンジを椅子からどけると、自分で座り足を開く。
「さあ、態度で示して貰おうかしら」
女王然とした態度と口調。つまり〝あそこ〟を舐めろと命令しているのだと、シンジにも分かった。
シンジは床に手をついて四つんばいになり、アスカの秘所へ顔を近づけた。当然そこを、まじまじと見つめることになる。
(……綾波のと、少し違うんだ)
そんなことを考えている自分が嫌になる。
「舐めるよ」
断らなくてもいいのだろうが、何となく言ってしまう。
秘所に舌をつけると、
「ひゃっ」
予想に反して、アスカの口から悲鳴のような息が漏れた。
「ど、どうしたの?」
「な、なんでもないわよ。い、いいから早く続けなさいよ」
レイの時と違う反応に驚いて訊くが、アスカは赤い顔で行為を促した。仕方なく再び舌をつけて、上下に動かす。
「ふっ、いい格好ね……うぅ……犬みたい…よ」
どこか苦しげなアスカの声。
(綾波にさせられた時は、中も舐めたんだよね)
どうせアスカにも命令されるのだろうと、シンジは先回りして割れ目に舌を挿入させた。
「ひゃぁっ!」
今度は、はっきりと悲鳴だった。少なくともシンジはそう思った。
舌を入れたまま目で、
(やめるの?)
と訊ねる。
「な、何見てんのよ。気分出してあげてんじゃない……ふりよ、ふり! 分かったら、もっと気持ち良くさせなさいよね……」
そう言われれば逆らえない。
やがて、舌に唾液以外の味が広がり始めた。
(これってアスカが濡れてるってこと……?)
と、アスカの手がシンジの頭に触れる。
シンジはレイの時のように秘所に押し付けられるのかと思い、身を硬くした。
が、アスカの手は逆にシンジを押し退ける。
「え?」
拍子抜けして、シンジは声を漏らした。
「な、舐めるのは、もういいわ。さ、ささっと本番するわよ」
上気して頬を染めたアスカが、なぜか怒っているようにシンジには見える。
(なんだよ、自分からしろって言ったくせに……)
胸中で不満を漏らすが、
「ほら、さっさと床に寝なさいよ」
命令には逆らえるはずも無く、シンジは床に仰向けになった。タイルがひんやりと冷たい。
アスカはシンジを跨いで、性器を握った。それは完全に勃起している。
「私の舐めてるだけで勃起させるなんて、あんた変態ね」
「そんな誰だって……あんな近くで見たら……」
シンジは弱々しく否定したが、性の知識が疎いために確信はもてない。
(僕って変態なのかな……?)
そんな不安が頭をよぎる。もともと握り潰されそうになった時に一度萎えたものの、アスカの裸身を見た瞬間から、シンジのそれは硬さを取り戻していたのだが。
「あんた、ほんと運がいいわよね。この私とセックスできるなんて」
アスカは恩着せがましくそう言うが、強制されているシンジにはとてもそうは思えない。
この期に及んで制止すれば、レイがそうだったようにアスカの怒りを買うかもしれないが、それでもこの状況を回避できるものならしたくて、シンジはアスカに訊ねた。
「ほ、本当にするの?」
あくまで遠慮がちになのが、我ながら悲しい。
「なによ。あんた、一度はしてんでしょ? 怖いの?」
「こ、怖くは無いよ。でもいつミサトさんが帰ってくるかもしれないし……」
シンジは、切り札にしていた言葉を口にした。今ミサトが帰宅すれば、二人で浴室にいることは分かってしまうし、あんな性格であるとはいえ一応保護者である彼女がこの状況を笑って見逃してくれるとは思えない。
「はん、ミサトだって、今頃加持さんとよろしくやってるわよ。とやかく言われる筋合いは無いわ」
が、アスカは意に介した様子も無く、むしろ意気を煽る結果になってしまう。
(ミサトさんと加持さんが?)
シンジとて、あの二人が互いに憎からず思っているようだとは感じていたが、性交しているなんて考えたことはなかった。ましてやこの瞬間にしているかもしれないなど。
「いくわよ、シンジ」
「うん……」
宣言してアスカが腰を降下させ始める。シンジも覚悟を決めた。
すぐに秘所が性器に触れた。が、レイの時と違いあっさりとは入っていかない。
「ん……あれ……」
握ったシンジの性器の角度を変えて、アスカは四苦八苦している。
「……あの、アスカ?」
シンジが不安な声を上げると、
「う、うるさいわね! あんたは黙って寝てりゃあいいのよ!」
アスカは顔を真っ赤にさせて怒鳴った。
さらに何度が押し当てられる場所が変わり、ようやく性器が膣内に進入する。
「あっ、あぁぁっ」
アスカの表情が苦悶に歪んだ。
「ア、アスカ、だいじょうぶ?」
「あ、あんたは、黙ってろって言ったでしょ!」
心配で声を掛けるが、怒鳴られてしまう。
アスカは荒い息を吐きながら、性器をより奥へ入り込ませようと体重を落とす。性器はまだ半分以上外に残っていた。
「うぅ、いた――」
悲鳴を漏らしかけたアスカに視線を向けると、
「くなんか、ないわよっ!」
彼女は無理やりそれを押し留めた。
しかし言葉と裏腹に、どう見たってその顔は苦痛で引きつっている。
(意地っぱりなんだから、アスカは)
アスカはプライドの高さから引っ込みがつかなくなってしまっているのだろうと、シンジは思った。
これ以上アスカの苦しむ顔を見てはいられない。
「アスカ、もういいよ」
シンジはアスカの体を支えようと腕を伸ばした――
刹那、風きり音が聞こえ、次いで耳元で強烈に弾けた。
数瞬遅れて、アスカに頬を張られたのだと分かる。キーンと耳鳴りがして、頬がひりひりと痛んだ。
なぜ叩かれたのか分からず、頬に手を当てながら、シンジは呆然とアスカを見上げた。
「あんた勘違いしてんじゃないの。私がするって決めたのよ。今度邪魔したら殺すからね」
アスカは決然と言い放ち、シンジを睨み付ける。が、その眉間に作られたしわは、怒りよりも痛みのせいだろう。
シンジが叩かれたショックで何も言えずにいる内にも、アスカは苦しげな息を吐きながら、少しずつ性器を咥え込んでいく。
やがて、シンジの性器はアスカの秘所に根元まで収まった。
「うぅ……はぁ……はぁ……」
全てを収めて一段落した為か、アスカはいくぶん落ち着いた様子で息を整えている。
一方、シンジは、
(アスカの中って……綾波のよりも、きついや)
そんなことを考えていた。
異常な性体験に多少は慣れたせいか、レイの時のようにそのままで達してしまうようなことはないが、逆に――
「ひぅ、あっあぁぁぁっ」
突然、アスカが叫び声を上げた。
「ちょ、ちょっと馬鹿シンジ……あんた、なに勝手に動いてんのよ……」
アスカに言われシンジは、自分が無意識に刺激を求め、腰を動かしてしまっていたことに気づいた。ほんのわずかな動きなのだが、アスカにとっては耐え難いものらしい。
「あぁん、ばかぁ……動くなって、言ってるでしょ!」
顔を上気させて、喘ぎ声の合間にシンジをなじる。
「だ、だったら、早く止めようよ」
シンジだって動かずにいるのは、蛇の生殺しのようで辛い。解決するには止めるしかないと思うのだが、
「嫌よ! 止めるのは嫌!」
アスカは駄々っ子のように首を振る。
「じゃあ、どうすればいいのさ」
「あ、あんたが早くイッちゃえばいいのよ」
アスカは、どうしても最後までやらなけば気がすまないらしい。
「……それだと、もっと動くことになるよ?」
シンジはアスカに確認した。ほんの少しの揺れですら泣きそうな顔をしていたのに、彼女が堪えられるとは思えない。。
「いいわよ! とにかく早く終わらせなさい」
アスカは大声でシンジを急かさせた。
(そんなに早く終わらせたいなら、止めればいいのに……)
アスカの気持ちが、シンジには理解できない。
言われた通りに早く射精してしまおうと、シンジは下半身を動かし始めた。無意識のわずかに腰を浮かせていただけとは違い、一定のリズムで腰を上下させる。
「うぅ、あっ、あぁぁ――」
シンジの上でアスカの体が揺れる。彼女は目を閉じて、必死に痛みに堪えている。理性では止めたいと思うのに、腰の動きは止まらなかった。
(どうせ言ったって止めさせてくれないし…………ううん、違う。僕は、気持ち良いから止めたくないんだ。相手のせいにして、逃げて。綾波の時と一緒だ。思いやりなんかじゃない、僕は――卑怯なだけだ)
気持ちは萎えているのに、下半身は別の生き物のようにたぎりを増してゆく。
「はぁぅ、うぅ、ば、馬鹿シンジぃ、まだ、なの?」
片目だけを開けて、アスカがせっぱ詰まった声を出した。
「む、無理だよ。まだ、その……入れたばかりなのに……」
「あんた、ほんと何やらせても、のろまね……とにかく早くしなさいよ」
罵倒する声にも力が無い。あまり時間をかけてはいられないと、シンジは思った。
「じゃあ、もっと強く動くよ? そしたら早く……終わると思うから」
「もっ、もっと強く――い、いいわよ。だから、早くしなさいよね……」
アスカは、一瞬驚いた表情を見せ迷ったようだったが、苦痛を少しでも短くしたいのかシンジの提案を了承した。
「うん」
頷いて、腰の動きを激しくさせる。性器の感じる快感は加速度的に高まったが、
「あぁぁぁぁぁっ! いたっ、痛いわよ! 馬鹿シンジっ!」
アスカが絶叫を上げた。もう痛みを否定する余裕さえないのだろう。その青い瞳には涙が滲んでいる。
(アスカ……どうしてこんなにしてまで?)
ここまで来ると、ただ意地っ張りなだけでは無いように思う。彼女がシンジとの性交にこだわる理由。それをシンジは考えてみようとした。
しかし答えを見つけるよりも早く――
「うっ、あぁぁっ」
アスカの膣が急に締め付けを増して、シンジは嬌声を上げた。快感が許容量一杯まで膨らむ。
「ア、アスカ、で、出そう……」
「ええっ、じゃあ、は、早く抜きなさいよ」
言われるまでも無く起き上がり、秘所から性器を出そうとするのだが、しっかりと咥え込まれ容易に抜くことができない。
もちろんその間にも性器には快楽が与えられ、いつ膣内で射精してしまってもおかしくない。シンジは性器に神経を集中させて堪えた。
(あぁっ、も、もう、だめ……)
シンジが限界を迎えると同時、間一髪で性器がアスカの秘所から抜け出る。
性器は勢い良く跳ねて、アスカの腹にたっぷりと精液を放った。
「ふぅっ……」
「はぁ……はぁ……」
対面した格好で、シンジもアスカも脱力していた。
ふと目線を下げると、アスカの秘所からは血が滴っている。破瓜の証であるそれは、想像していた量よりは少なかったが、シンジの性器も赤く染めていた。
(アスカ、やっぱり初めてだったんだ……あれ……綾波は……?)
レイは破瓜の血を流すことは無かった。今更ながら、そのことに気づく。だとすれば誰と――
「暖かいのね、これ」
声に視線を上げると、アスカが腹部に付いた精液を手ですくっていた。
「こんなのが私の中に入って、子供ができるなんて、気持ち悪いわよね」
酷く寂しげな物言いだった。
そんなアスカを見ていると、何か言わなければいけないような気がして――けれど言葉は一向に浮かばず――気が付くとシンジは彼女を抱きしめていた。
してしまってから怒られるかと覚悟したが、アスカは何も言ってこない。
考えてみれば人を抱きしめたのは初めてだった。それは性交とは違う――もっと穏やかな――心地よさがあった。
「……どうして、僕なんかとしたの?」
「別に……なんかムカついたから。あんたとファースト〝だけ〟がしてるなんて」
「それだけ?」
「そうよ。全然大したことないじゃない、セックスなんて。こんなの、どうってことないんだから……」
抱き締めていてアスカの顔は見えない。ただ、その体も声も、わずかに震えていたように感じられた。それは、シンジの錯覚だったかもしれないが。