いつものメディカルチェック。
ブリーフ一枚の姿で診察台の上に横になることにも、もうなれた。
青白い光が体をなぞっていくのを見ていると、自分が巨大なコピー機にでも掛けられたような錯覚を覚える。
「いいわ。起きて」
スキャンが終わり、リツコに言われてシンジは診察台から降りた。
検査結果が表示されているモニターを覗き込んでいるリツコの前に行く。
「特に異常は無いわね」
何度も繰り返していることとはいえ、いつも結果を聞く前は少し不安になるから、異常なしと聞いてシンジはほっとする。
「でも――」
リツコは言葉をいったん止めて、視線をやや下げた。たどってみると、シンジの股間のあたりを見つめている。
「シンジ君、ちょっと下着を下ろして、ペニスを見せてくれるかしら?」
「え、えぇ、な、なんでですか?」
シンジは、わけが分からずに悲鳴を上げた。
「別に変な意味で言ってるわけじゃないわよ。ただ、あなたは体つきも顔立ちも男っぽくないし、男性ホルモンの分泌が少ないんじゃないかと思って。確認したいのよ」
「…………」
検査とはいえ、さすがに性器を晒すのは躊躇われた。
「恥ずかしがることなんてないでしょう。ここでは私は医師だと思ってと、言ったはずよね」
確かにそうなのだが。シンジは室内いるもう一人の人物に視線を向けた。
その人物は端末を操作する手を止めて、興味津々といった表情でこちらを見ていた。視線がぶつかって、彼女は慌てて操作を再開させる。
「マヤ、しばらく向こうを向いていなさい」
「は、はい」
リツコに注意されて、マヤはこちらに完全に背を向けた。
「これでいいわね。私には、あなたの健康を管理する義務があるの。さっ、ペニスを見せて、これは命令です」
静かながらも決然と言われて、シンジはしぶしぶブリーフをずり下ろした。
リツコの手が伸びて、無遠慮にシンジの性器を触診する。うつむいていたシンジは、それを見ないように正面を見据えた。
(あぁ、そんなに強く触られたら……)
声が出そうになるのは必死に我慢する。これは検査なんだと、何度も呪文のように唱え続ける。
リツコの手が離れて、
「やっぱりすこし小さいみたいね。陰毛もまったく生えていないようだし」
言われた言葉に、シンジはショックを覚えた。
「ち、小さいんですか?」
今まで他人と比べたことなんてなかったから、分からなかった。大きいとは思わなかったが。
「ええ、すこしね。まあ、成長はこれからだから不安になる必要ないけれど。でも、小さいわね」
また小さいと言われて、不安になる。
「あ、あの――」
「ホルモン注射しておく? 継続的に打つ必要があるけれど」
成長させる方法を聞こうとして、それはリツコに先回りされた。
シンジは、一瞬だけ迷って――注射は嫌いだ――注射をしてもらうことにする。
「お、お願いします」
「そうね。そのほうがいいわね。いくらなんでも、ずっとこのままじゃ問題があるわ。マヤ」
「はい」
マヤは素早い動作で注射器を用意して、リツコに渡す。
シンジは腕を差し出した。が、
「違うわよ。これは腕にするんじゃないの」
「え、じゃあ……?」
どこに、と聞く前にリツコは、晒されたままだったシンジのペニスの付け根に針を差し入れた。
「ひゃぁっ!」
大声で悲鳴をあげる。痛み自体はちくりとしただけでそれほどでもなかったが、精神的なショックが大きすぎる。こんなところに注射するなんて。
「これでいいわ。服を着て、今日はもう帰っていいわよ」
注射を終えたリツコは平然と言った。
「いきなり打つなんて酷いです……」
シンジは、文句を言ったが、
「ペニスに打つなんて言ったら、やめるって言い出したでしょ?」
そう言われてしまうと、返す言葉が無い。
シンジは服を身につけて、部屋を出た。
(これで大きくなるのかな……? 何度も打たなきゃいけないって言ってたから、すぐには無理だよね)
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
シンジが部屋を出て行ってから、リツコは煙草に火を付けてくわえた。
「あ、あの、先輩…あの薬って……」
マヤが遠慮がちに言ってくる。相変わらずの潔癖症のようだ。将来を思うと、同情する。
「マヤ、その先は言わなくていいわ」
分かっている。馬鹿なことをしていることは、けれど、
「ロジックじゃないのよ、人間は」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「シンジ、お茶ちょうだい」
夕食後にテレビの前で寝転がっていたアスカが、後片づけをしていたシンジに言う。
「うん、ちょっと待って」」
シンジはこの現状に特に疑問を持つことなく、素直にお茶を入れて運んだ。
「ありがと」
湯飲みを受け取ったアスカの表情が強張る。お茶を持つ手も微かに震えていて、なんだか危なっかしい。
注意しようするが、それより速くアスカが口を開いた。。
「あ、あんた、なに考えてんのよ?」
意味が分からずに、シンジは首を捻った。
アスカの双眸は、シンジの股間を凝視していて――そこは、はっきりと膨らんでしまっている。
「なっ、なんで!?」
シンジ自身が驚きの声を上げた。なにも卑猥な想像などしていないのに。
顔面にクッションが叩き付けられる。
「エッチ、痴漢、変態!」
罵声と共にアスカは、手近にあった物を手当たり次第に投げつけてくる。
「ちょ、ちょっと……」
「あんた、私を犯す気? 出ていきなさいよ! この大馬鹿シンジっ!」
シンジは堪らず、自室に逃げ込んだ。
「どうしちゃったんだろ……?」
シンジはベットの縁に座り、ため息をついた。朝ならともかくこんな時間に、脈絡なく勃起してしまうことなんて今までなかった。
「たまってるのかな?」
けれど、昨日も自慰をしている。
「やっぱり……あの注射のせい?」
リツコはすぐに効果はないと言っていたが、それくらいしか考えられない。
ともかく確認してみようと、シンジはズボンを脱いだ。性器は信じられないくらいブリーフの生地を伸ばしている。
恐る恐るブリーフも脱ぐと、
「うわぁ」
ペニスは勢いよく、立ち上がった。ほとんど腹に着きそうだ。
「こんな……」
シンジは絶句してしまう。長さも太さも五割り増し程度の大きさになっている。昨日までとは、まるで別の物のように思えた。
「……」
シンジは息を飲んだ。無意識に、右手が伸びる。
「あぁぁっ!」
ペニスを擦り上げると、電流のように快感が突き抜けた。違う。昨日までとは感じ方もなにもかも。
五、六回、擦っただけで、鈴口からは先走りの汁が溢れ出した。
「うぅ、あっあぁぁ」
シンジは、夢中でペニスをしごき続けた。いつもは大した力も入れずにゆっくりとした動きの手が、今は力一杯できる限りの早さで動いている。
ペニスが、熱くて熱くて堪らなかった。
「あぁぁっ、す、すごい…出る。出ちゃうよっ!」
快楽の波が押し寄せる。シンジは叫び声を上げて絶頂を迎えようとした。刹那――
鍵なんかかけようのないふすまが、横に引かれて、
「うっさいわね! いったい、なにしてんのよ」
アスカが顔を出した。その表情が瞬間で凍りつく。
頭の中が白くなりかけていたシンジは、手の動きを止めることなんてできない。
「きゃあぁぁぁーーっ!」
アスカが耳をつんざく悲鳴を上げたのと、その体の間近までシンジの精液が噴出したのは、ほとんど同時だった。