「お願いしますっ」
シンジは、帰宅したリツコの肩にすがって哀願した。これ以上間違いをしでかす前に、異常な大きさと射精回数になってしまった性器をどうにかしなくては。切実に、そう思う。
「そうね。方法がなくもないけれど」
リツコは、泣きそうな顔のシンジを見下ろして微笑した。
指示されて、裸でベットの上に横になる。もう恥ずかしいなんて言っていられない。さらにリツコは、シンジの四肢をベットに縛り付けた。大の字の格好になる。
「なんですか、それ……?」
リツコが手に持っている見慣れない器具を見て、シンジは聞いた。表面は黒い革製のよう見える。二十センチ強の長さで中が筒状になっており、先からは管が伸びている。その大きさ、形からどこに使うものかは想像できたが、不安な気持ちになる。
「着けてみれば、分かるわ」
リツコは軽く言って、器具をシンジの――すでに硬く勃起している――ペニスに被せた。管の先端は、ガラス容器に固定する。
器具の中は多少の余裕があったが、
「あぁっ、あぁぁっ」
一瞬で縮み、シンジのペニスにぴったりとフィットした。形もはっきりと浮き出て、まるでペニスが黒く染まったように見える。
「あなたのために造った搾精器よ。どうかしら?」
シンジは答えるどころではなかった。搾精器は脈打って、ペニス全体を刺激する。
「な、なんなんです…これ……あぁっ、すごいぃ!」
シンジは体をのけ反らせて、絶頂を迎えた。管を通って精液が、容器に流れ込む。
「もういってしまったの? 性能は良好みたいね。このまま、精巣を空にしてしまえば無駄に勃起することもないでしょ」
リツコは、微笑んで言った。そうなれば学校でヒカリに手伝ってもらうこともないし、その姿をアスカに目撃されることもない。確かにそうなのだが――
「あぁぁっ、あうぅぅっ!」
早くも二度の射精。それでも搾精器は攻撃の手を緩めてくれない。射精して敏感になった亀頭も容赦なく責め立てられる。
「あぁ、も、もうだめですぅ。リツコさん、外してくださいっ!」
シンジはリツコに訴えた。こんなペースで刺激されたら、狂ってしまう。
「ダメよ。空になるまで出さないと、意味がないでしょ」
すげなく却下されてしまう。空になるまで、リツコはそう言うが、今の自分の性器にそんなことがあるのだろうか。
もちろん限界はあるだろうが、その前に発狂してしまう気がする。
「あはぁ、あぁぁぁっ!」
三度目。容器に溜まった精液は、もう自分の中から出たとは信じられない量だ。
「じゃあ、私は部屋に戻るわ。やり残した仕事があるのよ。一時間もしたら、様子を見に来るわ――たぶんね」
「えっ、そ、そんなぁ……あぁ、リツコさん、待って…待って下さいぃ!」
一度背を向けたリツコは、シンジの制止の声を意に介さず、そのまま部屋を出ていってしまう。
(おかしくなっちゃうよ……あぁっ、気持ち良すぎるぅ。全部出さなきゃ。出さなきゃ、終わらない……)
理性を保つことを諦めたシンジは、快楽の波に身を預けた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「それでどうなったんですか、一時間後?」
興味津々に、マヤが聞いてくる。
研究室の自分のデスクに座り、リツコは答えた。
「仕事に没頭し過ぎたみたいで、見に行ったのは二時間後だったけれど、気絶していたわ。さすがにペニスも萎えていたわよ。てもね、いったい何回射精したのかしら」
リツコは、おびただしい量の精液の入った容器を手で揺すった。匂いが漏れないように完全に密閉してある。
「それに、朝にはもう――」
「また、勃起してたんですか!?」
リツコの言葉を先回りして、マヤが驚嘆した声を上げる。
「ええ、そうよ。これなら、司令と副司令にも満足してもらえそうだわ」
シンジ若さを差し引いても、予想以上の効果だ。
「でも…可哀想ですね……シンジ君」
マヤは目を伏せた。
「しかたないわよ。司令直々の命令だもの。それに、あの年でこんな経験ができるなんて幸せじゃなくて?」
リツコは冗談めかして言った。一緒に暮らすようになり間近で見ていると、シンジの苦悩が深いことが分かり、罪悪感も湧くのだが、それ以上にあの少年が苦しんでいる姿は、サディスティックな欲望を喚起させる。まあ、それは個人的な因縁のせいかもしれないが。
「そんな……」
「あなたも仕事だって割り切りなさい」
なおもシンジに同情を見せるマヤに忠告する。そう言って割り切れる娘でないことは知っているが。
「媚薬としての効果も、実践済みね」
デスクの上に置かれた洞木ヒカリの行動データに目をやる。すっかりシンジの――正確には、その体の一部の――虜になっているようだ。
「どう、あなたも使ってみる?」
「い、いいえ、私は遠慮しておきます」
マヤに向けて言うと、彼女は激しく首を振った。もちろん冗談で言ったのだが、マヤの慌て振りがおかしくて笑ってしまう。
「そうね。ちょっとこれは強力過ぎたわ。ニンフォマニアになってしまうもの。必要以上に、威力を高めてしまうのは科学者の性かしら」
今度の場合は、想定以上のものができてしまったのだから当てはまらない。ただの言い訳だ。
「これのデータは、アスカから取れると思ったのだけど。でも、ただクラスメートの方が感情に左右されない分、正確なデータが取れて返ってよかったかしら」
「これでもう、必要なデータは全て揃いましたよね」
「ええ、でもせっかくだから、最後にもう一度実験させてもらいましょ」
シンジには、また苦しんで――快楽も過ぎれば苦痛と変わらない――もらうことになるが。その姿を想像すると、身震いしてしまう。諜報部には、しっかりと映像で資料を記録してもらおうと、彼女は決めた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
どうして、あんなことをしてしまったのだろうと、ヒカリは後悔していた。でもきっとまた、してしまうだろうとも思う。
授業中、突然放送で呼び出され、校長室へ向かう途中。足取りは重い。心当たりは一つしかない。
校長室の前にたどり着き、ヒカリは深呼吸してなんとか気持ちを落ち着けようとした。あまり効果はなかったが。
ノックを二回して、ドアを開ける。
「失礼します」
中に足を踏み入れて、ヒカリは眉根を寄せた。
校長の姿はなく、代わりに白衣姿の女性がその椅子に悠然と腰掛けている。
「洞木ヒカリさんね」
「は、はい」
呼ばれて、呆然としていたヒカリは慌てて答えた。恐る恐る聞いてみる。
「あの、あなたは……?」
「私はネルフの者よ。今はシンジ君の保護者もしていると言えば、分かりやすいかしら?」
目の前が暗くなった。両足ががたがたと震え、意味のない喘ぎが声が我知らず口から漏れる。
「あ、あぁ」
「なぜ呼ばれたか、分かるみたいね」
とうとう耐えられなくなって、ヒカリは膝を床に着いた。
「分かってました……いけないことだって。しちゃいけないことだって! だってアスカが碇君のこと好きだって知ってたし……でも、でも、やめられなかったんです! 何度も、やめようって思ったけど、どうしてもやめられないんです。碇君のことを見てると、そのことばかり浮かんでくるし……授業中だって、先生の話なんてなにも耳に入らない……もう……」
心の中で溜まっていたものが、一気に吐き出された。言い訳でしかない。しかし、それでもそれが彼女の偽るところのない本心だった。
「おかしくなりそう……」
全てを吐き出し終えて、ヒカリは力無く顔を伏せた。もうどうにでもしてほしい。
いつの間に近付いてきていたのか、白衣の女性の手が肩に触れた。
「あなたを責めているわけじゃないわ」
「えっ?」
わけが分からずにヒカリは、女性の顔を見返した。ただ穏やかな微笑を浮かべているだけで、彼女の真意は読みとれない。
「むしろ、感謝しているくらいよ」
そんなことまで言われ、ヒカリの思考は益々混乱してしまう。
と突然、顔になにかを吹き掛けられて、ヒカリはのけ反った。
「どう、落ち着いた?」
女性は手に、ガラスの小瓶を持っている。香水かなにかだろう。それを掛けられたのだ。
言われてみると、無秩序であった思考は今は整然としている――整然と一つのことだけを考えている。体中が酷く熱かった。
「いいんですか……?」
ヒカリは、つぶやいた。女性は意味を理解してはいただろうが、あえて聞き返してくる。
「なにが、かしら?」
「碇君のおちんちんを、触っても、舐めても、くわえてもいいんですね」
言葉と共に口から出ていく息が熱い。
女性は少しだけ間を置いてから、うなづいた。
「ええ、あなたの好きにしていいわ」
好きにしていい。いくらでも、どんな風にでも扱っていい。自由。先ほどまでの後悔と怯えではなく、今度は喜びに体が震えた。
「でも、もしまだ心苦しく感じるなら、クラスの他の娘にもあなたの喜びを教えてあげたらどうかしら?」
それは素晴らしい提案だと、ヒカリには思えた。やはりこれほどの悦楽を独占することは、罪に思う。それに彼女らを導くことは、クラスの代表である自分の勤めではないか。
ヒカリは、すぐに同意した。
「そうですね。それは、とってもいい考えですね」
「ふふ、これを渡しておくわ。心を落ち着かせてくれる薬よ。他の娘にも掛けてあげるといいわ。その方がうまくいくでしょうから」
女性から小瓶を受け取る。が、
「掛けるのは一度だけよ。ほんの少しでいいわ。注意してね」
すでに別の場所へ思いを馳せているヒカリは、もう彼女の話などほとんど聞いてはいなかった。