「嫌な雲行きだな」
灰色の雲が、駆け足で広がっていく放課後の空を見上げながら、シンジはひとりごちた。
いつもの体育館裏。ヒカリを待っている。
「本当に、もうやめなくちゃ」
決心が鈍らないように、あえて口に出してつぶやく。今日は、まだヒカリのお世話にはなっていない。けれど、それはリツコの器具のお陰ではなく、自分で処理しただけに過ぎない。休み時間の度に、ヒカリに声を掛けられる前にトイレの個室にダッシュした。お腹の調子が悪いのだと言い訳をしたが、周りからは変に思われたことだろう。
「それくらいしょうがないよね……僕がいけないんだから……」
日射しの完全に消えた世界は、なんだか滲んで見える。心まで陰鬱に滲みそうだ。
と、足音が聞こえて、
「委員長」
小走りで駆けてくるヒカリに、声を掛ける。
「はぁ、はっ、碇君…お待たせ……」
走ってきたせいか、ヒカリの息は酷く弾んでいる。教室から大した距離ではない。全力疾走してきたのでもないだろうし。シンジは少しだけ怪訝に思ったが、
(やっぱり、女の子って体力ないんだな)
微笑して、そう心の内で納得した。
ヒカリの呼吸が整うのを待って、口を開くと、
「話しがあるんだ」
「話しがあるの」
それはヒカリの声と同調した。
「「どうぞ、お先に」」
同時に手で相手を促す。
シンジは吹き出してしまった。ヒカリも顔を赤く染める。
「い、碇君からどうぞ」
普段なら「委員長が先でいいよ」と連鎖が始まってしまうのだが、笑ったことでリラックスできたシンジは、軽くうなずいた。
「うん。あのね、僕たちこのままじゃいけないと思うんだ」
「私も、それが言いたかったの」
ヒカリの言葉は意外だった。
「え、そ、そうなんだ……」
ちょっと拍子抜けしてしまう。残念に思う気持ちも――ほんの、ほんの少しあったかもしれない。
「じゃあ――」
もう、ここで会うのはやめよう、そう続けようとしたシンジは、ヒカリに素早く腕を掴まれた。そのまま彼女は走り始める。
「うわっ、わわっ」
シンジは悲鳴を上げた。しっかりと掴まれているので、自分も走り出すしかない。
「ちょ、ちよっと待って、話しを――」
前のめりになりながら、ヒカリの後頭部に制止の声を投げかける。
「大事な話だから、教室でしましょ」
ヒカリは振り返りもせずに、告げてくる。
「で、でも、誰かいたら」
「だいじょうぶ。今は誰もいないから」
やはり顔は見せずに、しかし自信たっぷりにヒカリに言い切られ、シンジは黙って足を動かすことしかできなくなってしまう。
空は益々どんよりと、暗く染まっていく。
教室の前に着いて、ヒカリが入り口の戸を開けた。カーテンが閉められているのか、中は薄暗い。
そのことを不審に思っていると背中を押され、シンジはたたらを踏んで教室の中に入った。
入った瞬間に妙な匂いが充満していることに気づくが、そんな些細なことはすぐに忘れてしまう。
教室の中には、ずらりと女の子たちが――まるでシンジを待ちかまえていたように――並んでいる。シンジは目を丸くした。
「委員長……?」
振り返り、ヒカリにすがるが、
「言ったでしょ。〝男の子は〟誰もいないって」
そう言って、後ろ手で扉の鍵を閉める。
教室の中にいる女子はヒカリを含め九人。それは疎開が進みすっかり少なくなってしまったクラスの――アスカとレイを除く――女子全員だ。
「な、なんなの?」
わけが分からずに問い掛ける。
「私ひとりじゃ、碇君を満足させることはできなそうだから、みんなにも手伝ってもらうことにしたの。碇君も、そう思ってたんでしょ? このままじゃいけないって」
(そんなわけないじゃないか!)
シンジは、胸中で悲鳴を上げた。
ヒカリの表情は、処理を手伝ってくれていたときの――まるでシンジの性器しか見えていないような――ものになっている。それは他の女子も同じだった。
危険を感じて逃げ道を探すが、彼女たちはシンジの周りをぐるりと囲んでいる。その包囲の輪は徐々に縮まってきていた。
輪の中心で体を巡らすことしか、シンジにはできない。恐い。堪らなく恐い。
「こないでっ!」
叫ぶが、女の子達は反応らしい反応も見せてはくれない。とうとう包囲は手の届く範囲にまで縮まり、
「捕まえた♪」
ついに背中を羽交い締めにされてしまう。声から察するにクラスで一番背の高い女の子だ。シンジよりも十センチ以上も高い。
「は、放して――」
シンジは逃れようと暴れたが、彼女はびくともしない。逆に床に引き倒されてしまう。
それが合図であったかのように、全員がシンジの身に襲いかかってくる。
「やめて、やめてよっ」
ズボンが、シャツが、衣服があっと言う間に剥ぎ取られていく。ブリーフだけを残したところで、女の子達の手が止まった。
手足をそれぞれ押さえつけられ、身動き一つできない。
「うわ、はみ出してるよ」
「収まりきらないんだ」
「すごいね」
女の子達の言うように、ブリーフからは勃起した性器が情けなくその姿を覗かせていた。
「なんで、なんでこんなことするさっ! やめてよっ! 放してよっ!」
シンジは半狂乱になって絶叫した。
「往生際が悪いなあ」
「ねえ、あれ使ってあげたら」
「そうね」
ヒカリが胸ポケットに手をやり、小瓶を取り出した。香水かなにかだろうか。
それをシンジの顔に吹き付ける。それは教室に満ちている匂いだった。
(これって……)
精液の匂いと同じであることに気づいて、シンジはえづいたように呻いた。
「う、ううっ」
「あれぇ?」
「気持ち悪そうだよ」
「男の子にはきかないんじゃないの?」
「でもこれ以上騒がれても困るし」
ヒカリはショーツを引き下ろして、足を抜いた。はっきりと濡れて見えるそれを丸めて、
「苦しいかも知れないけど、我慢してね」
シンジの口に詰め込もうとする。シンジは口をつぐんだが、鼻を摘まれて、すぐに息を吸うために開いてしまう。
瞬間、ショーツが口の中に押し込まれた。吐き出そうとするが、それより早くガムテープで封印されてしまう。
「うぅ、うぅぅ」
動きも言葉も封じられて、シンジは涙を浮かべた。どうして、こんな酷い目に遭わなければいけないのだろう。
「あーぁ、泣いちゃってるよ」
「ちょっと可哀想かも」
「でも、碇君のためにしてることだし」
「じゃあ、いよいよご開帳だね」
女の子達の視線が集まる中、ブリーフが引き下ろされた。
「うわぁ~」
「やっぱり、大きいね……」
「でも、まだ生えてないんだ」
「おちんちんだけ大人だなんて、アンバランスで、なんだか可愛いね」
女の子達から歓声と笑い声が上がる。口々に勝手なことを言われるたびに、シンジの顔は赤く染まっていく。
わずかな抵抗として股を閉じようとしたが、逆に思い切り広げられてしまう。
「はは、お尻の穴まで丸見えだよ」
「きれいなお尻。男の子とは思えないねえ」
なぜ、こんな屈辱的な目に遭わなければいけないのだろう。ペニスが不自然に肥大化したあげく、ほとんど常時勃起しているような状況に陥り、よりによってそれをクラスメートの女子全員に見せ物にされるなんて。それほどの罪を、自分は犯したのだろうか。
「まず私が、お手本を見せるね」
ヒカリがペニスを手に取り、舌を這わせた。快感が電気のように走る。
「碇君は裏筋が感じるの。でも、もっと感じるのが――」
ペニスがヒカリの口にくわえられる。舌と唇が荒々しく、亀頭を責める。
(あぁ、嫌なのに、嫌なのに……)
こんな風に無理矢理陵辱されるなんて嫌で堪らないのに、それならヒカリの愛撫は不快であるはずなのに、今までと同じに――いや、それ以上に気持ちよい。
もうこの性器は自分の体ではないと、シンジは思おうとした。そうとでも思わなければ、自我を保っていられそうもない。
ヒカリの歯が亀頭に軽く当てられた。その刺激で、ペニスは射精してしまう。
脈打つペニスを逃すまいと、ヒカリは口でくわえたまま手で押さえつける。射精全てを受け止め、それを時間をかけて飲み下してから、
「ちょっと乱暴にされるのが、好きみたい」
淫靡な笑みを浮かべ、言う。
「うぅ、うぅぅ」
シンジは否定しようとしたが、言葉になんてなるはずもない。口の中のショーツはもともとの染みと、唾液とでぐちょぐちょになっていた。
「じゃあ、後は順番通りお願いね」
(じゅ、順番通り?)
嫌な予感がした。まさか――。
「私からね。ねえ、誰か代わって」
「はい、はい、早くしてよね。後がつかえてるんだから」
シンジの体を押さえつけていた背の高い女の子が、正面に回りペニスの前に屈み込んだ。
「ううぅ」
ペニスが、ぎゅっと掴まれる。少し、きつすぎる。痛い。
「へえ、出した後なのに勃起したまんまなんだ」
長身の少女は感心したように言って、ペニスをしごきたてた。やはり、力強い。
「うぅ、ううぅ」
呻き声が逃げ場なく、口の中でわだかまる。痛みのためか、快楽のためか――恐らくは両方だろう。
「おもしろいね。ここを擦るだけで色っぽい顔になっちゃうんだね、男って」
恥辱と悦楽に上気し、屈辱と苦痛に歪むシンジの顔を見て、少女は愉快そうに笑った。
少女がペニスを一舐めする。
「うん、熱い…」
舌舐めずりして、
「碇ってなよなよしてて、あんまり好きじゃなかったけど、こんなに立派なもの見せられたら惚れちゃうかも」
少女は大きく口を開きペニスを深くくわえ込むと、豪快に抽送させた。
シンジの意思と反して、快楽の波は簡単に高まっていく。どんなに抵抗し、我慢をしたところで、それはほんの少し射精までの時間を長引かせるだけでしかない。そう諦めてしまうと、
「うぅっ!」
ちょうど彼女がペニスから口を離した瞬間に、射精してしまう。勢いよく少女の顔目がけて、白濁の液が放たれる。
「あっ、あぁっ」
顔を白く染めた少女は、陶然とした表情を見せた。
「垂れたらもったいないわよ」
ヒカリが彼女の脇にしゃがんで、頬の辺りに付いた精液を舐め取った。それを見た別の女生徒も逆の頬を舐めた。
これが夢――悪夢でないのなら、狂っている。なにかが確かに、狂っている。
「んじゃ、次はあたしの番だよね」
今度は逆にクラスで一番小柄な少女が、名乗りを上げた。まだ座り込んでいる長身の娘とシンジの間に押し入ってくる。
「ほんとおいしそうだね、碇君のおちんちん」
きらきらと目を輝かせて、少女が言う。
と、入り口の戸が揺れた。誰かが外から開けようとしたらしい。
すこし間があってから、戸がノックされる。
「誰かいるの?」
アスカの声だった。
シンジだけでなく全員の視線が集まる。
「ねえ、誰かいるんでしょ。開けてよ」
ノックの音が強くなる。
そのまま誰も身動きをしないでいると、
「さっさと開けなさいよっ! いるのは分かってるんだから!」
ノックは、ノックではなくなった。ただ力任せに、戸が叩かれる。
このままでは戸が破壊されるのではないかと、危惧された最中、
「開けてあげて」
ヒカリが、戸の近くの女生徒に言った。
「え、でも、いいの?」
「うん、いいから」
不安げに聞き返す女の子に、ヒカリは再度繰り返した。
鍵が外されて、戸が開けられる。