速水奏ちゃんがメスガキ(?)を卒業したようです 作:ふりーじ屋/家庭内禁書
※あらすじ
体育倉庫でキスハメとパイズリなどです。
「先生」
「リボンとは結び方が違うからな」
「それぐらい承知ですよ」
「そうか」
「どうやって解くんでしょうね」
「……おぐ……ぁ……っ!? く、くび、しま……!」
「冗談ですよ」
「……ふつうに解けるじゃないか」
季節外れの蒸し暑い天気の午後、彼は教え子である速水奏に、彼自身の着けていたネクタイで首を絞められかけていた。
「あなたのために練習した、って言ったら、うれしいですか?」
「うちの男子の誰かに練習つきあわせたんだったら、ちょっと同情するよ」
「あら、そんな興ざめなことしませんよ」
「そりゃあもう、有頂天だな……ぐぇえっ」
また彼は首を絞められかけた。落ちかけの線香花火のような眼内閃光が、視界の端にちらちらと散った。
「もっとうれしそうに言ってください。久しぶりなんですから」
彼は目をつぶって頭を振ってから目をあけた。
いつまでも消えない眼内閃光があったと思った。ただそれは、奏の体で視界が覆われるとどこかへ隠れてしまった。どうやらそれは、ほこりが舞いながら日差しを浴びていただけらしかった。
2人は体育倉庫にいた。だから西に傾きかけた太陽が、申し訳程度に窓から光を投げ込んでいて、ちらちらとしたほこりをきらめかせていて、直前まで彼と奏はそれを視界の端に入れていた。そこの空気は、汗臭い、とまでは言わないがどこかじめじめしていて、体育倉庫そのものに「あまり長居するなよ」と釘を刺されている気分になった。
「じゃあ、さっさと脱がせてしまいますね」
「おうよ。速水は……というか生徒らは、テストが終わりゃ羽根を伸ばせるだろうが、俺たちは採点が残ってるからな」
「あら。さっさと済ませてしまうんですか。つれないお人」
「ここがどこだか理解してるか?」
「ええ」
奏の手は、彼のネクタイを衿先からしゅるしゅると抜いてしまった。彼のジャケットなどすでに引っ剥がされていた。それから前立てに並ぶボタンを、上から押し倒すように外してしまった。
ボタンを外す彼女の手つきが滑らかだ、と彼は思った。しかしすっかりボタンを外されると、奏が彼に一言もかけずにワイシャツを剥ぎ取ろうとして、肩のヨークにくしゃくしゃとシワが寄った。そこはぎこちないのか、とわずかに驚く。
どうやら奏はセックスに飢えているらしい、と彼は他人事のようにぼやきそうになって、あやうくノドに言葉を押し留めた。しかし表情に出てしまっていたらしく、奏の手でまた花火が散るほど首を絞められた。
彼と速水奏は、先生と教え子の立場でありながら、“体育倉庫で”セックスに及ぶのがこれで2回目だった。前回はきょうより少しだけ穏やかで、空気もからっとして過ごしやすい日和だった。奏の服装は制服ではなく、体育の授業の汗をまとったままの運動着だった。そのとき、彼は奏の汗を執拗に嗅ぎたがって、彼女から肘打ちを何度か食らっていた。
首を絞められるのと肘打ちを食らうのとどっちがいいだろう、とぼんやり考えた。
「早く脱がされてくださいよ」
「あまりくしゃくしゃにするなって」
「奥さんがアイロンをかけてくださるんでしょう?」
「自分でやってるよ。出かける前に、ハンガーかけたままいけるやつで、さあーっと」
彼は奏に、スラックスのベルトを抜かせてやった。ベルトを通していたウエストバンドを引っ張られ、あっという間にパンツ一丁にされてしまった。奏と対峙してからいちばんきまりの悪い羞恥に襲われた。
おかしな感覚だ、と彼は自身を小さく笑った。
職場――母校でもある――で裸になるぐらいなんだというのか。もっと恥ずべき行為に何度も及んでいるのに。衣服を剥がされると、教師という立場まで剥がされてしまった気がしていた。とっくに剥がされてしかるべき立場であるのに。
「……見ても面白くないだろ、おじさんの裸なんぞ」
彼は、腰と腿に伝わってくる体育用の分厚いマットの感触が、思ったよりひんやりと冷たく感じた。ごわごわとそっけなくも感じた。
「お顔は面白いですよ、先生の」
「顔……顔? 服を脱がす前から見えてるじゃないか」
意趣返しのつもりで、彼は奏の顔をじろじろと見返した。
奏の肌は白い。白いと言っても、陶磁器のようにツンとよそよそしい。冗談のように整っているが、彫りが深く、日本人からすると少しきついと感じられるかもしれない目鼻立ちだった。校則に従って素っぴんだった。
彼は奏の素顔が整いすぎて、これにどう化粧したらいいのか考えるのがかえって難しいのでは、と思った。かつてマダム・タッソーを訪れて見た蝋人形のうちの、著名な白人女優の1体の姿も思った。蝋人形はまるで人肌のように半透明の血管が描かれていたり、微小なセラミックやガラスの粒でそれらしいきらめきを帯びていたり、ヤスリでマットな質感を与えられている。そういう作り物よりも、奏がいっそう触れ難く感じられた。
体育倉庫の窓に忍び行ってくるだけの頼りない光源のせいだろう、と理屈をこねて振り捨てる。
「……ぞくぞく、してきた」
「お体が冷えちゃったんじゃないですか」
「おい」
奏の顔と同じくらい、彼女の体の描くアウトラインも、袖やスカートから除く手足も非現実的に感じられた。しかしそれが、彼の勤務する学校の制服に包まれている。制服はことしから少しデザインが改められていたので、彼の目にさほどなじんでいない。グレーのブラウスに水色の正リボン。プリーツスカートはクリームホワイトとネイビーブルーのトーン・オン・トーンで、奏はちゃんと膝丈にしていた。学校は進学校ぶって“おかたい”イメージ戦略を目指しているらしいが、女子生徒からは「野暮ったくなってしまった」という悪評も聞いている。
「じゃあ、こんどはあなたが私の服、脱がせてください」
「なにがじゃあ、なんだよ」
「私の肌で温めて差し上げようかと」
「雪山の遭難者じゃないんだから」
「うふふ。あれ、もっと凍死しやすくなってしまうらしいですよ」
「そうか。体温がこもらなくなるんだから、そうだよなぁ」
「あと、汗を吸った服が凍って着られなくなってしまうんだとか」
奏の制服を脱がせてしまったら、彼女ももう戻れなくしてしまうんだろうか。罪悪感と征服欲に引っ張られながら、彼はまず奏のリボンとブラウスに手をかけた。指先に、彼女の体温と吐息が触れてくる。
「……うふふ」
「いやに素直に脱がせてくれるじゃないか」
「抵抗したら、シワになっちゃいますもの」
「おい、俺のシャツは」
「抵抗して差し上げたほうが、ご気分、盛り上がります?」
「やめてくれよ」
彼は奏の口ぶりで、自分の若かりしころの教師生活を思い出した。母校にコネで採用された彼は、彼自身の学生時代を知る先輩教員からときどき彼自身の学生時代をいじられて、それがどこからか漏れ伝わり――学校にはよくあることだった――生徒から先輩か近いOBのようにいじられていた時期があった。そういうときの女子生徒に、奏の口ぶりが少し似ていた。あらためて、生徒を犯そうとしている自分の状況を理解させられた。
彼は、自分が年老いてから奏と出会ってよかった、と安堵していた。もし若かったら、彼女ともっと……と思わずにいられない、と危惧していた。
自分は速水奏より何十年も早く死ぬはずだ――彼は佳人薄命なんて蘇東坡の偏見だと思っている、なぜなら美人か英傑以外の他人の運命なんて薄かろうが厚かろうが人はすぐ忘れてしまう――いまだって自分は、自分と速水奏のこと以外忘れている、と彼は自分のための理屈を心中で並べていた。
彼が死を意識するようになったのは、彼の両親が死んでからだった。久しぶりに、教材研究以外で哲学書を開いた。生に別れを告げるときとはすがすがしく、例えばオデュッセウスがナウシカアに告げるように――『善悪の彼岸』の箴言に目が止まった。女とわかれるときもそうではないか。いまは、奏にオデッセイをいじられた言葉が連想された。
もし奏ときれいに別れられたら、おそらく人生ともきれいに別れを告げられる気がしていた。人生との別れ。奏が目の色を輝かせそうな話題だったが、彼はあえて話題に出していない。
彼は自分の死を意識すると、奏のわがままが愛おしくなった。こんな美しい人間の記憶に、自分の一部を預けさせてもらえる。照れくさくなる。目をそらす。
「速水がそんなことしてくれたら、盛り上がりすぎてしまいそうだ」
「ぞくぞく、してきましたよ。私も……」
彼の視界の中央が、奏の豊満なバストの谷間に釘付けにされた。地味でおとなしい色とデザインで、カップ数がぜんぜんおとなしくないブラも見えた。彼の頭から、速水奏より前の記憶が9割以上も雲散霧消していた。
奏の汗の気配は、彼の記憶と比べて控えめだった。直前まで机にじっと向かって何時間かのテストを受けていて、それから昼食でもとって少し時間を潰したぐらいか、と想像する。彼は、いまの彼女の汗と、彼女が体育の授業が終わった直後にしたセックスでの汗と比べていたことに気づいた。
「ねぇ、肩はこちらに動かせばよろしいかしら」
奏が上腕を前に伸ばして、むしろ彼による脱衣を邪魔するように動いた。耳の後ろから両鎖骨のあいだに伸びる首筋がぴんと張られた。鎖骨と首のあいだがいっそう深くくぼんで、二勺おちょこの日本酒一杯ぐらいなら注(つ)げそうだった。それでいて、肩甲骨が前に引っ張り出されて肩幅が狭くなっていて、いっそう奏をかよわく見せた。
肩甲骨とともに前に伸ばされた奏の上腕が、バストを軽く圧迫していた。バストは押さえつけられているのに、腕との境目から乳肉がぱつぱつに盛り上がって、彼の脳にはバストがかえって大きく認識された。
彼の反応を察した奏は、気を良くしたのか、両の内肘がくっつきそうなほどむぎゅむぎゅとバストを圧迫して見せつけてきた。肘を屈曲させたり伸展させたりしてバストを乱暴に揺らしていた。
彼が奏の手首をつかんだ。
「脱がすぞ」
「はぁい」
奏は彼にとって意地悪な体をしていた。触りたい、凌辱したい、と彼の心に思わせつつ、それをどこかで拒絶していた。
制服のうえからでも自己主張の激しかったバストは、ブラの肩紐を外してしまうとたえかねたように落ち、跳ね返るようにたぷんと揺れた。その一瞬だけで、柔らかさと弾力を見せつける。それでいて、あらわになった乳首がにらむようにツンと張っていた。
奏のウエストは、肋骨と胸骨のあたりだけ固くこわばっていた。それより下のアウトラインは、ねじられてもいないのに軽くねじられているようにくびれていた。へそのまわりにうっすら腹筋の継ぎ目が浮いていた。よそよそしく白い肌でそこまで華奢なようすだと、彼は記憶の中のどんな女よりも、どんな裸婦像よりも奏が儚げに感じられてしかたない。
さらに視線を落とすと、腰や太腿の骨が肉や脂肪に埋まりながらうっすら浮いているようすが見えて、むしろ安心する。ウエストよりだいぶ健やかだった。陰毛が行儀よく小さくうずくまっていて、彼の見下ろす視線から秘所を隠していた。
「裸になっちゃいましたね。学校で……はじめて、ですよ」
奏の声で、彼は視線を止められた。
「緊張しているか」
「……そうかもしれません。それさえなければ」
「それ、って?」
奏が頬に赤みを浮かべつつ、視線をそらしながら彼の股間を指差した。
「おかげさまで、いい具合に盛り上げてもらったよ」
「男の人って、ずるい。こういうとき、開き直れる」
「男が恥じらっても誰も喜ばないから、開き直るしかないんだよ」
「そうでしょうか?」
奏が目を閉じて、くちびるを指先ぐらいに開いた。キスをせがんでいた。くちびるのあいだに見える白い歯は、肌と同じぐらいよそよそしかった。彼は彼女のくちびるを奪う前に、額同士を先にくっつけた。
「脱ぐ前でもできたじゃないか」
「いい感じに盛り上がるまで待ってたんですよ。よくがまんできたでしょう?」
彼は、舌先で奏の歯列を上下に開かせるよう催促した。
※
「用意がいいな」
「ちょっと、その言い方。デリカシーないですよ、先生」
「すまん」
「もう、まったく」
奏はマットに身体を横たえる前に、かばんから大きなバスタオルを出してマットのうえへ敷いていた。白無地の、どこのホテルにでも備え付けて有りそうなタオルを見ながら、彼は、その布地が、入浴後か、あるいはプールの授業後に奏の肌から垂れた雫を何度吸ったんだろうか、と妄想してしまった。これから自分が奏の体液をすすろうというのに、と彼は自身をおかしく感じた。
キスを再開した。
「んぅ、んふ、ん……ぅぷ、あ、ふぁ……っ」
ちょっとしつこいぐらいのあいさつ程度に、くちびるとくちびるをこすり合わせる。スキンシップがきつめの、ロシアや南欧あたり――奏が好んでいるらしきフランス映画あたりではどうだろうか、と彼は自分の感慨を引っ込めた。若者とのジェネレーションギャップを観察するのは職業病だった。
「んぷ、ちゅっ、ぢゅぅうぅ……!」
奏が、あいさつはもうじゅうぶんとばかりに、舌を突き出して彼の歯列をこじ開け、口蓋にまで侵略してきた。口内を我が物顔で舐め這いずる。
彼は反撃に、じゅるじゅる、べちゃべちゃとわざと行儀の悪い音を立てて唾液をすすってやった。濃い甘酸っぱさで、早くも頭がくらくらしてくる。奏から首に手を回された。首の皮を抓られた。
「じゅる、るじゅ、ぼっ、んく。ぷふぁ……ふあ、あはは、せんせ、気分、出てきました……?」
お返しに、彼の手が奏の肩を抱いて、そこから鎖骨を撫でるのか、さするのか、といった具合で触れる。
奏から、バストの膨らみを押し付けられた。むぎゅ、とも、むに、ともとれる強く柔らかい肌と肉。何度触れても彼は気圧される。
「んぷ、ふ、ぁ……もっと、乱暴にしてくださいよ」
「俺、たぶんサドの趣味はないぞ」
「優しげな先生って、ウソっぽいから……それに、たまっていらっしゃるようですし」
奏に指先でおもちゃのようにペニスをつつかれ、彼はつばを飲みながらうめいた。
たまる、という口ぶりこそ“ウソっぽ”かった。彼は、速水奏をはじめてレイプした日より前という条件をつけると、どんなセックスをしていたのか、いつ最後にセックスしたのか思い出せないぐらいだった。
ここ数週間、彼はテストやら校務やらで忙しく奏との性生活から遠ざかっていた。それでも世間一般の若者のように欲求不満で悶々と……とはならない。
「う、おっ」
「おっきくて、固いわ……骨みたいよ。でも、熱い」
「うれしいこと言ってくれるなあ」
奏からいじられている、この中年に似合わぬ猛々しい勃起だって、男の本能があふれ出た……というより、彼女との快楽を予測して期待して先走って沸き起こった……と言ったほうが、彼には現実らしく思われた。動物はセックスできそうな状況に反射して興奮するが、セックスを思い出して興奮できるのは人間だけらしい……どこかで聞きかじったうんちくが一瞬だけ彼をよぎった。
「んぎゅ、ぐっ、うおっ……!」
「うふふ、もうぬるぬるしてきましたね」
奏が、両手をぐうっと伸ばして、彼の勃起をさらに容赦なく襲う。親指の根本と四本指の根本で絡め取られ、爪先でくすぐられる。カリ首下に追いやられている皮をぎりぎりとつねってくる。
「こ、この……こっちだって、やられっぱなしじゃないぞ……!」
「あらごめんなさい。いじめるつもりじゃなかったの。ただ久しぶりすぎて、あなたの好きなやり方を忘れてしまったみたい」
奏の手や指や手首にペニスを絡まされしごかれながら、彼は密かに手コキを押し付けがましく乱暴だとぼやいた。
彼がセックスしている限り、奏の愛撫はおおむね不慣れで力が強すぎて、あまり上手とは言えなかった。けれど奏の白い肌や、蠱惑的な囁きや、メリハリのついた曲線美や、そのほか奏から分泌される色気が、愛撫の下手さなんて一難をすっぽり覆い隠してしまう。
彼はいつも悩ましげにうめいて奏を楽しませてしまっている。愛撫の判定者として、彼はザルも同然になっていた。
「んくっ……!? あ、は……お、音、立てちゃ……っんぷっ、ちゅぅ、ちゅぷ、んぐっ」
彼は両手をいっぱいに広げて、奏の乳房をすくい上げるように揉む。そうしなければ男の手であっても、奏の乳房の稜線を多い切れない。指を広げてしまったせいで、指の合間から乳肉にこぼれ落ちるふりをさせてしまって落ち着かない。
「ちゅ、ぢゅ……んんっ……! ぢゅるぢゅっ、んぢゅ、は、んっ……!」
キスを続けながら揉みしだく。柔らかい乳肉が彼を押し返す。中指か薬指あたりにしこった感触がこすれる。
彼は奏がノドとくちびるを震わせるのを感じ取った。
「んっ、ふっ、ぢゅぷっ……手、手が、いやらしいわ、先生っ……もっと、シて……」
指の股で挟んで圧迫して、乳房から摘み取るように引っ張ってやる。奏の細いデコルテが声なき声で喘ぐ。
かといって奏も手コキを休まない。手のひらも指もぴったりと密着させながら、女の細いそれらに似合わない力を込めてくる。勃起を叱咤するように締め付ける。
鈴口から滲み出したカウパー腺液が塗り拡げられた。
「っはぁ……あ、はん……ッ、そ、そっち、も……?」
奏の乳房を相手に立ち回っていた――質量と弾力が強くて、彼は半ば取っ組み合いのような気分になっていた――彼の手のうち、片方が彼女の太腿のあいだに降りていく。ぬちゅり、と湿った気配を内腿で拾う。
彼が指を差し伸ばすと、奏の合わせ目は吸い付くように迫ってきた。ただ腰を動かしてせがんできただけであろう動きが、彼にはそう感じられた。
「んぐ、へぅ、んんんっ……あっ、ゃ、あ、んんっ……ひぁ……!」
奏の下腹や秘所や内腿は、乳房よりも断然ぐいぐいと強く彼の愛撫に反応した。自重を肌で支えるのがせいいっぱいの脂肪組織と、上半身すべて引き受ける骨や肉や靭帯では、同じ滑らかな肌に包まれていても感触がまったく違っていた。奏の腰まわりはみっちりと詰まっている。それでいて奏の首や肩は、身悶えするように弱々しく振られていた。唾液の糸が、切られた蜘蛛の巣のように儚く消えた。
「ん、くッ……ふぁ、あああ、あっ……!」
「声、抑えて」
「いや、そんなの……手加減も、しちゃ、だめ」
愛液の糸は、唾液よりずっとしつこく粘っているらしく、彼は目を向けずとも指先だけでそれをじゅうぶんに味わっていた。
「んぐっ、う……俺は、ちょっと手加減してもらいたい、なっ」
ペニスに反撃が打ち返される。身体の芯が熱く高揚してしまう。速水奏とセックスする、という期待だけで勃起を始めてしまうのだから、愛撫なんてもとより省略可能だった。
いっそ、もう押し倒して挿入してしまうか――切り出しかけて、止める。
「ふ、ふぁっ、あ……あはっ、はっ……もう、して、くれる……?」
奏のアンダーバストに指先を食い込ませる。分厚い乳肉に覆い隠され遠かった鼓動を、ようやくはっきり感じる。びりびりとした刺激が、指先から彼の意識を支配する。腰と背筋が震える。ペニスも合わせて跳ねる。こうして奏は、自分の手コキの威力をまた過大に見積もるのだろう。
「い、やぁ……そ、ぇ……だめ、こえ、でちゃう……」
「抑えてくれよ。じゃないと……」
「でも、それ……止めちゃったら……」
「止めてしまったら?」
「……もっと、ただじゃ済まない声で、叫んじゃうわ」
「自爆テロみたいなこと言うなよ」
「せめて無理心中と言ってほしいわ」
「せめて……で持ち出すモノの言いようが、それかよ」
おかしなことをしゃべっていなければ、体のほうがおかしくなってしまいそうだった。
くちゅ、ぐちゅ、と秘所に指を立てて水音を引きずり出すと、奏の尻と腿がぎゅうと緊張して、シミの目立ち始めたバスタオルをくしゃくしゃにしていた。彼はそれを見るだけで、自分のペニスが膣内にしごかれた錯覚につまずいた。
「んくっ、うっ、あ、あっ……! あぁっ、はぁ……!」
「声もエロいな、速水は……!」
互いに性器をいじり合っている。いじめ合っている、というほうが近いかもしれない。それで興奮して、そのまま突っ走ってしまいそうになる。愛撫の手が力んでつまずく。
「そろそろ……シましょうよ、ねぇ……焦れて、しまうから……っ……」
彼の舌に代わるように、ノドがごくりと鳴った。
※
「いままで、あまり意識してなかったんですけど……」
「意識……何を?」
「この、姿勢……けっこう、恥ずかしいですね」
奏はマットの上にバスタオルを敷き直して、そこに腰を下ろし彼を受け入れる体勢を取っていた。
仰向けで、両膝を横に開く彼女の正常位の姿勢を見る――彼から見ると挑発的で扇情的で、なにを恥じるのかさっぱりだった。
「そういや、ごろごろ寝転がれるところでした覚え、あまりなかったな」
「じゃあ、そういうところに慣れてしまったら……?」
「……そんなご身分じゃないだろ」
慣れる前に、自分は奏とお別れか――彼は無粋な考え事を振り払った。セックスに没頭する一歩手前で足踏みしてしまう頭の往生際が悪かった。対して、勃起しっぱなしのペニスが素直ですがすがしいぐらいだった。
彼が挿入するために奏の腰をつかむ。奏の顔をうかがってみると、エアリーショートのくせにどこかねっとりした彼女の濡れ羽色の髪が、バスタオルの領域からはみ出て、マットでくしゃくしゃに乱れているのが視界にこびりついた。
「ああ、そうだ」
「なんです、いま、私……」
「何か、口にくわえるものないか? 声が……」
「それじゃあ、キスできなくなるじゃないですか」
「挿入(い)れたままだとやりにくいんだよ、どっちも」
「なら、先生のハンカチでも押し込んでおいてください。乱暴されちゃってるみたいで興奮しそう」
「やだよ、きょう暑かったから。汗ふいちまった」
「……ふふ。女子中学生みたいですね、先生」
亀頭の先端を、奏の秘所に突きつけた。
「……んんっ……」
それだけで、奏は静かに短い喘ぎを漏らす。
「ふぁあ、はぁ、ッ、くぅ、あぁ、あふ……くっ、はふっ……! 声、でちゃ……っ……!」
「う、ぐ……く……ぅッ……ぁ、ぅ……ッ」
腰を前に突き出し、挿入した。彼以外の男を許していない奏の秘所が、きつくペニスを締め付ける。熱い体温と、興奮した息遣いと、叫んでいるような乳房の浮き沈みがないまぜになって彼を包み込む。すぐ、包み込むというほど穏やかでない、と思い直す。彼は奏が発情しながら怒っているように感じられた。
「ぐ、く……しまる、な……速水の、なか……!」
「う、ふふ……手加減、してくれるんじゃ、なかったの……?」
「この、いま、お望みどおりに……」
「あ、はっ……んぐ……! ぁ、ああっ、う、く、ぐぐ、ふぅううっ……!」
彼は奏の腰をつかみながら、ペニスを膣奥まで潜らせていった。亀頭の先端半分ぐらいが、奇妙なくぼみで引っかかるのを感じた。そこを押したり引いたりすると、奏がよだれまみれのくちびると頷(おとがい)で宙を食みながら、声もなく激しく震え、頭を振って悶えるのが見えた。デコルテが力んで、前頸三角のくぼみがいっそう深くなっていた。
「うっ、あ……ふ、ぁ、あ、はーっ……そ、ぇ……お゛……ぉお゛ッ、い、いっ……っ……」
奏が首や腰を揺らして、合わせてバストもゆさゆさと揺れていた。激しく引き攣れてどこか痛めていないかと彼が密かに心配する首筋や、あいかわらず強くぎちぎちとペニスを締め付けてくる膣と腹に対して、バストの揺れるさまは妙に悠然としていた。
ペニスを突き刺したまま、乳房を力いっぱい鷲づかみにした。いつの間にか汗に濡れた乳肌が、ぬちゃぬちゃと彼の手のひらや指を湿らせた。
奏が忍び笑いのようにあごを震わせていた。
まだ余裕ありげだったようすに応じるつもりで、彼は奏のびんびんにしこりたっていた乳首をきりきりとつねる。
「あ、ぁ……! く、う、ぅ……!」
彼のピストンを押し返すほど、奏の脚と腰が二度、三度と跳ねた。肋骨どころか、胸骨まで肌に――あの豊満なバストにもかかわらず――透けて見えそうなほど体をよじり、肩や腕をしならせていた。バスタオルをばたばたと乱す膝裏とふくらはぎだけが、妙に日常に近かった。
その火照った表情は、あんなに触りがたく美しかった――触りがたかったころの面影が、長く上向きに伸びたまつげにだけ残っていた――奏の顔から、雄の情欲を煽り立てる以外の役割を奪い取ってしまった。
「だめ、だ、めぇ……も、もう、わた、し……は、ぁ……あ゛うっ……!」
おそらく、膣で達しているのだろう、と彼は奏の体の反応に対して控えめに推測した。ヴァギナ・オルガスムスが健康で成熟した女性の証……というのは、ジークムント・フロイトの説であって、影響は多大だったが根拠は薄弱である、だから成熟しきっていない女がそうなる可能性だって……そう思ってみても、初潮から何年も経っていないはずの奏が膣イキしているのは、彼にとってできすぎでウソっぽかった。彼が奏にいつか見せたらしい優しさと、どちらがよりウソっぽいか。彼は判断しかねた。
「んひゅ、かは、ぁ、あッ、は、ぅ、ぁあぅ……っ!」
奏が肩や肘でマットとバスタオルを叩きながら、背中を反らして鳩胸ぎみになった。もとより豊かなバストが、こんもりといっそう盛り上がって揺れていた。
彼は首を曲げたり背中を曲げたりして、ペニスで腟内を抜かないままでなんとか奏の乳房にしゃぶりつこうとした。片方の乳首ぐらいはなんとかくわえられそうだった。ただペニスを入れたままだとさすがに苦しかった。上体を何度となく下げつ擡(もた)げつさせた。奏も予期せぬ刺激に目を白黒させて戸惑っていた。
悪戦苦闘の果てに、彼が脊柱に嫌な痛みを覚えて、諦めて顔をあげると、奏の細いノドと、続いて濡れたくちびるに視線が吸い寄せられた。
彼は腕を伸ばして、奏の頭をかき抱いた。逃しはしないとばかりに、噛みつくようにくちびるをこじ開ける。奏が一瞬だけ歯を鳴らしたが、すぐぎこちなく合わせ、やがてあごを半開きにしたまま彼の蹂躙に粘膜を委ねた。彼には、受け入れてくれたようにもふてくされたようにも感じられた。
彼はそれで、深くキスに没頭していけた。
「んっ――ん、ひんぅっ……はぷっ。んぢゅ、ちゅちゅ、ちゅうぅっ! んぢゅるっ……ちゅうぅぅぅっ!」
いずれにせよ、奏の口吻がどうしようもなく彼を誘っていた。刺激が目の粘膜からくちびるの粘膜に変わると誘いはいっそう強く彼を引き付けた。
彼は煽られるまま、キスを荒っぽくしてしまう。苦しげな吐息やじゅるじゅるという水音が漏れてしまう。こぼすまいと、接吻を深くする。そのくせ耳まで犯してやるつもりで、わざと騒がしくするから、よだれもこぼれていた。膣口も騒がしくしてやろうと腰のストロークを長くした。キスしたままだとはかどらなかった。目の粗い綿とフェルトと合成スポンジの体操マットは、いくら彼が腰を使っても、ベッドほどセックスらしい音を立ててくれなかった。
「んぢゅ、く、ぢゅ……んう、ぁふ、んんくっ……んぐ、ぢゅううう……っ!」
舌がくねる。くちびるがもだえる。何度でも粘膜をこすりつける。
もう限界が近くなっていた。
「んぷ、ふ、は、ぁ……ふあ、はぁ……っ!」
「速水……」
「ふ、は……あぁ、あら、なぁに、先生……?」
「……出そうだ」
「ん、ぁ、はぁ……もう、ちょっと早くても、良かったのに……んっ……」
彼は奏のつぶやきを聞き流した。本当に射精寸前で、会話どころではなかった。
奏が何度か、かかとで彼の腰を打った。加減がでたらめな子供の肩たたきのように、鈍い打擲音がべちべちと鳴った。まだ彼の反応は鈍かった。
「おあッあ!? だ、だから、出そう、出るっての」
「あは……何を、大げさな……着けてたじゃない、ゴム、ねぇ」
奏のふくらはぎも太腿も、彼の腰に巻き付いてしまった。
「コンドームだって、絶対じゃ……ああ、もうっ……出る、っ……むぐ、っ、ん、あぷ、んぐっ……!」
いつの間にか、キスされながら引きずり出されるように、絶頂、射精。
「っく、く…………くううう、あ、う、はう゛ぅっ……!」
彼も、奏も、ウソのように長い絶頂感に震えていた。唾液と舌と口腔粘膜とを絡ませながらそんな調子だったせいか、べちゃべちゃと尾籠な音が静かな体育倉庫内に響いていた。もうひとつの結合部では、どろどろの精液が、無理やり狭い輸精管と尿道口をこじ開け、奏の膣壁でペニスごと押されたり圧(へ)されたりされながら、しつこくもがいていた。
「ひゃむっ、ん、れる、ひぅ……ぷふぁ、あっ……!」
快感が減退していくプロセスは、他の場面では緩慢で穏やかであるのに対して、ことセックスに関してだけは転落のように急激と決まっている。一呼吸前までは無尽蔵の恍惚が誘いかけていたのに、次の瞬間に灰色の日常へ戻っていく。オルガスムスから引きずり下ろされるとき、涅槃のごとく事切れる快楽の灯火を誰もがむなしく見送っていく。
けれど体育倉庫で戯れていた彼らのそれは、ほんの少し――けれど、それ以外と比べれば永遠のように――長かった。ようやくくちびるを離したあとに引いた唾液の糸も、いつもより長く残った。
※
「やっぱりたまっていたんでしょう? 一回じゃ満足できないぐらいに」
「満足、ねぇ……うぐぉっ」
「そうじゃありませんか、ねぇ?」
中年男性の勃起ペニスを握っているくせに、速水奏が彼に見せた笑顔は、いつもよりずっと無邪気だった。
絶頂が収まったあと、彼は速水奏にうながされて体育倉庫のマットに仰向けに寝転がっていた。そしてゴムの精液たまりをだらりとぶら下げたまま上を向いているペニスから、そのゴムを奏に引っ剥がされ、指とくちびるでじりじりと刺激されていた。
「欲求不満を解消するお手伝い、しちゃいますね」
彼がごろごろ苦しげにうめくたびに、奏はころころと楽しげに笑った。
彼は心地よくないわけではない。射精して間もないペニスに極上の“美女”から労るようにいじめられて心地よくない道理はない。けれど快楽が強すぎてか、気分がむしろ苦しかった。
ペニスとたわむれる奏の首と肩は、だいぶしっとりしていた。白い肌が、骨や粘膜の近いところだけまだらに紅潮していた。
両手で左右から囚えられ、こすられる。彼が無言で悶絶する。
「あら、やりすぎました?」
「く……なぁに、男ってのは、がまんしたほうが、気持ちよくなれるんだよ」
「うふふ、勉強になりますね」
皮肉めいた笑みが、ペニスにきゅっと押し付けられる。奏に頬ずりされる。精液と先走りの混合液が彼女の美貌を汚した。
「……もっと気持ちよくさせてしまっても?」
「怖いこと言うなよ」
「怖がっている顔してませんよ、先生」
彼は、奏がどうしようもなく調子に乗っている、と思った。奏のフェラも愛撫も、投げかけてくる挑発も、ぎこちなかったりあざとかったりだった。奏だからこそ、なんとか押し通っている程度のものだった。
「れぅ、はむ……んくっ、ちゅ、ちゅっ……んぷ、はぁ……っ」
亀頭の先に、ことさらめいたフェラチオの舌使い。キスに比べるといっそうわざとらしい。
彼の目と鼻の先に、しっとりと甘い匂い。ねっとり、というほど熟(こな)れていない、彼の隙だらけの反応に乗じて男を誘う若い女の匂い。
生徒とセックスするなんて本来あってはならないこと、という罪悪感が彼にまたぶり返してくる。
「ん、ぐ……はや、み……っ!」
「ちゅ、ぢゅ……んんっ……! ふふ、私を誘っているんですか、ねぇ?」
奏は彼の脇腹か腰のそばに膝をついていた。奏がペニスの反応でくすくす笑った。彼女が腕や首を動かすと、そのたびによだれか何かで肌が少しかぴかぴした巨乳がゆらゆらしていた。
「えぅ、んっ!? ふ……ぅ、っ……先生、また……」
「このままじゃ速水にやられてしまうが、まぁやられてしまってもいいが、それだけじゃなあ」
奏の乳房に、彼が手を伸ばして下から撫でた。
奏はくちびるを尖らせながら、ペニスから指を離して、彼の鼠径部の線をそろそろとなぞったり、陰嚢の根本を軽くつついた。おもちゃで遊ぶような手付きだった。
「ぁはあっ……やぁっ、あぁっ……! もう、先生ったら……」
裏筋――奏から見れば、裏には見えないかもしれない――を指先でつままれて引っ張られる。つねられた痛みがペニスに力を与えるようで、鈴口からカウパー腺液がさらにじわじわとあふれる。
「いいわ、握ってしまいましょう。熱くて、硬くて……これが、私の中に……? いまさらだけど、ウソみたい、ね」
奏の手でペニスが包み込まれ、圧迫される。カリ首と亀頭を握られ、彼がひときわ息を荒くすると、奏は舌舐めずりしながら先端の鈴口にくちづけした。
「ぴちゃ、れぢゅ、れぢゅ……ん、く、ん、んっう……!」
もはや彼は、奏の愛撫を軽く流せなくなった。ぴちゃ、ぴちゃ、というフェラチオの水音は、正常位のときにしたキスよりはさらさらして聞こえた。
「へぅ、ん、ぢゅ……ふ、むぅっ、んんっ……もっと、恥ずかしそうな顔、見せてよ、先生」
「美人ほどいじわる……って言い回し、初めて信じる気になったよ」
「ふふっ」
柔らかい肉に触れられる。くちびるも、舌先も。歯も当てられる。歯型がつくかつかないか、といった具合。
「恥ずかしがるのがいやなら、そうですね……笑ってください。ほら、にこ、って」
「速水、お前なぁ……あ、あ、あ、く、ぅ――ううぅっ!?」
「ほら、もっと目尻を下げて、口角を上げて……んっ、ふっ、ぢゅぷっ、んんっ……ふふっ」
「あ、あう、っ、う……!」
彼よりも、フェラチオのあいまに見せる奏の微笑みのほうがずっと自然だった。奏の口ぶりと表情から、自分の要求が必ず実現するとという屈託のなさがこぼれていた。それが彼の耳の後ろまで届いて、彼をたまらなくしびれさせた。
「ほら、奥歯なんて噛み締めないで……私が、これから、もっと強くシちゃうんですから」
言葉どおり、奏は口を大きく開いて、亀頭をしゃぶりにかかっていた。舌と口腔粘膜がペニスに密着して、無造作にもみくちゃにしてくる。歯さえ立てなければ何をしてもだいじょうぶだろう、と奏が思っているらしい。それは事実だった。
「う、ぐ――はぁぅう!」
「ぴちゃ、れぢゅ、れぢゅ……ん、く、ん、んっう……ん、ふ……あ、んっ……! ふふ、そんなに、おっぱいお好きなんですね……? そんな顔、しながらでも……」
娘より年下の小娘に良いようにされながら、彼はペニス刺激にがんがん頭と下半身を揺らされ、マットに寝かされたままうずうずとうめいていた。そうしながら奏の胸を弄んでいた。せめてもの抵抗か。第2次百年戦争のあたりにありそうな場面だった。英仏どちらかの籠城兵がマスケットの弾を空に一発だけ打ってから降伏して「われわれは抵抗した、名誉ある扱いを望む」などと包囲側の軍に言い放つ……そんな茶番が、ずぶずぶと奏の立てる水音に沈んでいった。
「は、ァ――く、うぁああ、あっ!」
「じゅる、るじゅ、ぼっ、んく。ぷふぁ、ん、もっ、んむぐ、んんんっ……!」
先走りか唾液かといった半透明の粘りが、奏のくちびるとあごから幾筋も垂れ落ちていた。奏が頭を揺らして口腔粘膜でペニスをしごくたびに、筋が幾重にも塗り重ねられていた。彼の揉む奏の乳房もそれでいくらか濡れていた。汗と区別がつかなかった。もはや反撃どころか気休めにもならなかった。
「はや、みっ……だめだ、もう、出る……!」
「んぁふ、んんくっ……んぷ、ちゅっ、ぢゅぅうぅ……!」
奏はフェラチオでばかり雄弁だった。そこにまもなく、どくどくとした精液の濁流がぶつけられる。あふれ出す。
「えふっ、ぐ、う、ぁぅ」
「あぁー……」
本来なら味蕾に触れさせるべきでない精液のまずさで、奏は珍しくおたおたしているようだった。
それにつられてか、彼も束の間だけ毒気が抜けていた。
「ほら、速水、ぺってしなさい、ぺって」
「……飲みきれないほどくれるなんて、大盤振る舞いですね、先生」
精液の残滓の一筋をくちびるから拭いながら、奏がくつくつとノドで笑って見せていた。
※
「きょうの先生、おっぱいには優しいですよね」
「何をいきなり」
「だって、私のあそこには乱暴するのに。口にもぶちまけたのに。ずるい、って言ってます」
「言ってます……って。他人事みたいな口ぶりだが、速水以外の誰が?」
「私のおっぱいが」
「はぁ、さいで」
「だから、シてあげますよ、こっちで」
奏は、ほとんど支離滅裂な提案とともに彼に笑いかけ、しなだれかかった。
2人は体育倉庫からホテルへ移動して、それからセックスを再開していた。体育倉庫を出たのは、単に手持ちの避妊具を使い切ってしまっただけ。それで外に出るなら、どうせなら……とホテルへ。
着いて早々に、ベッド以外のインテリアには目もくれず、汗で湿ったままの衣服をしわくちゃにしながら放り出して、肌と肌を重ねていた。
ホテルに入って最初は後背位だった。彼は移動中にくすぶった射精衝動を抑えきれず、奏をベッドに押し倒して四つん這いにさせ、尻をつかみ無造作に腰を打ち付けた。若いころに彼自身の手でペニスをしごいていたときよりも無遠慮な抜き差しをいくらか続けてあっさり射精に及んだ。あいかわらず射精はウソのように長かった。射精しながら、それから射精が終わっても、彼は奏の背中にのしかかりながら、手を伸ばして巨乳を撫でさすった。汗だくのまま密着したせいで、肌のあいだでべちゃ、くちゃ、とだらしない音が漏れた。
腟内に乱暴しながら、乳房には優しげに。そんなチグハグさが、奏には、どこか彼の言い訳がましく感じられたらしい。『だから、シてあげますよ、こっちで』――それがパイズリの提案だと察するために、彼は呼吸を整える必要があった。速水奏は形の整った巨乳である、パイズリにはおあつらえ向きの……にもかかわらず、速水奏とパイズリという取り合わせが彼にはチグハグに感じられた。
「そこ、座ってください」
「速水、膝は」
「いいから」
奏の命令で、彼はベッドのへりに座らされた。すぐそばの床に、奏が膝立ちして、胸の2つの膨らみをペニスへ突きつける。姿勢だけなら、奏が彼にかしずいていた。けれど実際は、奏が彼を従えていた。ほんの数分前は、彼から奏が一方的に組み敷かれ、ペニスをしごくためだけの肉穴扱いされていたベッドで、立場があっさりひっくり返っていた。鮮やかな逆転。革命的でさえあった。
「へぷ、んぅ、れぅ……ここが、いいんですか? ねぇ、先生」
「う、あ、あ……ぐ……っ」
彼は、奏から告げられた提案をパイズリだと解釈していた。それは半分間違っていた。
「気持ちいいんですよね」
「そ、そうだ、が……あ、あっ、う、ぉっ!?」
「どんなふうにされるのが? 教えてくださいよ、私に」
「う、ぐ――はぁぅう! 速水、それ、は……!」
「いま先生に教えてもらうことなら、私、何でも好きになれそうな気分ですから」
奏は彼のペニスを乳房で包み込み、こすり、押し付け、それからあいまあいまに首を曲げてペニスへくちづけしたり、頬ずりしたり、舐めしゃぶったりしていた。パイズリフェラであった。
「がまんするほど、気持ちいいんでしたよね……? そういうしかめっ面してるってことは、もっと私に気持ちよくしてもらいたい、って意味ですよね……?」
「あ、うっ、あ、くぁ、あっ!」
奏は言葉でも彼をもてあそんでいた。舌が言葉を紡いでいるあいだも、手は緩めない。よだれと先走りでぬめぬめする亀頭を、手のひらで包み込んでくちゅくちゅと音を鳴らすようにこする。やがて白く泡立ったそれらを亀頭にまんべんなくなすりつけて遊ぶ。
「シてあげるのって、本当に楽しいですね。くせに、なっちゃいそう……」
「あぐ、う、あ……! こんなの、くせにしたら、たいへんだぞ……おおおっ……!?」
「んぷっ、はぅ、んんっ……! うふふ、先生、教え上手ですよ。わかっちゃう、どこがいいのか……ちゅくっ、ふぅうっ、んんんっ……!」
肌のすぐ下から骨の近くまで、ぞくぞくとした感覚がひっきりなしに往来していた。特にうなじと腰のあたりがしびれていた。彼の意識では、それが自分から湧き上がったものか、奏から直接注ぎ込まれたものかあいまいになっていた。彼女の一挙手一投足に合わせてほんの一瞬も遅れずに追従して反応を返してしまう。
「はひ、ッ、ふぁ、あふ……ふふ、私も、なかなかの気分ですよ、これ……っ」
パイズリの勢いが激しくなっていく。奏の両手と腕と、彼のペニスや腹や腰とのあいだで、奏の乳房がもみくちゃになっていた。まるで乱暴にしてもらえなかったのを贖(あがな)わせているようだった。
「んふ、む……んんっ……ねぇ、もう少し、強くしてあげたほうが……それとも……?」
奏の舌を、亀頭とカリ首に向けて集中的に当てられた。鈴口が舌先に押されて半開きにこじ開けられ、まだまだ尽きそうもない先走りをこぼした。
「膨らんで、びく、びくって……胸でだけも、感じ取れて……ねぇ、先生、やられっぱなしのまま……私に、めちゃくちゃにされるのが、お好きなのかしら?」
奏の笑みと声は、彼の記憶にないほど色濃い優越感に染まっていた。彼は奏の乳房を始めとする上半身にすっかり制圧されていて、まともに言葉を紡げなかった。
奏はこりこりとしこりたっている乳首を、彼のペニスへこれみよがしにこすりつけていた。弱点のはずの場所を武器のように振りかざして、仕草でも優越感を示していた。彼は乳首からもキスされている錯覚に襲われた。
「ぬ、ぐっ……!? あ、うぁ、はや、み……も、もう、で、る……!」
「うふふ、出しちゃいけないんですか? いけない人ですね、先生」
奏が内肘あたりで巨乳を強く圧迫して、パイズリの責めを厳しくした。柔らかく弾む乳房が、彼のペニスを隙間なく包み込み、ぐちゅぐちゅ、ごしゅごしゅと変幻自在に襲いかかる。整った顔立ち。華奢な首と肩。きれいな釣り鐘型なのに下品にも取られかねない巨乳。パイズリのためのような体が彼に刷り込まれる。
ひとたまりもなく、もう戻れない限界に追い詰められる。
「く、ぐぅ、あ、あっ……も、う、あっ……!」
「出しちゃいますか。おっぱいは……ともかく、髪はだめですよ、ねぇ……んんっ!? んぢゅ、く、う、ぁふ、んんくっ……!」
彼は手を伸ばして、奏のあごを上げさせた。体をかがめて、上からくちびるを奪った。奏はべたべたしたままの舌とくちびるで応じた。従えるような、すがるような、どちらともとれる接吻のあいだで、精液がどくどくと奏の乳房や首を汚していた。
※
「ふふ、まだできるみたいですね。安心しました」
「ちょ、ちょっと休ませてくれ」
「聞こえませんね」
「あぁ、俺、きょう死ぬのかな」
彼のぼやきを奏はさらりと流し、彼の両肩をぐいぐいと乱暴にベッドへ押し倒していた。精液を何発も抜かれた彼は、もう奏の細い腕にすら抗えなくなっていた。
彼のペニスは勃起を保ってこそいたが、きょうの短時間に度重なる責めを受けて、どこか赤黒く腫れた趣だった。それを彼の腰にまたがった奏が、秘所で無造作にくわえ込む。体育倉庫と違ってほこりっぽくないホテルなのに、視界に線香花火が散っていた。
「ずるいですよね、これ」
「何がだ……」
「本当は、エッチって子供を作るための行為ですよね。それを、ただの気持ちいいおままごとにしてしまうんですから」
「ずるくねぇよ。みんなやってるよ。ちょっと頭のある哺乳類なら、サルとかイルカとかさえ、そんぐらいの遊びするっての」
「ふーん……じゃあ、私と、もっと遊びましょうっ」
奏は聞く耳を持たず、挿入。
「はうぅぅっ、んぅぅぅっ……あーっ、あっ、はぁ、んっ……!」
「……ぉ、お、っ、しま、る……!」
ずりゅずりゅ、ぬらぬら。膣壁の細かな凹凸も締まり加減も残らずペニスに刻まんとするような、ゆったりと、しかし執拗な騎乗位が続く。それでいて巨乳はゆさゆさと大げさに揺れていた。奏がわざと背中や肩をひねって揺らして見せているようだった。
彼はそう思うのがせいいっぱいだった。ペニス以外が根こそぎ血を抜かれたように動かない。それでいて肌や肉がセックス中らしく火照ったり汗ばんだりしているのが妙な気分だった。本当に代謝系のどこかがやられているのでは、と思う。いつか死ぬ、といっても、奏とのセックスで腹上死するのはあまりにきまりが悪かった。気持ちいけれどまったくすがすがしくない。
「あ、ぉっ……!? 速水、あ、そ、ぇ……!」
「あはは、先生も乳首、感じるんですか? こんなにちっちゃいのに」
「ぁ、あぉ、はぁ、おおおっ……!」
「れぅ、んぐっ、はぷ……もう、そんな声、初めて聞きましたよ。録音しておきましょうか。思い出のために」
彼に、資料室で速水奏をはじめてレイプしたときの記憶が蘇った。いまのことをもし記録されたら、あのときのキス写真どころではない醜態である。
そんな乳首の屈辱的にこそばゆい快楽に引っ張られてか、なんとか彼の意識に現世に戻ってくる。
「あっ、くる、きちゃ、あ……っ ……はぁっ、すご、ぃ……!」
速水奏の腟内でペニスをぎゅうぎゅうとしごかれ、とろけた表情と汗だくで弾む乳房とどぎまぎ引き連れるウエストと……とにかく極楽のような現実だった。
「んあっ、う、んはぁあぁっ、あっ……んふ、ふふっ、先生、やっぱりおっぱいがお好き、なんですね」
「……あぁ」
奏は腰の抜き差しを止めた。呼吸はすぐに落ち着かず、デコルテで骨が浮き沈みしたり、アンダーバストも浮き沈みしていた。それを見ていると、なぜか彼に力が戻ってきた。
「あら、そんなに恋しかったんですか、おっぱいが」
「はは、どうかな」
「ここまできて、素直じゃないですね」
「おっぱい以外も恋しかったよ」
「……本当に、先生っていけない人」
彼は腹筋を使って上体を起こした。奏がにやにや笑いながら巨乳をアンダーバストから手のひらですくい上げて示してやると、彼は素直に汗とよだれで濡れた白い谷間に頬を寄せた。
「きゃんっ……!? あ、ふ、ふぁ……ちくび、ぃ……歯で、こすっちゃ、だめ、感じ、ちゃう……っ!」
彼が手で奏の乳房を揉みだすと、それに奏の手は場所を明け渡して、それから彼の頭を撫でる真似をした。彼が一向に拒む気配を見せないので、とうとう本当に撫でた。わざと、子供をあやすように撫でまわした。
彼は奏に身を任せていた。
「やぁうっ、ふぁぁっ……そ、そこっ、だから、ちくび、は……んっ、んくっ……!」
奏の乳首は、周辺の肉ごと吸われ、舌先で弄ばれ、じゅるじゅると吸われ、そのたびに奏のノドが泣いて、腟内が震えた。表情も何かしら変化しているだろうが、巨乳にほとんど視界を塞がれた彼の目では、とんとわからなかった。
「ねぇ、せんせ……もう、おっぱいはいいから、だから……ねぇ……あんっ、ん、んんっ……!」
「いいのか……いいんなら、いいじゃないか」
「イイっ、けどぉっ、だめ……なのっ、イ、イっちゃ……イっちゃう、からっ」
それから奏の声がこもった。あとは膣口がぐちゃぐちゃ、腰や尻や腿の肉がばたばたと騒がしくなるばかりだった。彼は、ここまで何発も抜かれていなかったとしたらとっくに射精に追い込まれているぐらい、膣内で執拗にペニスをしごかれていた。そのしごきが急にきつく細かくなった。
「せんせ……わ、わた、し……」
彼が我に返ると、いつの間にか奏の乳首がぼってりと腫れていた。歯型がついていないことを確認した。奏から血が出るほど歯を立ててやりたくなった衝動を、彼はすんでのところで抑えた。
「キス……また、こんどは、もっと……れぅ、はむ……んくっ……」
軽いキスを何度か重ねて、息をつく。どちらからともなく笑い合う。
至近距離で覗き込んでくる奏の瞳が、彼はまぶしくてたまらなかった。猫の目よりもきらきらしている気がした。
それで彼が目を閉じると、奏からくちびるをかじられた。どうやらキスの予備動作だと思われたらしい。
「はぷっ。んぢゅ、ちゅちゅ、ちゅうぅっ! んぢゅるっ……ちゅう、んちゅ……っ!」
次第に強く深くなるキスに、彼は合わせてやった。潮の満ち引きのように、ゆっくりと、それでいてどうしようもなく射精衝動がこみ上げてくる。彼はゴムをつけそびれたことに気がついた。
――ふふ、腟内(ナカ)に出すなんて、だめな先生。
奏らしきささやき声は、彼の耳にウソのように甘く響いた。
(おしまい)