※この作品はR-18です。

ダンまち 静寂IF   作:ショタ、コン?

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4 帰還と闇派閥

 オラリオへの馬車はそれなりの数を用いられて出発した。村に残してきた者もいるとはいえ、ヘラ・ファミリアのメンバーとして十五人の冒険者と神がそれなりの長旅をするともなれば食料や水も含めてかなりの物資がいる。

 旅路は特に障害もなく順調にオラリオに到着した。問題はオラリオの外壁での恩恵の確認でヘラ・ファミリアであることが知られたことだ。一応十三年前に追放されている。ガネーシャ・ファミリアも無条件で入れるわけにはいかなかった。

 だからヘラはガネーシャ・ファミリアの衛兵に書状を渡す。

 

「これをお爺様……ウラノスに渡せ。それで判断をしろ。それまで私達は門の外で野営をしていよう」

 

 ウラノスへ宛てた書状を渡してすぐにヘラ・ファミリアの面々は門から離れて野営の準備を始めた。もちろんそれだけではない。オラリオでやることがある。

 ベルとリリルカ、それにアルフィアを呼び出して今からすべきことを伝えた。

 

「アルフィア。お前はいくつか地下通路を知っているな?そこへ行き、闇派閥を探ってこい。門の外で怪しい奴が居たから捉えたという理由で良い」

「わかった。そういうわけだ。ベル、リリルカ。オラリオで初仕事だ。捕縛は二人に任せる。私は地下通路に案内するだけだ」

 

 二人はアルフィアにいくつかの秘密通路を教えられる。そこは五年前に使用しようとした闇派閥とその一部だけが使える地下通路だったり下水道だった。そこをうろついている人間は基本闇派閥でいいだろうということ。

 オラリオの冒険者が無能ではなかったらいくつかは発見できているだろうが、その期待は裏切られたようだ。

 冒険者には見えない人間が檻の中に閉じ込めたモンスターを運び出しているのだ。ガネーシャ・ファミリアが【怪物祭】という催しを開いているものの、それはあくまでもガネーシャ・ファミリアの目が届くところでやる興行だ。

 オラリオの外へ運ぼうとしている時点でアウトだとアルフィアが判断した。世の中にはモンスターが好きな特殊な性癖の人間がいる。そういう人間向けに売り飛ばす気なのだろう。

 

「行くよ、リリ」

「はい」

 

 ベルはショートソードを、リリルカは槍を持って運び屋を襲撃する。最大でもレベル二しか居なかったために二人による峰打ちでどうにかできた。

 ベルは敏捷を活かすために小回りの利く武器を主に使っていた。火力はスキルと魔法で補えばいいとしてショートソードやナイフを主に使っていた。最近ではアルテミスに教わって弓も使っていた。

 一方リリルカは【縁下力持(エーテル・アシスト)】という重い物を難なく持てるスキルがあったために重量系の武器を試していたが、持てるだけで振り回せないのであれば意味がないと判断されて槍を使用していた。なんだかしっくりきたとのこと。

 全員を気絶させて縄で手足を縛った後、このモンスターはどうしようかと考えたところでカーゴの中を見ると上層ではレアモンスターのインファント・ドラゴンだとわかった。ただし赤いはずの体表は青かったのでアルフィアも最初はインファント・ドラゴンだと断言できなかった。

 

「ガネーシャ・ファミリアに渡すのが正解だろうな。お前たちは捕らえられたモンスターを殺す覚悟があるか?」

「……敵意のないモンスターなんて初めて見た。お義母さん、これがテイムされたモンスターってこと?」

「いや、こいつはおそらく……」

『僕を殺すなら、外が良い。せめて最後に、青空が見たい』

 

 その声はこの場から聞こえてくるはずのない声。ベルたち以外は全員気絶をしているし、それ以外に成人した男性の声を持つ存在は発見できなかった。

 ベルとリリルカは他の敵を警戒して周りを見渡す。だが人の気配もモンスターの気配もしない。

 アルフィアだけが正解を知っていて、溜息をついた。

 

「やはり異端児(ゼノス)か」

「ゼノス?」

「知能を持ち、人間の言葉を話し、人間の心を持つモンスターだ。ヘラから聞かされていたが本当にいるなんてな」

『僕はゼノスって言うの?』

 

 明らかに小竜の口が開き、そこから男性の声が聞こえたことでベルとリリルカは目を丸くした。インファント・ドラゴンから確実に声がしたのだ。

 アルフィアとて初めて見たが、知識として知っていた分驚きは少ない。少ないが、どうするかと頭を抱えたかった。母親としての矜持で情けない姿は見せなかった。

 

「一番はガネーシャ・ファミリアに預けること。もう一つは私たちの手でダンジョンに戻すこと。最後、外に放流する。強化種だから早々に死ぬことはないだろう。選べ、ベル。ここは他の闇派閥も利用するだろう。時間がない」

「……ガネーシャ・ファミリアは信用できるんですか?」

「十三年前と変わらないなら正義のファミリアだろうな。いや、正義を冠するファミリアが新たに生まれたのだったか。だがまあ、都市の憲兵と呼ばれるほどだ。信用できるだろう」

 

 アルフィアの言葉で暫し考え込むベル。

 そして答えを出してからは早かった。まずは通路を逆走。そしてカーゴを移動させる音を聞いたのか闇派閥がやってくる。ベルとリリルカが敏捷とレベル差を活かして速攻で無力化。縄で縛るだけでその場に放置して後処理はガネーシャ・ファミリアに任せるつもりでオラリオへ向かった。

 レベル三がいなかったために二人だけで全てを蹴散らせた。オラリオの中へ戻った後、地下通路に繋がっていた屋敷に出た後、その屋敷も掌握。闇派閥の一角を潰した上でベルが一人でガネーシャ・ファミリアへと向かった。

 入り口の巨大なガネーシャを見た時には驚いたものの、ゼノスをどうにかしないといけないと考えて嫌な気持ちになりながらも股ぐらをくぐって中へ入る。そこでたまたまガネーシャがやってきて、ベルはガネーシャだけと話したいことを伝えるとガネーシャは快諾。

 

 そこでヘラから聞いたということにして異端児の話を聞くとすぐに事情を知る者を編成してベルの案内でゼノスが待つ屋敷へ向かう。ガネーシャ自身はウラノスへ報告に向かっていた。

 結局カーゴの周りを偽装してダンジョンの奥地へ送ることとなる。その前にゼノスは青空をちゃんと見たいということでガネーシャ・ファミリアのホームで一泊して青空を見てから他の異端児がいる場所へ護送されることとなった。

 ベルたちが成した善行はギルドへと報告された。闇派閥を計二つ滅ぼしたことをギルドや住民が重く受け止めてヘラ・ファミリアの追放をなかったことにするような嘆願が多く届いた。

 そもそも十三年前の追放も黒竜討伐の失敗とオラリオでのパワーゲームがあったからこそ。黒竜討伐の失敗により戦力が減れば都市最強を名乗れなくなる。残っていたアルフィアという最大戦力も持病のせいでまともに動くことができず追放を受け入れるしかなかった。

 

 だが、更に強くなったレベル八という最強戦力を伴って帰還した。また質も整えて実績まで初日で生み出した傑物を受け入れる声は大きくなった。

 これはウラノスとガネーシャが異端児を隠すために都市に更なる大きな火種でカモフラージュしたのだ。注目を分散し、安全に異端児を運ぶために都市中へ噂を流布した。最強の片割れが帰ってきたぞと。

 この声が大きかったためにヘラ・ファミリアは野営を二日で切り上げてオラリオの中に入ることができた。元ホームも残っており、そこを掃除と改修をしてまた暮らし始めた。

 ヘラ・ファミリアは少数先鋭ながら闇派閥を倒していく。制圧した屋敷に残っていた情報から芋蔓式で闇派閥の情報が手に入り、力を前面に出して暴力によって制圧を繰り返す。最初の目的だったダンジョンには入れず、だがこれは初期投資として彼女たちは割り切る。

 そうしてヘラはある神を見付け、頭から踵落としを喰らわせて地に伏せさせた。

 

「貴様……。そこまでオリュンポス十二神を見下すとは、恥を知れ。ヘスティアからもらったその座は何のために存在する?ヘスティアを空座(くうざ)にしてまでかの尊き椅子を狂乱に染めるのか?ああ……。失敗だったよ。浅はかだったよ。停滞を望むべきだったよ。ヘスティアという要石を排除したことは我が夫最大の失敗だった。……なぁ、ディオニソス?」

 

 オリュンポス十二神に数えられるディオニソスがヘラのヒールによって脳天に突き刺さり、微塵も動けない。眷属であるフィルヴィスもいたが、そこにレベル八の怪物であるアルフィアが居ては動けない。

 動いた瞬間に超短文詠唱による迎撃を喰らう。レベル三程度のフィルヴィスでは何もできない。

 

「酒を飲んで善神のフリとは糞食らえだな。同じオリュンポスの女神(わたし)にその程度の澱みが効くと思ったか?闇派閥の首魁め。エレボスから降って下されたその椅子は心地良かったか?結局天界にいた時と同じく、譲られた在り処(もの)で快楽に溺れるしかない俗物め」

「ま、待てヘラ!あなたは何を言っている⁉︎私が闇派閥の首魁だと⁉︎言いがかりも甚だしい!」

「自分を偽るしかできないのか。ああ、良い。貴様が狂っていると私は知っている。貴様の酒蔵を漁れば良いだけのこと。大神の妻(わたし)に嘘偽りが通じると思うなよ?その穢い魂をこれ以上見せ付けてくれるな。反吐が出る」

 

 ヘラは腰からナイフを取り出す。護身用であり、神を殺すための処刑の刃だ。

 小さい武器なのに、刃渡りは短いのに。それはディオニソスにとって処刑のギロチンに等しかった。

 ヘラは泣き喚くディオニソスの言葉に耳を傾けない。その瞳は家畜を屠殺する時の無の気持ちしか映していなかった。

 そして、それは心臓に突き刺さり。

 オラリオでバベルをも超える光の柱が観測された。

 ディオニソスの眷属は全員恩恵を失う。恩恵を失った元冒険者(一般人)がヘラ・ファミリアの捜索の手を止めることなどできず、酒蔵に隠されていた闇派閥と繋がる証拠が山ほど出て来た。

 その中にはダンジョンを故意に傷付けて凶悪かつ厄介なモンスターであるジャガーノートを召喚する自爆戦術も構想として用意されていた。その決行日も近かったことでヘラはアルフィアにその紙を渡す。

 

「ベルとリリルカを連れて二十一階層に行け。その後二十七階層の闇派閥を壊滅させろ」

「わかった。他にも三人は連れて行くぞ。地上に半分残せばいいだろう?」

「ああ。行け」

 

 まずアルフィアは装備を整えてダンジョンアタックの準備をする。そしてすぐに二十一階層にある食糧庫(パントリー)に攻め入り、植物型のモンスターの研究をしていた闇派閥の拠点の一つをただの暴力で破壊し尽くした。

 その足で二十七階層にも降りて自爆攻撃を仕掛ける前にベルたちは間に合った。火炎石を使おうとしている白いローブに身を包んだ人(・)間(・)たちへ確実に絶命させる一撃か腕を斬ることで爆発が起きないようにしていた。

 突然襲撃を止められた闇派閥側も、そして助けられた正義の派閥も、まだ幼いベルとリリルカが悪人とはいえ人を殺したことに驚いていた。

 

 二人は知っている。どうしようもなく悪い人を。そんな人は止めることなんてできず、話も通じない。

 その悪に躊躇している間に誰かが死んだら。逃したがために大切な人が悲しむくらいなら。

 二人は躊躇わない。

 ベルはナイフの二刀流で心臓か首、もしくは手首を確実に落としていく。リリルカも槍で突き、薙ぎ払い、叩くことで無力化させていく。リリルカは血を見るたびに目が赤くなっていき速度も威力もどんどん上がっていく。

 ヘラ・ファミリアの他の面々も二人に負けじと闇派閥を殲滅していく。食糧庫での殲滅で疲れは出ていたものの最高レベルが四の【白髪鬼】では勝てるわけもなく。

 

「なっ⁉︎貴様、今更出て来て……!」

「……誰だ?」

「オリヴァス・アクトだ!逃げ出した腰抜けが──ッ⁉︎」

 

 アルフィアが本当に覚えていなかったオリヴァスは、アルフィアに意識が行っている間にベルが心臓を穿とうとしたが、察知したオリヴァスは体を半歩下げたことで避けることができた。

 ベルはこの男が主犯格だと察して首を狙ったが、仮にもレベル四という第二級冒険者として子供に負けるわけにはいかなかった。

 その子供は既に自分を追い越していると、初見でわかるはずがない。

 ベルは【女神の試練(ヘラクレス)】というスキルが発現している。女神の課した試練を乗り越えると成長補正のかかるというレアスキルだ。既にヘラが二回、アルテミスが一回、普通では乗り越えられない試練を課している。

 それを乗り越えた結果アルフィアなどの一部でしか見られなかった、ステータスのランクが限界値だとされているSを超えたSSを記録している。

 

 ランクアップする際にステータスが高いほどランクアップした後の身体能力に差が出るというのが恩恵のシステムだ。力が貧弱だった者と力のステータスが高かった者が同時にランクアップして腕相撲をしたら力が高かった者が勝つ。

 ランクアップというのは見た目上はステータスを更地にするが、それまでの積み重ねを否定するものでもない。限界まで育った者が器を昇格させれば更なる実力を持つことはあるのだ。

 つまり今のベルの実力はレベル一分上になっている。レベル三上位どころかレベル五下位にも勝てるほど。レベル四中位のオリヴァスは徐々に速度で負けて、力でも負けていたためにベルのナイフを受け流すことができずに傷が増えていく。

 

「何だ……!何なんだ、貴様は⁉︎」

「ただの弱虫だっ!」

「弱虫を自称する者が、我々の邪魔をするなぁッ‼︎」

 

 オリヴァスが激昂しながら拳を顔目掛けて突き出すが、ベルはそれを完全に見切り、避けるのと同時にナイフで右手を斬り落とした。痛みに悶絶しかけたオリヴァスの隙を見逃すわけもなく、そのまま左手に持っていたナイフで心臓を突き刺していた。

 心臓を突き刺したからといってベルは油断しない。何かしらのスキルを持っている可能性を考えて心臓を突くだけではなく、首も切って頸動脈から大量出血するように仕向けた。冒険者とはいえ血を失えば死ぬ。それに首を切ったことで発声がしづらくなり、魔法が使いにくくなるというメリットもある。

 火炎石でも服の中に仕込まれていたら巻き込まれると考えたベルは倒れ伏したオリヴァスを放置してその場を離れる。呼吸がなくなったことをしっかりと見てから戦線に復帰した。

 リリルカがスキルを使ってしまっている。そのためベルはこの戦いを速攻で終わらせなければならなかった。

 だが司令塔たるオリヴァスを失った闇派閥の動きは緩慢としか言えないものになり、しかもヘラ・ファミリア以外にもアストレア・ファミリアの精鋭もいたことでこの場にいた闇派閥は壊滅した。

 すぐにベルは後ろからリリルカを抱きしめて、両目を右手で塞ぐ。そうでもしないとリリルカは破(・)壊(・)衝(・)動(・)に(・)駆(・)ら(・)れ(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)。

 

「赤い……!ここも、全部紅い!」

「大丈夫だよ、リリ。ほら、僕の瞳も紅いでしょ?」

「……………………ベル」

 

 ベルが元々紅いと知っているからこそ、リリルカのスキルは収まって気を失う。

 リリルカのスキルは身体能力が上がるが、その代わり景色全てが紅くなってしまう色覚異常と破壊衝動が伴う危険なスキルだ。

 発動条件はリリルカが多大なストレスを感じたら。今回の場合は闇派閥が好き勝手に暴れていたからだ。ソーマ・ファミリアという古巣を思い出してしまい、それがストレスとなってスキルが勝手に発動してしまった。

 リリルカにアイマスクをつけておぶるベル。残存戦力はおらず、もしいたとしても逃すアルフィアではない。

 捕縛した最低限の人間を除き、他の敵全員が息をしていなかった。

 

「ヘラ・ファミリアの【静寂】……。ってことは全員ヘラ・ファミリアか」

「おかげで助かったわ!でもちょっとタイミングが良すぎない?もしかして何かの勘が働いたのかしら!」

 

 アストレア・ファミリアの小人族ライラが周りを警戒したまま呟き、団長のアリーゼ・ローヴェルは快活にアルフィアへ問いかける。

 だがその快活さはアルフィアにとっては良くない雑音だったのか何も答えない。そんな義母の姿にベルはいつものことだと思いながらも一応説明をすることにした。

 

「僕たちの神様からの指示です。神様が見付けた悪い神様が闇派閥の首魁だったみたいで……。そこに今日の計画もあったので僕たちがやってきたわけです」

「あら、そうなの。ならお礼を言わないと。ありがとう兎さん」

「兎……。いえ、言われ慣れていますけど」

 

 ベルは小柄なので良く兎に例えられる。男らしくありたいと思っているのに可愛がられることが多いため、ベルは早く身長を伸ばしたかった。

 今回の一件で闇派閥は一気に衰退する。まともに動ける戦力が少なくなり、規模を縮小せざるを得なかった。次の機会のために息を潜めることにしたようだ。

 こうして闇派閥の脅威は去る。だがヘラ・ファミリアからすればここからが本題だ。

 これで心置きなくダンジョンを活用できる。元々の目的はダンジョンによるベルとリリルカの育成だ。邪魔をするような連中を全て薙ぎ払ったので、くだらないことを神々がやらかさない限りベルたちの冒険を止める者はいない。

 はずだった。

 

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