ダンまち 静寂IF 作:ショタ、コン?
不定期に、更新していこうかなと。
ヘルメスが掴んだ情報。それは歓楽街を取り仕切るイシュタル・ファミリアが怪しい動きをしているというのだ。最近急に何かを探しているようだ。その何かがわからないが、フレイヤ・ファミリアに対抗するための力を求めているようだった。
どうやら美の女神同士の確執で争っているようだ。その理由を知った時にはヘラがあまりのくだらなさに手を下すのを躊躇ったくらいだ。
「おい、ヘルメス。いつからこのオラリオはここまでくだらなくなった?確かに私たちが居た頃にも小さな諍いくらいはあった。敵対派閥を貶めようとバカな手段で喧嘩を吹っ掛けてくる愚か者もいた。だが、それでも秩序はあったぞ?行き過ぎればギルドからの罰金、もしくは戦争遊戯に発展する。そうして終わりを見せたはずだ。だというのに、ただ自分の神格を認めさせるために非合法な襲撃を繰り返すだと?闇派閥とどこが違うんだ」
「ヘラ……。これが十年以上続く衰退なんだよ。あなたたちという楔が抜けてしまった。あなたたちは力の象徴であるのと同時に抑止力だったんだ。その抑止力がなくなれば見境なく暴れようとする。軋轢のなくなった箱庭で遊び出すのは神も人間も変わりない」
「チッ。千年に渡る私たちの栄光は他の者にとっては
ヘルメスの説明に大きく舌打ちをするヘラ。
こんな世界を自分と夫が守ってきたのかと盛大に溜息をつきたくなる気分だった。そして自分たちの親より上の世代であるエレボスが出張ろうとするのも納得だ。
要するにエレボスはゼウスとヘラが
それでも竜の谷をエレボスに任せてオラリオにやってきたのはヘラだ。ここで投げ出してはエレボスにはもちろん、夫であるゼウスにも顔向けができない。
「……闇派閥がいなくなって、次はイシュタルのようなバカなファミリアが暴れるんだろうな。自分は悪だと自覚のないバカが、もしくはうまく隠れた闇派閥が力を蓄える。それを利用しようとするバカもいるだろう。それら全てに私たちが対処をしていたらいつまで経っても黒竜討伐なんてできやしない」
「それは、わかっている。人間同士が足を引っ張っていた英雄時代と同じ結末だ」
「ああ、そうだ。だから──歓楽街は切り捨てる。無駄だよ、これは」
あっさりと。どうでもいいように言い捨てた。
英雄時代もモンスターがありふれていたというのにそれを食い止めようともせずに自国の利益ばかりに目を向けていた愚かな王が多かった。その時代と同じ過ちを繰り返そうとしていることが気に食わない。
内輪揉めなんて勝手にやってろというのが本音だ。
「ヘルメス。フレイヤはもちろん、ロキのところもけしかけろ。最強じゃなくなった派閥に治安維持くらいはさせろ。うまくいけばこれでランクアップする者も出てくるはずだ。レベル以上に強い眷属とかいう話も出ているしな。ダンジョン攻略で遅れをとるならそれくらいしろと発破をかけろ」
「それでうまくいくと思えないんだが……。ヘラ・ファミリアは少数精鋭すぎる。軍の力では勝てるとどちらの派閥も思ってるんじゃないかな」
「ならいっそアルフィアとベル、リリルカだけで戦争遊戯でも吹っ掛けて全滅させるか?そうすれば力の差がはっきりするだろう」
「【静寂】は、それほどかい?」
「ベルとリリルカを舐めるなよ?今はあの二人がこのファミリアで一番弱いかもしれない。だがそこらの有象無象に負けるほど柔に鍛えてもいない。……あの二人を守れなかったお前にも、ゼウスにも、少し失望している。そういう時代だったことは認めるが、まさか自治もできていない無法都市を迷宮都市とは呼ばんだろう。学区に頭を下げてでも治安維持を速やかにしなかったのは貴様らのミスだ」
「それを一介の神でしかないオレに言わないでくれよ、ヘラ……」
ヘルメスはがっくりとしつつ、ガネーシャにはもちろん、フレイヤやロキにも歓楽街、ひいてはイシュタルが何かを企んでいるとそれとなく情報を流した。ガネーシャには全て伝えて近々歓楽街で大きなことが起きるために準備をさせて、フレイヤとロキもその情報から警戒を始めた。
そうして準備をしていたのだが、予想外の事態にヘラとヘルメスは頭を抱える。
なんとベルが、神アポロンに求婚されたというのだ。
ダンジョンからの遠征帰りにベルたちはゴブニュ・ファミリアに装備を預けるために向かっていたら突如としてアポロン・ファミリアに囲まれた。そこでアポロンが現れ、いきなりベルを奪おうとしたのだ。言葉こそ求愛のようなものだが、確実に引き抜きにしか思えないもの。
これは周りにいた神々も呆れ果てていた。ベルの所属は既に有名になりつつある。外でレベル三になった有望株でまだ十二歳。これからを期待される可愛らしい顔付きの少年の所属はどこだと本人に突撃して、ヘラ・ファミリアだと知って全員が引き攣った笑みを浮かべて退散した。
簡単な話が主神もファミリアもアンタッチャブルだ。オラリオに帰ってきて早々闇派閥を壊滅させ、所属する団員は外で鍛えたはずなのに超級の存在ばかり。少数ながらもその戦力は既にオラリオ1に舞い戻ったとされている。
そこに所属する有望株だ。アポロンのように狙う神も少なくなかったが、手を出したらヘラにどんな目に遭わされるかわかったものではない。だから彼に手を出そうという考えもなくなってきた最中のことだった。
ベルはもちろん断ったのだが、アポロンは眷属も使って執拗に迫ったことでリリのスキルが発動。【赫目の狂乱】の発動条件であるストレス値が大幅に許容範囲を超えて、ベルに迫るアポロンの右手を折ってしまった。いや、折ったというより再起不能と診断されるくらい複雑怪奇に骨が砕かれていた。
それを反発行為だとブチギレた眷属たちがベルとリリルカに襲い掛かり、スキルで見境も無くなっていたリリが全てを蹴散らしてしまう。ベルはスキルのこともそうだが、周りの一般人などを巻き込まないようにリリを抑え込むことを優先したため、戦闘には関わらずリリの目を塞ぐことを優先した。
結果として周りの住民や建物に被害が出なかったが、アポロン・ファミリアはほぼ壊滅状態に陥るような大打撃を喰らった。ヘラはこの一件でガネーシャ及びギルドに呼びかけられて詳細を聞き、ディオニソスを送還した時と同じナイフを抜いていた。
「ま、待て待てヘラ!何をする気だ?ガネーシャストーップ!」
「眷属を奪われそうになったのだぞ?そんな闇派閥紛い、消すのに何か問題が?」
「最近では確かに面倒な案件だが!十数年前だったらそんなことは日常茶飯事だった!ヘラも丸くなったのだとガネーシャ感激!だがナイフは閉まってくれ!なんだか首がムズムズする!」
「神話帯が異なるだろうに。……丸くなった、か。これではアルフィアを笑えんな。おい、ギルドの豚。この落とし前どうするつもりだ?吹っ掛けられたのはこちらだ。住民に被害がないのならこちらの過失は0だろう?」
「お、お待ちくださいっ!」
ギルドの豚と呼ばれたギルド長のロイマンは当時の状況が書かれた書状を確認して、どういう落とし所になるのか汗がダクダクになりながら説明していく。
オラリオに現れなかったレベル八を颯爽と連れてきただけではなく、ここ十年以上頭を悩ませていた闇派閥へ大打撃を与えた都市の治安を守っている立役者。そして長いオラリオの歴史で黒竜に破れた時以外常に最上位の探索系ファミリアから外れることのなかった、最恐派閥の主神。
読み上げる声が震え、冷や汗が止まらないのも仕方がないだろう。これで階級の低い職員に任せようものなら、失言によってその者の首が物理的に分かれかねない。
オラリオとしてもレベル三がいる中堅ファミリアを壊滅させたくない(物理的に色々とマズイ状況だが)。そのためヘラ・ファミリアへ賠償金と接触禁止令、それにギルドによる強制ミッションと追加徴税を半年課すことにした。
色々とギルドが得するような内容だが、そんな木っ端なファミリアなどどうとでもなるとヘラは吐き捨てた。アレがゼウスの血縁だということさえ唾棄すべき存在だが、これ以上些事に時間を取られるのは業腹だとヘラはロイマンの示す内容を受け入れる。
実のところ、アポロンはゼウスの血筋ということもあってヘラなら許してくれるだろうと甘い考えで勧誘していた。弱体化した派閥の最弱の一人なら血縁だし貰っても構わないだろうと、いざとなればゼウスの名前を出せばいいとも思っていた。
むしろ彼はヘラの子供ではないので、それを言った瞬間消し炭にされていたと知ることはない。
今回の内容は住民にも公表されるとして内容に納得したところで、ギルド職員としては新人のハーフエルフ、エイナが慌てて会議室に入ってきた。ヘラとの会議だというのに無謀なことをした新人を怒鳴りつけようとしたロイマンだったが、その伝えられた内容に怒鳴ることもできなかった。
「い、イシュタル・ファミリアが歓楽街に巨大なモンスターを召喚!それをフレイヤ・ファミリアの拠点へ向かわせると宣言しました!更にはその混乱に乗じて闇派閥のタナトス・ファミリアがロキ・ファミリアを強襲!街で多数の戦闘が発生中です!」
「な、なんだと……?モンスターに、闇派閥?じゅ、住民の避難を最優先にしろ!」
ロイマンはいきなりの事態に胃を痛めながらそう指示をする。話を聞いていたヘラとガネーシャはすぐに行動に出るために会議室から飛び出していた。
ギルドも混乱しており、街では火の手も上がっている。歓楽街ではその数も多い。
自分の眷属たちの居場所と今日のスケジュールを思い出しつつ、ヘラはガネーシャと今後について打ち合わせる。
「ガネーシャ、お前は住民の避難を手伝え。闇派閥もタナトスだけではないかもしれん。私達は歓楽街に打って出る。巨大なモンスターを倒す」
「わかった!そっちも気を付けるんだぞ!」
「私にそんな気遣いを見せてくれるのは、お前やアストレアくらいだろうな」
そんな軽口を叩きつつガネーシャはギルドで治安維持をしている自分の眷属の元へ行き、ヘラは自分達の拠点に向かいつつ誰かと合流しようとした。レベル六の狼人、マルハと合流して自分を抱えさせて拠点に到着し、拠点にいたメンバーにすぐ指示を出す。
「歓楽街を取り潰す。アルフィア、お前達は先行しろ。私はベルとリリルカの更新をしてから向かう。マルハも残れ、私の護衛をしろ」
レベル六以上の眷属はマルハを除いて全員歓楽街へと向かった。残った二人の更新をすぐにする。遠征から帰ってきて更新をしていないのだ。リリのステータス上昇もそうだが、ベルは試練を突破したようで新たな器へと昇格可能となっていた。
巨大なモンスターというのがどんな存在かわからないために、ベルの了承を取りつつ彼をランクアップさせる。
彼はオラリオに来る前に昇格できる条件は達成していた。だがステータスはまだ伸ばせるとして延期していたがこの事態では仕方がない。ステータスは十分なものになっていたので今までのランクアップとそう変わらないステータスで昇格できた。
準備が整ってヘラは再びマルハに抱きかかえられて歓楽街へ向かい、ベルとリリも超特急で歓楽街へ向かった。道中でも闇派閥に出会ったために彼らは積年の恨みもあって全て撃破しながら歓楽街へ向かった。
そこは酷い有様だった。夜になれば煌びやかな街並みをして数多くの女性が客引きをしている様子が見られただろうが、今はまだ夕方。だがそんなことは関係なく建物は崩れ、火の手と煙があちこちから上がっている。イシュタル・ファミリアらしき眷属とフレイヤ・ファミリアらしき存在があちこちで戦っていて、街の中央では周りの建物よりも大きい怪物が五体ほど暴れていた。
植物の蔦で構成されたような雌型のモンスターに、炎、水、風、雷をそれぞれ纏った異形の存在。動物の体と人の一部を持つような、無理矢理くっ付けられたような造形的な気持ち悪さを共存させた存在が街を闊歩し、敵味方問わず暴れ回っていた。イシュタル・ファミリアも襲われているようで何でという悲鳴も聞こえてくる。
ヘラはその異形を見て、顔をこれまでにないほど歪ませた。その目線の先には雷を纏った鷲の頭をしたケンタウロスのような異形。
その存在が何かわかったために、ヘラは吼える。
「ディオニソスぅぅぅ!貴様、そこまで堕ちたか⁉︎精霊を貶めるなど、神としてそれだけはやってはいけないことだと、それすらも忘れたか⁉︎ダンジョンが記憶する機能を用いて、世界を破滅させられれば手段は問わないだと!お前がオリュンポス十二神などと、誰が認めるものか!」
その怒りは地上からは届かない天界へ向けられる。
今頃ゼウスがディオニソスをとっちめている頃だろうか。そうなら良いと願いつつ、ヘラは三人を引き連れて雷の異形の前へやってくる。
「ベル、あれは精霊ジュピターがダンジョンに取り込まれて悪性化したものだ。だが今は地上に出ている。ここで倒せばもうダンジョンには囚われない。ここで倒せ」
「精霊ジュピター……?それって、アルゴノォトを手助けしたっていう……?」
「そうだ。そのジュピターだ。……すまない、ベル。無力な私の代わりに、彼を解放してくれ」
「っ、はい!行くよ、リリ!」
「はい!」
マルハも共に、雷の穢れた精霊へと突撃する三人。
この場に居るのは穢れた精霊が四体と、触手型のモンスター。どれも今は天界に送還された闇派閥の首魁であるディオニソスが用意した戦力だった。
ヘラも触手型の、ダンジョンの大元を模しただけのモンスターなら何も言うつもりはなかったが、精霊の格を落としてまでモンスター化させている蛮行は見過ごせなかった。
ギリシャの有名な神々が遣わせるための自分の一欠片。それが精霊だ。地上では制限される神の力を使えるように神ではない存在として派遣して、人々の援助をしてきた。ジュピターはヘラの夫、ゼウスの分身のような存在だ。
それを意図的にダンジョンに閉じ込めて、ただの力の権化へと変貌させた。無理矢理に変貌させたためにその力は本来の力よりも劣る。それでも元のままだと暴れないために戦力化するには今のように格を落とすしかなかったのだろう。
ヘラはディオニソスにことごとく地雷を踏み抜かれ、今も息荒く憎悪をその体から放出していた。用意したディオニソスも、これを使おうとしたイシュタルも到底許すことなどできないだろう。
穢れた精霊達はオッタル達フレイヤ・ファミリアの幹部達とヘラ・ファミリアによって殲滅。イシュタル・ファミリアもついでのように潰されて、尋問した結果解き放ったモンスターは意図的に解き放ったのではなく、ディオニソスが残した存在を止められる者が誰もおらず、解き放つつもりはなかったという。
暴走して手が付けられないのなら、仇敵を倒すために利用しようとしたのだ。そうでもなければレベル7に匹敵する化け物を自分のホームである歓楽街で解き放つことはなかっただろう。
闇派閥で有力な実力者は、精々がレベル五。それも少数しかおらず、まだ制御できる怪人と呼称された魔石を体に埋め込んだ存在はこの前ヘラ・ファミリアが圧殺している。
土台、残った闇派閥では超級の怪物を五体も御せなかった、というわけだ。
化け物にやられるくらいならと、タナトス・ファミリアは因縁の多いロキ・ファミリアを強襲。それが同時多発テロが起こった理由だった。
タナトス・ファミリアもロキ・ファミリアのホームで戦うしかなく、火炎石による爆弾や呪詛による幻術などなど、様々な手段を用いて襲ったためにロキ・ファミリアでも死傷者が多数出た。特に将来を有望視されていたレベル二の若手が多数殺され、ロキ・ファミリアは立て直しを余儀なくされる。
この事態に緊急の神会が開かれて、事件の詳細などをギルドを交えて確認が取られた。一般人にも被害が出て、オラリオの栄光にも影が落ちるほどの被害が出たと言ってもいい。
最も、エレボスがやろうとしていたことを知っているヘラとしては、まだ被害が出ていない方だと知っている。エレボスは英雄のために英雄が守るべき一般人を犠牲にしようとした。ザルドが生きていれば英雄を二人も、未来のために捧げようとした。
かの悪神が考えていたシナリオと比べれば大分優しい被害だが、【暗黒期】と呼ばれている期間の中でも最上位の被害が出てしまったために冒険者やギルドへなぜ守ってくれなかったと突き上げる声が出ている。
ガネーシャ・ファミリアやアストレア・ファミリアが率先して住民の保護を買って出たため、彼女達がいた地域はマシなのだが、ロキ・ファミリアの拠点の近くにいた住民は否応無しに巻き込まれたことで非難の声が大きい。
神の中にはヘラがもっと頑張れば、という他責思考の者もいたが、彼女の派閥は前日まで遠征に行っていたことが周知されている。それに秩序を保っていたのは彼女に加えてゼウスの派閥もいた時の話だ。その片方が欠けて、しかも帰ってきたばかりの最強の派閥に文句が言える神はいなかった。
ケラウノスを物理的に街に降らせるゼウスよりも怖いと言われた女神だ。怒らせたらどうなってしまうか。彼女の腰のナイフはディオニソスを送還させたと知っている神からすれば見え隠れするだけで恐怖の象徴だった。
そのヘラは見るからに苛立っている。
可愛い孫のベルがゼウスの血縁に引き抜かれそうになっただけではなく、ゼウスの分身とも言える精霊を同郷で褒め称えられるオリュンポス十二神の一柱がやらかしたのだ。
そのストレスはオラリオを追放された時と同じくらい高まっていた。
被害報告などがされている中、ギルド職員がとある神が参加したいということを告げてくる。この場にいない神は今回の騒動でやられてしまった神か、オラリオがどうなってもいいという究極のアンポンタンの神だけのはず。オラリオの惨状を思い知って今更やってきたのだろうかと思ったが、入ってきた神は予想外の存在だった。
「や、やあ、皆。天界以来かな?く、クソ〜、何でボクが天界から追い出されて報告役なんてやらないといけないんだよぉ。確かに
ギリシャが誇る三大処女神、竃の女神のヘスティアである。引き篭もり体質なために天界で見たことのない神も多く、その低身長ながら豊かな胸元に引き寄せられて「おお」と感動している男神が多かった。
ギリシャの神々は何であの引き篭もりがとか、追い出されたとはどういうことだと訝しむ神が多かったが、ヘラはさっさと立ち上がりヘスティアに近付く。
「ヘスティア。オリュンポス十二神に返り咲いたのか?」
「げ、ヘラ。あ〜、そうだよ。ディオニソスがやらかしまくったみたいだね?ゼウスがブチ切れてその座を奪って、今はハデスの牢獄に繋いでる。繰り上がりでボクが再任ってわけ。別に空座でも良くないかい?まあ、下界に興味があったし、天界の状況を伝えるメッセンジャーとしてボクが送り出されたわけ。簡単に説明するよ」
ヘスティアは本当に簡単に現在の状況を伝える。ギリシャではない神にとってはあまり関係ない話で、ディオニソスが天界でも一生出られない監獄にぶち込まれたくらいの認識だ。
あとはヘスティアが就任したオリュンポス十二神。この座に就いたことでヘスティアの神の力が増幅。今は抑えているが、解放すればゼウスに匹敵する力を発揮できるようになっていた。
今回の騒動で闇派閥は壊滅。今度こそ迷宮都市はあるべき姿を取り戻そうとしていた。
諸々が終わった夜。
ヘラはリリとアルフィアの許可を貰い、ベルを抱き枕としていた。ゼウスの半身とも呼べる存在をベルに倒させたことや今日の様々なことが心労となり、癒しを求めたのだ。
ベルとしては主神であり祖母でもあるので綺麗な女神だとしても緊張をしたりはしなかったが、今日のヘラはとても弱々しく見えて心配だった。
「大丈夫?おばあちゃん」
「……どうかな。ゼウスが天界で元気なことを聞いて治るとも思ったが、やはり許せないこともある。神とはいえ、一度抱いた憎しみは簡単に消えてくれやしない」
「憎しみ、かあ。許せないことはあるけど、誰かを恨むような感情ってどんなだろう?僕が復讐しようと思っても、全部お義母さんが倒したって言ってたし」
「こんな感情、溜め込むようなものではない。……ベル。今日はお前を抱き締めさせてくれ」
ヘラは自分の胸元にベルの頭を持ってくる。後頭部がその豊満な胸に沈み、いつもは意識しなかったがそこまでされてしまえばベルとしてもドキドキしてしまう。アルフィアよりも大きな胸なのだ。いつもはゆったりとした服で隠れているが、押し付けられればその大きさもわかってしまう。
ベルは必死に後ろの女性はお婆ちゃんと心の中で呟き続けた。
疲れていたのか、ヘラは割とすぐに瞼を閉じていき、その際に無意識なのか、こう呟いた。
「アルケイデスのように、私の乳房を噛むなよ、ベル……」
「そんなことしませんっ⁉︎」
ベルが叫ぶものの、スゥスゥと柔らかな寝息が聞こえる。
どういう寝言なんだろうとベルは不思議に思うものの、彼も疲れていたのですぐに眠ってしまった。