※実用性のあるエロはほぼありません。全編コメディ調です。
昔書いたもののアーカイブです。
pixivにも投稿しています。
目覚めると、まったく見知らぬ場所にいた。
薄暗い――窓に内側から板が打ち付けられているため――倉庫かなにか。長らく使われていないのだろう。埃っぽく、あちこちに物が散乱している。
その場所にシンジは、木製の椅子に手足を縛り付けられて座っていた。しかも、着ていたものを脱がされ、ブリーフだけの情けない格好で。
「な、なんなんだよ、これっ」
シンジは叫んで、手足を動かそうとした。が、太い縄できつく縛られており、微動だにできない。椅子が、ぎしぎしと音を立てただけだった。
拉致、監禁。そんな単語が頭をよぎる。
シンジは恐慌に陥りそうになる精神を必死になだめて、原因を探ろうとした。
(た、たしか、今日はマナとデートで……芦ノ湖でマナの作ったお弁当を食べて……それから…あれ……それから?)
その先がどうしても思い出せない。
とにかく何者かによって捕らえられてしまったのは間違いない。シンジは、自分がさらわれる理由がエヴァのパイロットであること以外思い浮かばなかった。
(ど、どうなっちゃうだろ……僕……)
いかつい黒ずくめの男達による凄惨な拷問。病的な目つきの科学者による人体実験。そんな悪夢のような光景が、シンジの中で一瞬の内に展開された。
結果、
「助けて……助けてよっ! ミサトさん、アスカ、綾波っ! ……父さん」
シンジは泣き叫んだ。もう日の目をみることはできないと、思いこんでしまっている。と、そんな絶望的な空気とは、相反する弾んだ声がシンジの耳に届いた。
「あれ、もう目、覚めたんだ。待ってて、すぐ行くから」
「え……?」
キャスターの転がる軽快な音がして、
「お待たせ、シンジ」
白いワンピース姿の少女――霧島マナが現れる。雑多に物を乗せたテーブルを押していた。
シンジは、微塵も状況を理解できなかったが、
「た、助けて、マナ」
とにかく脱出のチャンスだろうと、彼女に助けを求めた。
しかし、マナは首を横に振る。
「え~、だめだよ。シンジには、これから色々教えてもらわなくちゃいけないんだから」
「マナ……?」
シンジには彼女がなにを言っているのか、さっぱり理解できない。
「あは、分かんない? ごめんねえ、私、スパイなんだ」
あっけらかんと言うマナに、シンジは信じられない思いで呻いた。
「嘘だよね……?」
「信じてくれてるシンジを騙すのは、私も辛かったんだよ」
発言とは裏腹に、マナの表情に後ろめたさは欠片もない。いつもの明るい笑顔だ。
「じゃあ、僕に近付いたのは……?」
「うん、ぜ~んぶ、ネルフの機密を聞き出すため」
目の前が真っ暗になる。急速に冷えた体温は、反動で爆発した。
「……ちくしょう……裏切ったんだ…信じてたのに、僕を裏切ったんだね! 好きだったのに……みんな嘘だったんだ……」
心を吐露して叫ぶシンジに、マナは初めて神妙な面もちを見せた。
「それは違うよ。最初は確かに嘘だったけど、いつの間にかシンジのこと本当に好きになってた」
しかし、それも一瞬のことで、すぐに元の天真爛漫な表情に戻る。
「けど、私は職務に忠実な女の子なのでした」
言って、マナがワンピースを脱ぎ去ると、その下から革製のボディースーツ――SMの女王様が着るような際どいハイレグだ――が現れる。
「…………」
唖然とその姿を見つめるシンジに、
「だいじょうぶ。ちゃんと喋ってくれたら、痛くしないから♪」
マナは、場違いなウィンクをした。
「それでは、碇シンジ君の尋問を始めたいと思いまーす」
マナは元気一杯に宣言した。
「じ、尋問……?」
なにかが酷く間違っているような気がする。シンジは、マナの格好を見つめた。
「え、どうかした? ご飯粒でも付いてる?」
顔を手で探りながら、マナが言う。彼女にとっては今の格好が尋問のスタイルらしい。
「では第一問――」
言い方が多少引っかかったものの、シンジはなにを訊かれるのだろうと身構えた。
(そう簡単には喋らないよ)
「エヴァの必殺技はなんですか?」
マナの口から出てきたのは、クラスメートと同レベルのものだった。
「……プログナイフかな。あと、パレットガンとか」
装備の名前を教えるくらい害はなかろうと、シンジは口にした。。
「ふんふん、プログナイフと、パレットガンっと……」
マナがシンジの答えを反芻しながら、手帳に書き込む。その表情はどこかつまらなそうだ。
「……第二問、エヴァの弱点はなんですか?」
「ケーブルが切れると、三分間しか動けないこと……かな」
これも、まあ周知の事実であるしと、素直に答える。
手帳に書き込みを続けていたマナは、突然手を止めて、
「つまんない」
憮然と言った。
意味が分からず、聞き返す。
「え?」
「つまんないよ~。ちょっとは黙秘してくれないと、せっかく用意した道具が使えないじゃない」
マナは、運んできたキャスター付きのテーブルを手で指し示した。そこには手術にでも使いそうな金属器具や巨大な注射器、革製の拘束具らしき物、穴の開いたゴルフボール(?)、あとはシンジには使用法の予測できないものが、多種多様に並べられている。
シンジは本能的な恐怖を覚えた。
(と、とりあえず、知ってることなら喋っちゃおうかな……)
命有っての物種だ。
マナは、う~んと唸って考える素振りを見せてから、
「じゃあ、第三問。私の好きな動物は、なんでしょう?」
「な、なにそれ……」
この場でシンジにする質問ではない。それ以前にマナ自身が知っていることではないか。
「早く答えないと時間切れになっちゃうよ。ほら、5、4――」
シンジの当惑をよそに、マナは手の平を見せて指を一つずつ折ってゆく。
「分からないよ! そんなことっ」
「3、2、1。ぶぶーっ」
マナの指が全て折られ、時間切れになってしまった。
「正解は、タヌキでした」
にっこりと笑って、マナ。
(やっぱり、なにか間違ってる……)
自分の知っていることを訊くことを、尋問とは言わない。
「答えられなかったシンジには、罰を受けてもらいます」
マナはシンジに背を向けて、嬉々として台の上の道具を物色し始めた。背筋に冷たいものが走る。
「どうしよっかな。最初だから、これでいいかも」
こちらに向き直ったマナが持っていたのは、なぜか洗濯ばさみだった。どう使うのか、さっぱり分からずに様子を見ていると、マナは洗濯ばさみを開き――
「えっ」
シンジの左の乳首を挟んだ。
「あぁぁっ!」
乳首を押しつぶされて、シンジは悲鳴を上げた。洗濯ばさみの力がこれほど強いとは思いもしなかった。それともこれは極秘に開発された尋問用の洗濯バサミなのだろうか、そんな馬鹿げたことさえ考える。
「ダメだよ、シンジ。ちゃんと答えてくれないと」
「あぅぅ」
マナは、シンジの乳首に付いた洗濯バサミを指で弾いた。局所的な痛みがシンジを苦しめる。
「今度は当ててね。第四問、私の好きな色はなんでしょう?」
またしてもな質問だが、疑問の声を上げることもできない。マナが再び、カウントダウンを始めたからだ。
(な、なんだろ……赤かな。アスカも好きだし。それとも女の子だから、ピンク? 青かもしんないな。好きな人多いし……)
必死に考えを巡らせ、答えを導き出そうとする。が、生来の優柔不断な性格が災いし、なかなか決めることができない。
「(もう、どうにでもなれっ)赤っ!」
シンジは、時間ぎりぎりで答えた。
マナの顔を見つめる。彼女もシンジを見つめ返した。たっぷり十数秒も見つめ合い、マナは笑顔のまま、
「ぶぅ~~。正解は白でした」
残酷に宣言する。
「かわいそうだけどルールだから、罰を受けてもらいます」
いつ、そんなルールができたのだろう。それとも尋問について間違っているのは、自分の方なのだろうか。だんだんと自信が無くなってくる。
と、マナの手が、すうーっと洗濯バサミに伸びた。
「ま、まっ――」
待ってと、言う間もなく、
「付けるときより、取るときの方が痛いから気をつけてね」
閉じたままの洗濯バサミが、無理やりむしり取られる。
「ああぁぁぁっ!」
シンジは絶叫した。乳首がちぎれてしまったのではないかと、本気で思う。
なおもひりひりと痛む乳首を見下ろすと、驚くほど平らにつぶされてしまっている。
「あはは、ぺちゃんこになっちゃったね」
マナは、愉快そうに笑った。なんだろう。たしか、今のマナを表すのに適切な言葉があったはずだ。そう、たしか――
「マナ、目的と手段が入れ替わってるよ……」
シンジは涙声で、つぶやいた。
それを聞いてマナは、はっとなる。ぽん、と自分の頭を軽く叩いて、
「あ、そっか、ごめん」
舌を出して見せた。
「わ、分かってくれた……?」
「うん、ちゃんと、私がシンジに訊きたいことを質問しなきゃだよね」
「う、うん……」
それはそれで困るのだが、まあ答えようのない質問をされて罰を受けさせられるよりはましだろう。どうせシンジの知る機密など、ほとんどないのだし。
しかし、マナの〝訊きたいこと〟は、シンジの想像とは異なっていた。
「オナニーを初めてしたのは、いつですか?」
「は……?」
「え、いくらシンジでも、したことくらいあるよね?」
ちょっと信じられないといった表情のマナ。そりゃあシンジだって、それくらいの経験はある。が、
「あ、あるけど……なんでそんなこと答えなくちゃいけなのさ。ネルフやエヴァとなんの関係もないじゃないか」
シンジは顔を赤くして、文句を言った。
「うん」
マナは笑い顔で、まったく悪びれずうなずく。
「けど、私はすごく知りたいよ。ねえ、初めてしたのいつ?」
マナの瞳には、一点の曇りもない。きらきらと輝いていた。だからといって、こんな己の恥部を晒すような問いに答えたくはない。
「い、言いたくないよ。こんな質問、答える必要なんてどこにもないじゃないか」
「ふ~ん、そうなんだ。答えてくれないんだ」
マナは急に顔を曇らせて、再度の道具の載ったテーブルに手を伸ばす。シンジは慌てて叫んだ。
「なっ、こんなこと言わせるために、道具を使うなんて酷いよっ!」
「シンジが、いけないんだよ。素直に答えてくれないから」
マナはこれまでとは違う、にやりとした笑みを浮かべた。
「私だって、できればシンジに手荒なことはしたくないのになぁ」
マナは両手に、毛の細いハケを持っていた。酷く嫌な予感がする。
「あ、まさか……」
「その、ま・さ・か」
マナは、ハケでシンジの脇腹を撫でた。
「ひゃぁっ」
ぞくぞくとした感覚が身体を駆ける。
「答えてくれるまで、やめないからね」
マナはもう片方のハケも使い、両脇をくすぐり始めた。
「あはっ、はっはははっ、や、やめて、よぉ。僕ぅ、弱いんだからぁ、あはははっ」
シンジは堪らず、笑い声を上げた。もともと、悪戯で後ろから脇に手を入れられただけで飛び上がってしまったほど敏感で、くすぐられるのは苦手だった。
(し、死んじゃうよ。このまま続けられたら、絶対死んじゃう)
息が出ていくばかりで、うまく吸うことができない。冗談でも比喩でもなく、真剣にシンジは思った。
「いぅ、言うよ。ははっ、答えるから、や、やめてぇ」
必死に言葉を作って、シンジはマナに訴えた。
「最初から、そう言ってくれればいいのに」
言って、ハケの動きが止まる。
シンジはそれからもしばらく笑いが止められず、さらに息を整えるためにかなりの時間を要した。
「あは、シンジって笑い上戸だったんだね」
マナは、ハケでシンジを触るふりをした。それだけで、シンジはびくりと体を震わせてしまう。
「いいこと知っちゃった。で、初オナニーはいつなのかな?」
「……こっちに、越してきてからだよ」
シンジは、観念して答えた。
「へえ~、それまでは全然したことなかったの?」
「う、うん、知らなかったし……」
「じゃあ、引っ越してきてから誰かに教えてもらったんだ。ひょっとして、ミサトさんとか?」
マナのとんでもない推測を、シンジは力一杯否定した。
「ち、違うよっ。トウジとケンスケだよ」
「あは、だよね。それで、教えもてらったことを、どうやって実行したの?」
そんな細かなことまで訊かなくてもいいのにと思うが、黙っていると罰が怖い。シンジは正直に本当のことを話した。
「……お風呂に入ったときに触ってみたんだ」
「どこを?」
訊かなくても分かり切ったことを、マナが言う。その期待に満ちた目から、彼女がシンジに淫語を言わせたいのだと理解できた。
恥を忍んで、震える声で口にする。
「お、おちんちん……」
が、マナはお気に召さなかったようだ。口を尖らせて、だめを出してきた。
「えー、赤ちゃんじゃないんだから、もっと他の言い方があるよね」
「性器?」
「自分のを、そんな風に言わないよ」
「じゃあ、ペニス?」
「外人さんじゃないだから。、ほら、もっと普通の言い方」
実を言えば、マナが言わせようとしている言葉の見当はついていたが、それを口にするのは酷く躊躇われた。わりと平気で使っているクラスメート――トウジなど――もいるが、シンジはその言葉に卑猥なイメージがあり、今まで一度も声に出して言ったことはない。ましてや好意を寄せている異性の前で言うことなどできるばすもなかった。
「……」
「シンジの苦しむところ見たくないんだけどなあ」
マナは、ハケをシンジに見せつけるように手で弄んだ。
「ま、待って、言うから。ちゃんと言うから」
くすぐられるのが嫌でそう言ってみたものの、羞恥心ばかりが掻き立てられ舌が巧く回らない。
「チ…チ……ン……はぁ」
言い淀んでいる内に息苦しくなり、シンジは大きく息を吐いた。
「はやくぅ」
マナが触れるぎりぎりの所でハケを動かし、シンジを急かした。
シンジはこれ以上ないくらいに赤面させ、間近にいるマナに聞こえるかどうかの小さな声で隠語を口にした。
「チン……チン〇……」
「あはは、チン〇触ったんだ。シンジ」
マナは満足そうに笑った。彼女の頬も少しだけ朱に染まっている。
「気持ちよかった?」
「うん……」
「ふふ、で、それから毎日チン〇触ってるんだ」
「ま、毎日なんてしてないよっ!」
酷い決めつけられ方をして、シンジは叫んだ。いくらなんだって、そんなにはしていない――と思う。
「嘘だよ」
だが、マナは確信を持った表情で言って、
「だってほら、今だってこんなに大きくなってる」
シンジのブリーフの膨らんでしまっている部分を撫でた。確かにシンジの性器は、窮屈そうに布を押し上げている。
「あぁっ!」
「それに、エッチなお汁で濡れてるよ。ほらぁ」
さらにマナは、ブリーフにできた染みを指で広げる。下着の下の性器がうっすらと透けて見えた。
マナが指を離すと、一瞬、染みとの間に糸が引かれた。
「シンジって、思ってたよりずっとエッチなんだね」
「もう、許してよ。お願いだから……」
「だーめ。まだまだいっぱい、訊きたいことがあるんだから」
シンジの懇願は、あっさりとマナに却下されてしまう。
「ううぅ……」
こんな屈辱と苦痛がまだまだ続くのかと思うと、涙が出そうになる。
(あぁっ、誰か助けてよっ)
シンジは、一刻も早く助けが来ることを願った。だいたい、いつもしつこい位にシンジたちチルドレンを監視――護衛なのだろうがシンジたちからしてみれば――している黒服のネルフ職員たちはなにをしているのだろう。今朝だって、少し離れて後ろを付いてきていたはずなのに。
「そそ、シンジのこと付けてた黒づくめのお兄さんたちは、ちゃんと撒いてきたから時間はたっぷりあるよ」
「そ、そんな……」
シンジは、中二の女の子に撒かれてしまう彼らの能力を疑った。父に直訴して減給くらいはしてもらおうと、半ば本気で思う――生きて帰れたらの話だが。
「では次の質問、シンジはキスしたことがありますか?」
さっきよりは大人しめの問いだったので、シンジはあまり抵抗なく答えることができた。
「あ、あるよ。キスくらい……」
マナは、意外そうな顔をした。
「へー、相手は誰ですか? アスカさん? 綾波さん? それとも」
恋人に近い関係になれたと思っていたマナの前で他の女の子の名前を出すのは罪悪感もあったが、裏切られた復讐も込めて口にする。
「……アスカだよ」
「それってシンジから、したんじゃないよね?」
しかしマナは堪えた様子もなく、簡単に事実を指摘して見せた。
「う、うん……」
「ふふ、やっぱりね。でも、ちょっと意外かもシンジがキスしたことあるなんて」
マナの言葉に、自分が男子として見られていない節を感じてシンジは頬を膨らませた。
「ごめん、ごめん。シンジだって男の子だもんね。あと、私もしたことあるよ。キス」
マナの様に明るく社交的な女の子ならば、キスくらい経験していても不思議ではなかったが、その事実を告げられてシンジの胸はちくりと痛んだ。彼女が他の誰かと口づけしたことがあるなんて、考えたこともなかったから。
「妬けちゃう?」
「……ぜんぜん」
またマナに心の内を見透かされてしまうが、シンジは意地を張って言った。
マナはそんなシンジを見てくすくすと笑い、質問を続ける。
「じゃ、次ね。シンジは女性の裸を見たことがありますか?」
あるわけない、と答えようとしてシンジは、レイのマンションでのできごとを思い出した。
「あ…………」
「うそっ、あるんだ」
シンジの表情の変化を読み取って、マナは目を見開く。
「誰の? アスカさん? ミサトさん?」
キスの時より驚きの色を深くして、マナが聞いてくる。
「あ、綾波の……」
シンジが答えると、マナはわずかに顔を曇らせた。それ見て、なにか言わなければいけない気がして、
「で、でも、違うんだ。部屋にプリント、届けに行ったときに、綾波がバスルームから裸で出てきて、驚いてぶつかっちゃって、それで、押し倒すみたいな格好になって……」
シンジは早口でまくし立てた。
「シンジ、言い訳してるの?」
言われて見ればその通りなのだが、認めたくない。普通のデート中ならともかく、こんな状況になってまで言い訳する必要はないのだから。
「ち、違うよっ。本当にそうだから」
「ふ~ん、でも、綾波さんのこと押し倒したんだ」
「そ、そんな格好になっちゃっただけだよ。すぐに離れたし」
「じゃ、セックスは、まだしたことないんだ」
マナは、一瞬真顔になって言った。
シンジは、考える前に反射的に答えた。
「あ、たりまえじゃないか。そう言うマナは、どうなのさ?」
「私? 私はどうかな? したことあるように見える?」
言われて、マナの表情を伺うが彼女の真意は分からない。シンジより優位に立つために言葉を濁しているだけのようにも思えるし、すでに経験している余裕にも写る。
「じゃあ、そろそろ私の個人的な質問は最後にするね」
〝最後〟という言葉を聞いて、シンジはいくぶん安堵した。あくまで個人的な質問の最後だが、ネルフの機密を聞き出される方が遥かにましだ。
「これが一番聞きたかったんだけど」
もったいぶってから、マナのしてきた質問は酷くストレートだった。
「シンジの一番好きな女の子は誰ですか?」
「なっ……」
ここにきて、そんな直球な質問をされると思っていなかったシンジは間の抜けた声を漏らした。
「…………」
なんと答えればよいか、少しの間逡巡する。
普通に聞かれればマナと答えていただろう。それが熱病のような一過性のものだったとしても、間違いなくシンジはマナに恋していたのだから。しかし今、マナが好きだと答えるのは罰を恐れたように思われそうで面白くない。
「私とアスカさんと綾波さん。それにミサトさん。もし他にも好きな人がいたら、その人もいれて。順番を決めてもらおうかな」
「好きに順番をつけるなんて、おかしいよっ! そんなの子供の考え方じゃないか!」
マナの言葉に怒りを覚えて叫ぶが、
「だって私、子供だもん」
完全に開き直られてしまう。
「さ、シンジが一番好きなのは誰? できれば理由も添えてね」
「いやだよ。絶対答えないからね。くすぐったって無駄だよ」
シンジは決然と言い放った。変な所で意地っ張りなのは自覚している。実際くすぐられたら、言ってしまうかもしれないが。
「強情だねぇ。でも、私も絶対聞きたいんだ」
言って、マナはシンジの四肢を拘束している縄を解き始めた。
(どうして……?)
怪訝に思う。だが、逃げるチャンスだ。
シンジは、手足全てが自由になると間を置かず立ち上がった。長く拘束されていたためか足元がふらついたが、それでも駆け出そうとする。が、
「どこ行くの?」
マナに腕を掴まれてしまう。
「くっ」
シンジは振り返り――さすがに殴ることはできないので――マナを押し倒そうと腕を伸ばした。瞬間、その腕も取られ――
「痛っ」
気がつくとシンジは、後ろ手を取られて床に押し付けられていた。
「弱いね、シンジ。ネルフではパイロットに護身術は教えてくれないの?」
女の子のマナに簡単に組み伏せられてしまったことが情けなくて、顔を床に付けたままシンジは呻いた。
「うぅっ」
腕は後ろ手にきつく縛られ、足も足首で一つにまとめられてしまう。シンジは、うつ伏せで腰を上げた状態にされた。
「ひゃあっ!」
予告なく下着をずり落とされて、シンジは悲鳴を上げた。
「ふふっ、可愛いね、シンジの。まだ毛も生えてないみたいだし。これだったら、おちんちんの方が似合ってるかもね」
シンジの性器を弄びながら、マナが言う。彼女に荒事で負けたことがショックで、シンジはなにも言い返すことができない。
「逃げられると思った? 縄を解いたのは、座ったままじゃ今度のは使えないからだよ」
マナは、パンパンとシンジの臀部を平手で叩いた。
「くぅっ、うぅぅっ……」
痛みよりも屈辱がシンジを苛んだ。
「あは、シンジのお尻、柔らかいねえ。女の子みたいだよ」
マナの言葉が、さらに追い討ちをかける。
マナは、また道具を取るためにテーブルに向かったようだったが、シンジの体勢では、なにを選んでいるのか見ることができない。
しばらくして、
「ほら、もっとお尻上げて」
また、尻を叩かれた。
シンジは仕方なく、腰の高さを上げた。顔に体重が掛かり苦しい
窮屈な格好でマナの方を見る。その手にある物を見てシンジは、愕然とした。
「なにそれ……」
その物体の正体を知ってはいたが、そう言ってしまう。それはガラス製の巨大な注射器、つまり――
「へへっ、すごいでしょ。500ccも入るんだよ」
マナは誇るように言った。すでに中には液体が満たされており、彼女が押すと先から零れだした。
「じょ、冗談だよね……ほんとにそんなの使ったりしないよね?」
震える声で、希望を込めて訊く。
「さあ、シンジの下の口に、いっぱいごちそうしてあげるね♪」
マナはシンジ問い掛けをを無視して、彼のすぼまりに浣腸器をあてがった。
「や、やめてあぁっ!」
差し込まれたガラスの冷たさに、シンジは怯えた。
「いくよ」
浣腸器が押されて、シンジの中に液体が注ぎ込まれる。
「あっ、あはぁ、うぅぅ、あぁぁっ」
直腸が、液体で満たされていく。初めて味わう感覚に、シンジは身悶えした。
「すごいね。全部入っちゃったよ」
浣腸器を抜いて、マナが告げる。
「ト、トイレに、行かせて……」
シンジはマナに哀願した。生理現象は即座に迫り上がってきている。一刻の猶予もない。
マナは微笑みながら、シンジを見下ろして言った。
「どう? 答える気になってくれたかな?」
苦しげに見上げるシンジには、支配者のように写る。
「お願い…だから、トイレに行かせて……ほんとに…出ちゃうよ」
もう答えるどころではない。神経を一点に集中して耐えているのだ。
なのにマナは、
「まだ答えてくれないんだ。じゃあ、二本目だね」
勝手にそう解釈して、浣腸器に液体を補充する。
「まっ、待ってよっ! もう無理だよっ!」
「シンジが答えてくれないのが、いけないんだからね」
シンジの必死の訴えも受け入れられることなく、再び浣腸器が挿入される。
「あぁっ、あっ、あぁぁぁぁっ!」
限界だと思っていたところに、さらに同じ量を注入される。腹部の痛みも、倍のものとなった。
「ふふっ、シンジのお腹ぱんぱんになっちゃったね」
もともと細いはずのシンジのウエストは、目を疑うほど膨らんでしまっていた。
「あっ、うぅぅ、うぅ」
もう呻き声を漏らしながらでなければ、正気を保っていられない。
「ねっ、答えてくれる?」
マナは、シンジの尻をさわさわと撫でた。そんな優しい刺激ですら、今のシンジにとっては致命傷になりかねない。
「強情張っても、いいことないよ」
「ひっ、ううぅ」
マナの手が、膨らんだ下腹へと移動した。それに少しでも力が加えられれば、即座に注込まれたものを噴出させることになるだろう。
「早く答えてくれないと、手遅れになっちゃうかも。ここってトイレ遠いんだよね」
マナが、残酷な事実を教える。
シンジだって早く答えたかったが、そんな余力はどこにもなかった。マナでもアスカでも適当に名前を言って、この場を逃れようという気持ちもあったが、シンジの性格がそれを許さない。
シンジは、なんとか真剣に答えを探そうとした。ミサトは、もちろん嫌いではない。がさつでずぼらだが、信頼している。家族のような――断じて母親でなかろうが――〝好き〟だと思う。
レイは、最初にあったのは興味で嫉妬で――時折不思議と懐かしさを感じることがあって――よく分からない。でも、たぶん〝好き〟だと思う。
アスカは、すごくきれいだと思う。勉強もできるし、パイロットとしても優秀だし、憧れている。憧れも〝好き〟だと言うことだと思う。
マナは、明るくて優しくしてくれて、自分にも優しさを求めてくれて――たぶんいまは一番好きに近い〝好き〟だと思う。
考えは出尽くしたが、それが順位に結びつくわけではない。しかし、これ以上迷っている時間はなかった。
「ぼ、僕が一番は好きなのは――」
シンジが言い掛けた、刹那――
大きな音を立てて、入り口の扉が蹴り開けられた。光と共に、何人もの人間が入り込んでくる。
「とうとう正体を現したわね。この女狐――」
マナに指を突きつけたアスカは、シンジの姿を見つけると顔を紅潮させて動きを止めた。かたわらのレイの方は――シンジの格好を凝視しながら――平然としている。
「あら、シンちゃん、すごい格好ね」
ミサトが苦笑する。
「あれれ、もう見つかっちゃったんだ」
黒服の男達に囲まれ銃を突きつけられても、マナはあっけらかんと笑って見せた。てへへと、頭を掻いている。
(た、助かった……)
早く縄を解いてもらって、トイレに行きたい。しかし、安堵が気を緩めたらしい。
「あっ、あぁぁぁぁっ!」
限界を迎えると同時に、意識を失うことができたことはシンジにとって幸運だった。