数日後、私は碇君を家に誘った。
「面白いビデオがあるんです。見ませんか?」
「うん、いいよ。映画?」
屈託の無い笑顔の碇君。けれどそれは、私がビデオの再生ボタンを押すと同時に凍りついた。
「な…なんで……」
碇君は絶句してしまって、二の句が継げない。
画面には、学生服姿の男女が絡み合う姿が映し出されている。学校の屋上で、あの女が碇君の上にまたがっていた。
あれからあの女は毎日のように碇君を連れ出して、彼を汚していた。それを見るのは酷く苦痛だった。二人がとうとう性交渉自体に及んだときには、飛び出して碇君からあの女を引きはがしてやろうかと思った。
けれど私は耐えた。唇を噛みしめて、拳を握り爪を食い込ませて。おかげでこうして〝武器〟を手に入れることができた。
「面白いですよね? 学校の中でこんなことしてる人たちがいるなんて」
「見てたの……? 山岸さんが撮ったの……?」
「ええ、たまたま通りかかって」
「嘘だ! そんなのあるわけないじゃないか! たまたまあんな所をカメラを持って通りかかるなんて」
碇君は興奮して、私に詰め寄ってくる。
「落ち着いてください」
私は静かに――とても静かな声で言った。そうして碇君が、落ち着くのを待ってから、
「これが学校やネルフに送りつけられたりしたら大変ですよね。テレビ局でもいいかもしれない。すごいスキャンダルになるでしょうね。エヴァのパイロット同士が――」
「やめてよっ!」
また碇君が叫び声を上げて、私の言葉を遮る。けどその顔は怒りではなくて、今にも泣き出しそうな顔だ。
私は気分が良くなった。碇君がいけないんですよ。あんな女に引っかかるなんて。
「だいじょうぶ。私だって、そんなことはしたくありません」
私はしゃがみ込んでしまった碇君に合わせて身を屈め、彼の背中にそっと手を回した。
「その代わり、碇君には一つだけ私の言うことを聞いて欲しいんです」
日曜日。人通りの多いの繁華街を、私は女の子と並んで歩いている。
桜色のワンピースを着て眼鏡を掛けた、セミロングの髪の女の子。〝碇シンジ〟という名の女の子と。
「…………」
碇君は頬を染めて、ずっと下を見て歩いている。恥ずかしくて周りが見られないみたい。可愛い。
ワンピースは気に入って買ったのだけれど、私が着るとちぐはぐな印象――お刺身にソースをかけたみたいな――になってしまい着るのを諦めていた物。碇君には、よく似合っている。眼鏡は予備のやつだ。さらにカツラを着けてもらっている。こうするとどこから見ても、立派な女の子だ。
「ね、ねえ……」
碇君は私の腕を掴んで、上目遣いの視線を送ってきた。これからどうするのか、不安みたいだ。その仕草も本当の女の子みたいで愛らしい。
私は、この〝女の子〟とどうすごそうか――どこで買い物をして、どんな映画を見て、なにを食べようか、一瞬の内に考えが浮かんだが、それを涙を飲んで破棄した。
碇君に女装してもらっているのには、ちゃんと理由がある。彼には、外では常に
ネルフの警備が付いている。それは私が碇君を、あの淫売から守るのを邪魔するだろう。
だから碇君には駅のトイレで変装してもらい、念のためそれまで身につけていたものは全部コインロッカーに預けてきている。
それから周囲の様子には気を配っているのが、幸いあの目立つ黒服姿の人たちは見あたらない。
「そうですね。そろそろ私の家にいきましょう」
私の言葉に、碇君はほっとした表情を見せた。そうです。安心してください。碇君は私がずっと守ってあげます。あの女から。他人から。全てから。
ずっとずっと――守ってあげますから。
自室に帰った私は、テーブルを挟んで碇君と向かい合って座っていた。ゆっくりと時間が過ぎていく。彼の姿を見ているだけで、私は満たされる。
碇君は、そわそわと落ち着かない。
紅茶を一口飲んで、
「やっぱり似ていますね、私たち」
数分ぶりに言葉を発すると、碇君はびくりと体を震わせた。
女装した碇君は、その姿も私とよく似ていた。鏡を見ているよう、とまではいかないけれど、姉弟――いいえ、姉妹のように思える。
「そ、そうかな……」
「ええ」
戸惑う碇君に、私は自信たっぷりに頷いた。
また紅茶を口に運び、沈黙してみる。
しばらく碇君も紅茶を飲んだり、視線をあちこちに移動させたりしていた。けれど、とうとう耐えられなくなったのか、私に疑問をぶつけてくる。
「……山岸さん、僕になにをさせたいの? こんな格好させて……」
「似合ってますよ、とっても」
私がはぐらかすと、さすがの碇君も頭にきたようで立ち上がった。
「用がないなら帰るね」
言い放ち部屋を出ていこうとする碇君の手を、私も立ち上がって掴んだ。
「だめです。碇君は、もう一歩もこの部屋から出ないでください。それがあのビデオを公開しない条件です」
「ば、ばか言わないでよ。そんなことできるわけない」
碇君は本気で怒ったみたいで、語気がいつになく強い。でもこれが碇君を守るたった一つの方法。
「それに、いまからじゃたぶん家には帰れませんよ」
「え……なに言って……あ…れ……?」
足下をふらつかせて倒れかかった碇君を、受け止める。予想通り、睡眠薬が効いてきたみたい。
「もうなにも心配いりませんよ、碇君」
完全に意識を失った碇君を、私は慎重にベットへと運んだ。
カツラと眼鏡を取っても、碇君の面立ちでは十分に少女に見える。
「こうして眠っていると、まるでお人形さんみたいですね」
私は眠っている碇君の唇に、自分の唇を重ねた。柔らかさ、暖かさを味わって離す。
私は唇に手を当てて、その場で飛び跳ねた。
キスをした。碇君――いえ、シンジ君とキスをしてしまった。
その事実を噛みしめると、幸せが体の隅にまでいき渡るようだった。私は今、世界中で一番幸せな女の子かもしれない。
これだけで十分満足できていたと思う――あの女の存在さえなければ。
そうだ。あの女が汚した所は全て、きれいにしてあげなくちゃいけない。そうしないとシンジ君が腐ってしまう。
ワンピースを脱がせて、さらに衣服を剥いで碇君をブリーフだけの状態にする。露出した碇君の肌は、白くてとても美しい。
私は、シンジ君の胸に顔を埋めた。シンジ君の匂い、体温、鼓動、今まで知ることのできなかったそれらが、一度に私に伝えられる。
「ふふっ」
ピンク色の小さな突起を摘んでみる。なんとも言えない感触だ。
浮き出た鎖骨や、肋骨を撫でるのも快い。
私は碇君の体をしっかりと抱きしめてその肌触りを堪能してから、名残惜しく一度身を離した。
シンジ君の下半身に目を向ける。
一呼吸してから、私はシンジ君のブリーフを引き下ろした。
するとシンジ君の股間に象の鼻のような器官が現れる。
「これがシンジ君の性器……」
この日のためにネットで画像をあさりモニター上で見てはいたけれど、実物を見るのはもちろん初めて。ネットで初めて無修正画像を目にしたときには、醜悪で吐き気さえ覚えた。こんなものがシンジの君にも付いているなんて信じられなかった。
けれど今目の前にして、私は〝それ〟を早く触ってみたいと思った。口に含んでみたいとさえ。
シンジ君の性器であるということが、私を〝それ〟から目を離せなくしている。
私は内から突き上げてくる衝動を抑えて、机の引き出しからネット通販で手に入れた手枷と足枷、それに口を取り出して、シンジ君を拘束した。
こんなことをするのは不本意だけれど、目が覚めたときあの女に騙されている彼はきっと抵抗すると思う。それを思うと悲しい気持ちになる。
けど、すぐに私の気持ちを分かってもらえると思う。あの女のことなんて、微塵も残さず忘れてくれると信じている。
私はシンジ君の性器を掴んで、口に入れた。
あぁ、私は今、シンジ君のおちんちんを舐めてるんだ。興奮で体が小刻みに震えている。
汚いなんて思わない。しょっぱさも気にならない。美味しい。すごく美味しい。私は夢中で、シンジ君のおちんちんをしゃぶり続けた。
そのうちに、口の中で性器が大きさを増してゆくのが分かった。
「ふふっ、感じてるんですね。シンジ君」
口を離すと勃起したおちんちんは、亀頭の先を覗かせている。
ゆっくりと皮を剥くと、ピンク色の亀頭が完全に露出した。とてもきれいで、私は見とれてしまう。
私はスカートとショーツを脱ぎ捨てて、ベットの上に登った。自分の性器を見下ろす。恥毛が、また濃くなったような気がする。同級生の子と比べても濃い方だと思う。ちょっとコンプレックスだ。
性器からは透明な滴が、よだれみたいに垂れている。心と同じで、体も早くシンジ君を迎え入れたくてしかたがないみたい。
私は腰を屈めて、おちんちんを握り性器に押し当てた。
とうとう、シンジ君とひとつになれる。
体重を落として、おちんちんを性器にくわえ込む。
「あぁ――」
きつい。想像していたよりもずっと。
でも、やめるだなんて考えられない。私は、痛みを無視してシンジのおちんちんを全て飲み込んだ。
「はぁ……」
熱い。性器も胸の内も、ぜんぶ熱い。
私は、シンジ君の顔の脇に両手を着いた。
「あは、シンジ君、分かりますか? 私とシンジ君、繋がってるんですよ。ひとつになってるんです」
私の心を分かってくれるシンジ君と、体もひとつになることができた。こんなにも似ているふたりが、ひとつになることはきっと定められた運命。これからはずっとふたり、けして離れるもんか。
声が聞こえたのかシンジ君が、うっすらと目を開ける。
「うぅ?」
私を見て、結合している下半身を見て、
「うぅ、うぅううぅ!」
シンジ君は血相を変えて、逃れようと身をよじった。でも、拘束してある状態では大した抵抗にはならない。
「だ、だめですよ。私が動きますから、シンジ君はじっとしていてください」
私は、シンジ君の上で腰を動かし始めた。性器に感じる刺激が痛みなのか、気持ちよさなのかそんなのは分からない。
ただ、私はシンジ君とセックスしている。それは愛し合う二人が至る到達点。その思いだけで、私は腰を上下させた。
「う…うぅ……うぅぅ」
いつしかシンジ君の声は、切なげなものに変わっている。
「気持ちいいですか? おちんちん、気持ちいいですか?」
私は動きを早めた。そして――
「うぅ、うぅぅっ!」
私の中にシンジ君の精が放たれる。
「あぁ、出てますよ、シンジ君。私の中に、あなたの精液がすごいたくさん!」
最愛の人の精子を子宮で受け止める。恍惚。天にも昇る気持ちとは、このことだと思う。
なのに碇君は、今にも泣き出し顔をしている。しかたがないことだけど、やっぱりすこし興を削がれてしまう。あ、けど、
「シンジ君、まだしたいんですか?」
「うぅ、うぅうぅ」
シンジ君は激しく首を振った。けれど私の中にある彼のおちんちんは、まだ硬いままだ。
「気に入ってくれたんですね。私の――おまんこ」
きっと私たちは、性器の相性もいいに違いない。私は嬉しくなって、腰の動きを再開させた。
「ううぅ、うぅ」
リズムを取りながら、腰の動きを繰り返す。
五分もすると、シンジ君は再び精液を噴出した。私の膣内は、きっと精液で溢れてぐちゃぐちゃになっている。とろけてしまいそう。
「うぅ……うぅぅ」
さすがに、シンジ君のおちんちんは萎えて小さくなってしまった。
でも私は、もっとシンジ君とセックスしたかった。だんだんと気持ちよさが分かってきたような気がする。
「シンジ君、もう一度しましょう」
「うぅ!」
シンジ君はいやいやと、首を横に振った。目は見開かれていて、そんなの無理だと訴えている。
でも、だいじょうぶ。
「私、シンジ君のために勉強したんです」
人差し指を舐めて濡らして、シンジ君のお尻の穴に押し入れる。
「うぅぅっ!」
シンジ君は、くぐもった悲鳴を上げた。口枷をしてなかったら、近所中に響き渡っていたかもしれない。
差し入れた指で、睾丸の裏の辺りを撫で擦る。前立腺と言うらしい。
「うぅ」
丹念に何度も撫でていると、シンジ君のおちんちんはゆっくりと大きさを取り戻していった。
「ほら、これでまだできますね」
私は涙を流すシンジ君の上で、彼のおちんちんをむさぼった。
もっともっとたくさん、シンジ君の精子を受け止めよう。ふたりの子供ができるように。
男の子がいいだろうか。女の子がいいだろうか。
両方欲しい。
けど、三人生まれても女の子ばかりの姉妹で、男の子が生まれないなんてこともあるかもしれない。いいや、そのときは四人でも五人でも、十人でも男の子が生まれてくれるまで産み続ければいい。
その日のシンジ君は、どこをどう触っても五回が限界だった。