私は、おはようのキスがしたくて――その欲求が抑えきれずに――彼の口枷を外そうと手を伸ばした。彼だってもう、私がどんな風に彼のことを思っているか理解してくれたはず。無闇に声を上げたりはしないと思う。
口枷に手が掛かる。なぜか彼の顔は怯えているように見えた。そんなわけないのに。
口枷が外れて、
「シンジ君――」
「変態っ! 近寄らないで、触らないで。帰してよ、僕を家に帰してよっ!」
シンジ君は絶叫した。
「変態?」
無意識に、私はシンジ君を平手で殴っていた。無意識なのだから、加減なんかできるはずもない。
パンッ、という甲高い音が四、五回もしただろうか。気が付くと、両の頬を真っ赤に腫らしたシンジ君が倒れていた。
酷いことをしてしまったと思う。今の彼はあの女の影響を受けているから、私を受け入れてくれるに時間がかかるのはしかたがないのに。
私は謝ろうと口を開いて、
「ごめん――」
けれどそれは、シンジ君のさっき以上の大音量の叫び声にかき消されてしまう。
「助けて! 誰か助けてっ! アスカァ!」
一瞬、目の前が白くなったような気がした。
顔面を足で蹴った。
なんで、私の気持ちを分かってくれないんだろう。こんなに大切に思っているのに。
馬乗りになって、握った拳を無茶苦茶に叩き付けた。
どうして、あの女の名前なんて呼ぶんだろう。よりによって、あの女の名前を。
拳が痛くなって叩くのをやめると、拘束してあるせいで腕で顔を庇うこともできないシンジ君は、ぼろぼろになって鼻からは血まで流れていた。
「やめて……やめてよ……」
弱々しく呻く彼にまた口枷をはめて、手足の拘束を確認してからクローゼットに押し込める。
一緒に朝食を摂ろうと思ったに――。
まあいい。私が学校にいってる間、ひとりでいれば頭を冷やしてくれるでだろう。そうすれば、誰が本当にシンジ君をかけがえなく思っているか理解してくれるはず。
学校から帰るとシンジ君は酷く怯えた表情で、クローゼットの中で震えていた。
なぜだろう?
理由はすぐに分かった。床に染みができている。それに鼻につくアンモニアの臭い。
「大声を出したりしたら、だめですよ」
口枷を外すために、シンジ君にお願いする。彼は震えるばかりで、反応を見せてくれない。
私は、さらに念を押した。シンジ君の目をじっと見つめて。
「だめですよ」
こくこくと、シンジ君は短く何度も頷く。
私は口枷を外した。
「ご、ごめん……」
シンジ君は口の周りによだれを垂らしながら、喘ぐように言った。
「粗相しちゃったんですね。だいじょうぶ、怒ったりしませんよ」
私は、シンジ君を安心させるために笑顔を作った。
「そ、それで……」
言いづらそうに口ごもる、シンジ君。
「あぁ、またしたくなっちゃったんですね。おしっこ」
私が代わりにはっきり言ってあげると、シンジ君は顔を真っ赤にした。
「うん……もう、我慢できない……」
「分かりました。ちょっと待ってて下さい」
「え?」
戸惑うシンジ君を残して、台所へいく。
持って帰ってきた物を見て、シンジ君は困惑の色を深くした。
「これにしてください」
シンジ君の前に銀色のボウルを置く。
「な、なに言ってるの……? トイレにいかせてよ」
「だめです。この部屋から一歩も出ないって、約束しましたよね」
「そ、そんな……」
「ほら、早くしないとまた漏らしてしまいますよ」
私はシンジ君を、股を開いた格好でしゃがませた。手は後ろ手に拘束してあるので使うことはできない。
「できないよ……。こんな恥ずかしい格好で、見られながらなんて、できるわけないよ……」
「恥ずかしがる必要なんてありませんよ。私はシンジ君の全てが見たいんですから。そうして、全て受け入れてあげますから」
シンジ君はしばらく呻きながら耐えていたが、やはり限界だったのか、おちんちんが震えておしっこを出し始めた。
「あはっ」
ボウルにおしっこの当たる派手な音が、部屋に響く。
シンジ君はこぼさないように、必死におちんちんの位置を調整している。可愛らしい。
放出が終わると、ボウルには薄黄色の液体がたっぷりと溜まっていた。
「たくさん出しましたね」
おしっこしたままの格好で苦しそうなシンジ君を、座らせてあげる。
「あの……お水が欲しいんだけど……」
シンジ君が遠慮がちに言ってくる。
「出したばかりで、今度は入れたいんですか?」
朝からなにも口にしていないから無理もない。
「だったら、〝これ〟飲んでみます?」
私はシンジ君のおしっこの入ったボウルを、彼に見せつけた。
シンジ君の顔色が真っ青になる。
「ふふっ、冗談ですよ。笑ってください」
私はおかしくて笑ったけれど、シンジ君はちっとも笑ってくれなかった。