聖騎士イズヴァルトの伝説 第六部 『戦旗編』 作:CHACOとJAGUAR
イズヴァルトが集めたアルバムや日記を、コツメカワウソの獣人が読んでいる。ラッドが呼んできた魔族だ。名前をポリメコフィアンナ=ロドラデデデウという。女の魔族である。
最初来た時はニンゲンの女、長身でスタイルが良く、しかもサキュバスみたく膨らんだ乳房と尻を際立たせた格好でやって来た。ずいぶん美人さんでござるともらした程だった。
けれども今の姿は、にても似つかぬこぢんまりとしたコツメカワウソの獣人。あの獣がそのまま人化したような姿だ。さっきからかわいいつぶらな瞳が気になる。彼女は眼鏡をかけていた。そのまんまるなおめめで資料を読み続けていた。
彼女がやって来てからかれこれ30分ほどだが、既に10冊ほどの書類を読み終えていた。あと半分といった調子だ。
このコツメカワウソの女獣人は3分ごとに首を左右にひねったり、小さな口を開けてあくびをしたりする。この姿のほうがイズヴァルトは好きだった。とてもかわいいでござると思った。
「イズヴァルトさん。あんまりすけべえな思念を向けていただけませんかね?」
ポリメコフィアンナが小さな口を開いて注意した。魔獣から発した魔人であるがゆえ、口はちゃんとカワウソのように牙があった。
「助平とは言いがかりでござるよ。かわいいでござる……と拙者は思っただけでござる」
「あの世界で一番の色男が言うから、気持わるく響くんですよ。私程度をかわいいだなんて言ってちゃ、魔界にお呼ばれしたらやばいですよ?」
魔界にはとても可愛い獣人の魔族が多数いる、と女カワウソは語る。こっちの世界で『シルバニア』というブランドのお人形らがそのまんま出歩いている感じだ。
それと魔族の女は大概にセックスの求めに寛容。動物愛好趣味を持つ侵略者達は、獣人の里で大変な足止めを食らうそうである。
精力絶倫どころか無尽蔵のイズヴァルトが魔界に来たら、彼女たちはきっと群がるだろう。美男の部類であることと異界の神族に連なる男のちんぽと精液を逃すはずはない。
かくいう私も過去、5回も『ゆうしゃ』にレイプされて子を孕んだとポリメコフィアンナは告げた。レイプとはいうがきっかけが無理やりなだけで男女の喜びあいというものを十分享受できたという。要は殺されなければいいのだ。
「思念体を滅ぼされない限りは、強姦なんてものは魔族にとってはちょっと強引な口説き方、という意味合いと同じですよ。けど、あんまりがっつきが過ぎる人はやっぱり遠慮させていただきたいものですね」
そう告げてポリメコフィアンナは読むのをやめた。読み残しているのは家主の個人的な記録や仕事の書類らしい。だいぶ古くなっていたのでラプンツェルをさらった連中のことについて書かれていないだろう。
「関係ありそうなのはこの2〜3年のうちに書かれた記録や書籍、手紙とか。ほかは役に立ちそうもありませんね」
「わかったことがござるか?」
ポリメコフィアンナがうなずいた。ここの家主は高級そうな役人のお家のお坊ちゃん、だが、育成失敗例のほうだろう。
まあまあな大学には入ったが、コンパとサークル活動と恋人との生殖活動に精を出し過ぎた挙げ句に『お情け』で卒業にこぎつけたものの、社会が望む能力を満たしていなかったのか、相次ぐ就職面接に落ちまくった挙げ句に親のコネで行政機関の外郭団体に就職でき、無能でも生きられるゆるくてぬるい職場とほどほどに良い給料をもらえて真剣に考える機会も無くのうのうと暮らし、インターンシップで入ってきた『生娘』という評し方があてはまるが恋人よりも見目が良い女子大生に言い寄って東京に余計な夢を抱く地方人である彼女を口説きまくって乗り換えると、避妊をしない種付けをやりまくって『認知』を求められると、ボーナスで買った安物の結婚指輪を握らせて彼女の実家に挨拶をして認められ、妊娠6ヶ月の彼女にボテ腹が目立たぬウェディングドレスを着せての結婚式を果たしたはいいが、所詮は女子大生の若い身体で己の欲を満たす目的で手に入れた妻だったから結婚生活に空虚さを覚えてしまい妻が出産のために故郷の宮城に戻ったのを期に、仕事探しで焦る女子学生に就職の手助けをちらつかせて関係を迫るといった婚外生殖活動を行いながらも良き夫、良き父親として今に至るという、この世代の中では幸せな部類にあるが、愚劣な凡人としてカテゴライズされても仕方がない、と評した。
「ひどいに過ぎるでござるぞ?」
「私が語った事実がでしょうか? この男性の生き方についてでしょうか?」
「そのう……あのう……」
「そのぐらいは言って構いませんよね。金はあるけど他に取り柄がない男というのは、えてしてそのようなものですよ。努力も何もしない、生まれや財産で下駄を履かせてもらってのうのうと暮らしてここまで生きていけた人に対しての真っ当な評価でしょ?」
ポリメコフィアンナは叩き上げである。だからコネだの良い生まれなんぞがある者には辛辣だ。イズヴァルトもおぼっちゃんの類であるが、彼は騎士としての鍛錬を欠かさず、良い領主になるための学問もやった。天才ではあるが努力の人だ。
「まあしかし、本当にこの家の男は、何から何まで幸運だったようですわね」
裏でたくさん浮気をしていたが、結婚生活は良好だったようだ。東北地方の慎ましやかな町出身で『おぼこ』なところがあった妻は、夫の悪行に気が付かなかった。ママ友との楽しい東京生活で目くらましを喰らったのもあるだろう。
「……ちんちんのうっぷんを晴らしたせいで、ついうっかり赤ちゃんをこさえて婚姻を、というのは、ホーデンエーネンでもままあったことでござるよ? 拙者はもっとひどいから批判できぬでござる」
それをもって愚物と断じるのは受け入れがたい、とイズヴァルトが返すとポリメコフィアンナはこう返した。この日本国やその他の国々では、たいへんに恥ずかしい事とされているのですよ。
「愚物と評したのはあくまで、自分の恵まれた環境にかこつけていろいろと悪いことをしたからです。そうじゃなきゃそこまで悪く言いません。そもそも魔族も『でき婚』が基本ですからね。自由恋愛というものです。下半身の欲求に正直なのですよ。私もそう」
だから生殖という素朴な欲求を、ご高尚な言葉でいいつくろうとするこの世界の人間達をあまりにもうさんくさく見える。
「ダブルスタンダードがまかり通っているんですよ、この世界のニンゲンたちは」
そうなったのも、各国で信奉されている宗教の教義に、純潔を尊ぶ言説が栄えていて、それから生じた倫理でそうなっているようだ。
「ふーむ……」
「ただですね、この世界の人間があまりにも脆く、性病や出産でコロコロと死ぬからその考え方が生じたのかもしれないですね。イズヴァルトさんの世界のニンゲンよりずっとヤワですよ? 魔法もほとんど使えないし」
「だ、だったら、もう少し思いやりというものを持って評したほうがよからぬでござるか?」
「いいんですよ。この世界の連中は」
吐き捨てるような言い方だ。
「そんなよわよわなくせに神様が作るような大量破壊兵器とかを生み出したりして、自分たちの首を締めているのにドンパチをやり続けているんですから」
そういうのをうんざりしながら見てきた。ポリメコフィアンナは嘆ききっていた。彼女は魔界からの監督官として、かれこれ150年ほど、この世界で暮らしていた。
地位は低い。ポコリーヌの3ランク下ぐらいの種族だ。しかし彼女はポコリーヌより優秀だった。下級魔族が上のランクの魔族を実力で超えることはたまにある。
彼女は日本支部でもかなりの要職にいる。入ってくる情報や資料の分析を行うチームのトップだ。ポリメコフィアンナはこの家の主についての報告を続けた。
「2011年頃……9年前に奥さんと息子さんと、お腹の中の赤ちゃんを一緒に亡くしたようです」
「お可哀想に……いかなる理由でござるか?」
「東日本大震災という大地震の後に起きた大津波にのまれたのですよ。奥さんは出産前の里帰りをされていたそうですね」
家主はそこから狂ってしまったようだ。妻よりも子供を失ったことがショックだったようだ。性欲を向ける存在以上にはなれなかった妻をあまり愛してこなかったようだが、それでも子供は可愛かったのだろう。
妻子が死ぬと、心が深く傷ついて立ち直れなかった。大地震からしばらくして仕事をやめた。マンションは退職金をあててローンの支払いを終え、それからはバイトや派遣の仕事で食いつないだそうである。
そのあたりから、彼は親友とつるむようになった。金目という男だ。この金目というのは家の主と何もかもが正反対の人生を送っていた。高校を卒業後就職したのはいいが、そこがとんでもなく過酷な職場だった。3年を待たずに転職。その次もブラックなことこの上なかった。
その金目は自暴自棄な日々を送っていたようだ。酒と女と博打に逃避していてたくさんの借金があった。心に深い闇を持たぬとそうはならない。家の主は、その親友の悪い遊びにつきあうようになった。安易な人間は安易に堕落した。親友よりも早いペースでだ。
しかし3年前から何かが変わったらしい。それは彼が集めだした書籍にあった。聖書や仏教の本、哲学書。つまりは『救い』を求めはじめたのだ。刹那の快楽では逃げられなかったようである。つまり、逸楽に浸って自分の人生を終わらせるボンクラでは無かったようだ。
「そして……どこぞの宗教団体に入信したみたいです」
「なに、そうでござったか?」
「ええ。たぶん、新興宗教のようですね。こんな語句が目立ってましたよ。救世主の再臨。神の宮殿。それから、法悦とか神さまとの対話とか……」
「……それは?」
イズヴァルトは眠気で細めていた目をあけた。髭切がささやく。まさかのまさかだぞ?
「まるで拙者の世界のパラッツォ教のような……」
「かもしれませんねえ。その事務所がこの都内にあるようです。そこで勉強会を開いているらしいですね。毎週土曜に」
「どこにでござるか?」
錦糸町の南。猿江恩賜公園の近くにあるようだとコツメカワウソの獣人は言った。あのあたりはラプンツェルの友人の淫魔、ラーラ=ベルの拠点である。彼女と数名の下級サキュバスらが、生本番ありのホテヘルをやっているという。
60分で1万円ポッキリホテル代は別。かなり安価だ。日本人の平均から言えば極上とも言える美人キャストばかりで、発射回数無制限ということから大人気で、予約が半年先待ちだったらしい。
「なにゆえ過去形でおっしゃられているのでござる?」
「つい2ヶ月前までは、ということですよ。だってキャストのみんながいなくなっちゃったんですもの。事実上廃業というわけです」
ラーラ=ベル達はまだ見つかっていない。もしいればいろいろと助かったのにとポリメコフィアンナは残念がった。見回りを兼ねた買い出しに行っていたラッドがコンビニの袋を抱えて部屋に戻ってきた。もう1人連れがいた。
「お帰りでござる……その女人は?」
イズヴァルトにとって初顔だ。これまた美人で胸が大きい。長身の日本人だ。その女が無言でニッコリ笑ってドアを閉めると、本当の姿になった。
体型はそのままだが、手や脚、大きく開いた胸元がふわふわとした白い毛に覆われてしまった。その上に首から上が違う。複眼を持つクモの頭だ。ポリメコフィアンナが紹介した。
「魔界のアラクネ族のクワン=ダッタさんですよ。連絡役です」
「どうも、はじめまして。イズヴァルトさん」
お仕事の前にさっそく赤ちゃんクモをお作りになりませんかとクワン=ダッタが誘いをかける。この部屋のサキュバスちゃんたちのにおいでうずうずしちゃっているんですの。
「それはおたわむれを……でござる」
「つれませんわね。かなしいわ。こんな頭をしているから? アラクネ族ってだいたい、この世界の物語では上半分がニンゲンの女の子で下半身がクモですから……」
クワンは紅色に輝く複眼を少し潤ませてうつむいた。せっかくからめとった獲物に逃げられてしょんぼりしている女郎蜘蛛みたいだ。思わず気にかけてしまう悲しい気配を帯びていた。
「まずは仕事が第一でござる。クワンどの」
「ひと仕事終えたらでいいのでお考えくださいね……ポリメコフィアンナ事務次官、ご報告いたします」
救援部隊として5名、今すぐこちらに駆けつけると。車や武器も用意しているので、あと1時間もすれば標的が逃げた場所へむかえるだろう。
「増援でござるか。ありがたい」
「では事務次官。今回の目標についてお伝え願えませんか?」
アラクネ族の女とラッドがコツメカワウソの獣人に目を向ける。小さな口がクワっと開いて牙を見せた。
「
彼が所属する宗教団体の事務所へ向かう。その団体の名前は、『救世の寺院・カント教会』といった。
アラクネはメガテン方式の造形が好きですね。妖獣都市が最初だったかな。
『救世の寺院・カント教会』の正式名称は『救世の寺院・アナルカント教会』といいます。
だからどうしたなんだけど。
以下、イズヴァルトの伝説関連のリンクです。
ハーメルンにて掲載
聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・前半まとめ
https://h.syosetu.org/novel/427506/
聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・忠烈編
https://h.syosetu.org/novel/363415/
読み飽きた人向けの最終回
https://h.syosetu.org/novel/428929/
豚小屋
https://h.syosetu.org/novel/429382/
ひよこ芸術
https://h.syosetu.org/novel/429966/
アルファポリス版です。バックアップ兼保管用
(本編と外伝を分けての掲載です。)
☆本編
聖騎士イズヴァルトの伝説 〜無双の武と凶悪無比なデカチンを持つ英雄の一大叙事詩〜
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/934913837
☆外伝
前世の記憶を持つ神業尺八使いの狸系美少女の妹と、女帝サキュバスの祖先の才を受け継ぐ清楚ビッチな姉の2人で、搾精の王国を建てちゃいます☆
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/779914728
転生したらあたし、セックス教団の教主の養女でいつでもどこでもエッチがしたくなっちゃう、レベル999のビキニアーマーの美少女魔法戦士でした!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/959004604
旧版のイズヴァルトの伝説です。ノクターンにて掲載
ストーリーの細かいところがかなり違っておりますが、大まかな筋はおんなじです。
エリクサーみたいに栄養満点の精液を放つ絶倫聖騎士は、転生美幼女淫魔にまとわりつかれておちんちんをチューチュー吸われる。(旧題・聖騎士イズヴァルトの伝説)
https://novel18.syosetu.com/n3094lt/