聖騎士イズヴァルトの伝説 第六部 『戦旗編』 作:CHACOとJAGUAR
「やったか?」
ジェイフ=ダウンズが画面を凝視していたリックに問う。
「そうかもな」
断言はできない。しかし至近距離の自爆。爆弾4個分だ。しかもイスラム教徒の未亡人のジハード=カミカゼのより威力がある。人の命が軽い国は人間を使うが、人権を大切にするアメリカ人はドローンを使う。ジャップの貞操と命とは、葉っぱよりも軽いという認識だが。
「万が一仕損じても、必ず殺してやるさ。厚木や横田にいるお偉いさんどもが、1ヶ月下痢に苦しむのを覚悟してはじめた作戦なんだ。問答無用にやらなきゃあいつらも浮かばれんだろう?」
「まあな、リック。だが、俺等はPMCだ。現役の軍人どもみたく忖度ってもんはいらんのだよ。あっちにいるトレボー隊長たちは別だろうけどな……ドローン、もう1機この中に入れろ。報告したい」
リックは一機に命令を送った。爆発したドローンの空間座標に送り込むコマンドだ。今も窓から煙を出す、ウェンディーズの店舗に入っていく。煙で様子が見えないが、何名かは生きているのは伺えた。
「標的はミンチになったか?」
「今調べる」
カメラを赤外線モードに切り替えた。首が、四肢が四散した遺体がいくつも転がっていた。爆発したところを見る。身長185センチほどの標的の身体は、どこにも見当たらなかった。
「……跡形もなく消えちまったのか?」
そうではなかった。イズヴァルトは五体満足のまま、店の天井の柱にしがみついていた。服はやや煤けてしまったが、防護魔法のお陰で台無しになっていなかった。
「髭切。さっきのと同じものでござるな?」
------爆雷を積んでいるようだ。凍らせてやれ。
イズヴァルトは印を切る。凍土の大陸を支配した伝説的なオーガの王の指揮棒・『氷雪の栄光』から学んだ凍結の魔法だ。
浮かんでいたドローンの周囲にだけ、絶対零度に近い冷気が集まる。電子機器も爆弾の信管が凍てついた。イズヴァルトは袋から取り出していた剣を抜き、ドローン目掛けて飛び降りた。
「急にカメラが映らなくなった! 位置情報もだ! くそ!」
「もしも、ってことがあるかもしれん!」
リックが声を荒らげた。ジェイフがマイクに話しかける。標的は生存。北館1階のハーバーストリートに面するウェンディーズにまだいる模様。無線の向こうのトレボーが怒鳴った。
「寄りにもよってウェンディーズ好きかよ! 俺とメシの好みが合うじゃねえか!」
「あそこのクズチリがお好きだったんですか、隊長?」
「ああそうだよ! くそっ! ウェンディーズが好きなやつに悪いやつはいねえって決まってんだ!」
そりゃああんたの妄想だ。ジェイフはそう言ってやりたかったが事態は急す。余計なことなんて言ってられない。
「きゃつを北館に閉じ込める。必ずケリを付けてつけてやる。北館の屋根の窓ガラスをぶち抜いておくからってリックに伝えとけ! みんな巻き添え覚悟でやるつもりだから遠慮するなよ!」
「了解です。隊長、みんなを連れて無事に戻ってきてください」
「……それと! ナラシノに待機しているトニーに伝えてくれ。乗る観光用セスナにバンカーバスターを積んどけってな!」
ジェイフはつばを飲み込んだ。あれを持ち出すのか。軍から1ドルで買った『払い下げ品』だが、ビルを吹き飛ばせる威力は健在、のはずだ。
「こっちは今から始める。もしも殺せなかったら吹き抜けまで誘導する。その時はドローンで掩護しろ。いいな?」
その場で立てた作戦はこうだ。まずは南館の1階に潜んでいるメンバーが追い立てる。北館には客に化けたのが待機していた。狭いから流れ弾で標的以外を抹殺する事は必定だが、戦闘員も民間人も犠牲は致し方ない。
南館から数名の戦闘員が、ハーバーストリートに飛び出した。客たちが悲鳴をあげる。彼らは抱えた銃で次々と撃った。炸裂音とともに阿鼻叫喚が起こる。外から恐怖がやってくる事を標的に知らせ、仲間が待ち構えている北館の奥に送り込むつもりなのだ。
この時イズヴァルトは、店の中にいる負傷していた者らに応急の治癒魔法をかけてまわっていた。銃声を聞いて歯ぎしりをした。
「新手でござるか?」
------イズヴァルト、この国は剣を持っても牢屋に入れられると聞いていたが、話が随分違うようだな?
イズヴァルトは動いていた。煙の中から出ると人々を襲う者達の姿が見えた。黒い防弾ベストとガスマスクに身を包んだ殺戮者が6名。誰もがイズヴァルトよりも背が高く横幅が広い。
彼をバカにしたあの若い娘の集団の中で生き残り、深く傷つきながらうめいていた者達は見ていた。『へんたいふしんしゃさんですか?』と書かれた煤けたトレーナーを着た髭面でキモヲタの外国人が、青いミスリルの長剣を手にして飛び出してくるところをだ。
それの姿が見えなくなった。イズヴァルトは身体をひねりながら最初に出くわした男を薙いだ。抜群の切れ味のそれは相手の胴体を真っ二つに。いや、あまりにも巨大な力が加わった為に内蔵が破裂し、血と漿液と肉片とが四方八方に飛び散った。
「奴か!」
「妙な刃物を持っているぞ! ジャップの骨董品か!」
撃てと叫ぶ声がこだまする。しかし音よりもイズヴァルトは速かった。飛び上がり南館の壁に右足をつけると、さっき居たところに銃口を向けていた1人に襲いかかった。
相手は避けることができなかった。右肩からバッサリと切られる。着地したイズヴァルトは間髪置かずに駆けた。残りの4名を仕留める為にだ。
コマのようにくるっと回って1人。その時にやっと右肩を斬られた男の胴体が宙を舞った。力強く踏み込まれた敷石が割れて飛び散るのを見ながら誰もが呆気に取られた。
また1人が、己が殺した足元の日本人と同じ末路を遂げた。とにかく撃て。小銃が弾丸を連射する。イズヴァルトの目は銃口の向きから弾道を予測し、飛び跳ねて避けてもう1人を。血しぶきが舞った。一番後ろにいた男が叫んだ。
「構うな! やれ!」
声が両面の壁に反響すると、南館の屋上に潜んでいた数名が起き上がり、イズヴァルトに向けて手榴弾を投げた。彼が切り殺した5人目と赤子を抱えたまま息絶えた、太った親子連れの遺体が爆散した。
「……真上にも!」
------潜んでいたようだ。用意周到だな。
真上からの攻撃は常套手段だ。城壁みたいな高さの建物だから、さもありなん。手榴弾が次々と彼の周囲で爆発を起こす。空に浮かんでいた残りのドローンが一斉に動き始めた。谷津干潟公園にいるリックは命令を受け取っていた。作戦変更だ。ハーバーストリートで全弾をぶちまけろ。爆弾をすべて使いきれ。
「化け物が! 今度こそ殺しきってやる!」
ドローン群が一斉に降下する。目標はハーバーストリートのどん詰まりにいるイズヴァルトだ。彼は通りにいた最後の1人の首を刎ね飛ばしていた。遠くから聞いたことがある音を耳にすると髭切に告げた。
「『獄炎の凱歌』の炎の刃、今から使えるでござるよ?」
------空を飛んでいるおもちゃを叩き落とすのだな? やれると思うが炎の太さは注意しろよ。一歩間違えるとこの一帯、全てが火の海になるからな?
重々承知している。手にした剣の切っ先で印を切る。ミスリルの刀身の表面に蒼い炎が起こり、揺らぐ。更に左手で重圧術式や風の術式の印を素早く切る。
ドローン達がストリートの真上まで降りてきた。背を向けていた彼は振り向きざま、刃の先をその通りの出口に向ける。切っ先からまっすぐにした針金のような細い熱線が放たれた。
100メートルほどにまで伸びたそれこそ、炎の魔剣を彼から奪い、我が物とした吸血鬼・ヘラと同じ技だった。しかし周囲を灼熱の熱波でもって枯らし、地獄の炎で焼き尽くしたかの女の技とは違う。正当な持ち主によるそれは、滅ぼしたい物だけを焼き裂く、煉獄の浄火となるのだ。
「同じ手には乗らぬでござるよ!」
『獄炎の凱歌』が放つ細い熱線が突き上げられた。空にあがると倍の長さとなり、飛び込んできたドローンを爆弾ごと、ことごとく焼き滅ぼした。
いくつもの爆発が空で起こった。屋上からその光景を見届けていた襲撃者らは圧倒され、そして北館にいる者達に無線でこう告げた。
「失敗だ。標的が、全てのドローンをやっちまった」
どういうことだ? 無線の相手が問いかける。その兵士は、いや、屋上で待ち伏せていた部隊の隊長は、弱々しい高い声で答えた。女だ。
「13年前のあいつと同じ、不思議な力を操るやつだったよ。レーザーだか熱線だかでドローンを焼き切っちまった」
あの時の恐怖が蘇る。新兵で経験は足りなく、なすすべも無かった彼女は、ふざけた格好をしたあの悪魔にことごとく仲間達を殺された。フロリダの近郊でだ。
「ソニア。そいつは本当か?」
「ええ……お陰で覚悟が出来た。こいつはなんとしてでも討ち取るよ」
彼女は通信を切った。皆に呼びかける。屋上にいた隊員らは一斉に、腰にかけていたフックとロープを屋根に引っ掛けると、それを掴んで飛び降りていった。真上からの突撃だ。
銃声が鳴った。流れ弾が生き残っている者が当たらないか気がかりだったイズヴァルトは、一切の感情を殺して迎え撃った。数秒後に、この部隊は全滅した。生存者はゼロだ。
斬り殺した全員のマスクを剥ぎ取り、屋上にいた戦闘員の顔を確かめた。険しい皺が眉間に刻まれた女ばかりだった。
「髭切、拙者はなんてことを……」
------つまらぬ感傷はよせ。民間人を巻き添えにした奴らに情は要らん。
「で、ござるな」
ため息をつく。ハーバーストリートには生存者がいなかった。負傷しながらも生き残っていた全員が、銃弾や爆弾で命を落としたのだ。
誰がこんなことを仕掛けたのだろう。そう思いながら瞑目するイズヴァルトだが、北館であがった新たな悲鳴を聞き走り始めた。
(まだ、潜んでいるのでござるか?)
戦闘のプロが、こんな酷い作戦を立てるはずがないよ。
うん、その通り。
以下、イズヴァルトの伝説関連のリンクです。
ハーメルンにて掲載
聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・前半まとめ
https://h.syosetu.org/novel/427506/
聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・忠烈編
https://h.syosetu.org/novel/363415/
読み飽きた人向けの最終回
https://h.syosetu.org/novel/428929/
豚小屋
https://h.syosetu.org/novel/429382/
ひよこ芸術
https://h.syosetu.org/novel/429966/
アルファポリス版です。バックアップ兼保管用
(本編と外伝を分けての掲載です。)
☆本編
聖騎士イズヴァルトの伝説 〜無双の武と凶悪無比なデカチンを持つ英雄の一大叙事詩〜
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/934913837
☆外伝
前世の記憶を持つ神業尺八使いの狸系美少女の妹と、女帝サキュバスの祖先の才を受け継ぐ清楚ビッチな姉の2人で、搾精の王国を建てちゃいます☆
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/779914728
転生したらあたし、セックス教団の教主の養女でいつでもどこでもエッチがしたくなっちゃう、レベル999のビキニアーマーの美少女魔法戦士でした!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/959004604
旧版のイズヴァルトの伝説です。ノクターンにて掲載
ストーリーの細かいところがかなり違っておりますが、大まかな筋はおんなじです。
エリクサーみたいに栄養満点の精液を放つ絶倫聖騎士は、転生美幼女淫魔にまとわりつかれておちんちんをチューチュー吸われる。(旧題・聖騎士イズヴァルトの伝説)
https://novel18.syosetu.com/n3094lt/