聖騎士イズヴァルトの伝説 第六部 『戦旗編』 作:CHACOとJAGUAR
------注意しろ、来るぞ!
髭切からの呼びかけにイズヴァルトは身構えた。背後から気配。髭切はイズヴァルトが持つミスリルの剣に己の力の一部をまとわせる。剣は前よりも硬く強靭に、かつ、刃は鋭くなった。何物をも斬る力が備わった。
イズヴァルトは前を向きながら背後の地面を切った。軽い牽制のつもりの払い斬りだ。刃がかちあう音が鳴った。相手も小手調べといった調子でそれほど重い感じはしなかった。
「転移魔法での奇襲でござるな?」
------今度は後ろだ! 重いのを食らわすようだ!
気配でわかる。転移魔法でできるだけ気配を抑えながらというつもりだっただろうが、一撃を繰り出す時に気配が濃くなった。
イズヴァルトは上体をひねって切り払う。今度のは重い一撃だった。そこから繰り返し刃と刃があわさる音が鳴りはじめた。真上から、右横から、左斜め下からだ。
なかなかに隙が無い。争い事を嫌うとはいえ、魔竜はやはり魔界の魔族の貴族であった。武術も身につけている。
ならば誘い込みだ。イズヴァルトは大きく跳躍した。その間に魔竜の刃が彼を襲った。その一撃一撃を払い除ける。
着地した。真上から剣風が起こった。避けきれずにイズヴァルトは右頬に傷を負った。
「素早いでござるな!」
------彼奴は最初から全力でかかっている! ヘラの様に手を抜くなよ!
手を抜いたとは人聞きが悪い。髭切とやりとりしながらイズヴァルトは攻撃を防ぎ続けた。ちょっとした空気の動きで察し、剣で払う。優れた剣士や戦士でなければできぬ戦い方だった。
決して勝てぬ相手とは思えなかった。けれどもなかなかに、カウンターを叩き込めない。まだまだサイカノマゴイチの勢いが、流れを作っていたからだ。
戦いは20分近く続いた。刃の気配がしなくなったのでイズヴァルトは一息をつけた。気づけば鎖帷子や直垂が切り裂かれ、ズボンのベルトも斬られて前がはだけそうになっていた。
「まったく! 竜というより蛇でござるな!」
イズヴァルトはブーツを脱いでズボンを脱いだ。長い立派な陰茎が丸見えになってしまうが仕方がない。避けている時にずり落ちてしまうと避けきれなくなるからだ。代わりにズボンを切り裂いて腰布にして巻いた。
------ああまったくだ。こういうねちねちとしたやり方をするから、俺はこの女を好かん。臆病者だから致し方無いのだがな。
髭切はとても嫌っているようだ。イズヴァルトは気づいた。魔竜の性格であれば、きっといける。
「サイカノマゴイチ! 貴殿は臆病者でござる! 姿を見せずにかかってくるとは、魔族の王の一族の風上にもおけぬでござるよ!」
「うっさいわぁ!」
念話魔法による魔竜の怒号。しかし彼女は次の一撃を繰り出さなかった。はて。イズヴァルトは考えた。これはどうしたものだろうか。
「髭切、ここは逃げても良いのではござろうか?」
------よせ。魔竜とはこの場で決着をつけるのだ。ここで逃げたらあいつはしつこく追い続けてくることだろう。
「で、ござるか。しかし、しかかって来ぬ限りは反撃ができぬ。あやつの姿は見えないでござるよ、とほほ……」
------仕掛けて来てくれない。となると、ふむ。
ここで髭切は提案した。魔法を使え。全力を出し切る様な大技を仕掛けろ。
------最大火力の爆炎弓箭でも紫電砲でもいい。何ならお前が得意な重圧の魔法や『氷雪の栄光』の氷魔法でもなんでもやってみることだ。
「しかし、かような魔法を用いてはこの世界では、この周辺を吹き飛ばすどころか、もっと酷いことになるのでござろう? それに、拙者は魔封じの術式をかけられたようでござる。使えぬよ」
------俺がいるではないか。この程度の結界は簡単に切り裂ける。ヘラと戦ってきたお前が一番存じているだろう?
そうだった。ヘラに髭切の刃の一撃を食らわせた時、あの女は自分が仕掛けた魔封じがかかっていたと信じていた。髭切の何物をも切り裂く刃は、結界破りの刃でもあった。
「どういう作戦でござるか?」
------やればわかる。イズヴァルト、治癒の力が必要になるから心がけてくれ。なあに。この世界の魔法抵抗とお前の今の治癒力なら、数千回肉体を滅ぼされても生き返るだろう。
「随分と痛い目に遭いそうな作戦でござるな……しかし」
お主を信じる。イズヴァルトは目を閉じた。彼の奥底に潜んでいた髭切の力というものが、皮膚より外に出はじめる。
イズヴァルトとこの魔剣との相性は恐ろしく悪い。魔封じの力を引き裂こうと念じるだけでも脂汗が浮き出て、身体がひどく熱くなってしまった。
(……やるでござる!)
イズヴァルトは髭切の力を開放した。突如として彼の身体の隅々に行き渡っていた封印術式が粉々になってかき消えた。さっきまで感じていた圧迫感が消え、多大な疲労感とともに開放感を得る。
気が晴れたせいか陰茎にも血が集まりはじめていた。ぐぐぐ、と鎌首をもたげて起き上がってくる。肉茎の付け根と尻穴に力を込め、彼は右手で印を切りはじめた。
(なんやて!)
サイカノマゴイチは驚いていた。なぜ魔法結界を打ち破った?
(あんさん……あんたにかけたんは、魔界でも最高の魔道術式によるもんでっせ!)
魔王とその近しい一族だけが扱えるものだ。特にサイカノマゴイチの魔封じは兄である魔王・ヤータに準じる。
それを打ち破る存在はごく限られる。イズヴァルトがマハーヴァラに神として列せられた事にほかならないだろう。いや、それでもあまりに力を得すぎているのではいのか?
(あるいは、にいちゃんがいろんな世界の神さんの中でも一番やべえとぬかしてた、あんさんの世界にいるアエーシュマはんに教わったんかいな? それなら……)
あの世界の死神ならばわからなくもない。しかし考えに囚われるのはやめにした。イズヴァルトの身体から漂う魔力が、これまでになく高まっていたのにきづいたからだ。魔力の上がり方が急激に過ぎる。あかん、と魔竜は焦った。
「そうはさせへんでぇ!」
魔竜は念じた。複数の印を切って特大の大技を仕掛けようとしていたイズヴァルトの足元から太い何かがいくつも飛び出てきた。
彼が動く前にその手足に巻き付いて縛り上げる。地面に根付いている様なそれは朽ち果てた電信ケーブルだった。使われなくなり、劣化したゴムの被膜のそれに縛られたイズヴァルトは怒りの声をあげた。
「いつの間に! 卑怯なり、サイカノマゴイチ!」
「卑怯もへったくれもあるかい!」
だが、縛られた手も指先は動かせた。印を切り魔法を使おうとイズヴァルトが動く。
「やめい! やめいっちゅうに!」
「何をほざくか! 隠れて姿を見せぬびびりの言うことなど、きかぬでござるよ!」
「ああもう! それやってもうたら、おおごとになるっちゅうねん!」
「何をやめるでござるか! 拙者は止めぬでござる!」
「もう堪忍せえへんでぇ!」
サイカノマゴイチは激高していた。敵に対する加減というものを忘れてしまった。イズヴァルトの前後左右に、紅い術式陣が浮かばせていた。
「熱くて痛いけど我慢しいや! しつっこいあんさんをへたらすにはこの方法しかあらんのどすわ!」
紅い光を帯びていた術式陣の中央から、黄色く輝く炎が噴いた。イズヴァルトは身を守る為の印を切ろうとしたが間に合わなかった。
全身を激しく焦がす痛みと苦しみが彼を襲った。前後左右から襲うその炎は、ミスリルの剣こそ焼けなかったが、兜や鎖帷子を溶かしてしまった。
息が苦しくて叫べない。身体が燃えて熱い。視界と意識が何度も真っ白になったり溶かし焼かれる痛みが繰り返された。イズヴァルトの体は何度も死と再生を繰り返していた。
しかしそれでも彼の意識と存在自体が消失しなかったのは、彼が半人半神の存在だったからである。7度殺されても生き返る英雄がいるのなら、イズヴァルトは100回殺されても蘇る神だった。
何度目の肉体の死の後だろうか。
------イズヴァルト。痛覚は切れるか?
髭切の声がした。イズヴァルトは己の内に呼びかけて、炎による熱さと痛さを切ってみせた。
(ようやく落ち着いたでござる。だいじょうぶでござるよ。)
------もうそろそろだろうな。お前なら見切れるだろう。ここ一番の時に治癒の力を使え。
わかったでござる。そう答えたイズヴァルトの身体が地面に倒れた。彼の身体は炭だらけであった。
丸焦げにされても恐ろしい治癒力で彼の身体は生命活動を続けていた。足音が聞こえた。魔竜のものだろうか。
「まあ、あんさんならこないに痛めつけても、生き延びると思うとりましたわ……」
口調は変わらぬがひどく聞き心地の良い声だった。シマーヅ人の女に化けていた時はガラガラ声であったが、今のは柔らかく高く潤いがある響きだった。本当に魔竜なのかとイズヴァルトは疑った。
「まあ、これだけボコしたらあきらめるやろ。おばちゃん、暴力嫌いなんやけどな、イズヴァルトはんみたいな暴れん坊は別やでぇ」
やり過ぎたという後悔から起こる自己正当化の弁だ。髭切がいまわしそうに呟いた。そんなに暴力が嫌ならヤギウセッシウサイを寄越せば良かったろうに。
足音が近づいた。うつ伏せに倒れていたイズヴァルトは、それに引き上げられる感覚を覚えた。柔らかく、とてもか細い手と腕に思えた。つかみ上げたその人物の、指の先に硬い何かを感じた。鳥のくちばしのような形をしたものだ。爪だろう。
冷たい風を腹に受けた時、「ひっ!」と鋭く叫ぶ声が聞こえた。治癒再生能力が一番活発な陰部が元通りになったからだ。こういう時は凄まじいぐらいに硬直していた。
「えっ、えぐいわぁ……」
弓なりに伸び上がった陰茎におびえているようだった。それが機会となった。持ち上げて抑え込んでいた力が緩むのを覚えると、イズヴァルトは渾身の力を振り絞って相手に抱きついた。
「うわあ! いややわぁ!」
視界が開けた。初めて目にした魔界でのサイカノマゴイチの姿は、想像したことが無い姿形をしていた。
人の形をしているが、胴体を隠すマントから出た腕と脚には、小さな銀色のうろこがびっしりと覆っていた。
手足の指の爪は、龍のそれの様に黒く尖っていたが、禍々しいというよりかは優美さが際出ていて艷やかな光を帯びていた。
身体は華奢だ。小柄で少女の様な肢体だったエレクトラを思い出させた。身長は160はあるか無いかぐらいでエレクトラよりも背が高かったが、戦士でもあった彼女よりもたおやかに思える柔らかさを持っていた。
この身体つきで真っ先に思い出したのは、マイヤの姉のトーリだった。彼女も細身だが、男心を絡め取る柔肌に満ちていた。魔界の女とは皆がそうなのだろうか。イズヴァルトはきつく抱きつきながらそれの首から上を見た。
他の身体よりも薄い鱗に覆われていたが、その顔はうら若き乙女にほかならなかった。イズヴァルトの世界ではシマーヅ人、いや、カントニア人とシマナミスタン人の血が混じった女の様な、彫りは深いが丸みも帯びている顔つきだった。
魔界を、アカサカチハヤに住む魔族を糾合する威勢を兼ね備えていなさそうな顔つきにも思えた。それほどまでに優しげで美しい顔つきだったのだ。
その額には金色の小さな鹿の角が生えていた。頭は身体を覆う銀色の鱗と同じ色合いの長い髪がさらさらと舞っていた。いや、イズヴァルトに抱きつかれて振り乱していたのだ。
(髭切! こやつは何者でござろう!)
------鈍いやつだな。これこそが魔竜の魔界での姿だ。
(おばさんだと思っていたでござるが、これは!)
------魔王の一族の中では若い部類だ。ニンゲンで言えば二十歳そこそこぐらいだろう。イズヴァルト、容赦をするな。
魔竜は混乱しきっている。抱きつかれて理性を失い、ただただ戸惑って悲鳴を上げている状態だ。落ち着かれて転移魔法を使われる前に勝負を決めろと髭切は急かした。
------俺の見立てが正しければ、この女はまだ『おぼこ娘』なはずだ! やれ、イズヴァルト! お前の十八番でこいつを打ち倒せ!
以下、イズヴァルトの伝説関連のリンクです。
ハーメルンにて掲載
聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・前半まとめ
https://h.syosetu.org/novel/427506/
聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・忠烈編
https://h.syosetu.org/novel/363415/
読み飽きた人向けの最終回
https://h.syosetu.org/novel/428929/
豚小屋
https://h.syosetu.org/novel/429382/
ひよこ芸術
https://h.syosetu.org/novel/429966/
アルファポリス版です。バックアップ兼保管用
(本編と外伝を分けての掲載です。)
☆本編
聖騎士イズヴァルトの伝説 〜無双の武と凶悪無比なデカチンを持つ英雄の一大叙事詩〜
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/934913837
☆外伝
前世の記憶を持つ神業尺八使いの狸系美少女の妹と、女帝サキュバスの祖先の才を受け継ぐ清楚ビッチな姉の2人で、搾精の王国を建てちゃいます☆
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/779914728
転生したらあたし、セックス教団の教主の養女でいつでもどこでもエッチがしたくなっちゃう、レベル999のビキニアーマーの美少女魔法戦士でした!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/959004604
旧版のイズヴァルトの伝説です。ノクターンにて掲載
ストーリーの細かいところがかなり違っておりますが、大まかな筋はおんなじです。
エリクサーみたいに栄養満点の精液を放つ絶倫聖騎士は、転生美幼女淫魔にまとわりつかれておちんちんをチューチュー吸われる。(旧題・聖騎士イズヴァルトの伝説)
https://novel18.syosetu.com/n3094lt/