聖騎士イズヴァルトの伝説 第六部 『戦旗編』 作:CHACOとJAGUAR
ハーメルンにて掲載
聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・前半まとめ
https://h.syosetu.org/novel/427506/
聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・忠烈編
https://h.syosetu.org/novel/363415/
読み飽きた人向けの最終回
https://h.syosetu.org/novel/428929/
豚小屋
https://h.syosetu.org/novel/429382/
ひよこ芸術
https://h.syosetu.org/novel/429966/
アルファポリス版です。バックアップ兼保管用
(本編と外伝を分けての掲載です。)
☆本編
聖騎士イズヴァルトの伝説 〜無双の武と凶悪無比なデカチンを持つ英雄の一大叙事詩〜
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/934913837
☆外伝
前世の記憶を持つ神業尺八使いの狸系美少女の妹と、女帝サキュバスの祖先の才を受け継ぐ清楚ビッチな姉の2人で、搾精の王国を建てちゃいます☆
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/779914728
転生したらあたし、セックス教団の教主の養女でいつでもどこでもエッチがしたくなっちゃう、レベル999のビキニアーマーの美少女魔法戦士でした!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/959004604
旧版のイズヴァルトの伝説です。ノクターンにて掲載
ストーリーの細かいところがかなり違っておりますが、大まかな筋はおんなじです。
エリクサーみたいに栄養満点の精液を放つ絶倫聖騎士は、転生美幼女淫魔にまとわりつかれておちんちんをチューチュー吸われる。(旧題・聖騎士イズヴァルトの伝説)
https://novel18.syosetu.com/n3094lt/
炎。それが全ての合図だった。
火の手があがったことに、各ビルの屋上で西口側ペストリアンデッキの喫煙所を見張っていた者らは、注意を奪われてしまった。
遥か上空で魔力探知を行っていたリシェナからの情報で彼等の居場所を知ったゴール達は、持てる身体能力の全てを発揮して一斉に不意をついた。
『人食い鬼』達は武器を持っていた。刃物だが、カヅノ=セイジが魔力を込めた『神聖兵装』だ。下級の魔族ぐらいなら思念体ごと斬ることができる代物だ。後ろを取られたことに気づかないどころか、駅の東側で起こった火柱に気を取られ、構えていなかった魔族等に、防ぐ手立ては無かった。
悲鳴や断末魔は無かった。けれども急激にしぼんでいく、いくつかの魔力の気配を感じたリシェナも動いた。狙うは喫煙所。『内通者』の横にいる女だ。
(この世界のいい女に化けてる、あいつがそうちや。)
浮遊魔法を解いた。代わりに音消しの魔法と飛翔魔法を自分にかける。闘気を内に秘め、急降下。銃弾の様なスピードでだ。ポリメコフィアンナは真上に来るまで気づかなかった。
部下の声を聞いた時には既に時遅しだった。何かにたたきつけられる感覚と痛みを覚えるとともに、瓦礫が舞い、視界が真っ暗闇になって、それから何かが叩き割られる激しい音を聞いた。
底がペストリアンデッキの分厚い床が抜け、彼女は真下にあるロータリーのど真ん中に突っ伏していた。重い何かがまだ乗っていた。痛覚を切って背をひねろうとするが、身体が持ち上がらなかった。
「おんしの身体、真っ二つになっておるき」
ポリメコフィアンナの身体は、丁度みぞおちのあたりで上下に引きちぎられていた。生暖かい血だまりの中にあった。下半身はあの一撃で潰されて肉片となり、あたりに散らばっていた。
それと、ポリメコフィアンナの周りには、瓦礫と混ざってバラバラになったニンゲン達の遺体があった。喫煙所にいた者達だ。ペストリアンデッキのその箇所は抉られ、大きな穴が空いていた。
「……」
肉体が壊れている。声が出ない。コツメカワウソの獣人はいまだニンゲンの女に化けたままだった。リシェナがつぶやく。力を入れ過ぎたか?
「……いや、この世界の『脆さ』を考慮すべきだったちや」
血を吐くポリメコフィアンナに目を向けて言う。
「上半身だけ残っただけでも、ようやるのう。おんし、魔族の中でも下の上ってところじゃろう?」
念話を使う。何者?
「見当がつくじゃろ。うちは違う世界のもんじゃ」
「……それはわかってますよ。エルフ族、どこの世界の?」
「『世界』っちゅうもんはいろいろあるじゃろうが、そんなこまいことうちにはようわからんき。だから、こう教えてやるき」
リシェナは血だらけのブーツの底でポリメコフィアンナの首を踏んだ。
「うちはナハリジャーヤ島のエルフじゃ。それでええか?」
(……まさか!)
あの世界のエルフか。イズヴァルトがいた。しかもその世界のエルフはかなり危険な部類だ。いくつかの『世界』にもエルフ、というか耳長の精霊人はいたが、あそこのは特に恐ろしい、と魔界の魔族の中では言われていた。
エルフだけでなく精霊人全体にも言えることだが、魔界の中級魔族以上の実力があると言われている。特に戦闘力は魔界の魔族の武闘派と互角以上。武闘派とはいえ、そこら辺の荒くれではない。大貴族衆の親衛隊や、魔王の直属軍。まさにエリート戦士クラスとだ。
ただ、他の世界のエルフはそれほど強くはなかった。女は特に弱々しい。戦いで捕らえられてオークの戦士に汚される程度の凡骨ばかり。しかし、マハーヴァラが創造神として治める、あの世界のは違った。彼女達ならオーク男を捕らえて、自分達用の慰みものとして、泣いたりわめいたりできなくさせるまでこき使うだろう。
(魔竜様に援けを求めるべきだった! ヤギウセッシウサイ様がいてくれたら!)
「いくらなんでも、それだけはやめてほしいちや。そうなる前におんしを捕らえて引っ張り出す。魔法はもう封じた。覚悟しいや」
「……そうでしたか」
打つ手は無いようだ。ポリメコフィアンナはあきらめた様子を見せた。だが奥の手を悟られないように用心した。リシェナは少しおかしい、と感じた。
(こいつらならたぶん、二重三重の備えを仕込んじょるはずじゃが……そこまでおつむが良くなかったんか?)
そうではないだろう。こいつは何か隠しているとリシェナは思った。聞き出そうとしたそのすぐ後で、彼女は微弱な魔法の気配がいくつも起こったのを感じ取った。北千住の駅と線路をまたいだ向こう側からだ。
□ □ □ □ □
その少し前。ズルイルは魔族たちを仕留めたというゴール達の知らせを受け取ってご満悦だった。今度の任務は意外と楽勝だったな。しかし派手好きなリシェナが轟音を立ててくれたので小細工が必要だ。
(まあ、とっくのとうに仕掛けているがな。)
グッズショップの入り口前で、念話魔法で呼びかける。相手はリシェナやゴール達ではない。潜んでいるもう1人の『精霊人』にだ。
「ミーシア。聞こえるか?」
聞こえるべえ。カントニアなまりの返事が頭の中に返って来た。ミーシアはヌマタラシュクの女エルフだ。元はパラッツォ教団に雇われた亜人の傭兵。カヅノの悪だくみに昔からつるんでいた。戦闘力は皆無だが、『小細工』にかけては天下一品の腕前だった。ヌマタラシュクのエルフの中では。
「事前にこの周辺の基地局を潰してくれたか?」
「壊すなんてのは芸が無いべえよ。帯電術式で2時間、使えなくしただけだべえよ」
あと、電話局などの通信施設で、事前に仕掛けて置いた術式が発動する。あ、過去形だったべえよ。リシェナの突撃と同時に発動していた。
「仕事が早い。流石は暗黒卿の元・工作員だな。経歴に傷がつかん段取りの良さだ」
「そりゃあ良かった。それじゃあおれは撤収するべえ。あとはおめえさまがたに任せるべえよ」
成田に向かう。長居をするつもりが無かった。ミーシアは念話を終えようとした。彼女はオーストラリアの支部に所属していた。
「日本で遊んで行かないのか?」
「こうなったら落ち着かねえべえよ。それと、オーストラリアのほうがいろいろと楽しめるべえ」
「男か?」
「そうだべえよ」
日本人はちんこが小さいしあっちが淡泊。だからセックスが楽しめない。そう答えてミーシアは通信を切った。店の中で外からの音に驚いていた金目が出ようとすると、ズルイルは手で制止した。
「まだ出るな。リシェナが呼びかけたら出ていい」
「そうしたいが……」
「『仕事』だ。下手な好奇心を持つな。野次馬はやめておけ。落ち着いてから見に行っていい。これが俺達のやり方だ」
金目をうなずかせた。ズルイルは片頬をあげると外へ出る。喫煙所は抉られて瓦礫になっていた。死体もあちこちに。わんわん巡査の像にも被害があった。激しい地鳴りにやられて横に倒れていた。店の中も棚が倒れたりとぐちゃぐちゃだった。
(リシェナ、捕まえたか?)
煙の中に向けて問いかける。ところがズルイルは駅の向こうの異変に気づいてしまった。いくつもの魔力の波動が現在進行形で起こっていた。視覚であらわすと、煙がいくつも立っていたのだ。
(おい! 少々派手にやり過ぎちゃいねえか?!)
直後にリシェナの声がした。東口側で何かが起こっているから見てくれ。ズルイルは舌打ちしながら答えた。
「あいつら、暴走しやがった! あのゴール野郎はしっかりと見ているのか!」
「ローランはまだ20歳ぞ! こっちの世界で育ったヤツじゃ!」
「つまりはひよっこだったか! ああくそ! 大きなガキのお守りは荷が重かったか!」
ペストリアンデッキ周囲の各ビルにいたゴール達からも連絡が飛んで来た。ローランが参ってる。早く手伝ってあげてくれ。
「……わかっている!」
ズルイルは立ち込める煙の中に入った。一旦身を隠して姿消しの魔法を使うためにだ。誰からの目にも見えなくなった彼は走り出し、駅ビルの前で大きく跳躍した。
10階はあろうその建物の屋上に足をつけると、東口で何が起きているのかを目撃し、足がすくんでしまった。
(あいつら! なんてことをしてくれた!)
東口の雑居ビルや街路で、激しく燃え盛る炎がいくつもあがっていたのだ。物が燃えているだけでなく、人も燃えていた。火元はわかっている。あの連中だ。
話が違う。予定なら1つか2つ火をつける程度だ。そのために空き家や空きビルの情報も与えておいた。リシェナは少々派手にやり過ぎたが、余計な被害はできるだけ出さないようにしたつもりだったのに。
ズルイルは『鷹の目』で、この火をつけた連中がどこにいるのかを確かめた。得たばかりの力に酔いしれながら、だいぶ東に進んでいた。電機大学の校舎よりも先にだ。
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彼等は眠っていた力というものに酔いしれていた。強く念じるだけで人体を焼き尽す『シディムの炎』は、無力で無能で何もできず、カルト教団という閉じられた社会でしか生きられなくなった彼等に、英雄になった気分を与えてくれた。いや、敵を無慈悲に屠り良心の呵責無く女と財を略奪する蛮族だろうか。
「燃える、燃える! なんでも燃やせる!」
狂ったように村井は叫ぶ。逃げ惑う通行人たちを念じて火あぶりにせしめながらだ。今の彼には『ドーテー』という負い目から漂う、所在なさと弱々しさは感じられなかった。憎む全てを焼き尽す、地獄の王の様な気迫があった。
「あははは! 本当にそうだ!」
「『ドーテー』に続けェ! この街をことごとく焼き尽しちまおうぜ!」
村井に続く彼等もまた、狂喜で目を輝かせていた。その瞳に映る若者や老人、雑然とした店舗や住宅に、強い敵意を向けていた。幸せそうな人々や日々の生業で為した建物は、全て憎悪する対象だった。実力あるいは運が足りなかったせいで得られなかったのだ。
景気が良ければ、社会情勢に不安が無ければ自分も手に入れただろう。妻と子を抱えてまっとうな自営業をやりたかった。マンションに住める収入を得たかった。けれども社会が与えたのは、過労死寸前の仕事をしても生きるのが精いっぱいの職場と、風呂も無い冷たく居心地が悪い貸し部屋だった。
人生の極北に来たが、アイドルの追っかけという『夢』を見れていた村井と違い、現実を忘れさせてくれる美しいものを見れなかった者達だ。心に地獄を飼っていた。
その彼等の蛮行を呆然と見届けている者が、2人いた。芳村とゴール族の青年。異界の者の血を継ぐ若い男は甘かった。引き留めたが暴れ出した村井と彼に同調する連中に弾き飛ばされ、その気迫に気を削がれてしまった。
芳村はただ、加わらなかっただけだ。この集団の中で唯一、『幸せで懶惰な過去』があった彼は、街を壊そうだなんて思ったりもしなかった。村井達が作り出す『獄炎』にただただ、見とれていた。
(あ……あ……あ……。)
炎が舐めようとしている北千住の街を見て、芳村はあの時を思い出していた。10年前の東日本大震災。テレビで見た気仙沼の街の映像をだ。あの当時、帰省していた妻と子供達をさらった大津波が起こしたあの大火災を彼は勤め先のテレビで見ていた。
あれは死のかがり火だった。大量の海水があんな魔物を産むなんて、見ていた当時は信じられないと思いながら見ていた。妻と子供達の行方が絶望的になった頃、彼は気仙沼の大火災のことを思い出してこう嘆いた。
(俺の妻と子供達は、あの大火災の種火になったんだろうか……。)
そして、今。全てのを見込み、延々とつづくかと思われた日常を破滅させた炎を亡きものとした真っ黒な津波のイメージが頭の中に浮かんでいた。村井達がむき出しにする『悪意』と『絶望』。それが濁流となって大きな波となり、北千住の街を呑みこもうとしている。
(あは……俺は……何もできねえ。)
帰って女を抱きたかった。柔らかな肌と化粧の香りに包まれて、枯れるまで打ち続けたかった。いや、悪い記憶や想念を忘れさせてくれた、あのサキュバスのラプンツェルを貪りたい。彼女をまた抱けるのはいつになるだろうか。
「ホウムラ……」
ゴール族の青年が呼びかけた。彼の両手は震えていた。
「あいつら、殺してでも止めたほうがいいか?」
芳村は答えられなかった。炎と煙。悲鳴を上げながら焼き崩れていく人々を見て、過去を思い出してばかりだ。サキュバスと同行していたもう1人の女を捕まえることができても、人殺しに加わったりそれを止める勇気を持ち合わせていなかった。そんなものはやさぐれているが、まだ心に力がある金目ならできるだろうよ。
「……答えられないか。だよな。でも、びびっちまったけど俺は戦士なんだ。やるしかねえんだよ。例え、あんまり親しくねえ仲間でも……」
ゴールの青年は車のトランクから、鞘に入っていた剣を取り出した。2メートル近くある両手持ちのロングソードだ。銃刀法違反だと咎めだてする警官は、このあたりにはいなかった。村井達が焼き殺したのだ。交番の近くで消し炭になっていた。
「……」
「……行って来るよ」
「君も、大変だね……?」
「ゆるしてくれ。この任務はすんなりといくと思っていたんだ。あいつらを生きて連れて帰れると軽く思っていたんだ……」
ゴールの青年は鞘から剣を抜いた。海外で売っている好事家向けのアンティークの剣に見えるが、神聖術式で強化したものだ。5人10人叩き斬っても刃こぼれしないし、切れ味が鈍くなることは無い。
「じゃあ、行くからな」
ゴールの青年は足を踏み出した。その時だ。
「そこのゴールの者、待たれよ」
呼びかけられた彼はその声に振り返った。この世界の言葉ではなかった。でも知っていた。彼の父親が住んでいた大陸の言葉だったのだ。エチウといったと聞いている。
「……誰だ?」
振り返った。そこには、間抜けなトレーナーを着た体格の良い、髭面の美男子が、青白く光る長い剣を手にして立っていた。