聖騎士イズヴァルトの伝説 第六部 『戦旗編』 作:CHACOとJAGUAR
ハーメルンにて掲載
聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・前半まとめ
https://h.syosetu.org/novel/427506/
聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・忠烈編
https://h.syosetu.org/novel/363415/
読み飽きた人向けの最終回
https://h.syosetu.org/novel/428929/
豚小屋
https://h.syosetu.org/novel/429382/
ひよこ芸術
https://h.syosetu.org/novel/429966/
アルファポリス版です。バックアップ兼保管用
(本編と外伝を分けての掲載です。)
☆本編
聖騎士イズヴァルトの伝説 〜無双の武と凶悪無比なデカチンを持つ英雄の一大叙事詩〜
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/934913837
☆外伝
前世の記憶を持つ神業尺八使いの狸系美少女の妹と、女帝サキュバスの祖先の才を受け継ぐ清楚ビッチな姉の2人で、搾精の王国を建てちゃいます☆
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/779914728
転生したらあたし、セックス教団の教主の養女でいつでもどこでもエッチがしたくなっちゃう、レベル999のビキニアーマーの美少女魔法戦士でした!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/959004604
旧版のイズヴァルトの伝説です。ノクターンにて掲載
ストーリーの細かいところがかなり違っておりますが、大まかな筋はおんなじです。
エリクサーみたいに栄養満点の精液を放つ絶倫聖騎士は、転生美幼女淫魔にまとわりつかれておちんちんをチューチュー吸われる。(旧題・聖騎士イズヴァルトの伝説)
https://novel18.syosetu.com/n3094lt/
母の最期を自分は看取った。ヴィクトリアは静かにそう言った。
「……エレクトラどのは、この世界に来られていたのでござるか?」
「そうだ。ピピン王子と共にヘラ様が連れて来たのだ。前世の同胞を救う『義』を見せて示す為に。それが12年前……」
アメリカやヨーロッパを火の海にする為に来たヘラは、エレクトラとピピンに、この世界で何を成し遂げるのかを見せてやる為に引っ張りこんだ。
そしてヘラは2人と別れ、元の世界に戻って行ったが、エレクトラとピピンは置き去りにされた。
イズヴァルトは2人の消息が途絶えたということまでは知っていたが、まさかのこの世界に彼女たちが来たことまでは知らなかった。
「……『義』と申したでござるな?」
「お前にはどうでもいいことだ。それよりも母様のことについて教えたい」
ヴィクトリアは黒煙をあげるセダンをちらと見て告げた。
「母様が亡くなったのは今から8年前。この国の大震災のすぐ後だ」
エレクトラは不治の病に侵されていた。肺に入った毒が由来の病だ。
「この世界に来てから3年は咳をしがちでもベッドに臥すことはあまりなかった。だが震災の後で一気にひどくなった」
そして震災の日のちょうど一年後、エレクトラは輪廻の理に導かれていった。
イズヴァルトは、路面を踏む足がふらつくのを覚えた。エレナやウーゴ王子、あるいはマルティン王を置いてこの世界にやって来た彼女は、一体どんな気持ちで最期を迎えたのだろう。そう思うと自身にも重ねてしまった。
「……ピピンどのは?」
「まだ生きている。しかし日本にはいない」
「なにゆえでござるか? 日本はピピンどのの前世の……」
言ってすぐ、イズヴァルトは真後ろに跳んだ。ヴィクトリアが印を切って座ったまま飛び立った。彼等がいたところに黄色い光の柱が現れ、アスファルトを溶かした後に周囲を紅蓮の炎に包んだ。
(仕掛けるタイミングが早すぎだ! イズヴァルトはまだ警戒を怠っていなかった!)
飛びながら上を見上げるヴィクトリアが見ていたのは、魔力の気配。ズルイルのものだ。身隠しの魔法で姿を消していた。
「食い止める! お前はミサトに戻れ!」
ズルイルの声が脳内で鳴り響く。念話魔法。まずい、とヴィクトリアは思った。イズヴァルトなら気配を察知するだろう。
「承知した。ここはお前に任せる!」
イズヴァルトに悟られぬよう、呼びかける相手の名前は言わなかった。
(生きて戻ってこい。)
そう願いながら、ヴィクトリアは全速力で西に飛んだ。イズヴァルトの魔力探知の範囲内でいきなり北に向かうと、どこが拠点なのか悟られるからだ。
ヴィクトリアを逃したズルイルは、再びあたりに注意を向けた。イズヴァルトの気配が消えた。立ち去ったと願いたいがそうではないだろう。奇襲を仕掛けるために己の気を殺したのだろう。
(イズヴァルトか……。まずいな。)
ズルイルから見れば、はっきり言ってバケモノだ。しかしカヅノ以外であの男と戦えるのは、自分かリシェナぐらいだろう。
(まずは、あいつらに呼びかけなければ。)
印を切る。うっすらと赤い色がついた波動が彼の目の前から放たれ、北千住駅前一帯にまで広がる。事前に教えてあった撤退を促すコールサイン代わりだ。使ったら居場所が判ってしまうが致し方がない。
ズルイルはすぐさまその場を離れた、低いビルの屋上に逃げて様子をうかがう。来た。氷柱だ。幾十ものそれが、ズルイルがさっきいたところに向かって飛んでいた。
(イズヴァルトはまだ道路にいるか。)
安堵した。ほんの少しだけだ。
「気配でわかるでござるよ、エルフどの」
ズルイルは右から来る殺気に満ちた風圧を飛んで避けた。宙返りしながらコートの中に隠し持っていた小剣を抜き、着地すると身構える。
長い剣を持ったイズヴァルトがいた。銃刀法違反でしょっ引かれそうなそいつを平然と所持できるのは、魔界の勢力のお墨付きを得ているからだ。
「身隠しの魔法は通じぬ。姿を見せよ!」
答えの代わりにズルイルは突っ込んだ。姿を消したまま素早い動きで、全方位の動脈や関節を狙う剣技が繰り出される。
ズルイルが属するソゴプール=エルフの剣術は必殺を旨とする。しかも速度と刃に乗る威力は、普通の人間の肉体ならば確実に骨ごとたつ威力と、全く目で追えない速さだ。
だが、イズヴァルトはことごとくかわした。かすかに漏れ出ているズルイルの魔力と精霊人の気配がわかっていたからだ。そして数百も繰り出された斬撃の末に隙が生じた。
「……ぐっ!」
ズルイルが歯を食いしばる。身体は斬られなかったが小剣の刃とかちあって、強い重みを感じたからだ。小剣は刃こぼれこそしなかったが芯にひびが入った。
神聖術式で強化したシマナミスタン製の鋼の小剣はそうそうに砕ける事は無いが、イズヴァルトのミスリルの剣には強度では勝てない。家から愛用の湾曲刀を持ってくれば良かったと彼は嘆じた。
「まだ姿を見せぬのか? 貴殿は何者でござるか? なぜヴィクトリアを助けた? 何が目的でどういった組織に属しているのでござるか?」
ズルイルは答え無かった。イズヴァルトを足止めする方法だけを考える。対してイズヴァルトは決して自分からズルイルに斬りかかろうとはしなかった。
------どうした? なぜ躊躇している?
(本気でやったら壊れるかもしれんでござるよ。いや、この町の人たちを巻き添えにするような挙に出るかもしれぬでござる。)
------大丈夫だろう。あのエルフも本気を出せまい。力だけで制していけるぞ、イズヴァルト。
髭切の返事に応え、イズヴァルトは一歩を踏み出した。コンクリートの床に大きなヒビが入り、ズルイルを驚かせていた。
「話さぬのなら、痛い目に遭ってもらうでござるよ!」
今まで体験したことが無い、すさまじい闘気をイズヴァルトの身体からズルイルは感じていた。こちらも死ぬ気でかからなければたちまち打ちのめされるだろう。そう身構えた直後だった。
「ズルイルさん! 身を伏せてくれ!」
道路の真向いにあるビルの上から声があがった。身を伏せるとそこには金目純が屋をつがえるような構えで立っていた。
彼の手元に1本の光の矢が生じ、放たれる。文字通りの光の速さだ。それでもイズヴァルトは身をよじってかわした。彼の背後の床に矢が刺さると、大量のコンクリートの破片が飛び散っていた。
(『神聖術式』でござるか!)
しかも威力は思いのほか強い。通常の光の矢なら焼き貫くだけだが、破砕の力も混ぜているようだ。かなりの才能を持つ使い手みたいだ。この世界のニンゲンにしては。
爆発と共に剣や斧を持ったのが4名、イズヴァルトの目の前に現れた。彼等のにおいを嗅いでイズヴァルトは断定した。ゴールたちだ。しかし4人とも若い。この世界で生まれた子供たちかもしれない。
「お前たち、早まるな! そいつはお前らが手に負える相手じゃない!」
「ズルイルさん! 加勢しますっ!」
4人が動いた。たちまちイズヴァルトと取り囲んで切り込んだ。流石にゴール族だとイズヴァルトは唸った。
しかも彼等は最初から身体強化術式をかけていた。しかも3倍だ。踏むごとに床にヒビが入り破片が飛び散った。若き餓狼たちの猛攻をイズヴァルトは剣でいなし続けた。彼は厚い鋼鉄の壁だった。若い餓狼達は牙が通らぬことに苛立った。
そこにズルイルも加わり、5対1となる。向かいのビルの金目は神聖術式を発する為に、南次郎から教わった文言を呟きながら己の意識を高めていたが、向かいのビルで起きている光景にも目が離せなかった。
(あいつらがチャンバラしている相手は、誰なんだ?)
光の矢が生まれる。今度のは先ほどよりも光りが淡い。隣にいるゴールが言った。俺が念話であいつらに合図したあとに放て。
5人が散開すると金目は矢を放った。今度はイズヴァルトの胸に命中した。爆発が起こり、彼の身体が後ろに飛んだ。
(やったか!)
だが、その矢はイズヴァルトの身体を貫けなかった。破けたトレーナーからのぞく素肌のたくましく古傷ばかりついた胸は、血を流していなかった。
ゆっくりと起き上がったイズヴァルトは、向かいのビルにいる金目に呼びかけた。
「まことにあっぱれな神聖術式の武技でござる! 貴殿、名をなんと申すか! よろしければ、拙者からも魔道を伝えたいが如何か!」
ズルイルたちは、金目がイズヴァルトに目をつけられたと恐れた。エルフはもはや戸惑わなかった。印を切った。イズヴァルトの前の床にいきなり赤い線が生じた。
「お前たち、散れ!」
イズヴァルトの目の前で爆炎が起こった。炎は瞬時にビルの1階にまで起こり、ガラスの破片が飛び散った。コンクリートとセメントを焼き切ってビルは崩れ始めた。
床が崩れるとともに浮遊魔法で飛んだイズヴァルトに、ズルイルが突っ込んだ。さっきの10倍以上の速さだった。小剣には強大な風の魔力を込めていた。イズヴァルトは左から懐に入って来た剣を、両腕を交差させて受け止めた。
「吹っ飛べ」
「……!!」
イズヴァルトは今まで体験したことがない風魔法の衝撃を受けた。その体は超重量の砲弾の様だった。
いくつものビルや建物を貫き、人々を弾き飛ばして旧日光街道のあたりに巨大な畝を造っていった。数多くの人体が空高く飛び上がり、それから地面にべちゃっと音を立てて血や脳漿をまき散らした。
そして彼の身体は、北千住のホームに入ろうとしていた常磐快速線の四両目にぶつかった。
車体は大きくひしゃげ、車両は脱線した。3両目や5両目だけでなく、列車全体が大きく脱線して東武鉄道のレールにまで引きずられた。
乗客たちの悲鳴と断末魔が聞こえた頃、イズヴァルトは目を開けた。血の匂いと中から聞こえる悲鳴と死の気配に鳥肌が立っていた。多くの人たちを巻き添えにしてしまった強い悔やみが心に生じた。
(ここが誰もいない原っぱであればよかったのに!)
しかし市街戦はもう避けられない。ここはいったん退くか、あるいはより人が少ない場所に相手を誘導するか考えていたところだった。
------どうやら、なりふり構わなくなったようだな。
「さようで、ござるな」
割れたてえぐられたアスファルトの道の上に、小剣を握りしめるソゴプール=エルフの姿があった。
「ズルイルどので、ござったか」
イズヴァルトは起き上がった。身体の闘気を高め、剣を構える。一撃必殺の気迫が生まれた。こうなったイズヴァルトは、エルフの身体も両断する。
対するズルイルも印を切り、彼等の前面に無数の魔力の気配が生じた。風魔法だ。シマナミスタンのエルフなら、あらゆるものを貫通する『風の槍』を用いるだろうとイズヴァルトは思った。
「では、参るでござる」
イズヴァルトの前方に、高く分厚い氷の壁が生まれた。車両の中でまだ息をしている人々を守る為だ。
「貫き穿て、『
ズルイルが叫ぶ。彼等の本気の戦いが始まった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。