「『決めたタイミングで』って言ったのに、時間だけじゃなくていろいろ指定してきたか。まあ別にいいけど」
オーナーたちの集まりでありギルド、『獄夜叉』に所属する荻野宝吾の担当社員である白服が、手紙を持ってきた。
その内容だが、細かいことはいろいろ書かれており、大きな部分は以下の五点。
①:所有するすべてのコアカードをデュエルディスクに入れること。
②:予め他の人間にコアカードを預けることは禁止する。
③:デュエル場所は『獄夜叉』が所有する『冥界ステージ』にて。
④:デュエルは1本勝負。オールイン設定で行われる。
⑤:指定時間になった時にデュエルステージに立っていない場合、六車械遊の負けとする。
そのほか、時間が記されており、あとの細かいことに関しては械遊に対する不正防止――荻野宝吾に対するものは記載がない――といったもの。
ハイヤーの後部座席で愛智を横に座らせて、械遊は溜息をついている。
「で、この冥界ステージってのはなんだ?」
「……私は行ったことがあります」
「そうなのか?」
「ええ。毒ガスを吸い続けて暴れるインテリアとしてですが」
「そうか」
凄惨な過去をサラッと話す愛智。
その体が震えている様子はなく、トラウマ特有の反応は感じられない。
「……確か、一週間に一度の義務でするランダムマッチデュエル。アレはスタジアムを使って行われるものだが、あれって、使われてないスタジアムは申請すれば使えるんだろ?」
「はい。ランクに関係なく、使われていないスタジアムは申請すればすぐに使えます」
「すでに再戦は新聞にも載ってるし、周知の事実。そんな中『専用ステージ』を用意するってことは……何かあるな」
今回のプロパティ・プリズンという私有地の取得だが、荻野宝吾は叱られたはずだ。
私有地のオプションをルールブックで確認したが、明らかにコアカードの『提供』が何回も行われている。
2兆アウェアというだけではない。莫大なコストがかけられたそれを軽く手放したことで怒られたのは間違いない。
ただし、アリの巣の原則として、デュエルで奪えるのはコアカードのみ。
これはルールというより機能や仕様の話であり、全てのオーナーに強制適用だ。
それ以外の要素で『アンティ』を設定する場合、それはオーナー同士の取り決めになる。
要するに、それらを奪い返すために、『械遊に私有地と従業員をベットさせる何か』が仕込まれている可能性が高い。
「……一体、どんな罠があるのでしょうか」
「さあ? いずれにしても、ロクなもんじゃなさそうだな」
手紙を見る。
械遊の直感に引っかかるのは、大まかなルールの中で五番。
指定時間になった時に立っていない場合の、械遊の不戦敗。
「……それと、械遊様」
「ん?」
「この内容。一方的に『この内容で決定する』と記載していますが、アリの巣の中でも、しかるべき場所に出せば通りません」
「そうなのか?」
「一方的に。という部分が不備になります。要するに……構造上、絶対に相手が勝てないようにできるため、お互いの同意を得た契約しか通りません」
「ふーむ……」
械遊の直感が動く。
アリの巣は原則として、『欲望』を重視している。
その上で、『理不尽』という存在が効果的に欲望に刺激を与えると判断している。
だからこそ、オーナーランクが高ければ下に対し、断れないデュエル要求や、勝利時に出さなかったコアカードの要求など、上のランクにはいろいろ用意されているのだ。
しかし、その理不尽はあくまでも、『不利』にとどまり、『不可能』を是としない。
少なくとも勝てる可能性があるからこそ、理不尽という手段はそれにさらされる存在の欲望を刺激することが可能になる。
ただただ一方的に嬲るのはいいとしても、下剋上の可能性がないのはダメ。
要するにそういうことだ。
「まあ、大丈夫だろ」
「何が根拠に?」
「俺にこれを渡した、荻野宝吾の担当をしてる白服の表情が、何か含んでるなって思ったんだよ」
それ以上は特に重要なことは語らず、二人を乗せたハイヤーは『冥界ステージ』に向かう。
★
冥界ステージ。
これを簡単に表現すれば、ギルド『獄夜叉』が所有する『小規模私有地』を、イベントのために改造したものである。
獄夜叉はこのほかにも様々な私有地を持っているが、獄夜叉に所属していない『ゲスト』を招く場合、こうした手頃なところが選ばれるようだ。
なお、『小』規模私有地は、具体的な表現は難しいが、多少は名の知れた大学のキャンパスの広さ。と言った程度である。
市よりは狭いが、何かイベントをする分には何も問題はない。
そんな広さである。
「……スタジアムが中央にあって、その周囲にいろいろおいてるって感じか。しかしまぁ……いや、いいか」
小規模ではあるが、『屋外』という形式は変わらない。
とはいえ、コンクリートを大量に集めて、出入り口からスタジアムまでの『廊下』を作ることで、ゲストが使える範囲が狭く、獄夜叉にとっては暗躍し放題の『イベント会場』に変貌する。
小規模と言えど屋外なので、入った瞬間は広々としていると思ったら『廊下』だったので、械遊としては呆れている。
「ん?」
次の瞬間、械遊のこめかみに何かが着弾した。
……のだが、血は溢れず、かわりに赤い羽根が飛び散った。
「なんだ?」
「なっ……じ、銃弾!? え……」
突如、械遊の手に出現した羽根が、帯のような形になる。械遊はそれを愛智の首に巻き付けた。
次の瞬間、愛智のふとももに銃弾が当たったが、血の代わりに羽根が飛び散った。
「なるほど、ボディーガードをつけず、肉壁も用意せず、制服やスーツを着た二人で来る方がおかしいってことか。思ったより行儀が良くてびっくりするよ」
「い、良い方ですか?」
「個人的にはな。壁から銃弾が出てきてるみたいだ。ただ、道中に扉はなかったし、観客用の出入り口があるってことか。で、ゲストはこの廊下を通って、この銃弾をどうにかしろと」
械遊は溜息をついた。
そんな彼の左目に弾丸が当たり……羽根が散った。
「なるほど、『冥界ステージ内で負傷した場合、荻野宝吾の不戦敗とする』って同意が必要だったのか。これは勉強になるな。ん? 機関銃の音が……」
次の瞬間、械遊の体が飛び散りまくった羽根で見えなくなる。
「……械遊様!?」
「あー、大丈夫。これにエネルギーは使わないから、向こうが弾薬尽きるまで撃ちまくっても俺にケガはないよ」
「そ、そういう問題ですか?」
「そういう問題だ。さてと……まあ歩いていくか」
デュエルディスクを見ると、時間的には歩いて行っても余裕はある。
そういうわけで、長い廊下を械遊は愛智を連れて歩いていく。
愛智にも弾丸が降り注ぐが、こちらも羽根が飛び散るだけで本人は無傷。
「うーん。なんか、こう、思ってたよりは銃弾の威力が弱いのか? 機関銃の弾の威力がステンレスの盾を削る程度の威力だ。装備の無力化を優先してて、なんか殺傷力が低いぞ」
「あの! すみません! もう銃弾の音がうるさくて何言ってるかわかりません!」
「え? なんて!?」
前衛的なコントを無意識に披露しながらも歩いている械遊と愛智。
ただ、銃って思ったよりうるさいのだ。
それが撃ちまくられており、械遊も愛智もお互いの声が聞こえない。
「はぁ、ここまでやっても無駄弾とわからない……AIが撃ってんのか? まあ、俺みたいな体質は想定してないだろうし……」
呑気にそんなことを言っている間に、械遊が扉に手を掛ける。
その瞬間に銃弾が止んだ。
さすがに銃弾を中に持ち込むわけにはいかないのか。別の理由があるのか……。
「じゃあ、お邪魔しまーす」
のんびりした口調で械遊は扉を開けた。
中の様子を簡単に言えば、直方体の部屋に作られたイベント会場と言ったもの。
出入り口のすぐそばにゲストの指定位置が用意されており、その周囲には観客がそれぞれの席で肉、酒、薬、女を味わっているようだ。
「ようこそ、六車械遊君」
荻野宝吾が、デュエルステージの立って待っていた。
「さてと、指定時間まで数分あるが、とりあえず指定位置にいるってことで良いのかな?」
「相変わらず生意気な態度は変わりませんね。ただ、あなたの絶頂もここまでです」
「……あの、一応聞いていいか?」
「なんでしょう」
「俺が通ってきた廊下。何が用意されていたか知ってる?」
「いえ、特に。私はこのステージを使うのは初めてで、デフォルト設定にしておいただけですから」
「……あっそう」
デフォルトで銃弾の嵐になるという訳だ。
「さて、コアカードはすべて持ってきましたか?」
「ああ。持ってきた」
「フフッ、さて、追加で私から提案があります」
「提案?」
「このデュエル。君が持っている私有地の全権とその従業員全員をベットするというのはどうでしょう」
「……いいだろう。強欲はアリの巣において最も尊いことだ」
欲深い。
それがこのアリの巣において優遇されるべき大前提だ。
だからこそ、掛け金を上乗せしてほしいという要求は、間違っていない。
「ほう。随分潔い」
「だって俺が勝つんだ。勝敗に関係なくお前に渡すってんなら容赦しないが、要するに俺が勝てばいいんだろ?」
「ぐっ、く、クソガキがぁ!」
「はぁ」
械遊は溜息をつく。
「さて、確認だ。このデュエルは、アンタが俺にあの私有地の全権を渡すことで、再戦の権利を勝ち取った。そうだな?」
「ええ、そうですね」
「再戦の約束はしたんだ。だからここに来た。で、手紙に全てのコアカードを持ってこいと書かれてたから、そうしてやったよ」
「その上から目線。直ぐに絶望顔に変えて……」
「お前わかってんのか?」
「は?」
「俺が、全てのコアカードをご丁寧に持ち歩くのは、これが最初で最後ってことだ」
デュエルディスクの格納部から、コアカードをすべて見せる。
「そう……44枚のスレイブヒロインを全て持ち歩くのは、これが最初で最後ってことだ」
「……す、スレイブヒロインが、44枚だと!?」
宝吾だけでなく、会場がざわついた。
「お前わかってるか? 俺が、このアリの巣で価値を持つ『全財産』をご丁寧にすべて持ってきて、掛け金にするのが最初で最後ってことだ。本当にわかってんのかって聞いてんだよ」
「……ククッ! フハハハハハハッ! 実に良い。実に素晴らしい。この最強のデッキで絶対に勝てるデュエルで、ここまで大きな掛け金が乗せられるとは。この優れた私を幹部候補から外すという、ばかげた話が『上』であるそうですが、このデュエルが終われば最高幹部が確定する」
宝吾はデュエルディスクにデッキをセットする。
カードが自動でシャッフルされた。
「さて、始めましょうか」
「……本当に分かったのか。デュエルで見せてもらおうか」
お互いにカードを5枚ドロー。
「「デュエル!」」
械遊 LP4000
宝吾 LP4000
「私の先攻」
何度も言うが、宝吾はプラチナランク。
ランクが上のオーナーは先攻後攻を決める権利がある。
「私はエクストラデッキのシンクロモンスター、『ホワイト・ワールド・ルーラー』を墓地に送り、効果発動! このターン、私のカードの発動と効果は無効にならない。そして相手はこの効果にチェーンは不可能!」
まずは下準備。
「私はエクストラデッキの融合モンスター、『クシャトリラ・スレイブディーラー』を墓地に送り、効果発動。デッキから『クシャトリラユニット』モンスター1体を、永続魔法扱いで魔法罠ゾーンに置くことができる。私はデッキから、『クシャトリラユニット・司波深雪』を永続魔法扱いで置く」
宝吾のフィールドに、裸に剥かれて、口にボールギャグをかまされた司波深雪が出現する。
彼女の上と左下と右下に固定具が出現し、鎖が深雪の四肢を拘束して引っ張った。
両腕は上にのばされ、足は大きく開いた状態。『人』の形で固定されている。
そして彼女の真下には、直径5センチ、長さ30センチのディルドが出現した。
「んぐっ! んん!」
ローションを纏ったディルドが膣に入り、深雪の中に侵入する。
「ごっ、あっ!」
30センチの棒が根元まで中に入り、限界まで引っ張られて身じろぎすることもままならない体で悶えている。
「司波深雪には、強力な永続効果がある。まず、『クシャトリラ』モンスターは、本来は自分フィールドにモンスターがいない場合に手札から特殊召喚ですが……自分フィールドにモンスターがいても、手札から特殊召喚が可能となる!」
「!」
「手札からユニコーンを1体。オーガを3体。特殊召喚!」
クシャトリラ・ユニコーン ATK2500 ☆7
クシャトリラ・オーガ ATK2800 ☆7
クシャトリラ・オーガ ATK2800 ☆7
クシャトリラ・オーガ ATK2800 ☆7
「ユニコーンの効果で、デッキから魔法カード『クシャトリラ・ユニバース』を手札に、オーガの効果で、罠カード『クシャトリラ・バッドエンド』を手札に加える。私はオーガ2体でオーバーレイ! 現れろ。『クシャトリラ・シャングリラ』!」
クシャトリラ・シャングリラ DEF3000 ★7
エクストラモンスターゾーンに出現。
「さあ、ここからがこのデッキの本領発揮。クシャトリラユニット・司波深雪の効果により、私のフィールドに存在する全ての『クシャトリラ』モンスターは全て、『1ターンに1度、相手のデッキトップ1枚を裏側で除外する』効果を得る!」
「……」
「さあ起動しなさい。そして私のモンスターに力を与えるのです!」
深雪の穴に根元まで入った30センチの棒が、ギュルルルルルルルルッ! と高速で回転する。
「があああああああああっ! ああああああ~~~っ!」
ボールギャグをかまされた口から絶叫が出て、マシンのランプが光ると、モンスターたちに光線が伸びてオーラを身にまとい始めた。
「オーガの効果。さあ、デッキトップを裏側で除外!」
1枚除外。
「そしてシャングリラの効果が起動。モンスターゾーンを1か所封じる。そしてシャングリラの効果が発動したことで、私はオーガでオーバーレイ! 現れなさい。ランク7『クシャトリラ・アライズハート』!」
クシャトリラ・アライズハート ATK3000 ★7
「アライズハートの付与された効果で1枚除外! シャングリラの効果によりモンスターゾーンを1つ封鎖し、アライズハートの効果で除外したカードを素材にします」
除外したカード……ブリキンギョが素材に。
「そして、シャングリラとユニコーンにも、それぞれ効果が付与されている。2枚を除外! そしてモンスターゾーンを2つ封じる。まだまだ! 私は手札から『クシャトリラ・ユニバース』を発動。エクシーズ素材の『クシャトリラ』を任意の枚数手札に。私はシャングリラのオーガ2体と、アライズハートのオーガ1体を手札に加える。除外されたユニバースはアライズハートの素材になります」
「……」
「そして司波深雪の永続効果により、回収したオーガ3体を特殊召喚!」
クシャトリラ・オーガ ATK2800 ☆7
クシャトリラ・オーガ ATK2800 ☆7
クシャトリラ・オーガ ATK2800 ☆7
「オーガたちの効果発動。さあ、さらに力を与えるのです」
ギュルルルルルルルルルイイイイイイイイッ!
「ぎゃあああああああっ! はっ、がぐっ! うあああああっ!」
「あなたのデッキトップは3枚除外、それらは全てアライズハートの素材になる。そしてモンスターゾーン2か所と魔法罠ゾーンを1か所封じる!」
「……」
「そして私は、ユニコーン1体とオーガ3体でオーバーレイ! 現れなさい。ランク7、『クシャトリラ・ディストピア』!」
クシャトリラ・ディストピア ATK4000 ★7
出現したのは、ボロボロになったシャングリラだ。
「シャングリラの効果発動。このカードの素材になっているカードを全て手札に戻し、戻した枚数1枚につき、自分フィールドの『クシャトリラユニット』カードに『解放カウンター』を1つ置く」
クシャトリラユニット・司波深雪 解放カウンター 0→4
「そして、司波深雪は3つ以上の解放カウンターが置かれている場合、相手のデッキトップ除外の付与効果を、相手の手札にまで広げることができる!」
深雪の傍にクリップが出現し、両乳首とクリトリスを挟み込む。
バヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂッ!
「――――~~~っ!!!」
「フフフッ、そして再び現れろ、オーガ3体!」
クシャトリラ・オーガ ATK2800 ☆7
クシャトリラ・オーガ ATK2800 ☆7
クシャトリラ・オーガ ATK2800 ☆7
「ディストピアとオーガ3体の付与された効果で、手札を4枚裏側で除外! そのすべてをアライズハートの素材とし、魔法罠ゾーンを4か所封じる! さらに、オーガ3体でオーバーレイ! エクシーズ召喚、『クシャトリラ・ティル・ナ・ノーグ』!」
クシャトリラ・ティル・ナ・ノーグ ATK3500 ★7
「まずは付与された効果を使い、残った手札は除外。そしてそれはアライズハートの素材とする」
もうすでに、封じる箇所は残っていない。
「そしてティル・ナ・ノーグの永続効果により、自分フィールドのモンスターは全て相手のカードの効果を受けず、リリースできない」
……そう宣言し、宝吾は張り付けたような笑みを、うっとりとした、恍惚としたものに変えた。
「私はカードを1枚セット、ターンエンド」
「俺のターン。ドロー」
「ドローフェイズ中、罠カード、『クシャトリラ・バッドエンド』を発動。自分フィールドにクシャトリラエクシーズモンスターが3体以上いる場合に発動できるカードです。相手の手札1枚と除外されているカード1枚をクシャトリラモンスターの素材にできる。これに対してチェーンは不可。アライズハートの素材にしましょう」
……これで、手札がなくなった。
「さあ、これであなたは全てのモンスターゾーンと魔法罠ゾーンが使えません。そして私のモンスターは、あなたのカードの効果を受けずリリースもできない。どうです? これがデュエルであり、芸術というもの」
恍惚とした笑みのままで説明をする宝吾。
今も、司波深雪は30センチの棒が根元まで刺さって高速回転し、乳首とクリには電流が流れている。
ただ、もう、叫び声をあげる元気はないらしい。
「これがプラチナランク。あなたの手札は0で、フィールドは使えず、私のモンスターは無敵。どうです? やるだけ無駄なデュエルという物。さて、シャングリラの効果を使いましょうか。実はまだ、デッキにはいいクシャトリラモンスターがいましてね」
「……」
「絶望で声も出ませんか。フフッ、スタンバイフェイズに入ります。私はクシャトリラ・シャングリラの効果発動。デッキからクシャトリラモンスターを――」
「しー……」
械遊は右手の人差し指を口に当てて、静かに息を吐いた。
「……い、一体何を?」
「聞こえないか?」
「何を言うかと思えば、ええ、聞こえますよ。あなたが内心で隠している、絶望と後悔の叫びがね」
「スタンバイフェイズ。入ったんだな?」
「ええ」
「じゃあ、アライズハートの素材になってる俺のモンスターカード、『カクニン・シトケヤー』の効果で、コイツをエクシーズ素材にしているモンスターが表側表示で存在する場合、お互いのスタンバイフェイズ開始時に強制効果、チェーン不可の『自分フィールドのカード全デッキバウンス』が発動するけど、いいね?」
首をこてんっ、と傾げて、楽しそうに微笑む械遊。
空気が凍った。
時間が止まった。
すべてが止まったかのような気さえする。
しかし、時は止まらない。
「なっ、なんだと!? ば、馬鹿な……」
「アンタは部下に命じて集めたカードを使って、俺をいたぶるデッキを構築したのかもしれない。だけど……俺のカードに手を出し過ぎだ。知ってるよな? 欲望が強ければ、新しいカードを生み出せることを」
「で、では、まさか……」
「そのまさか、『素材』『未確認』『後悔』……その三つを望んだ」
「は、反則だ! 反則だあああああああああああああああああああっ!」
慟哭を無視し、械遊は微笑む。
「これがアリの巣だ。バイバイ。クシャトリラ達」
械遊が指をパチンと鳴らすと、フィールドにいるモンスターと司波深雪が、消滅していく。
「くそがあああああああああああああああっ!」
「さて、アライズハートの素材になっていたカードは全て、墓地に返してもらった」
「だ、だが、ここで何もできなければ、そうだ。このままターンを終了するのです! そうすれば私のターンで、貴方に勝つことが……」
「何を言ってるんだ? お前は知っているはずだぞ。本来なら」
「はっ?」
「俺は墓地から、ブリキンギョ、ゴールド・ガジェット、グリーン・ガジェット……レベル合計が12以上になるように、機械族を除外。『マシンナーズ・ルインフォース』を特殊召喚!」
マシンナーズ・ルインフォース ATK4600 ☆10
「こ、攻撃力4600だと!?」
「バトルフェイズ。ルインフォースでダイレクトアタック!」
ルインフォースが意気揚々と突撃し、宝吾をぶっ飛ばした。
「ぐあああああああああああああああああっ!」
宝吾 LP4000→0
デュエル終了。
同時に、宝吾のデッキに入っていた『司波深雪』のコアカードが械遊のところに移動してきた。
それを掴んで、デュエルディスクに入れる。
「それじゃ、俺はこれで帰らせてもらうよ。これからアンタがどんな目にあうかは知らないが……ま、頑張って」
あまりにも惨めで滑稽。
誰も忘れられないようなあきれ果てたデュエル。
械遊は笑いをこらえながら、愛智を連れて帰っていった。