アリの巣に入ることになったオーナーは、学校に行く必要はない。
そもそも学校に行く理由とは、もっとも大きな部分は『たくさんの子供がクラスで集まり、いろんな環境で育ってきた子供がいることを子供に自覚させること』だろう。
アナログで教えられる授業の量や質には限界があるが、だからと言って技術が発達してもそれらを使うことはない。
ただし、そもそも目の前のことしか判別できない子供という存在にものを教えるのなら、もっとも重要なのは国語でも数学でもなく『ほかの人間』だ。
そもそも、『選挙』が元になる政治システムは、国民が同族意識を持たないと実質的に破綻するのだから、国民としての教育が必要なのは明白だろう。
しかし、学校側……というより、学校側の方針を決める政府の官僚たちがそれを理解しているとは言い難い。
他にもいろんな人間がいることを子供たちに自覚させる『クラス』という形態の意味が失われた学校というものは、どれほどいい場所に進学するかということしか考えられていない。
その上で。
アリの巣に入るオーナーは、一人一人が高級なホテルを一つ持っている。
そしてそれを支える従業員がいる。
一週間に一度、コアカードを掛けたランダムマッチのデュエルに挑む必要はあるが、負けてコアカードをすべて失ったとしても、担当社員が何とかして調達する。
いい給料をもらって『良い暮らし』のための勉強というのは、必要ない。
「……」
だからこそ、と言えばいいだろうか。
チョークで黒板に文字を書いて、今も未来も、使いもしないし役にも立たないことを解説する『授業』というシステムが持つアナログ性は、『日常』を感じるにはふさわしい。
械遊はアリの巣において、確かな財産を持つオーナーだが、高校に通っている。
言い換えれば、械遊は今も、『日常』を捨てようとは考えていない。
★
「なあ械遊君」
「ん?」
「ほんっとうに、交渉をする気はないんだなぁ」
「する必要あるか?」
「いや、まあ、ないけどさ」
アリの巣のショッピングモール。
フードコートの端の席で自前のパンやおにぎりを広げ、食べながらタブレットを見ている械遊は、近くでコーヒーを買った紅嵐と話していた。
フードコートの『端の席』なので大通りに面しているのだが、そのあたりは死屍累々と言ったところ。
械遊に負けて交渉破談になったオーナーたちが、敗北時の衝撃で気絶している。
ちなみに、今利用している場所がショッピングモールの中でも端の方に位置しているため、客が少なく、利用者もほぼいない。
「……で、コアカードは増えたん?」
「6枚増えて合計51枚になった」
「うわすごっ……」
タブレットを見ながら言う械遊に驚く紅嵐。
……なお、情報収集だろうか。聞き耳を立てている人たちも驚愕している。
「プラチナランクにあげて、フレアタウンに拠点を置かないかって話だが……別に、毟り取る気満々なのは構わないよ。そもそも奪い合いが是なんだからな。ただ、無条件に俺が従うって思ってんのがなぁ……」
「まあ、いうことを聞かなかったらどうなるのかって脅してくる奴もいるけど、実際、正面から倒すしかねえしなぁ」
アリの巣の上位層が持つ権力はすさまじく、それは表社会では考えられないほどの欲望を満たせるものだが、だからと言って表社会に対して影響力があるわけではない。
オーナーがCCの社員にどれほど拷問しようと、CCからお咎めはない。
しかし、それ以外。
表社会の人間に手を出した場合、CCが黙っていない。
それは個人にしても組織にしても同様。
社員以外の女に手を出すことも、表社会の会社に圧力をかけるのもタブーだ。
ゆえにアリの巣の財産に対して手を加えるという方針になるが、械遊はプロパティ・プリズン以外の組織的な資産を持っておらず、従業員に対しては、権力も暴力も通用しない。
なんせ、白服である雅が『驚愕するほど』の特異体質を械遊は持っているため、前例がないか、あっても非常に少ないのは明白。
雅の話から、械遊の体質の調査に関しては、CCの『会長』が口を出すレベルとなっていることもあり、その械遊の体質の計測アプリを入れる対価として要求した関係従業員の『拒否権』は圧倒的である。
暴力に対しては、械遊が防犯グッズを与えている。
プロパティ・プリズンという私有地にも特権がありすぎて、狙えるとしても割に合わない。
となれば械遊を狙うしかないが、権力も暴力も通じないのは同じであり、デュエルで勝つしかないが、そのデュエルの腕も相当なもの。
要するに、倒せば旨味はあるが、その倒すためのコストがいずれも高額になり、しかも倒すための難易度も高いという……。
権力者の視点で、『すごくウザイ』のは明白だろう。
「……ん?」
「どうした?」
タブレットから顔を上げた械遊。
紅嵐は真剣な顔つきになって反応した。
なんせ、紅嵐は械遊の『直感』が優れていると判断している。
しかも、それは経験に裏付けられた『勘』ではなく、理屈も論理もなく、ただ正解にたどり着く『第六感』とでも呼ぶべきもの。
そんな男の『ふと顔を上げる』という行為に、意識しないわけがない。
「……少し、移動するか」
「どこに?」
「ここから近いサービスエリアだな」
「ほう……わかった。じゃあ、俺のトラックでも呼ぼうか」
「ん?」
「白服が持ってるデカいトラック知らねえか? プラチナランクになると、ああいうのも手に入れられるんだよ」
「……そうか」
フードコートで広げていたものを片付けて、械遊と紅嵐は席から立ち上がる。
「……そういや、近くの女子トイレで、双頭バイブでいちゃつかせてる二人はどうする?」
「愛智と理世か。まああのままでいいだろ」
「あっそ。ま、械遊君がそういうならそれでいいさ」
★
「うぶっ、んんっ!」
「んー。愛智さんの唇。とてもおいしいですね」
その近くの女子トイレにて。
愛智と理世がいちゃついていた。
お互いに、スカートも下着もはぎとって、スーツの上着とシャツのボタンは全て開けて、ブラのフロントホックを外し、密着用のVの形をした双頭バイブを突っ込んでいる。
ディルドは強く振動しており、二人の膣を刺激している。
茶髪のショートボブでアルカイックスマイルを浮かべる愛智と、長い黒髪をハーフアップにした無表情の理世。
属性が異なる二人がまぐわっている姿は、
「愛智さん。さっきからずっと受け身ですね。あっ、私をめちゃくちゃにしてもいいんですよ?」
「んっ、ははっ、最近開発されすぎて、すっかり受け身になっててねぇ」
「そうですか。私は紅嵐様のスレイブヒロインをいじめる役割もあり経験豊富ですから、そういうことなら満足させてあげます」
理世は双頭バイブについているつまみをひねると、振動がさらに強くなった。
ヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィイイイイイッ!
「あああああっ!」
「んんんんんっ!」
振動し、スイング機能で穴の中で蠢くバイブ。
そんな状態で、理世は愛智の唇に強くキスをして、ジュルっと吸っていく。
「んっ、あああっ」
「もっと、もっと感じてください、んっ」
理世は愛智を抱きしめて、愛智がうまくもがけないように動きを封じる。
そのままで、二人の穴をバイブが蹂躙し、理世はその中で『責め役』を演じる。
「ふふっ、気持ちいいですか?」
「き、きもちいい。い、いくっ」
「なら……」
さらにつまみを弄ると、バイブが回転し始めた。
ギュルルルルルルルルルルルルッ!
「ああああああいくうううううううっ!」
ガクガクと体を震わせる愛智。
だが、理世がしっかりと愛智を抱きしめて、彼女を快楽から逃がさない。
「や、やばい。い、イクの止まらない。だ、ダメ」
「そのダメは信用なりません。もっと感じてください。もっと気持ちよくなってください」
愛智の足の間に自分の足を言えて、うまく足を開いていく。
「あ、足が、あっ、あっ! と、閉じさせて、ああああっ!」
「何度でもイってください。イってください。イってください」
「あっ、い、いぐっ、あああっ!」
また体がビクビクと震える愛智。
だが、理世は一切緩めず、愛智を責めていく。
……女子トイレは、しばらく嬌声が響き渡り続いていた。
★
「……情報屋の拠点って、もっとごちゃっとしてると思ったけど、そうでもないんだな。パソコンが一台と、プリンターと、多めのインクとコピー用紙か」
「そりゃ俺もホテルの方はごちゃっとしてるけど、誰かが乗る可能性があるトラックの方はそこまでじゃないさ」
紅嵐が所有するトラックのコンテナに乗り込んだ二人。
どうやら大型コンテナの前の方を主に使っているようで、そこには応接室と言って過言ではない構造になっている。
トラックが走り出し、窓の外の景色が変わり始めた。
「……それにしても、パソコン一台で足りるのか? 記憶容量」
「コイツに搭載されてるハードディスクの容量は8ゼタバイト……まあ、一人の人間が使うのに、一生分は困らんよ」
「そうか」
「プラチナランクになると、表社会の技術力だと意味不明な領域のものも手に入る」
「そうか」
プラチナランクになるというだけで得られる様々な特権。
情報収集家としての紅嵐も、それを利用しているということだろう。
「んで、サービスエリアでどうするんだ?」
「距離というか空間というか、そういうのを間に置きたいっていうか……サービスエリアって、ショッピングモールから少し離れた位置でいろいろ揃ってるだろ?」
「そーだな。ま、必要最低限って感じはするけどよ……」
理由を説明する械遊だが、別に具体性はない。
とはいえ、経験を軸としない第六感に近い物なので、そもそも理屈ではない。
そのため、このようなよくわからないことになっている。
「まっ、あの場にいても、雑魚が寄ってくるだけか……!」
次の瞬間、コンテナの中にブザーが鳴り響いた。
「なんだ!?」
『紅嵐様。このトラックが『ハント対象』になっています』
「なにぃ!?」
「なんだそれは」
「プラチナランクがいる乗り物を対象に使える特殊ツールみたいなもんだ。窓の外見てみ」
械遊が窓の外を見ると、別のトラックが彼が乗っているトラックに接近しており、どこからか光の帯が出て連結している。
「……アレに狙われてるってことか」
「そういうことだ。とりあえずこっち来い!」
紅嵐は械遊の腕を掴むと、コンテナの後ろ側に通じる扉を開けて、中に連れ込んだ。
……数秒後。
コンテナの後ろ側の扉が開いて、二台のDホイールが飛び出す。
どちらも基本は黒い塗装だが、紅嵐が乗っているものには白いラインが、械遊が乗っているものには赤いラインが入っている。
次の瞬間、ハイヤーではなく、Dホイールに光の帯がつながった。
「……おい、どうなってるんだ?」
「まあ要するに、お相手さんは、俺たちにデュエルを挑もうとしてるってわけさ」
トラックには、ほとんど物がないコンテナが乗っている。
本来コンテナは鉄の壁だが、頑丈なガラスで作られているようで、中で縦に二段になったステージのようだ。
そのコンテナから延びる光の帯が、械遊と紅嵐が乗るDホイールに繋がっている。
「アイツらを倒せばこれは解除されるのか?」
「そういうこった」
械遊の問いに紅嵐は頷く。
その時、コンテナのステージに立つ二人が叫んだ。
「六車械遊と星場紅嵐だな。このリクエストディスクで貴様らから根こそぎ奪ってやる!」
「獄夜叉に楯突いたことを後悔させてやるぜ!」
モヒカンで世紀末のようなジャケットを着た男たちがデュエルディスクを構えている。
「リクエスト……要求?」
「コアカードのアンティとは違う、勝った相手に特定の行動を強制できるディスクだ」
「その通り! 星場紅嵐。貴様には、持っている全ての『アクアタウン』の情報を出してもらおうか!」
「六車械遊。お前には、プロパティ・プリズンの権利を返してもらうぜ!」
各々が要求を告げる。
「……そんなことができるってのも妙な環境だ。ただ、あのディスク。量産はできないらしい」
「めちゃくちゃコストがかかるんだよなぁ。しかも、リクエストが不可になるギリギリのラインを見極めないと、そもそも設定できないっていう仕様だ。あと、負けた場合、そのディスクではもう二度とリクエストができなくなる」
「なるほど、要するに、それだけ重要なデュエルってわけか」
「しかし、なんで俺にアクアタウンの情報を要求するのやら……」
「……その六人のブラックランクって、仲が良いのか?」
「良いのか悪いのかも知らん」
「そうか」
躊躇なく知らないと言い切る。
要するに、本当に、ブラックランクの情報はわからないということだろう。
「何をゴチャゴチャ言っている。デュエルを始めるぞ!」
「さっさと構えるんだな!」
二人が元気そうにカードを5枚ドロー。
「……はぁ、わけわからんが、とりあえずやってやるか」
「そうだな」
械遊と紅嵐もカードを5枚ドロー。
「「「「デュエル!」」」」
械遊 LP4000
紅嵐 LP4000
上杉 LP4000
下崎 LP4000
「俺の先攻!」
上杉のディスクにターンランプがついた。
「まずはエクストラデッキの『ホワイト・ワールド・ルーラー』を墓地に送り、俺のカードをお前たちの無効効果から守る! そして手札から、『百獣のパラディオン』を通常召喚!」
百獣のパラディオン ATK1200 ☆3
「【パラディオン】か……」
「一体でリンク召喚! 現れろリンク1『マギアス・パラディオン』!」
マギアス・パラディオン ATK100 LINK1
「さらに手札から魔法カード、『パラディオン・コール』を発動。自分フィールドにパラディオンリンクモンスターが存在する場合、デッキからパラディオンモンスターを3体。特殊召喚だ!」
「多すぎだろ!」
「俺はデッキから、魔境と天穹……そして、『パラディオンスレイブ・錦木千束』を特殊召喚だ!」
魔境のパラディオン ATK 400 ☆3
天穹のパラディオン ATK1600 ☆4
パラディオンスレイブ・錦木千束 ATK1000 ☆4
パラディオンたちを共に出現したのは、裸に剥かれた錦木千束。
鉄の十字架に磔にされており、口はテープを張られて声はよく聞こえない。
「そしてさらにリンク召喚だ! 俺はマギアスと魔境、天宮の3体をリンクマーカーにセット。リンク召喚! LINK3『アークロード・パラディオン』!」
アークロード・パラディオン ATK2000→3000 LINK3
出現するアークロード・パラディオン。
リンク先に千束がいることで、攻撃力が1000ポイント上がっている。
「そして、錦木千束の効果発動! 1ターンに1度、自分の墓地からパラディオンモンスターを全て除外し、そのモンスター1体につき、『人柱カウンター』を一つ置く!」
パラディオンスレイブ・錦木千束 人柱カウンター 0→4
4枚のパラディオンを除外し、カウンターは4つ。
次の瞬間、十字架の下から細い触手が何本も現れて、千束の体に絡みついていく。
「ふぐっ、ぐっ、ううううっ!」
足からはい回り、股間も、腰も、胸も、腕も、顔も、全てに触手がはい回っていく。
「ククク……そしてこの人柱カウンター1イコール1000を、もともとの攻撃力として扱う!」
パラディオンスレイブ・錦木千束 ATK1000→4000
アークロード・パラディオン ATK3000→6000
「まあもっとも、錦木千束はアークロード・パラディオンの効果で攻撃はできないがな。ククッ、俺はカードを2枚セット。これでターンエンドだ!」
「次は……俺か。俺のターン。ドロー!」
紅嵐がカードをドロー。
「まずは『ホワイト・ワールド・ルーラー』を使ってと……次に、エクストラデッキのシンクロモンスター。『チューン・オブ・ルーラー』を除外して、効果発動! デッキから、同じレベルのペンデュラムチューナー2枚で、ペンデュラムスケールをセッティングできる!」
「何!?」
「俺はデッキから、スケール0の『SH・食蜂操祈』と、スケール6の『SH・御坂美琴』で、ペンデュラムスケールをセッティング!」
食蜂操祈と御坂美琴がフィールドに出現し、それぞれ、0と6のシンボルが下に現れる。
「あれが紅嵐のスレイブヒロインか」
「ペンデュラム召喚! 手札から、『フィーア・シンクロン』と、『ジェット・シンクロン』を特殊召喚だ!」
フィーア・シンクロン ATK400 ☆4
ジェット・シンクロン ATK500 ☆1
「ハッ! 1から5でなんでも出せて、チューナーが2体だと?」
「フィーア・シンクロンは、シンクロ素材にする時、チューナー以外として扱える! 俺はレベル4のフィーア・シンクロンに、レベル1のジェット・シンクロンをチューニング。シンクロ召喚! レベル5『ジャンク・スピーダー』!」
ジャンク・スピーダー ATK1800 ☆5
エクストラモンスターゾーンに出現。
「なっ……」
「ジャンク・スピーダーの効果発動! 『シンクロン』チューナーを可能な限り特殊召喚できる!」
5枚のカードをデッキから抜き取る。
「出てこい。俺のチューナーたち!」
ジェット・シンクロン DEF 0 ☆1
アサルト・シンクロン DEF 0 ☆2
ジャンク・シンクロン DEF 500 ☆3
フィーア・シンクロン DEF 400 ☆4
ホイール・シンクロン DEF1000 ☆5
「チューナーモンスターが5体……」
「俺はレベル5のジャンク・スピーダーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング。シンクロ召喚! レベル8。『スターダスト・ドラゴン』!」
スターダスト・ドラゴン ATK2500 ☆8
「さらに、ホイール・シンクロンは、チューナー以外として扱える。レベル5のホイール・シンクロンに、レベル4のフィーア・シンクロン。レベル2のアサルト・シンクロン。レベル1のジェット・シンクロンを、トリプルチューニング!」
「やはりそれか!」
カードを掲げて宣言する紅嵐。
だが、械遊からは見えた。
食蜂操祈が肩にかけている鞄の中に手を入れて、ごそごそと何かをしているのを。
「シンクロ召喚! 現れろ。レベル12!『スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン』!」
スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン ATK4000→7500 ☆12
フィールドに現れるスーパーノヴァ。
「どうだ! 攻撃力7500で、相手の効果では破壊されねえ! そして、相手モンスターの効果発動や攻撃宣言時、相手のフィールド全てを吹き飛ばせる!」
「フンッ! だが、俺たちが無策だと思うか!」
「思わねえな。俺は食蜂操祈のペンデュラム効果を発動! 1ターンに1度、デッキか墓地から『エネミー・コントローラー』を1枚手札に加えられる!」
「何!?」
「俺はカード名を『エネミー・コントローラー』として扱う『リモコン・シンクロン』をデッキから手札に加える。こいつは、相手ターンでも発動可能な、手札から捨ててエネミー・コントローラーの効果を再現するカードだ!」
「チッ……」
「手札1枚をコストに、墓地の『ジェット・シンクロン』を特殊召喚。そして手札の『リモコン・シンクロン』を捨てて、効果発動! さあ、どうする?」
「永続罠カード、『パラディオン・インフェクション』を発動! 自分フィールドに人柱カウンターが3つ以上乗ったパラディオンモンスターが存在する限り、自分フィールドのパラディオンカードは相手の効果を受けない!」
「なかなかキツイ……まあいいか。俺はジェット・シンクロンをリリースし、アークロード・パラディオンを奪う効果を選択。まあ意味はねえな」
ジェット・シンクロンが消えていく。
「何故ジェット・シンクロンをリリースした……」
「手札の『ブラック・シンクロン』の効果発動! シンクロン・チューナーが除外された場合、そのモンスターとこのモンスターを特殊召喚できる!」
「それが狙いか!」
「俺はジェット・シンクロンとブラック・シンクロンを特殊召喚!」
ジェット・シンクロン ATK500 ☆1
ブラック・シンクロン ATK200 ☆1
「そして、ブラック・シンクロンもまた、チューナー以外として扱える。俺はレベル1のブラック・シンクロンに、レベル1のジェット・シンクロンをチューニング! シンクロ召喚! レベル2、シンクロチューナー。『フォーミュラ・シンクロン』!」
フォーミュラ・シンクロン ATK200 ☆2
「効果で、1枚ドロー。そして……クリアマインド!」
鞄でごそごそする食蜂操祈をよそに、加速する紅嵐。
「レベル8。シンクロモンスター。スターダスト・ドラゴンに、レベル2、シンクロチューナー『フォーミュラ・シンクロン』をチューニング!」
速度をどんどん上げていく。
「アクセルシンクロオオオオオオオオ!」
そして、消えた。
スーパーノヴァと操祈と美琴は放置!
「「消えた!?」」
次の瞬間、新たなモンスターと共に出現。
「光来せよ。『シューティング・スター・ドラゴン』!」
シューティング・スター・ドラゴン ATK3300 ☆10
「なっ、こ、こんなことが起こるのか……」
「スーパーノヴァとシューティング・スターが1ターンで……」
「そして俺は、シューティング・スター・ドラゴンの効果発動! デッキトップを5枚確認し、チューナーの数攻撃できる!」
「なんだと!? 何のデッキ操作もせず……」
「五枚確認!」
レボリューション・シンクロン。
フィーア・シンクロン
アサルト・シンクロン
ロード・シンクロン
スチーム・シンクロン
「全部チューナー。よって、5回攻撃だ!」
「くそがあああっ!」
「バトルフェイズ! さあ行くぜスーパーノヴァ! あれからチューナーは大量に送られた。攻撃力は上がっている!」
スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン ATK9500
「き、9500だと!? チューナーが11体……てことは、ジェットシンクロンの蘇生コストもチューナーか。ここまでくれば間違いない」
「永続罠『パラディオン・フォーメーション』! このカードがある限り、パラディオンモンスターは戦闘では破壊されず、さらに相手は、リンクモンスターがいればリンクモンスターにしか攻撃できない!」
「チッ、ならダメージは受けてもらおうか! スーパーノヴァで攻撃!」
スーパーノヴァがアークロード・パラディオンに向かって突撃。
……次の瞬間、下崎がニヤッと笑った。
「手札から罠カード、『パラディオン・フロントライン』を発動。自分フィールドに魔法、罠がなければ、手札から発動できる! 手札から、パラディオンモンスターを2体、特殊召喚だ! 俺は『パラディオン・グレイス』と『パラディオン・井ノ上たきな』を特殊召喚」
パラディオン・グレイス ATK3000 ☆8
パラディオン・井ノ上たきな ATK1000 ☆4
出現したのは、全身鎧の戦士と、千束と同じく十字架に拘束された、井ノ上たきな。
「パラディオン・グレイスの効果発動。自分フィールドのパラディオンスレイブモンスターに、人柱カウンターを3つ置く!」
パラディオンスレイブ・井ノ上たきな 人柱カウンター 0→3
そしてたきなの下からも触手があふれてきて、彼女に絡みついていく。
「ひっ、いっ、うううっ」
「たきなもまた、カウンター1つにつき1000ポイントが、もともとの攻撃力になる! そして、アークロード・パラディオンのリンク先には、モンスターが3体」
パラディオンスレイブ・井ノ上たきな ATK1000→ 3000
アークロード・パラディオン ATK6000→12000
「どうだ! この攻撃力! スーパーノヴァでも超えられまい!」
高々に宣言する下崎。
「……はっ?」
紅嵐は理解できないと言いたそうに、ディスクを見る。
「な、なんじゃこりゃ!? なんでフィールドが二段構造になってんだ!?」
紅嵐は驚愕する。
今、四人が戦っているフィールドは、『二段構造』になっている。
上の面を紅嵐と上杉。
下の面を械遊と下崎。
その配置で、上と下に分かれているのだ。
エクストラモンスターゾーンは『柱』となっているので上にも下にも影響しており、現在、アークロード・パラディオンの『リンク先』は、上杉と下崎の、真ん中と右端、そして紅嵐と械遊の、アークロード・パラディオンの正面となっている。
「な、なんだこりゃ」
「ライフが四人分あるから、フィールド共有ではないと思っていたが、こんなことになってるとは……」
「チッ、さすがに12000はこの手札じゃ――」
「紅嵐。上杉では耐えきれない盤面を下崎が補ったように、お前ができない分は俺が補うさ」
「んっ?」
「要するに……」
械遊はいい笑みを浮かべながら、紅嵐の方を見る。
「俺の直感に付き合う気はあるか?」
その問いに、紅嵐はニヤッと微笑んだ。
「やってやる。全力で頼む!」
「よし、俺は手札から罠カード『グレイブヤード・エクシーズ』を発動! 自分フィールドのモンスターがいない場合、手札から発動可能。お互いの墓地から同レベルモンスターを2体を特殊召喚し、そのモンスターでエクシーズ召喚を行う。俺は紅嵐の墓地から、フィーア・シンクロンを2体。特殊召喚!」
フィーア・シンクロン ATK400 ☆4
フィーア・シンクロン ATK400 ☆4
「レベル4のフィーア・シンクロン2体で、オーバーレイ! 現れろランク4『SH・白井黒子』!」
SH・白井黒子 ATK2200 ★4
「お姉様~~~っ!」
フィールドに出現した黒子だが、すぐに御坂に飛びついた。
「ちょ、黒子。今デュエル中! ちょっと離れなさい!」
「嫌ですわ! オーナーと紅嵐が何かを奪い合う可能性が低い現状、黒子がお姉様と触れ合えるのは今だけですの!」
「後でどうにか頼みなさい! 私にどうにかできるか!」
じゃれあっている二人。
「……大変ねぇ」
操祈が頭に手を当てて呆れているが、別に悪いとは思っていない様子。
「白井黒子のエクシーズ召喚成功時、エクシーズ素材を2つ使って、効果発動! フィールドのモンスター2体を墓地に送り、その元々の持ち主は、墓地に送られたモンスター1体につき、墓地のモンスターを特殊召喚できる!」
「なるほど、それで俺のグレイスと井ノ上たきなを墓地に送るつもりか。だが、また戻ってくるだけだ! グレイスのカウンターを置く効果に、ターン1はないぞ!」
「俺は、紅嵐のスカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンと、シューティング・スター・ドラゴンを墓地に送る!」
「なんだと!」
「よっしゃ! 俺が蘇生するのは、スターダスト・ドラゴンと、フォーミュラ・シンクロンだ!」
スターダスト・ドラゴン ATK2500 ☆8
フォーミュラ・シンクロン ATK 200 ☆2
「さらに、自分フィールドの『スカーレッド』シンクロモンスターが墓地に送られることを条件に、手札の『バーニング・シンクロン』の効果発動! このモンスターを墓地に送り、エクストラデッキから『バーニング・リゾネーター』を名称指定し、特殊召喚できる!」
バーニング・リゾネーター ATK200 ☆2
「バーニング・リゾネーターの特殊召喚に成功したことで、効果発動! この場でシンクロ召喚だ!」
「なっ……」
「シンクロモンスターと、シンクロチューナーが2体……」
「まさか!」
「クリアマインド! 俺はレベル8。シンクロモンスター。スターダスト・ドラゴンに、レベル2シンクロチューナー。フォーミュラ・シンクロンとバーニング・リゾネーターを、ダブルチューニング!」
食蜂操祈がリモコンを操作し、御坂美琴が自身の電撃でDホイールを強化していく。
「アクセルシンクロオオオオオオオオッ!」
再び、素材たちと共に姿を消す。
「創来せよ! 『スカーレッド・スター・ドラゴン』!」
スカーレッド・スター・ドラゴン ATK3500 ☆12
出現したのは、シューティング・スター・ドラゴンに、スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンの特徴が追加されたドラゴン。
「す、スカーレッド・スター・ドラゴンだと」
「こんなモンスター。見たことがない!」
「そりゃそうさ。これが今の俺の最強モンスターだ! 見せるのは初だからな! シンクロ召喚に成功した場合、効果発動! デッキをシャッフルし、上から5枚めくって、チューナーの数1体につき1回攻撃できる! まっ、全部チューナーだ!」
スカーレッド・スター・ドラゴンが雄たけびを上げる。
「この効果で見せたカードが全てチューナーモンスターだった場合、追加効果が発動! スカーレッド・スター・ドラゴンは自分の墓地のチューナー1体につき、攻撃力が500ポイントアップするが、追加効果により、攻撃力は倍になる!」
「倍だと!?」
スカーレッド・スター・ドラゴン ATK3500→10000→20000
「攻撃力20000も五回攻撃だと!」
「そんな馬鹿ああああああああああああああああああああっ!」
紅嵐がニヤッと笑う。
「スカーレッド・スター・ドラゴンで、アークロード・パラディオンと、パラディオン・グレイスを攻撃! いけええええええええ!」
スカーレッド・スター・ドラゴンが燃え上がり、分裂し、突撃する。
そのまま、アークロード・パラディオンとパラディオン・グレイスを貫通し、爆散した。
上杉 LP4000→0
下崎 LP4000→0
デュエル終了と同時に、二人が使っているトラックが急激に減速する。
「ふう、あれでもう追ってこれないだろ」
「だな……とりあえず、近くのサービスエリアにとまるか」
「だな……っていうか械遊君。もしかして直感、あの二人に引っかかったんじゃね?」
「……可能性はあるな」
「そうかい……まっ、今回は俺のトラックだったから、アイツらもハントアンカーを使ってきたんだ。戦利品は貰ってくれ」
錦木千束と井ノ上たきなのカードが械遊のところに来た。
「……わかった。貰っておく」
デュエルディスクの格納部に入れて、械遊は満足そうな表情を浮かべた。