※この作品はR-18です。

遊戯王 奴隷ヒロイン争奪ゲーム   作:レルクス

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第14話 獄夜叉本部にて

 超規模私有地の一つ、『フレアタウン』

 

 その中に存在する『獄夜叉本部』

 

 200階建ての超高層ビルの中で、50階に位置する『モール管轄部フロア』にて。

 

 主にゴールド以下と、超規模私有地を持たないプラチナランクの下位。まとめて言えば『主な活動範囲がショッピングモールのオーナーたち』に対応するための業務を行うものが多くいるフロアだ。

 

 そもそもショッピングモールを主な活動場所にするオーナーは多く、中には掘り出し物も多い。

 

 ショッピングモールはCCが経営するものも多い上に、それぞれのサービスエリアから入ってきたオーナーにとって有益なモノが入り混じるため、監視したり干渉したりするのは重要である。

 

「ほう、あのデッキと戦術とはいえ、お前たちを後攻ワンターンキルか」

 

 そんなフロアの中でも一際豪華な部屋で、黒髪をオールバックにした四十代の男が、ノートパソコンのディスプレイを見ながら報告を聞き、声を漏らした。

 

 部屋の特徴を簡潔に言えば、革製というものが持ちうる素材を活かした社長室といったもの。

 

 全体的に高級感あふれる構成で、そんな中で大きな机にノートパソコン一台とコーヒーというシンプルな雰囲気におさまっているが……そこに座る男からは、明確な意味で『風格』が感じられる。

 

 名前は綴(つづり)昭道(あきみち)。

 獄夜叉・モール管轄部長を務める男で、『最高幹部』の内の一人。

 

「はい。攻撃力12000を軽々と突破するそのタクティクスには目を見張るものがあります」

「六車械遊の気転。そしてそれに合わせて出てきた星場紅嵐の切札。底を測りかねたというのが正直なところです」

 

 ぴっちりとしたスーツ姿と爽やかな髪形で報告しているのは、上杉と下崎だ。

 

 械遊たちとデュエルしたときがモヒカンにノースリーブジャケットと、世紀末感あふれるものになっていたが、今の彼らを見て、同一人物と思う者がどれほどいるだろうか。

 

「六車械遊。コイツが現れてから、獄夜叉の財産が失われつつある。特にホワイト・シティだ」

「ホワイト・シティは主に獄夜叉が資金提供していました。特に白石朋夏の拷問センスは高く、父親がシルバーランク故にフレアタウンに置けない反面、他の超規模私有地にも顧客がいたほど」

「その拷問ショーが行われず、そして拷問用の美少女を入れていたことで、ある程度六車械遊にヘイトはたまっていますが、『今』はその余裕はありません」

「そう、その拷問ショーの質の高さと、それから生まれた拷問ブーム。それを許さないブラックランク唯一の『良識派』と言われる『アクアタウン』と小競り合いが多くなった」

 

 昭道はノートパソコンから視線を外し、目を閉じる。

 

「星場紅嵐に接触し、アクアタウンの情報を得ることは今後の立ち回りに大きく影響するが……六車械遊の傍をウロチョロすると考えれば、これからはそれも難しい」

 

 誰と組むべきか。

 そして、誰を裏切らないでおくべきか。

 

 それを間違えると、すぐに破滅を招く。

 

「ただ、ブラックランクが動くとロクなことにならん。その下の連中で代表戦をする可能性があり、フレアタウン七大ギルドの一角である獄夜叉は選ばれる可能性がある」

「そのために多くのリソースを抱えておく必要がありますが……あの荻野宝吾の失態が大きすぎて、挽回できません」

「そうだな」

「ホワイト・シティを根こそぎ奪う選択をすると考えると、フレアタウンと付き合う気になるとは思えません。ただ、アクアタウンに入るでしょうか。六車械遊は」

 

 昭道は目を閉じていたが、少し開き……。

 

「ないだろうな。お前たちのデュエルを確認した限り、六車械遊は、どうやら直感……いや、第六感と呼ぶようなものだが、それが優れている。直ぐに、『嗅ぎつける』だろう」

「……腐臭が漂っている。の方が正しいと思いますが」

「私もそう思うが、結論は変わらん。しかし……これからの立ち回りをどうするかだな」

 

 いくつかパソコンで操作をして、ディスプレイを呼び出し……。

 

「立ち回り以前の問題かと」

「ほう?」

「今回、六車械遊と星場紅嵐が組む……いや、近しい関係になることと、二人にタッグデュエルの経験がないことはわかっており、そこから情報と私有地を得るために、『第三戦略室』が俺たちにあのデッキとディスクと渡してきました。ただ、愚の骨頂です」

「アイツらは『多層像砦(たそうぞうさい)戦術』と呼んで喜んでいましたが、俺たちはプロデュエリストでもデュエル芸人でもない。『オーナー』です」

「面白そうだとか、芸術的だとか、そんなのは、精錬されたデッキを構築してからの話です」

 

 実際にデュエルした上杉と下崎だが、使っていたリクエストディスクも、デッキも、本来の彼らのものではない。

 

 そして、そのディスクとデッキを用意したのは、『第三戦略室』なる組織である。

 

 六車械遊と星場紅嵐を同時に相手にして、タッグデュエルという本来のデュエルとは毛色のことなるデュエルを仕掛けつつ、優位な戦術で勝利するという『皮算用』があった。

 

 確かに、アークロード・パラディオンはリンク先のモンスターの元々の攻撃力をプラスするという、強烈な攻撃力上昇効果がある。

 ならば、これを活かすために、『二段にして、リンク先そのものを増やせばいい』というアイデアをディスクに搭載した。

 

 しかも、デュエルフィールドを理解した瞬間の星場紅嵐が『理解不明』といった表情だったことを考えると、前例がない構成になっていると考えられる。

 

 ただ、それが悪いと言っているのではない。

 

 彼らも『フィールドとは二次元だけではない』という発想そのものは評価する。

 

 しかし、獄夜叉はエンターテインメントのデュエル事務所ではない。

 

 コアカードを奪い合うオーナーたちが集まる『ギルド』なのだ。

 

 そんな場所で、精錬されたものを持ってこない連中が幅を利かせているというのが、上杉と下崎は納得できないのである。

 

「まあ、相当な自信があったのは間違いないだろうな」

「その通りですよ。俺たちが使ったディスク。設定されたレシピのカード以外を受け付けないプロテクトがかかっていました」

「このプロテクトがかかっていると、俺たちがどれほど欲望を掻き立てても、創造されたカードは格納部に入って、俺たちは使えない……やりすぎです」

「……はぁ」

 

 あんまりといえばあんまりな状況。

 

 昭道は溜息をついた。

 

「デュエルするまでの筋書きも、デッキもディスクも第三戦略室のものを忠実に使いました。最高幹部たちの会議でも、その事実は通るはず。そしてそのクオリティは低い……いったい誰です? 今回の戦略を立てたのは」

「……荻野宝吾だ」

「「え?」」

「ホワイト・シティを奪われ、冥界ステージで敗北してチャンスを失った。あの荻野宝吾だ」

「どうして、まだアイツがこのギルドに残れるんですか? アレほどの失態ですよ?」

「おそらく、奴の父親、荻野天山(おぎのてんざん)が、うちのギルマスに何かしたのだろう」

「荻野天山……フレアタウン七大ギルド筆頭、『炭の世界』のナンバーツー」

「コアカード28枚。奴なら用意できるし、手放してもまだ余裕がある」

「それで埋め合わせがされたということですか」

「もちろん、荻野宝吾が何のお咎めもなしということはないだろうが。今回の暴走具合を見るに、そのお咎めも軽かったようだな」

 

 アリの巣に存在するパワーバランス。

 

 フレアタウンには、ブラックランクのギルドとは無関係に、『七大ギルド』と称されるギルドが存在する。

 獄夜叉が何位なのかはともかく、その『炭の世界』というギルドのナンバーツーを務める荻野天山にとって、此度の荻野宝吾の失態の埋め合わせがかゆくもないと言えるほどのレベル。

 

 その域に達した超人によって、今も荻野宝吾は調子に乗っているということだ。

 

「とはいえ、コアカードはどうにかなっても、現状、あの町……いや、監獄か。そこの従業員に関しては、奪おうと思えばリクエストディスクを使わないとできない。そこで、荻野宝吾がどうにか引っ張り出したと言ったところか」

「ただ……リクエストディスクの製造コストは圧倒的のはず。今頃、何か言われているのでは?」

「……可能性はあるな」

 

 次の瞬間。

 

「失礼。ここに私の戦略で負けた子たちがいると聞きましてね」

 

 貼り付けたような笑みを浮かべた荻野宝吾が現れた。

 

「……何の用かな?」

「綴部長。あなたの側近が私の戦略で負けたと聞いたのですよ。これはあなたの重大な責任問題だと思いませんか?」

「……特に何も」

「なんですと?」

「どんな作戦であろうと、負けるときは負ける。欲望という未知数が生み出すアリの巣のデュエルに絶対はない。その負けたときのことも考えておくのが『戦略』というもの。勝てるかどうかも分からない思いつきでコストを無駄にする。それは子供の遊びに他ならない」

「わ、私の戦略が、子供の遊びですと?」

「そうだ」

 

 昭道は表情を変えずに言う。

 

「言い分はただ一つ。そんな子供の遊びに付き合わされて、ただただ迷惑している」

「……調子に乗らないことです。私の父親が誰か知らないわけではないでしょう」

「虎の威を借る狐でいたいのならそれで結構……そういえば、虎を超えることも考えない。虎の尾を踏むことを恐れる程度の軟弱者が、最高幹部を狙っているなどという話を聞いたことがある。面白いと思わないかね?」

 

 まっすぐに宝吾を見ていう昭道。

 

 どこか、恐ろしい威圧を込めた眼で。

 

 ただ……残念なことに、本当にザンネンなことに、宝吾のレベルでは、その威圧を感じ取れるレベルにすら到達していなかった。

 

 それゆえに、恐れもなくかみつく。

 

「私が軟弱者だと?」

「ほう、では、虎を超えることも考えない。虎の尾を踏むことを恐れる程度の男だと認めるのか。殊勝なことだ」

 

 宝吾の額に青筋が浮かんだ。

 

「私とデュエルをしなさい! 私のタクティクスは正しいのです。それを証明して見せましょう」

「ギルドメンバー同士のデュエルでは、コアカードの奪い合いは発生せず、負けても失うものはない……内弁慶で弱い者いじめしかできない男に使う時間などないが、まあいい。ここで引導を渡してやろう」

 

 昭道は溜息をついた。

 

 ★

 

 どんな施設であろうと、隠れてデュエルするスペースは存在する。

 

 デュエルでコアカードを奪い合うオーナーたちが集うギルドとなればなおさらだ。

 

 獄夜叉の本部地下にある秘匿スペースにて、昭道と宝吾がデュエルディスクを構えている。

 

「さて、私の最高のデッキで相手してあげましょう」

「ほう、最高のデッキですか」

「そう、これこそが私の最高傑作。あなたが勝つことが可能なレベルを超えるデッキなのです」

 

 相当な自信でデッキの評価を語る宝吾。

 

「……親からもらったカードか。まあいい」

 

 昭道はデュエルディスクを構えて、デッキを装填。

 

 お互いにデッキがシャッフルされ、カードを5枚ドロー。

 

「「デュエル!」」

 

 昭道 LP4000

 宝吾 LP4000

 

「先攻は私ですね」

 

 宝吾は笑みを深めた。

 

 このデュエルはお互いにプラチナランクのため、先攻後攻はランダムにデュエルディスクが決定する。

 

 ただ、宝吾としては都合がよかったようだ。

 

「心してデュエルすることだ」

「?」

 

 宝吾が眉をひそめる中、昭道は自身のデュエルディスクを見せる。

 

「私が使っているディスクはリクエストディスクとハンターディスクの合体版でね。私が勝った場合、君に所有権があるコアカードはすべて私のものになる。そして君へのリクエストは、獄夜叉からの追放だ」

「なっ……」

 

 驚く宝吾。

 

「忘れていないか? 私は部長。最高幹部の一人だ。当然、こういったデュエルディスクも与えられている……ちなみに、コアカードの奪い合いが発生しなくなるのは通常のクリエイトディスクのみ。ハンターディスクは例外だ。君のコアカードは全て私のものになる」

「なっ……こ、このデュエルは無効だ!」

「何を言っている。最高傑作を持ってきたのだろう。なら試してみるといい。ただし試すのはデッキではなく……」

 

 昭道はディスクを操作する。

 

「君の欲望だ」

 

 宝吾 LP4000→0?

 

「はっ? ……えっ?」

「エクストラデッキの『デストーイ・ウラワザア・バーンベア』の効果。お互いのターン中、エクストラデッキのこのカードを除外することで、相手のライフを0にする」

「なっ!?」

「この効果はチェーンブロックを作らない。ただし、私はこのターン中、このカード以外の一切のカードを使えないし、私のカードが君のカードに影響を及ぼすことはない。このカードを使うデュエル中。私は戦闘でしか君にダメージを与えられず、私のカードによる特殊勝利は全て適用されない」

 

 昭道は淡々と事実を語る。

 

「要するに、このカードを超えられれば、君はシンプルな意味でデュエルを進められるということ。超えられない場合、そのまま君の負けだ」

「なっ……こ、こんなのは反則だ!」

「まだ、君のライフは0と確定していない。このカードの特殊仕様で、少しだけ相手に『猶予』が与えられる。欲望を掻き立て、獄夜叉の敷居をまたぐに値する『最低限の資質』を示すための、少しだけの時間が与えられるのだ」

 

 ……おそらく、問答無用に宝吾を倒すという意味では、もっと残酷な手段があるはず。

 

 昭道がそれを使用せずこのカードを使う理由は、端的に言って、それが彼の役割だからだ。

 

 存在するすべてのオーナーがプラチナランクというフレアタウンにおいて、獄夜叉は七大ギルドとしての立場がある。

 

 その敷居をまたぐだけの、理不尽に対抗できるだけの欲望を持っているか。

 

 それを測るためのカードなのだ。

 

「親からもらったカードの中で、これに対抗できるカードはないようだ」

「ま、待て! このデュエルは無効だと言ったはずだ!」

「さっさと欲望を掻き立てることだ。このままだと本当に負けるぞ?」

 

 地面がひび割れ、その中から、継ぎはぎだらけのおぞましい……どこか、デストーイだけでなくギミックパペットすらも感じさせるような、そんな熊の化け物が顔を見せる。

 

 見せるのは首から上だけ。まだ彼の召喚は確定していない。

 だが、首から上だけでも、圧倒的な恐怖感を煽るビジュアルだ。

 

「ひいっ!」

「君にできるのは、『自分のライフが変動する際』といったテキストのカードを使い、防御手段を『適用』させることだ。さあ、ヒントは十分だろう」

 

 ビキビキと、熊が姿をどんどん現していく。

 ケタケタと笑いながら、ボロボロの体を晒していく。

 

「ぐっ……こ、こんなことは認めない! 絶対に認めない!」

「アリの巣において、『負けることを誰かのせいにすること』は誰にもできない。目の前に訪れる敗北を何としてでも回避したい。その意思がないオーナーに、獄夜叉の敷居をまたぐ資格はない」

 

 昭道は『モール管轄部』の部長にして、獄夜叉の最高幹部の一人。

 

 本来ならショッピングモールの方で地を這うような男を入れないための、番人なのだ。

 

「わ、私の父が荻野天山であることはしっているはず。その上で私にこんな仕打ち。許されるはずがない!」

「せいぜいがシルバーランク程度の欲望で、そのコネがあるからプラチナになれたというだけだろう。ただ……荻野天山の懸賞金は10億スタビス。そんな怪物の息子である君が200万。わからないか? すでに舐められているのだと」

「なっ……」

「さて、もういいか」

 

 バーンベアも完全にその姿を現した。

 

「ま、待て! このデュエルは無効だ! わ、私から父に、貴様を優遇するように言っておく。だから……」

「残念ながら、私は虎を恐れないタイプでね」

 

 バーンベアの口から火炎放射が放たれて、宝吾を焼いた。

 

「うあああああああああっ!」

 

 宝吾 LP0?→0(確定しました(It's confirmed))

 

 デュエルが終了。

 宝吾のデュエルディスクから全てのコアカードが抜きとられ、昭道のところに移動した。

 

「……さて、これで君は獄夜叉から追放だ」

「ま、待て、わ、私は」

「リクエストディスクによるものだ。それは絶対。玩具も超えられないような男に、獄夜叉の戦略部は任せられん」

 

 そこまで言うと、白服が姿を現す。

 

 宝吾の担当社員だ。

 

 彼女は宝吾を無理やりに立たせると、彼を連れて出入り口に向かって歩いていく。

 

「は、放せ! 私はこのギルドの重鎮なのだ! 放せ!」

「リクエストデュエルによる要求は絶対です。宝吾様はこのギルド所有の物件にお住みで、このギルドにしか財産が有りません。獄夜叉本部は疎か、超規模私有地にいる資格もありませんよ? さっさと出ていきましょう。ご安心を。物件においてあるものは宝吾様のホテルの方に送っておきますので」

「わ、私はこんなところで終わる人間ではない! 私は荻野天山の息子だぞ! 放せ! そして私が絶対に勝てるデッキを構築しろ! おい! おいっ!」

 

 抵抗しているが、白服は問答無用で連れていく。

 

 ……黒や灰色のスーツを着た一般社員であれば、オーナーは一方的に命令できる。

 

 しかし、白服は別。

 

 その持ちうるスペックが圧倒的な反面、命令できることはすべて決まっている。

 

 禁止事項が決まっているのではない。命令できることが全て網羅されたマニュアルがあり、それの通りにしか動いてくれないのだ。

 

 大抵のことは聞いてくれるのは事実だが、白服がルール側としての力を行使する場合、担当社員として雇った者であっても、例外なく『ルールとしての力』を行使する。

 

「……はぁ」

 

 連れていかれた宝吾をみてため息をつく昭道。

 

 そのまま、彼は50階の仕事場に戻らず、さらに地下に行く。

 

 獄夜叉本部、地下四階。『トーチャー・ストリート』

 

 文字通りの意味だ。

 

「ぎやああああああああああああああああああっ!」

「いだいいだいいだいいだいいだいっ!」

「やべでええええええええええええええっ!」

「ぎゃっ! がっ! ごふっ! おごおおっ!」

 

 治療液が入った小さいボトルがついた首輪をつけた美少女たちが、ただただ苦痛にさらされている。

 

 社員も、スレイブヒロインも、同様に拷問されている。

 

 あるものは鉄の棒で殴られ、あるものは沼に沈められ、あるものは鞭で打たれ、あるものは熱湯でゆでられ、あるものは全身に電流を浴びる。

 

 そして、それを見る観客たちは熱狂し、札束……そう、口座がないゆえに全てが現金で取引されるスタビスの『札束』が舞っている。

 

「……アクアタウンに濁されたか。昔はこうではなかったのだがな」

「部長。やっぱりこっちに来てたんですね」

「やっぱり、胸糞悪いですよ。ここ」

 

 上杉と下崎が先に来ていたが、表情は優れない。

 

「……そうだな。出よう」

 

 二人を連れて拷問街を出る。

 

 そのままエレベーターに乗って仕事場に戻ってきた。

 

「アクアタウンとの小競り合い。もとはと言えば、アクアタウンの諜報部が拷問ブームを広め、そして沸き上がったブームに文句をつけたことで発生している」

「そうですね。アクアタウンは良識派なんて言われてますが、正義を語るだけの難癖集団です」

「しかも、正義を振るうためのタネは裏で自分がまく。ただ……三十年くらい前からでしたっけ。そういう暗躍が上手くなったと聞いてます」

「自分たちの領内であるアクアタウンには汚れたものを置かず、他に用意して騒ぐ。もっとも、オーナーは学の浅い人間も多いので、すぐに騙されるというのが実情ですが」

「ああ……」

 

 昭道は溜息をつく。

 

「小さい悪をばらまき、それを摘み取るのが奴らの行いだった。ただ……白石朋夏。あの拷問の傑物が現れたことで、そのタネが芽吹きすぎたな」

「そうですね」

「それに、今は小競り合いで済んでいるが、全面戦争の可能性もある。荻野天山がアクアタウンの重鎮と繋がっていることを考えると、その可能性も高いか」

「そもそも荻野天山と関係のある無能オーナーが、フレアタウンの七大ギルドに送り込まれて、それを受け入れることを強要されてる。力をそぎ落とすためって言われても納得しますけど」

「そうだな……」

 

 昭道は窓の外を見てつぶやく。

 

「……アリの巣に正義などない。正しいことなど何一つない。それすらわからず踊らされおって」

 

 欲望の強さを重要視するアリの巣において、下手な倫理観や理性は邪魔になる。

 

 各々が持つ性癖の否定などもってのほか。

 

 男醜女美。

 

 男は醜く女は美しい。をスローガンに掲げ、その美しい女を辱め、虐めることが『正しい』という風潮があるが、昭道はそれも嫌いである。

 

 全部悪いのだ。

 

 そんな中で正義を語るなど、おこがましいにもほどがある。

 

「……六車械遊。おそらく近いうちに、アクアタウンから接触があるだろう。『拷問ブームが発生しているフレアタウンを倒すために、うちに来ないか』と」

「そうでしょうね」

「嗅ぎつけることができれば上等。できなかったらそれまで、そんなところかと」

「……そうだな」

 

 昭道は、小さくつぶやく。

 

「……六車械遊。あの五島械座と無関係とは思えんな。となれば……フフッ」

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