ここまでの時間を振り返るならば。
械遊は放課後の帰宅中に、食器用洗剤が売られている店に行くために近道をしたら、アスナのコアカードを拾った。
何らかの感知機能を使っていた山中がデュエルを仕掛けてきて撃退。
で、『その日の夜中』に、特別することがなく風呂も済ませて、なんなら寝癖ができるくらいに寝ていた械遊のところにハイヤーで愛智がやってきた。
そのままちょっと着替えて666番ホテルに向かい、基礎教養も済ませてアリの巣のスタジアムに直行。
そこでバーバリアンたちに鉄槌を喰らわせた後、夜中だというのにショッピングモールでウォーター・ドラゴンを蹴散らし、ホテルに戻ってきて『地下』をデザイン。
という、なかなかタイトな夜を過ごしていたわけだ。
何が言いたいのかというと、械遊は高校一年生なので、次の日の朝に起きたら学校に行くのだ。
「……何故、制服に着替えていると思えば、学校に?」
「高校一年生だからな」
「何のために? 一応言っておくと、このホテルは械遊様が死ぬまで械遊様の物です」
「そうなのか?」
「はい。『アリの巣』の一週間に一度のデュエル義務。ここでコアカードを提示できなければオーナー資格を失いますが、その場合の『担当社員』へのペナルティは凄まじいので、どこかから必ずコアカードを調達してきます」
「ほう……」
「そのため、オーナーがオーナーでなくなるのは、実質的に死ぬ時だけ。学校で良い点を取るために勉強するよりも、アリの巣に潜ったほうがいいかと。衣食住においても、このホテルで扱えるレベルを超えるものはそうそうありません」
「要するに……将来の就職のために、内申点稼ぎをする意味はないってことか?」
「そういうことです」
械遊としては『より多くのエネルギーを生み出せる良い家畜になってくれ』と言われたような感じがするが、別に気のせいではないだろう。
オーナーランクだとかいろいろシステムはあるが、実質的には『欲望』を刺激したいのだ。
より多くのエネルギーを生み出せる強い欲望を持つものを厳選しているので、長い間、
「……愛智って、『
枢木市。
械遊が住む町の名前であり、その市の名前を持つ枢木高校は械遊が通う学校だ。
「そうですね。械遊様を迎えに行った昨日が最初です」
「なら、少し調べておいてくれ。確か、ある程度の調査はやってくれるんだよな」
「調査はおろか、大体のいうことは聞きますよ。そういえば、昨日の夜、『あんな部屋』をデザインしていましたが……フフッ、私もバイブパンツくらい穿きましょうか?」
股下がほとんどないマイクロミニスカートを少しめくり、妖しく微笑む愛智。
「……担当社員が『いうことを聞かなければならない範囲』ってなんか、『所有物』っぽい感性だな。まあいいか。今日は枢木高校でウロウロするけど、枢木市全体にも、何か感じるところがある」
「……はぁ。本社の資料を確認しておきます」
誘ったが反応が薄かったのでため息をついた愛智だが、頷いて命令を受諾。
「折角の『狩場』だからな。よろしく」
「わかりました」
愛智は少し思うところがあったようだが、強くは言わなかった。
そもそも愛智には、『特定事項』を除き、『オーナーからの命令』に背く権利はない。
その特定事項と言っても一般的に犯罪とされるものばかりであり、『基本的にはなんでも聞くように』ということになる。
そういうわけで、械遊は枢木高校へ向かった。
★
クリエイトコーポレーションの本社地下に『アリの巣』がある。
コアカードを持つオーナーたちや周囲の関係者たちはアリの巣には簡単に入れるが、その上の本社に入る場合はオーナーランクで『ゴールド以上』が求められる。
とはいえ、愛智のような社員は当然入れるし、『オーナー担当』であればその資料の閲覧権限も跳ね上がる。
そんな資料室の一つで、愛智はファイルを開いて確認している。
(これは……これを『嗅ぎ取った?』……ありえない。一体どういう直感をしているの?)
クリエイトコーポレーションが抱える枢木市の資料。
その内容に愕然とする部分があったのか、愛智は言葉を失っている。
(クリエイトコーポレーションの歴史は500年。そんな中で、枢木市へのかかわりは400年前から始まっている。200年前の『大事件』で多くの関係者が撤退しているけど、今でも『大御所』が関わってる)
ファイルを棚に戻して、近くの自販機に社員証を入力してコーヒーを買った。
(地元のメディアを掌握してて情報工作なんてお手の物。
いろいろ思うところはあるようだが……。
(そういえば、バーバリアンを使っていた宇上輝典は、械遊様とのデュエル中、二度も、『勘が良い』といった。アレは一体……)
思考がどんどん深くなる愛智。
そこへ……。
「あら、アンタ、愛智じゃない」
「……
廊下の自販機近くで考えていた愛智に近づいてきたのは、赤い髪を長く伸ばした美人だ。
愛智と同じく『黒スーツ』であり、愛智ほどではないが短いスカートにしており、胸はCカップだろう。
その後ろに二人、取り巻きであろう女性が付いており、こちらは灰色のスーツ。
なお……朋夏を見る愛智の眼は、とても『苦手』といった雰囲気だ。
「ふーん。黒スーツか。アンタ、『オーナー担当』に昇進したんだ」
「ええ、昨日に」
「誰の?」
「六車械遊様です」
自分の担当オーナーの個人情報ではあるが、愛智が簡単に話すということは、それを調べるのは容易なのだろう。
「六車械遊? どっかで聞いたような……」
「朋夏さん。こちらになります」
取り巻きがタブレットを取り出して朋夏に見せる。
それをひったくると、情報を確認し……。
「……ブフッ、あははははっ! 何よコイツ。事前デュエル評価がD判定って、すぐにカモられて終わりじゃない。アンタ。これからアリの巣を駆け回って、コアカードの調達に励まないといけないわね。ご愁傷様」
「……」
「で、今どこにいるのかしら」
「……枢木高校へ向かいました」
「枢木高校? ……ああ、それ、私が担当するオーナーが通ってる学校じゃない」
「……」
朋夏は思い出したようにそう言ったが、先ほど枢木高校の資料を閲覧した愛智はその事を知っている。
「アハハハッ! デュエル評価Dの雑魚なんて運がいいわ。さっそくオーナーに教えておかないと。コアカードを何枚持ってるか知らないけど、毟り取ってやるわ」
「……」
担当するオーナーがどれほどのコアカードを持つのか。
そして何より、オーナーの『ランク』がどれほど高いのか。
そのオーナーがどれほどの人脈を持つのか。
担当するオーナーが持つありとあらゆるステータスは、愛智たちの社内評価につながる。
朋夏がここまで、同じ社員であるはずの愛智に『上から出る』ということは、朋夏の社内評価……いや、おそらく存在するであろう社員としてのランクが高いのだろう。
「……あっ? 何よその目」
次の瞬間、朋夏の右手が動いて、拳が愛智の左頬をとらえる。
「ぶっ!」
躊躇のない拳にうめき声が漏れ……朋夏が愛智の胸ぐらをつかむと、そのまま壁にたたきつける。
背中を強打し、そのままの勢いで後頭部が壁に激突した。
「かはっ!」
呻く愛智だが、そんな彼女に対し、朋夏は形相を浮かべて圧を掛けながら顔を近づける。
「昔っからアンタの態度って気に入らないのよねぇ。ねえわかってる? 私が担当するオーナーのランクはゴールド。オーナー担当にやっとなれたばかりのゴミが粋がってんじゃねえよ」
「べ、別に、粋がってはごふっ!」
朋夏の右の拳が愛智の腹に突き刺さる。
背中は壁に接しており、衝撃が殺されることなく彼女の体に響いた。
「私と同期だからって、私の
朋夏は遠慮も躊躇もなく、何度も拳を腹に突き立てる。
「がっ! ぎっ! がふっ! あがっ!」
「あははは! 生きる価値のないゴミが無抵抗しか選択肢がないのってサイコー!」
胸ぐらをつかんだまま、横にポイっと捨て……朋夏の右足が振り上げられて、愛智の顔を正面からとらえた。
「がっ!」
そのまま廊下に転がる愛智。
朋夏はそんな彼女の腹をパンプスで思いっきり踏みつけた。
「ごふっ!」
「いい気味ね。フフッ、中学時代、生意気にも私の成績を追い抜いたアンタをどういじめてやろうかと思ってたけど、底辺からの逆転を狙ってココに就職したのが運の尽き。こうして私にいたぶたれる人生でしかないのよねぇ」
踏みつけたままでグリグリと痛み付ける。
「ぎっ、ああっ!」
「ククク……ま、アンタは雑魚オーナーの担当になって大変だろうし、これくらいにしておいてあげるわ」
最後にもう一度、躊躇なく足を振り下ろす。
「ごふっ!」
叫ぶと同時に、口から血が少し噴き出る。
どうやら内臓がどこかイカレたようだ。
「あっはっは! 脆すぎワロタ! それじゃあね~」
機嫌よさそうに、朋夏は取りまきを連れて歩いていった。
「……ぐ、づっ、はぁ、はぁ……」
ボロボロになった体を起こして、愛智は荒く息をする。
「はぁ……メディカルポットを予約しないといけませんね」
こんな界隈だ。
いくらでも『抗争』は発生するもので、それゆえに高度な治療設備が存在する。
「……はぁ、ぐっ……」
ギリギリと奥歯をかみしめて、表情が怒りに支配されていく。
「クソっ……はぁ……」
……その怒りに支配された表情も、すぐにあきらめの表情になる。
これまでに何があったのか、何を抱えているのか。
それは愛智が語るまではわからないことだ。
しかし。そう、しかしだ。
愛智は、自分が誰の所有物なのか。
朋夏は、一体誰の所有物に手を出したのか。
二人はまだ、理解していない。
★
一方。枢木高校にて。
械遊は端的に言って、連行されていた。
「……学校の地下に、よくもまぁこんなものを……」
基本的に、地方の学校に『地下』などない。
しかし、都心部から遠く離れた場所にある枢木市。その市立である枢木高校には地下があり、どうやら見世物のためにいろいろ使われているようだ。
「おい、ここだ。さっさと入れ」
三年生で屈強な体つきの男子生徒が、部屋の扉を指さす。
長い廊下はまだまだ先があり、その途中ではあるが、別に反対する理由もない。
ため息を押し殺しつつ、械遊は部屋に入る。
……そこにあったのは、端的に言えばデュエルスペースだ。
地下をかなり掘って広々とした空間になっており、広い空間になっている。
観客席には高級なスーツを着た男たちもいて、械遊から見て、アリの巣のスタジアムと同じ雰囲気を感じ取った。
「やあ、まっていたよ。六車械遊君」
デュエルスペースの反対側にいるのは、金色に染めた髪をツーブロックショートにした男子生徒だ。
銀フレームのメガネをかけており、明らかに械遊を見下した表情をしている。
「生徒会長。
「入学してまだ二か月で、特に接点もない男の顔を覚えているのか。入学式で数秒あいさつしただけなのに」
「そうだな。まあ……ちょっと気になったというか、そんな感じだ」
「ほう、俺の裏の顔を嗅ぎ取ったのか。なかなかの直感をしている」
「……いや、違うな」
「何が?」
ニヤニヤとしている幸助。
「俺が嗅ぎ取ったんじゃなくて、お前から腐臭が漂ってきただけだ」
「ああっ?」
械遊の返しに表情を変える幸助。
「お前のことは聞いてる。事前デュエル評価D判定が調子に乗るなよ」
「? ……まあ、事前は事前だ。今必要なのは『欲望』だろ」
「随分生意気じゃねえか」
「学校に来て早々、問答無用で連行するような奴に、丁寧に接する価値観は持ち合わせてない」
「チッ、俺は大企業の御曹司だぞ!」
「アリの巣で『オーナー』であることは『それ以上の身分』だと思うけどな」
「うるせえ!」
叫ぶと同時に、幸助は顎で何か指示を出す。
械遊は自分の左側で上手く構えて、蹴りを受ける。
蹴ったのは、械遊をここに連れてきた男だ。
しかし、蹴りに躊躇も遠慮もなく、何より体重差がある。
「チッ……」
械遊は舌打ちしつつも吹き飛んだ。
近くの本棚まで蹴り飛ばされたが、上手く受け身を取って、いくつかの本やファイルをばらまきながらもすぐに立ち上がる。
「ほう……何か習ってたのか?」
「興味あるのか?」
「いや、ないな」
話しているが、械遊の視界に、開いているファイルに載った写真が入った。
「!」
その内容に少し驚く。
しゃがんでファイルを拾い上げる。
そこに映っているのは、裸に剥かれ、全身がミミズ腫れになるほど鞭で打たれた……愛智の姿だ。
ファイルをめくると、どのページの写真にも、痛々しい姿になった愛智が映っている。
「……なんだ。これは」
「ん? ああ、その棚のファイルか。俺の担当社員は俺の婚約者で、大企業のご令嬢なんだが、中学時代に生意気にも朋夏を成績で抜いたやつがいるんだよ」
械遊も、その『抜いたやつ』が愛智であると理解した。
「で、
「……」
「オーナー担当であるかないかでまず社員スコアは大きく異なる。オーナー担当になっても、そのオーナーの戦績がほぼないノーマルランクなんて無力の権化だ。腹いせに僕があてがわれたホテルの地下で散々いたぶっていたよ」
「……そうか、なるほど……初対面で、『燃え尽きた灰を強引に煮込んでる』と感じたのはそれが理由か」
ファイルをその辺に投げ捨てて、デュエルディスクを左手に付けて立ち上がる。
「まっ、身寄りのないゴミなんて拷問ショーくらいしか価値がない。大したことじゃないさ」
「……幼いころから性奴隷に対して抵抗のない人間がどうなるのか。予想はしていたが、思ったより……『人間らしい』な」
どういう意味で『人間らしい』と述べたのか。それは誰にも……もしかしたら械遊自身にもわからないかもしれない。
「クククッ……とりあえず君から奪うとするか」
幸助がデュエルディスクを構えて起動する。
クリエイトドームが生成されて、幸助と械遊を包んだ。
ドームの天井付近に、テロップで『オールイン』と出てくる。
言葉通りの意味だろう。
「フフッ、始めようか……ん? おい、空調が効きすぎだ。少し寒いぞ」
「え、す、すみません」
空調の調節パネルの近くにいた男子生徒がパネルに近づき……訝し気な表情になっている。
「さて、始めよう」
「……」
お互いにカードを五枚ドロー。
「デュエル!」
「……デュエル」
械遊 LP4000
幸助 LP4000
「俺の先攻だ。まずは『ローンファイア・ブロッサム』を召喚!」
ローンファイア・ブロッサム ATK500 ☆3
「リリースして効果発動。デッキから植物族モンスター。『光の王 マルデル』を特殊召喚!」
光の王 マルデル ATK2400 ☆9
「【ジェネレイド】か」
「その通り。マルデルの効果発動。デッキから『ジェネレイド』カードである『王の舞台』を手札に加える。手札から発動!」
ジェネレイドデッキにおける最重要のフィールド魔法が出現。
「ククク……そして手札から魔法カード、『
「奴隷……」
「俺はデッキから、『王の奴隷 ナミ』を特殊召喚!」
王の奴隷 ナミ DEF2000 ☆4
フィールドに現れたのは、オレンジ色のショートカットを持つ巨……いや、爆乳の美少女だ。
裸のギロチン拘束というのだろうか。一枚の板に穴を三つ開けて、そこに首と両手を入れる拘束であり、四つん這いくらいの高さで固定されている。
猿轡を噛まされ声はくぐもっており、何より械遊の目につくのは……。
「その背中……」
「ん? ああ、この背中の焼き印のことか。竜の蹄を思わせるものだが、奴隷の証としてちょうどいいだろう」
「……」
「ナミの効果発動。召喚、特殊召喚に成功した場合、デッキからレベル9のジェネレイドモンスターを1体特殊召喚できる。これにより、デッキから『王の呪 ヴァラ』を特殊召喚!」
王の呪 ヴァラ ATK2500 ☆9
「ヴァラの効果で、手札か墓地からジェネレイドモンスターを特殊召喚だ。手札から『王の奴隷 ニコ・ロビン』を特殊召喚!」
王の奴隷 ニコ・ロビン DFE2100 ☆4
出現したのは、セミロングをボブカットにした美女。
こちらもギロチン拘束と猿轡、かつ、背中には竜の蹄の焼き印がある。
なお、手が板に固定された上で小さな枷が手首に嵌められているが、これは海楼石だろうか。
「ロビンか」
「フフッ、そして魔法カード『
王の奴隷 ナミ 強姦カウンター 0→1
王の奴隷 ニコ・ロビン 強姦カウンター 0→1
カウンターが置かれると同時に、二人の後ろに屈強な男性が出現。
それぞれ、後ろから膣に30センチはある男根を当てた。
「んっ」
「あっ」
そのまま一気に、奥の奥まで挿入。
「あああああっ!」
「うぐうううっ!」
そのまま、ずっちゅずっちゅとピストンを開始する。
長く太い物が最長ストロークで入り込み、刺激していく。
「どちらも抜群のプロポーション。そしてこれが、人権を無視したセックスショーだ。これが性奴隷の醍醐味。まったく、早くスレイブヒロインになればいいのによぉ」
幸助はそう言いながらもセックスを見ていたが、とりあえずターンを進めることにしたようだ。
「さてと、俺はマルデルとヴァラでオーバーレイ。現れろランク9『影の王 レイヴァーテイン』!」
影の王 レイヴァーテイン ATK2500 ★9
「さて、まあこんなもんか。俺はカードを1枚セット。ターンエンドだ」
「俺のターン。ドロー」
静かにカードを引く械遊。
「この瞬間、『王の舞台』の効果発動。デッキから『ジェネレイド』モンスターを特殊召喚できる。出てこい。『王の奴隷 ボア・ハンコック』!」
王の奴隷 ボア・ハンコック DEF2600 ☆6
出現したのは、ナミやロビンたちと同じギロチン拘束のハンコックだ。
当然、竜の蹄の焼き印も、衆人に見えている。
「そして、効果でジェネレイド・トークンを2体特殊召喚すると同時に、墓地の『王の地下』の効果! 自分フィールドに『王の奴隷』モンスターが特殊召喚された場合、墓地のこのカードを除外することで、そのモンスターに『強姦カウンター』を1つ置く!」
王の奴隷 ボア・ハンコック 強姦カウンター 0→1
ジェネレイド・トークン ATK ☆4
ジェネレイド・トークン ATK ☆4
ハンコックの後ろにも屈強な男が出現し、ハンコックの膣に30センチの男根を入れて、ピストンを開始する。
「ふぐううっ! ぐっ、ううううっ!」
「これ! これだ! 抜群の体を持つ女どもを拘束して、ただただ肉の奴隷として扱う。これが上流階級が世界に強いる姿だ!」
「……」
「しっかし……なんかいつもより反応が薄いんだよなぁ。こいつら、自分が誰の所有物がわかってんのか? まったく」
「……メインフェイズだ」
待てなくなったという訳ではない。
ただただ、静かに宣言する械遊。
「いーや! スタンバイフェイズだ! レイヴァーテインをリリースし、効果発動! エクストラデッキから天使族以外のジェネレイドXモンスターを特殊召喚し、持っていたエクシーズ素材の数だけ、互いのフィールドか墓地からカードを選び、特殊召喚したモンスターの素材にできる!」
「……」
「お前の場と墓地にモンスターがいないのになんでそんなことをするのかって? ハハハ! 当然意味がある。ボア・ハンコックに強姦カウンターが置かれている場合、レイヴァーテインの効果範囲を相手の手札まで広げられるのさ!」
ハンドバウンスではない。ハンドスティールという、なかなか類を見ない効果。
「その効果にチェーンして速攻魔法、『墓穴の指名者』だ。対象は墓地のレイヴァーテイン」
「何っ!?」
「除外だ。そしてその効果は次のお前のターンまで無効になる」
「なんだと……なんてな! ニコ・ロビンに強姦カウンターが置かれているとき、俺が使う全てのジェネレイドカードが発動した効果は無効にならない! 残念だったな! 表社会の強いカードもアリの巣じゃあ――」
「墓穴の指名者にチェーンして速攻魔法『氷漬けの町』を発動だ。『SH・エスデス』がフィールドにいるか、エクストラデッキから見せることで、相手モンスター1体の効果を永続的に無効にする」
「何!? スレイブヒロインだと!?」
一瞬、エスデスの幻影のようなものが出現。
氷を飛ばすと、ロビンの近くで砕けて霧になる。
「効果はこれで無効に……だが、そんなことは今はいいか。クククッ、ふははははっ! さっきの幻影の通りの見た目ってわけか。ククク、全身ひん剥いて精液漬けにしてやるよ!」
「絶対に勝て! 絶対に奪うのだ!」
「あの強気な表情がぶっ壊れるところが見られるのか! これはたまらん!」
観客席も熱気が高まってきた。
やはり、『スレイブヒロイン』は、大企業に関わるかどうかすら関係ない。
ただ、理解できるかどうか。
……もっとも、理解できる日が来るとは思えないが。
「俺は手札から、『ブリキンギョ』を召喚。手札から『ゴールド・ガジェット』を特殊召喚して、そのまま『グリーン・ガジェット』を特殊召喚だ。デッキからレッドを手札に加える」
ブリキンギョ ATK 800 ☆4
ゴールド・ガジェット ATK1700 ☆4
グリーン・ガジェット ATK1400 ☆4
「ほう、【ガジェット】か。ギアギガントか?」
「3体でオーバーレイ。ランク4『SH・閃光アスナ』!」
SH・閃光アスナ ATK2500 ★4
「な、またスレイブヒロインだと! しかも、そんな美少女とは、これはいいカモだぜ!」
「あのレベルの美少女か。これはますます捗りますなぁ」
「アレほどの美少女がスレイブヒロイン。これはいい。これはいいぞ!」
スレイブヒロインならば、デュエルに関係なく呼び出せる。
文字通りの性奴隷の存在に、観客も喜んでいる。
「アスナの効果発動。特殊召喚成功時、相手の魔法、罠を1枚破壊する。これに対してチェーンはできない。セットカードを破壊だ」
「チッ……」
相当嫌そうな顔をしている幸助。
「で、どうするんだ? 手札は2枚で、1枚はレッド・ガジェットだろ? このままトークンに攻撃して、俺に1000ポイントのダメージを与えて終わりか?」
「……」
ボア・ハンコックとニコ・ロビンに『強姦カウンターが置かれているときに使える効果』がある以上、ナミにもあるだろう。
何もヤバいことはない。そう思っているのだ。
「はぁ、アスナの効果だ。エクシーズ素材のモンスターカードを1つ使い、同じ種族とレベルのモンスターをデッキから特殊召喚できる。俺は『グリーン・ガジェット』を使い、デッキから『シルバー・ガジェット』を特殊召喚だ。手札から『レッド・ガジェット』を特殊召喚し、イエローを手札に」
シルバー・ガジェット ATK1500 ☆4
レッド・ガジェット ATK1300 ☆4
「ほう? で、ランク4で何を出そうってんだ?」
ニヤニヤしている幸助。
……一応言っておくならば、この二体でホープ→ホープ・ザ・ライトニングをつなげて、アスナと共に2体いるジェネレイド・トークンに攻撃すれば、総ダメージは4500になる。
何かしらの条件はあるが、まだまだ余裕。
それを械遊の中では……『隙だらけ』という。
「ガジェット2体で『重装甲列車アイアン・ヴォルフ』をエクシーズ召喚。自身を対象に効果発動。このターン、アイアン・ヴォルフ以外は攻撃できないが、直接攻撃が可能になる。そして『リミッター解除』だ」
重装甲列車アイアン・ヴォルフ ATK2200→4400 ★4
「……はっ? え? ……コウゲキリョク4400ガ、ダイレクトアタックダト?」
あまりにもショックだったのか、カタコトになる幸助。
「そうだ。トークンたちと戦闘はしない。この列車が直接お前を撥ね殺しに行くんだ」
械遊は淡々と告げる。
「ば……バカな! アリの巣のデュエルディスクの仕様で、相手が使っていないカードの効果は確認できないはず。ナミの効果を知っていたのか! 永続効果で、トークンの戦闘中、攻撃力が相手モンスターと同じになる効果を!」
「知らん」
「なら、なぜ……」
「……嫌な予感がしただけだ」
これ自体は事実。
そもそも、知らない効果の推察など、フィールドの状態によるが、やはり誰にもわからないものだ。
「さて、バトルフェイズだ」
「ま、待て! ここは引き分けにしよう。わかるだろう! 俺の親父は『グッドゲットグループ』の会長だ。『アリの巣』に対しても強い影響力を持つ! そんな俺を倒すってことは、親父の怒りを買うってことだ。それはお前も避けたいだろう!」
「知るか。そして、慈悲も情けもかけん」
械遊は宣言する。
「奴をコロセ! アイアン・ヴォルフ!」
アイアン・ヴォルフが轟音を鳴らしながら、幸助に向かって突っ込む。
「や、やめろ! やめろおおおおおっ! ぶはああああっ!」
幸助 LP4000→0
幸助が吹き飛んで地面に墜落し、そのまま気絶する。
幸助のデッキから3枚のコアカードが出てきて、械遊のもとに来る。
それを3枚とも自分のディスクの格納部に入れると、踵を返した。
(……さて、どうしたものか)
アリの巣にチラホラ見える救いようのない現状もそうだが、自分の中に渦巻いているドス黒い欲望もそう。
一体どうしたものかと思いつつ、部屋を出て行った。
……ただ、械遊も奥底で気が付いているので言わせてもらうならば。
この救いようのない現状も、械遊のなかでドス黒いものが渦巻いていることも、『アリの巣』は、肯定する。