械遊とデュエルは出てきません。
それにしても第7話という速さで【閑話】とは……まあいいか。
夜も更けて、械遊も寝たオーナーズ666番ホテル。
その地下。オーナーズエリア。
「……」
愛智は、鉄の壁と扉のある施設に来ていた。
扉にある電子ロックを指紋認証で開錠して、扉を開ける。
また扉があり、表示が『OPEN』となっているため、そのまま開けた。
中に入ると、長い廊下が続いている。
「……」
いつも通りの姿。股下がほぼないマイクロミニスカートの黒スーツで、廊下を歩く。
『保管庫』のプレートを見つけて、そのドアノブに手を掛けた。
「……すうう……はああ……」
ドアノブを回して、扉を開ける。
……保管庫の中は、ただただ無機質に女性をイかせる物体と、その補助具であふれている。
バイブ、ディルド、ローター、電マ、アナルビーズ、ピストンマシン。
もちろん、バイブ一つとっても、ゴーヤのようにびっしりとイボイボが生えたもの。枝のようなものが生えた『神木型』や、Gスポットを抉るノコギリのような形のものなど、種類も大小も様々である。
「……これが、械遊様が望み、想像された部屋ですか」
「その通りだ。そして、なぜこんな場所に?」
「!」
振り向こうとして、それはできなかった。
エスデスが後ろから、彼女を押さえつけるように抱きしめたからである。
「ん……」
「放してほしいのならそういえばいい。君はオーナーの担当コンシェルジュ。その業務にスレイブヒロインである私が邪魔する資格はない」
「んぅ……」
「フフッ……しかし、ここはスレイブヒロインが『過ごす』場所。私たちはオーナーが外に出るときは全員がディスクに格納されるが、ホテルにいる間は全員にここに出され、個室を与えられている」
エスデスは愛智の耳元でささやく。
「ここはオーナーも入ってこない。『責め役』が任意でほかの奴隷を選び、媚薬とおもちゃを使ってイかせる場所。全て映像で記録され、オーナーも見るが、ここへは来ないし、どう責めるのかの指示もない」
エスデスは笑みを浮かべ、愛智を強く抱きしめながら、呟く。
「ここはオーナーの『所有物』しか置かれていない。一体、何の用で?」
「わ、私は……」
「フフッ、もちろん決まってますよね~。あなたもオーナーの所有物と思ってしまったのでしょう?」
「!」
いつの間にかしのぶがそこにいて、愛智をローアングルで見上げている。
スカートの中を覗いており……。
「あらあら、下着もつけずにこんなところへ……」
しのぶは右手を伸ばすと、愛智の短すぎるスカートをめくり、膣口を指先で弄った。
「あっ……はっ……」
こしょこしょと、くすぐるような刺激に、愛智の体が震える。
だが、エスデスに抱きしめられた体は、よじることも出来ない。
「足を開きなさい」
「あっ……」
「開いてあげないわ。自分で開きなさい」
「うっ……」
愛智は膣口を弄られながらも、ゆっくりと足を開く。
「よろしい」
しのぶの指が膣の中に入っていき、くちゅくちゅと中を刺激する。
「あっ、ふっ♡」
「フフッ……」
右手で膣壁をいじりながら、左手を伸ばして、クリトリスの皮をめくって優しくつまんだ。
「あっ♡」
「いい声ですね。えいっ」
「おおっ♡」
Gスポットを刺激されたのか、ビクっと震える愛智。
「さてと……では一気に」
くちゅくちゅ……ぐちゅ……ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ!
「あっ! ああっ! いく、いく、ぐうっ、あああああっ!」
――ピタッ
「……え?」
「あらあら、本当にイってもいいのかしら。あなたはオーナーの担当コンシェルジュ。『責め役』に無抵抗で弄られて、絶頂する。このままイけば、『所有物』と認めるようなものですよ?」
一切の刺激を止めて、ただし指は膣に入り、クリトリスの傍に指を添えたまま、しのぶは微笑んで言う。
「イ、イかせて、お、お願い」
「フフッ、ならうってつけの場所がある。固定室に行こうか」
しのぶが指を抜いて、エスデスは愛智を抱きしめたまま運ぶ。
そして、『固定室』のプレートが張られたドアを開けて中に入った。
そこには、様々な拘束具が置かれており、中央には人を『大』の字で拘束するベッドが置かれている。
「さてと……」
エスデスとしのぶがパパっと動いて、愛智を一気に裸にする。
「あっ……」
形のいいFの胸と細い腰が晒されて、声が漏れる。
当然、抱きしめるのもやめている。
愛智の両手が股間に向かったが、その手首をエスデスがつかんでとめた。
「うっ……」
「股間を隠す必要も弄る必要もない。ベッドで横になれ」
「は、はい……」
「私たちに『返事』だなんて、本当に所有物みたいですねぇ」
しのぶがニコニコしながらそんなことを言うと、愛智は顔を真っ赤にしつつもベッドで横になる。
拘束用なのでそれに合わせた窪みがあり、愛智はそこに足と腕を広げて寝ころんだ。
「さて、拘束具をはめていくか」
エスデスとしのぶが手際よく、細い皮ベルトで愛智の体をベッドに縫い付けていく。
腕も腰も足も動かせなくなったあたりで、エスデスは満足そうな笑みを浮かべた。
「では責めていこうか。ああ、やめろと言えばすぐにやめるからな?」
「ん……あっ!」
愛智が声を漏らす。
エスデスに集中してしのぶを見ておらず、彼女が筆の先でクリトリスを刺激したからだ。
やわらかい筆が敏感な部分を刺激して、愛智は声を漏らす。
……実際に筆の先を手のひらに当ててみればわかるが、それだけでかなりくすぐったいと感じるもの。
それで性感帯を刺激され、愛智は声が漏れる。
「優しく優しく。これでもかなり感じるでしょう。ふー」
「あああっ!」
クリに息を吹きかけられて、ガクガクと体を震わせる。
だが、拘束具はびくともせず、しのぶの責めも止まらない。
「も、もっと強く動かして! もっと強くイかせて! お願い!」
「それはコンシェルジュとしての命令か? 責め役としての私たちのプランを無視する形になるが」
「ぐっ……うっ……そ、そのままでいいです」
「ついに敬語か。これは重症だな」
エスデスは愛智の膣に、近くに置いてあったゴーヤ型のイボイボバイブを挿入する。
ジュブジュブと音がして、愛智の体が震えた。
「あっ!! はっ、はっ……んんっ!」
奥の奥まで突っ込んだまま、ねじり始めた。
「いっ、いぐ、いあああっ!」
大股開きで固定され、バイブを奥まで突っ込まれてねじられる。
そんな愛智の下腹部を、エスデスは手のひらで押さえた。
「これでしっかりバイブを咥えるんだな」
ジュブジュブとピストンを開始。
「いぐ、いぐ、あっ、あっ! ああああっ!」
ビクビクっと体を震わせて絶頂する愛智。
「はー……はー……あっ!」
バイブが愛智の中で強く振動し始めた。
「い、いく」
「先ほど、私が膣に指を入れたでしょう? 私のオリジナルの薬物を刷り込んでおきました。クリトリスが敏感になっていますよ。そこに続くGスポットがとても気持ちいいはずです」
「ぎ、ぎもぢいいいっ。あっ!」
また絶頂した愛智。
「クククッ、前座はこれでいいか。それで、ここからは二つのコースがある。『ゆっくりねっとりコース』と、『めちゃくちゃコース』だ。どうする?」
ニヤニヤしているエスデス。
「め……めちゃくちゃコースで」
「そうか」
エスデスは頷くと、ベッドの下からマシンを取り出した。
先端にディルドが取り付けられている。
「ピストンとディルド回転を同時に行える装置だ。定期的にところどころついている穴から治療液を出すことで、苛烈な責めにも耐えられる」
「!」
「さて、とりあえずこれを呑んでください」
横からしのぶが水筒を持ってきて、愛智の口を開けると注いでいく。
「んっ、おっ……」
「私が調合した精力剤と媚薬を混ぜたものです。先ほどから全ての責めが記録されていますが、どのみち気持ちよくなるのなら元気に暴れてください」
愛智が飲んでいる間に、乳首にローターが貼り付けられる。
中身を全て飲み干すと、愛智の呼吸が荒くなってきた。
「はっ、はっ、これは……」
「即効性ですからね。直ぐに効いてすごいでしょう」
「こ、こんな……あっ!」
ディルドが愛智の膣に奥まで刺さる。
「イけ」
ヴィイイイイイイイイイイイイイッ!
ズボボボボボボボボボボボボボボッ!
ギュルルルルルルルルルルルルルッ!
「ああああああああああああああああああ~~~っ♡♡♡」
嬌声が響き渡る。
「クククッ、ずっとイけ。ずっと暴れろ。それがオーナーを楽しませる」
「安心してくださいね。ずっと気持ちいいですよ」
にやにやうふふとほほ笑むエスデスとしのぶ。
そんな二人に囲まれて、愛智は嬌声を漏らし続けた。
★
「クソガアアアアアアアッ! 私へのこの仕打ち。忘れないわ! 六車械遊。鈴原愛智。絶対にぐちゃぐちゃにしてやる!」
CC本社。
そこでは残念なことに……そう、『残念なことに』体が完治した朋夏が叫んでいた。
腹をサーベルで貫かれ、グリグリ抉られ、体の内側から凍らされ彫像になった朋夏だが、CCが抱えている治療技術は圧倒的である。
技術の進歩があった最大の理由は『人体実験』が多数行える環境だからという、なかなか救いようのない事実があるのだが、それ以前から、CCが持つ技術力は圧倒的である。
その原点となる部分に関してはともかくとして、その治療技術によって完治した朋夏は、ズカズカと大股で長い廊下を歩いている。
場所はCCではない。
ただそれでも、かなりの大企業を思わせるタワーオフィスである。
「チッ……おらっ!」
会長室のプレートがある扉を蹴り開けて中に入る朋夏。
明らかに遠慮……というより常識のない態度ではあるが、朋夏は気にしていない。というかそれが当然であるかのようにふるまっている。
「……」
そんな朋夏を見ているのは、はっきりいって、『強者の風格』がある四十代半ばの男だ。
黒髪をオールバックにして、質の高いスーツを着用。
目つきが鋭いこともあり、おそらく初見では『威圧感』を感じるはず。
名前は
グッドゲットグループの会長である。
「まったく、この私を呼びつけるなんて何様のつもりよ。私の婚約者の父親だからって調子に乗ってんじゃないわよ!」
初手から怒鳴り散らす朋夏。
それに対して、葬刻は表情一つ変えない。
「……自分がなぜ呼び出されたのか、わからないのか?」
「はっ? 何それ。私にそんな態度とって許されると思ってんの? 私はこのグッドゲットグループよりも大規模であるホワイトサービス社の社長令嬢にして、CCの社員なのよ? 幸助の父親だからこうして顔を立ててやってるけど、本来なら呼びつける権利なんてないの!」
テーブルまで近づいて、そのまま右手を振り下ろしてテーブルをたたく朋夏。
「あ、そうだ。私、今回の件で社員スコアが多分減らされることになると思うんだけど、アンタのカードが取られたからそうなるって話ね? だから、アンタがCCにいろいろ言えば、スコアの減少もなしになるの。とりあえず言っておいてね。これ強制だから」
へらへらした口調の朋夏。
倍以上生きている相手に対する言葉遣いではないが、影響力を持つ父親を持つ子供が周囲の大人を顎でこき使うこともあると考えれば、朋夏のこれは教育の結果なのだろう。
「まず、聞いておきたい。私のデッキを無断で拝借したことについてはどう思っている?」
「はっ? 格下が持ってるカードなんて、私がどう扱ったっていいじゃない。ていうか、取られたんなら取り返せばいいのよ。何甘えたこと言ってんの?」
歪んだ表情でそう話す朋夏。
どう表現すればいいのだろう。ありとあらゆるパワーバランスを無視し、ただただ『自分が上』と考えているのだろうか。
それに対し、葬刻は溜息を我慢したような表情になったが、口を開く。
「……君に言っておくことがいくつかある」
「あ?」
「まず、養子にしていた幸助だが、すでに勘当した」
「……はっ?」
「幸助の婚約者としての君と私に、もう対等なつながりはない」
表情一つ変えずに、男は端的に告げる。
……そしてそれは、朋夏が想像だにしていなかったことだろう。
「はぁ!? 幸助を勘当した!? じゃあもうアイツ。この会社とは関係ないの!?」
「そもそもこの会社を継ぐのは私の血を引く長男と決まっている。そのための教育を注ぐつもりだ。もとより幸助に会社を継ぐ資格はない」
ちなみに彼の長男はまだ八歳である。
ついでに言えば、多種多様な情報が集まるアリの巣の中であっても、彼に血のつながった息子がいるという事実はほぼ広まっていない。
「ふざけんな! はーっ! まったく、無駄な男と婚約してたわ。じゃあ、アンタの長男と婚約するわ。これ強制だから」
「……二つ目だ」
葬刻は目を閉じて、静かにつぶやく。
「プラチナ特権として、所有するコアカードを1枚、所有権を放棄し市場に流すことで、CCのコンシェルジュに対しいくつかの権利を行使できる。私はそのうちの一つである、【指名したコンシェルジュの莫大なペナルティ】を適用している」
「……はっ?」
「そしてCCの社員に対し、適用されるペナルティは全てスコアの減少だ。君のスコアはかなり低下しているだろう」
葬刻が静かに告げた言葉。
それは、朋夏にとって想像だにしなかったことだろう。
「ふざけんな! はぁ!? コアカードを手ばなして、私にペナルティですって? そんなことが許されると思ってんの!?」
「ただ権利を行使しただけだ。もちろん、君が現状ゴールドランクである幸助の担当コンシェルジュであることに変わりはない。スコアが上の社員からの命令を聞きたくなければ、担当オーナーから『随伴命令』を貰うことだ」
「なっ……」
「ルール上、スコアが上の社員からの命令よりも、担当オーナーからの命令の方が優先される。これはどのランクにおいても変わらない」
「そういうことじゃないわよ! なんで私がペナルティを受けないといけないのよ! 私はホワイトサービス社の社長令嬢。私に喧嘩を売ってタダで済むと思ってんの!?」
「当然だ。ホワイトサービス社などというゴミ箱に、もう用はない」
「誰がゴミ箱ですって!? アンタ、一代で大企業を築いたからって調子に乗りすぎでしょ。ホワイトサービス社の歴史は200年。ぽっと出が口を出せる場所じゃないのがわからないわけ!?」
「……パワーバランスの関係で幸助を養子に迎えるしかなく、そして君と婚約させたが……既に、会社の規模は我々の方が上だ。ホワイトサービス社の方が上だったのは二年前まで。情報が古すぎるぞ」
「だからわからないの? アンタたちは格下なの!」
「……話が通じんな」
葬刻が指を鳴らす。
すると、突如朋夏の背後に真っ白なスーツを着た黒髪ロングヘアで巨乳の女性が現れて、彼女の関節を極めて拘束する。
「ぐっ、は、放せ! チッ、白服がなんでここに」
朋夏のこれまでの言動と行動を考えると、取り押さえられても暴れそうだが、そうしない。
CC内で、『白服』は明確な『差』や『違い』があるのだろう。
「私の担当コンシェルジュだ。プラチナ特権の一つで、白服の社員を指名できる」
「チッ、あったわねぇそんな制度。普通はそれまでの社員が引き続き担当するから、使われないと思ってたけどね。で、それまでのコンシェルジュはどうしたの? どこかに売り払った?」
「……寿退社だ。まあそれはそれ。
「畏まりました」
「ちょっ! 放せ! ふざけんな! おい! 私をだれだと思ってんの! こらああああ!」
葬刻の視界から消えるまでずっと叫んでいる朋夏だが、十数秒でその声も聞こえなくなった。
それを見て、葬刻はふうっ、と息を吐く。
「それにしても、六車械遊か……
そのつぶやきは、誰にも聞こえていない。
★
「ちょっと! 私をどこに運ぶのよ! これ外しなさい!」
車椅子のようなものに拘束された朋夏。
場所は、CC本社の中でも白服しか入れない上位四分の一の階層である。
CC本社は200階建てであり、高速エレベーターで150階まで移動。
プレートに『指導室』と書かれた部屋があり、その前まで叫び散らしながらも連行された。
「さてと、入る前に説明しますと、朋夏さん。あなたの社員スコアは、六車械遊に敗北したことと、葬刻様がペナルティを指示したことで、スコアが『0』になりました」
「はっ? ……えっ? ゼロ?」
社員スコアが0になったことを告げた美咲だが、朋夏は理解できていない様子。
「プラチナランクである葬刻様の『オーナーケース』を無断拝借し、そのデッキを使ったデュエルで敗北。コアカードを2枚奪われる。この時点で多大なペナルティが発生します」
「なんでよ! 幸助はその時点では養子の筈でしょ!? なら、その婚約者が、伊藤葬刻のデッキに何しても許されるに決まってるじゃない!」
叫ぶ朋夏。
それに対する美咲の返事は……右足を振り上げ、朋夏の顔面への蹴りだった。
「ぶあっ! あああああっ! いたいいたいいたいいたい!」
「敗北ペナルティのみであれば、社員スコアが0になることはなかったのですが、葬刻様が特権を発動したことで、スコアは0になりました。一応CCで明記されており、滅多に行われないのですが……社員スコアが0になると、指導が入ります」
「し、指導ですって!? しかも社員スコアが0って、何もできないじゃない! こんな会社辞めてやるわ! 私に蹴りを入れたこと、後悔させてやる!」
「黙れクソガキ」
美咲の蹴りが炸裂し、パンプスのつま先が美咲の腹に突き刺さる。
「ごっ! あ、あがあああ……」
「まあ、この時点では辞めない方が賢明かと。CCとホワイトサービス社では明確な差があり、CCの社員がため込んだ恨みをあなたにぶつけようとして、拷問はできないので経営に首を突っ込むはず。最近のホワイトサービス社の上層部の無能さを考慮すれば、会社は倒産するでしょうね」
「と、倒産!? 200年続いたホワイトサービス社が倒産ですって!?」
「ええ、その通り」
美咲は指導室のロックを指紋認証で開錠すると、朋夏の方を振り向く。
「『我々』は、あなたが黄色信号を渡るような気分で下のスコアの社員に拷問しようと何も言いません。理不尽を覆したいという怒り。その欲望は大きなものになるからです。そして貴方の拷問の対象が、何もできないと考え、抵抗を諦めていた鈴原愛智となれば、我々としてはどうでもいいこと。しかし……社員スコアが0になっては、指導は確定です」
★
指導室。とは言っていたが、実際には拷問室といった方がいいだろう。
「は、放しなさい! クソっ! どうするつもりよ!」
裸に剥かれ、ロープで足首を縛られて、上下逆さまに吊り下げられた朋夏。
その下には大きな水槽がある。
朋夏の足首をつっているロープは上に伸び、それは滑車によって支えられている。
ロープはその滑車で曲がり、そのまがった先は美咲が持っている。
これだけで、普通なら察しが付くだろう。
「指導です。そしてCCの社員というのは主にコンシェルジュになるためにその知識や教養を高めていくわけで、そのためにはデュエルの知識が必要です。あなたには最低一か月の研修を積んでもらうことで、一般的な社員スコアを与えることになります」
「最低一か月って……」
「まあ伸びることもあるということですよ」
そう言いつつ、美咲は手元のタブレットを見る。
「さて、まず一つ目の研修は『水属性』です。今からこの水槽の中に、主に魚族モンスターの立体映像を映します。それを答えるクイズのようなもの。ただし答えられなかった場合、攻撃力10につき1秒。あなたをこの水槽に沈めます」
「なっ」
「ちなみにレベル1につき……」
タブレットを置くと、近くに置いていた『メイス』を取り出した。
先端に鉄球が付いた棒。という武器である。
「こちらであなたの体をぶっ叩きます。一撃は絶対に腹に入れるので、最初から体の空気を全て吐き出した状態で沈んでもらいます」
「冗談じゃないわよ! さっさと解放しなさい!」
叫び散らす朋夏だが、そんな彼女の腹に、美咲はメイスを叩き込む。
ガスッ! と音がした。
「があああああああっ! い、いだいいだいいだいいだい!」
「では第一問」
タブレットを操作すると、水槽の中をモンスターが泳ぎ始めた。
どこか機械的な印象があるサメと言ったところだろうか。
あまり環境で見かけないモンスターなのは間違いない。
「わ。わかるわけないでしょう!」
「ではギブアップですね。こちらは『エンシェントシャーク・ハイパーメガロドン』と言いまして、攻撃力2900。レベルは8になります」
「なっ……」
「290秒……まあほぼ五分ですね。それから、こちらで8回ぶっ叩きます」
「ご、五分なんて、耐えられるわけが……」
「こちらの水槽には治療液が混ざっています。長さ40センチの電極を鈴原愛智の口に『突っ込み続けた』あなたならわかると思いますが、実は治療液を浸かっている間は呼吸しなくても死にません。まあ体が酸素を求めてかなり苦しいですけど。そして、顔だけが浸かっていても、体のすべてに治療効果が行き渡ります。便利でしょう」
「そんな……」
ロープを動かして、朋夏の長い髪から沈んでいく。
「ちょ、や、やめっ!」
首から上が沈み、もがき始めた。
美咲はメイスを握って、一発目を腹に入れた。
水の中の朋夏の口から空気がごはっと出てきて、口をパクパクと動かして苦しんでいる。
そこから七回。止まることなくいろんなところにメイスを叩き込む。
そのたびに朋夏は顔をゆがめているが、そもそも酸素が足りない。
……約五分後。
「ぶはっ、ごほっ、ごほっ、がはっ! ぜーっ! はーっ!」
引き上げられた朋夏だが、全身が痙攣しながら大きく呼吸している。
「最初の指導がこの水槽クイズの理由は、私に容赦がないということと、治療液を持つCCは拷問に制約がないと理解してもらうためです。ちなみに、今回の治療液ですが、外見上の傷は治しますが、痛みはそのままです。まだ叩いた部分が痛いでしょう」
「も、もうやめて……」
「泣き言を言わないように、まだまだ優しい方ですよ? あとの方になれば、私が即席でデザインしたモンスターの攻撃力とレベルを当ててもらいますから」
「そ、そんなことできるわけが……」
「ご安心を。外れても、その『差』しか沈めませんし叩きません」
「も、もう無理よ!」
「ご安心を。最終指導。テーマ『除夜の鐘』が終わるころには、どこに出しても恥ずかしくない立派な社員になっていますよ。あ、それと、除夜の鐘に使われる『
「いやあああああああああああああああっ!」
「では、第二問」
「も、もう無理! もう無理いいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
「あまりうるさいと、股間の両穴に鉄の棒を入れて電流を流しますよ」
「ぐっ、ひぐ、なんで、こんなことに……」
「プラチナランクに手を出さなければ、オーナーに『特権』はない。だからこそ、プラチナランクはいつもピリピリしているんですよ。そこに何の保険もかけず踏み込んだあなたが悪い。じゃあ、頑張りましょうね」
にっこりと、それはもう女神のような笑顔だ。
だが……そう、朋夏だからこそわかる。
悪魔の中でも、人知を超え、人が想像できないレベルに達したものが、女神のような表情を浮かべるのだと。