「……はぁ、まさか、人が学校から出てきたところで待ち構えているとは思わなかったよ」
「それが一番確実です。アリの巣は表社会に出ることはありませんから、オーナーが学校にいる間は手を出せません」
「絶大な権力があるわりに、どこか理性的だな」
「ルール側に野性を求めるのは自然界だけで十分でしょう。理性というストレスを加えることで、人類は発展してきたはず」
「確かに」
次の日。械遊は学校に通っていたが、帰宅部なので授業が終わるとそのまま校舎を出る。
他の生徒が見えなくなったあたりで、あのカードショップの店員をしていた白服、雅が建物の陰から出てきたのだ。
そのまま、彼女が人が少ない通りに用意したという大型トラックのコンテナに移動中である。
「こちらになります」
「10トンの大型トラック……こんなのがすぐに用意できるのか。凄いな白服」
「我々は基本的に、様々なものを無駄遣いできるほど、リソースに余裕がありますから」
「……そうか」
コンテナに上がる階段が用意されたので、扉を開けて中に入る。
「……コンテナの中とは思えないほど洒落た空間だ」
強引に表現すれば、赤や紫を基調としたキャバクラのVIP個室といったもの。
かなり高級感の漂うものになっており……一番特徴的なのは、おそらく械遊が座ることになるソファの前に置かれたテーブルだ。
一見するとガラス張りの箱。
中では、両腕を万歳するように上げて、足を肩幅くらいに開いた裸の女性が、革張りのベッドに皮ベルトで縫い付けられている。
両乳首にはローターがテープで止められており、膣にはバイブが挿入されているようだ。
口はテープを張られていて声はくぐもっているが、目はきょろきょろしている。
「では、座ってください」
「……わかった」
話を進める気があるのは二人とも同じ。
とりあえず二人とも向かい合わせのソファに座る。
……のだが、械遊の視線は下がった。
「……彼女は?」
「白服ですよ。デザインされたばかりの新人です」
「……ああ、なるほど」
「何がなるほどなのか。教えていただいても?」
「簡単に言うと、俺は白服が全部アンドロイド……人工的に作られた人間だと思ってる。CCの中で、表社会の写真で確認できる白服はルックスもスタイルも凄いけど、なにより超人的だから」
「超人的? アリの巣に入る前に出会ったことが? そもそも、表社会に出る社員は『社長役』を含め、灰色のスーツを着た『一般社員』だけ。黒スーツのオーナー担当すら出ていないはずです」
「三年前の夏休みにどこかで売られてた雑誌に1枚、3人だけ写っていた。それを見て直感で」
「そうですか」
後で確認しておこう。という雰囲気で、続きを促す。
「外見的には最初から完成された状態。かつ、機械・電子的な要素は一つもない。アンドロイドと言ったけど、ロボットというより、『遺伝子調整が完璧に施されたクローン』に近いか?」
「ふむ」
「そもそも高スペックに作られてるけど、『経験』は必要なんだろうな。まず研修を行い、経験ができたら何かの調整処置を行って、雅さんのような完成品になる」
「その通り」
「新人っていうのは、その研修中で、最終調整が済んでいない人ってわけか」
雅は頷く。
「で、白服はアリの巣でいろんな業務を行って、プラチナランクとかの目に留まれば、雇うことも出来るんだな? 昨日店に入ってきた美咲って人。多分どこかのプラチナランクの担当社員だろ」
「……直感ってすごいですね」
「まあ、そうだな」
それによって苦労することもあるが、基本的に『凄い』ことに変わりはない。
械遊くらいのものだと、雅としてもなかなか見ないレベルだろう。
「……で、俺が理解したのはそれくらいだ」
「……私たちがクローンであること、漏らさないように」
「理由は聞かないけどわかった」
「よろしい。さて、本題です」
「その前に一ついいか?」
「何か?」
「なんで最初から中に突っ込んでるんだ? 最初は穴の外に出しておいて、『これからこんなものが穴に入っていくんだ』って興奮を刺激するものだと思うけど」
新人の膣に挿入されているバイブを見て、械遊は言った。
「……」
雅が近くのスマホを弄ると、新人の穴からバイブが抜かれる。
そしてそれは……明らかに30センチはある。
「……どうなってんの?」
「普通の女の体よりも融通が利く。それだけのことです」
再びスマホを操作して、バイブが挿入されていく。
「ん、んんっ♡」
「そういえば、さっきから顔を見ても目が合わないんだけど、もしかして中から外は見れないのか?」
「研修中の白服の規定で、『研修エリアの外は見れない』となっています」
「なるほど、このケースの中はエリア指定されるが、コンテナの中は違うと」
「その通り」
さらにスマホを操作すると、バイブが振動し始めた。
「んぐっ! ううううっ!」
「……」
「さて、改めて本題に入りましょう」
そういうと、雅はスーツのポケットから半透明の小さなプレートを取り出して、械遊の前に置いた。
「これは?」
「あなたのデュエルディスクに組み込んでほしいデータが入っています」
「解析アプリだろ」
「まあ、わかるでしょうね」
「入れてやるのは構わないけど、『どこまで』が知ってるんだ?」
「私だけ。と言っても信じないでしょうし正直に言いましょう。全ての白服が知っています」
「……なるほど、隠し事はできないな」
「ただし、我々の方から外部へ情報を漏らすことはない。白服と『会長』のみが知っています」
「あっそう……で、その『会長』はなんて?」
「我関せず。とのこと。それ以上は知りません」
「……」
械遊は思う。
CCのトップは、表向きは『社長』がいる。灰色のスーツを着た女性が担当しているが、雅は『会長』といった。
どうやら表のトップは社長で。裏のトップは会長がいるのだろう。
そして、黒でも灰色でも白でもない。『第四の何か』を感じる。
「それ以上は、本当に踏み込まない方がよろしいかと。それに踏み込んで姿を消したオーナーが、何人もいますよ」
「わかった」
プレートを手に取って、デュエルディスクにはめ込んだ。
「出来れば、あのコアカードたちは常に入れておいてください」
「まあ、そうしない理由もないけどな」
ため息をつく械遊。
「それから、何か要望があれば聞きましょう」
「……解析アプリを押し付ける対価ってこともあるだろうけど、それだけじゃないな。雅さん個人で何か感じる。俺に恩でも……ああ、そうか」
械遊は理解した。
おそらく雅は、解析用アプリが入ったプレートを械遊に渡す代わりに、可能な限りの要望を聞けと言われている。
雅の中で、その『可能な限り』の限度が上がっているようだ。
そしてその理由も察した。
「昨日の店で、俺に踏み込むなって口をふさいだあの動き……レジの傍にいたのにいきなり目の前にきたけど、もしかして、本来ならコアカードを破かれるのを防げたんじゃないか?」
「……『本当に』想定していなかったので、動くのが遅れました」
「もしかして、それが『未遂』になって、雅さんのペナルティがなくなったとか?」
雅は微笑んだ。
「そうです」
「……で、ペナルティがきついから剛平にブチ切れたわけか。そういや、未遂になったけど、剛平はどうなったんだ?」
「白服からの宣告が覆ることは基本的にないので、仮にあの白石剛平が部屋にいたままでコアカードを修復したとしても、私が宣告した後であればオーナー資格剥奪は免れません」
「あっそ、まあどっちでもよかったってことか」
判明していないことや、見えていない条件はある。
ただし、械遊に解析ツールを渡すのは、ルールに支障がないかどうかを探るため。と言った程度だろう。
結果的にCC側で折り合いのつけ方がどうなるのかはわからないが、少なくとも、ルール側に徹するという姿勢のようだ。
コアカード4枚を破った剛平に対し、オーナー資格剥奪だけで済ませるなど、手を出す領域と出さない領域を明確にしているようである。
「で、要望ね……とりあえず2つだな」
「たった2つ?」
「ああ。ええと、こうして接待の場に呼ばれてるわけだし、この子の評価に加点できるのならしておいてくれ」
バイブで突っ込まれ、いつのまにか高速回転しているそれに喘いでいる少女に指さして言った。
「わかりました。もう一つは?」
「俺が関わる社員に対して特権を用意できないか? 言葉にすれば『拒否権』だ。俺が見る限り、プラチナ以上から狙われたら、コンシェルジュってルール上、自分の身を守れないだろ」
械遊は『愛智の』とは言わなかった。
考えられるのは、これから関わる社員が増えることを想定している。といったことだろう。
雅もそこは予測しつつも、口を開く。
「防御的ですね。盾だけではなく、そこに地雷も用意できますが?」
「返り討ちにして痛い目にあわせるのは俺の役目だから」
「随分、自信がおありですね。何か理由が? そもそも欲望の強さに関しても疑問があります。あなたの性癖に適したものを用意したはずですが、あなたのソレは大きくなっていない様子」
雅は械遊の股間を指さしながら言った。
「俺から話そうとは思わないな。ま、頑張って解析したら何かわかるかもしれないぞ」
械遊はテーブルに置かれているリンゴジュースの瓶を手に取ると、ソファから立ち上がる。
「それじゃあ、その子の評価と関与社員の拒否権。よろしく」
「畏まりました。私が可能な構築で適用しておきます」
雅がうなずいたのを見て、械遊はコンテナから出て行った。
★
……その30分後。アリの巣にて。
「ここがホワイトサービス社の『私有地』……名前は『ホワイトシティ』か」
「ホワイトサービス社の本拠地。まさか、ここから『招待状』が届くとは、想定外ですね」
「内容を要約すれば『新社長の就任パーティを開くので担当コンシェルジュの方とご一緒にどうぞ』って感じだったな」
械遊は愛智を連れて、アリの巣内部でホワイトサービス社が所有している場所に来ていた。
「しかし、地下とは思えないな。ショッピングモールみたいな『屋内』じゃない。『町』だ。こんなものを作れるなんて」
「CCが持つリソースはすさまじいですからね」
「そうだな……しかし、小中大超の四段階の広さがあって、中の時点で枢木市とほぼ変わらないんじゃないか? 思ってたよりも意味不明だ」
町に入るゲートの前でハイヤーを降りて、そのゲートの奥を見るが、械遊の見立て……いや、直感は間違っていない。
実際、ホワイトシティは『中規模』だが、それでも広さは『市』と同じ規模に達する。
「とりあえず入るか」
私有地ではあるが、別に他人が入れないわけではない。
ただ、条件やコストがあるというだけで。
ゲート前のカウンターに行くと、男性に話しかける。
「おや、ホワイトシティへいらっしゃい。関係者の方であれば会員カードを……」
「招待状を貰ってる」
招待状を見せると、男性の表情は明確に変わった。
「確かに。では、お楽しみください。フフッ、スタッフ一同。歓迎しますよ」
「……」
カモがネギを背負ってきた。
そう考えているのが丸わかりの歪んだ笑みを浮かべる男をスルーして、械遊は中に入っていく。
「……械遊様。どう思いますか? あの表情」
「罠にかかった。って顔で言ってたな。その罠を食い破るつもりだとは思ってなさそうだけど」
ホワイトシティに入っていく械遊と愛智。
どこか、二人ともあきれた様子なのは間違いない。
「おっ、もしかしてお前。六車械遊か?」
「!」
町に入ってすぐにあるコンビニ。
そこから、械遊と年があまり変わらないであろう少年が出てきた。
茶髪を天パにしたどこか飄々とした雰囲気を感じるもので、横には黒髪をハーフアップにした美少女を連れている。
飄々とした少年と、それに対照的な完全に無表情の少女。
そんなコンビが、械遊たちに近づいてくる。
「……お前は?」
「俺は
紅嵐は理世を自慢しながら、彼女の形のいいお尻を後ろから揉んでいる。
「……美漆理世と言います」
クールビューティの雰囲気を地で行くような仕草で、礼をする理世。
「もー。理世ちゃんも少しは笑ったらいいのに~」
紅嵐は理世の後ろの回り込むと、そのまま理世のEはありそうな胸を揉み始めた。
「んっ……」
「理世ちゃん。ちゃんと声を出してくれてうれしいぜ~。最初のころは開発が全然進んでなくて表情が動かなかったもんな~」
懐かしそうな表情だが胸をずっと揉んでいる紅嵐。
「……」
「なんでそんな『見ていて疲れる』って顔するのさ械遊君。俺と君の仲だろ!」
「初対面で五分もたってないぞ」
「俺の座右の銘は『一期一会』なのさ!」
「私は『俺の座右の銘は、【座右の銘はその時決める】だぜ』と聞いていますが」
「そういうツッコミはいいんだよ~!」
「あっ!」
紅嵐の右手が理世の股間に向かい、そのままスカートをめくって黒い下着の中に入り込み、穴に指を入れてぐじゅぐじゅ鳴らしている。
「械遊君! 理世ちゃん凄いだろ! 尻と胸を揉む前座だけで前の穴はトロットロになるんだぜ!」
「あっ、ああっ、んっ♡」
無表情を維持しようとしつつも、顔を赤くして喘ぎ声を漏らす理世。
「……」
「で、械遊君は普段、そっちの愛智ちゃんでどれくらい遊んでるのさ! まだ普通のミニスカートといえる理沙ちゃんよりも短いスカートはかせて、械遊君の趣味なんでしょ!」
「愛智は最初からこうだったぞ」
「なぬぅ!?」
力いっぱい胸を揉み、膣壁を刺激しながらも驚いている様子の紅嵐。
「あっ……」
「そ、そんなエロい子がいたなんて……で、セックスは何回? 俺は理世ちゃんと毎日やってるぜ!」
「俺はやってないな」
「性欲が小さすぎるぜ械遊君。そんな欲望でよくもまぁコアカードを12枚も集めたな!」
「……なんで俺が12枚集めたって知ってるんだ?」
「新聞読まないのか? 普通に書かれてたけど」
理世をいじめるのをやめると、彼女の肩に掛けている鞄を開けて、新聞を取り出す紅嵐。
械遊は受け取って、見出しに『ホワイトサービス社。白石家の退陣!?』と書かれたそれを読む。
その内容だが……。
【白石剛平が役員会議の結果退陣が決定。オーナー資格が剥奪されていることが分かった。インタビューによると、白石剛平は『提供されたコアカードの争奪イベントに負けただけだ。あの六車械遊とかいう小僧。コアカード所有枚数が11枚とかふざけるな! 私から何かを奪う権利などない! 目の前で私が持っていた4枚を破り捨ててやったんだよ!』と高々に表明しており、六車械遊の所有枚数は12枚になっていると推測される。なお、白石剛平が持っていたコアカードが何なのかについての情報は、ホワイトサービス社内でも判明しておらず……】
といったものだ。
械遊は溜息をつきながら新聞を返す。
「なるほど」
「まー。械遊君がここに呼ばれたのって、それも含めると思うけどなー」
「……」
械遊は紅嵐の顔を見る。
「……ん? どうしたん?」
「いや、紅嵐も、普段からここにきているようには見えないが」
「俺も呼ばれてきたからな!」
「へぇ……」
「俺は情報収集家でね。ま、表社会の方でホワイトサービス社の社長一族をいじめてたのさ。で、械遊君絡みであのクソデブが追い出されたから、新体制になるんでこれからもよろしくって呼ばれたんだよ」
「はぁ……情報屋ね」
「情報収集家だ。コイツになら売ってもいいなって思って、金を払ってくれたら売る。それが俺のやり方だぜ」
「お前の座右の銘がわかった。『依怙贔屓』だな」
「正解だぜ」
いい笑みを浮かべる紅嵐。
なお、先ほど新聞を簡単に見せてきたことを考えると、新聞を読むだけではわからない、『調査したこと』に関してのみ代金が発生するということだろう。
「で、その、新体制になるって話だが……良くなると思う? 悪くなると思う?」
「10万」
「払おう」
ディスクを出して10万アウェアを払う。
「まいど。で、簡単に言うと、白石剛平がいたときよりもひどくなるはずだ。あのクソデブは無能だが、上には逆らわないからな」
「上?」
「ああ。てか、200年続いてるとは言え、社長がたかがシルバーランクでそれ相応の影響力と規模を維持するなんてことができるわけない。後ろ盾がいたのさ」
「後ろ盾ねぇ」
「で、クソデブがいなくなって、その後ろ盾から『派遣』されてきたやつがいる。それが今回の新社長さ」
「……それで、もっと悪くなるのか」
「械遊君。思ったより何も知らねえな。そこそこ情報収集すれば、この町に『拷問サロン』があることくらいわかるぞ?」
「ストレートすぎないか?」
「スレイブヒロインがなかなか手に入らず、生身の女をいじめたいやつらが多いってことだ」
紅嵐は愛智の方を見る。
「愛智ちゃんのことは知ってるぜ。白石朋夏プロデュースの『鈴原愛智拷問ショー』シリーズが入ったいろんな記録媒体が、この町の裏で売られてる」
「……」
愛智の顔つきが変わった。
「械遊君。一応聞いておくけど、守れんの?」
「守れないように見えるか?」
「……」
「……」
次の瞬間。
械遊の赤いメッシュが燃えるように輝き、その瞳が赤く染まる。
紅嵐の右目が紅色に輝き、左目が白い宝石のように輝く。
二人から暴力的なほどの『圧』が放たれ、衝突。バチバチと音がして……一瞬で、紅嵐が競り負けた。
「づっ……」
少し悲鳴を漏らした紅嵐だったが、瞬きすると、その瞳は元に戻っている。
「ふぅ、なるほど、これほどとは……疑って悪かったよ」
「別に」
械遊の髪と瞳も元に戻り、呆れた表情になっている。
「紅嵐様が競り負けた……」
「械遊様……ということは、アレは幻覚ではない?」
理世の方は紅嵐が競り負けたことに対して驚愕している様子。
愛智も、以前、械遊の存在感で塗りつぶされた時のことを思い出して困惑している様子。
「……はぁ、で、械遊君。君、ここで何をするつもりだ?」
「話す必要があるか?」
「……いや、ないね」
紅嵐は笑みを浮かべた。
「理世ちゃん。帰ろっか」
「え?」
「ホワイトサービス社。俺は嫌いだからさ。嫌がらせしてたけど……どうやら、もっとヤバいことが起こりそうだからさ」
「ヤバいこと。ですか」
「そう。……って、ん? もう就任パーティが始まってんじゃん。械遊君。そろそろ行きなよ」
「……そうだな」
械遊は頷いて、パーティーがあるという会場に向かって歩く。
愛智は二人に軽く頭を下げた後、械遊についていく。
会場に向かって歩く二人に、紅嵐は小さく口を開く。
「……悪いことはするもんじゃないね。ああいう化け物を相手にしないといけないんだからさ」
そう言って、出入り口に向かって歩いていった。
★
真っ白なテーブルクロスが敷かれた円形テーブルには、豪華な料理が並べられている。
天井にはシャンデリアが輝き、天井、壁、床に使われている素材は真っ白でとても綺麗なモノ。
そんな、普通なら『綺麗』といえる場所は、『新社長就任記念特別ショー』が開催されていた。
パーティー会場の中央。
光沢すら感じられる長い黒髪と、翡翠が混じった瞳。
胸はG。腰は括れて尻は大きい。
そんな紛れもない美少女が、『壁尻』のような形で頑丈な鉄板に裸で固定されている。
尻を突き出し、腰と太ももが板に固定され、足首から先が板の後ろに。
上半身は、手首から先だけが板に固定され、手が後ろ側に出ている。
といっても、固定方法が壁尻なだけで、上半身側もよく見える。
そんな少女の口と膣には、男優がその男根で犯していた。
少女には首輪が付けられており、鉄板上部にあるタンクとチューブでつながっている。液体が流れ込んでいるところを見ると、どうやら治療液と顎の筋肉を弛緩させるものを混ぜたものだろう。
「彼女はつい二週間前まで、10万人の観客席を即座に満席にするほどの外見と実力を兼ね備える『アイドルデュエリスト』として活動していました。二週間前にデュエルライブは皆さんの記憶にも残っているでしょう。そのデュエルで引退し、CCに入社。私のプラチナランクの特権を使い、彼女をこの『ホワイトシティ』の従業員にしました」
パーティー会場のステージでは、紫色の高級スーツを着た三十代半ばの男性が、マイクを手に紹介している。
「17歳にして、年間で稼いだ金額は10億ともされる。『
「んんっ! おごっ! ごっ」
首を振ろうとしている由香だが、頭をしっかり押さえられているのでうまく動かせない。
「皆さんは『鈴原愛智拷問ショー』シリーズをご存じでしょう。ホワイトサービス社の元社長令嬢、白石朋夏がプロデュースしていた企画です。鈴原愛智がオーナー担当になったことで別オーナーのホテルに連れ込めなくなり、新作が出なくなりましたが、最後の作品では、治療液と油を混ぜ、300度に熱したそれに逆さ吊りで素揚げにしていました。私はこのシリーズを復活させ、この青井由香をショーに使いたいと考えています」
「ヒッ――おごああっ!」
顔面が真っ青になった由香だが、すでに彼女は呼吸がままならない状態であり、無抵抗で男根がピストンされて悲鳴を漏らす。
「そして……プラチナランク特権を使い、コアカードを提供。鈴原愛智をこのホワイトシティの従業員に設定、ダブル主演のシリーズとして再開することを発表します」
その言葉に拍手が巻き起こる中……男性は、会場の出入り口に入ったばかりの械遊の方を向いた。
……インカムを付けているので、械遊が入ったタイミングはすでにわかっていたのだろう。
「ご覧ください。彼は六車械遊。コアカード所持数が12枚。調査の結果、スレイブヒロインの枚数が5枚あることが確定しているノーマルランクです。そして、鈴原愛智が担当するオーナーでもあります」
パーティー会場にいた全員が械遊と愛智の方を向いた。
「……すー……はー……」
械遊の隣で、愛智が顔色を悪くして呼吸している。
「さて……」
ステージにいる男性は、傍にいる白服に目を向け、手で招く。
そしてそばに寄ってくると、スーツの胸ポケットからコアカードを1枚取り出すと、白服に渡した。
「私はコアカードを提供します。さて、鈴原愛智。君はこれからこの町の従業員です。従業員はオーナーの命令を絶対厳守。拷問ショーで、我々を楽しませてもらいます」
男性はにこやかな笑みを浮かべてそう言った。
械遊は溜息をついて、愛智に言う。
「んなもん嫌に決まってるだろ。なあ? 愛智」
「と、当然です!」
当然の返答。
械遊はそれを聞いて、男性の傍にいる白服の方を向いた。
「だそうだ」
それを聞いて、白服は頷き……、
「では、無効とさせていただきます」
デュエルモンスターズ風に言うならば、『発動できない』ではなく、『コストを払えば発動できるが無効になる』ということらしい。
雅は『私に可能な構築で適応しておく』と言っていたが、嫌らしいものだ。
「……はっ? い、一体どういうことです?」
にこやかな……貼り付けた笑みはそのままに、男性は驚いている。
白服は械遊の方をチラッと向いた。
「話していいぞ」
「では、端的に話しますと、六車械遊様が関与する社員は、『高ランクの拒否権』を持っています」
「何? 拒否権?」
「はい。そして鈴原愛智は六車械遊様の担当社員。よって、先ほどのコアカード提供と共に申請された『ホワイトシティへの異動』に対し、械遊様が拒否の確認をされ、それに同意したことで、この申請は無効になります」
「で、ではコアカードを返していただきたい。そんな無駄なことを……」
「その義務はありません」
「……チッ」
イライラしているようだが、食い下がる様子はない。
プラチナランクと言えど、白服を雇えるしある程度の要求はできても、『できない』ことはあるのだろう。
「……ならば」
男性はデュエルディスクを左手に付けると、何かがデュエルディスクから飛んだ。
高速で飛来するそれは械遊のデュエルディスクに接触し、二人のデュエルディスクの間で『帯』が構築される。
「デュエルアンカーです。これで、『オールイン設定』でデュエルしていただきましょう。鈴原愛智を私の担当にできなくとも、貴方のスレイブヒロインを奪い、拷問ショーに使うことはできるはず」
「……」
械遊は何も言わず、パーティー会場に中心に歩いていく。
「随分、堂々としていますね。若さか。それとも何かあるのか。とはいえ、担当社員が何かしらの拒否権を持つというのは、私のようなプラチナランクになれば珍しくはない。どんなコネがあるのか知りませんが、すべて奪って差し上げます」
「……やれるもんならやってみな」
「ノーマルランクでそこまで強気とは、若さとは恐ろしい。私は
お互いにカードを5枚ドロー。
「「デュエル!」」
械遊 LP4000
宝吾 LP4000
「私の先攻。エクストラデッキから『八連ファイヤー・ボール・マシン』を墓地に送り、効果発動。相手に4000ポイントのダメージを与えます」
「エクストラデッキから『SH・ステラ・ヴァーミリオン』を墓地に送って効果発動。相手によって俺のライフポイント以上の効果ダメージを受ける場合、相手に移し替える」
「……はっ?」
「……アレ? カウンターに対するカウンターは? ……あっ」
宝吾 LP4000→0
デュエルが終了するとともに、宝吾のデュエルディスクから30枚ほどコアカードが出てきて、械遊のところに飛んでくる。
「なんでこんなにたくさん……プラチナランクってこんなに持ってるものなのか?」
「か、返しなさい! それはこのホワイトシティの共有財産! 預かっていた全てのコアカードなのですから!」
「えー……なんでそんな」
「クリエイトディスクは頑丈で、格納部は特にそうです。他人のデュエルディスクを奪って破壊したら、もちろんオーナー資格剥奪か社員スコアゼロが待っています」
愛智の補足で理解はした。
「どういうことだ! 全てのコアカードが奪われただと!?」
「しかもさっきスレイブヒロインと言ったな。アレはデータにもないぞ! 勝っていたら6枚以上が確定していた! どうしてくれる!」
「責任を取れ! 責任をとれええええええっ!」
パーティー会場全体からブーイングが発生した。
「か、返しなさい。それは我々の物です! そして貴方が元から持っている全てのコアカードも、そしてもとはと言えば鈴原愛智もこの町の物。あなたにそれらを独占する権限はありません!」
「じゃあ、もう一回やるか? ただ、エクストラデッキに防御札を積んでないことはわかりきってるから、初見殺し専用なら何百回でも殺してやるぞ」
「ぐっ……」
宝吾の反応を見る限り、どうやら先ほどの『八連ファイヤー・ボール・マシン』で相手を焼き殺すことしかできないカスデッキのようだ。
おそらく宝吾には宝吾で、そんなデッキを……いや、
しかし、普通ならノーマルランク相手なら4000バーンで勝てるものである。
あくまでも欲望を重視するというCCの意向を理解していないデュエリストは多いため、理不尽に対してあがこうとするものは少なく、言い換えればサポートカードや関連カードもノーマルランクはまともに想像できない。
これで十分なはず。
……もっとも、それは械遊にとって、隙だらけという。
「別の日に、私の本気のデッキで相手をします。絶対に逃げないように」
「……一週間に一度の義務。ランダムマッチの時だけ出てきて、あとはホテルの地下に引きこもっていればいい。その原則を忘れたのか?」
「逃げるのですか? 随分卑怯ですね」
「卑怯って言葉、使わない方がいいぞ? 『有効な戦術だ』って認めてるのと同じだから」
「く、クソガキ……」
とはいえ、このまま平行線にしても仕方がない。
「……じゃあ、条件付きで、アンタの好きなタイミングで再戦するよ」
「ほう、どんな条件です?」
「アンタ、このホワイトシティでどれくらいの権限を持ってるんだ?」
「前社長から受け継いだすべてです。この町に訪れる人間にどんな権利を与えるか、その全権を握っています」
「そうか」
械遊は微笑んだ。
「全て
「……いいでしょう」
端的な要求と返答。
それに対し、パーティー会場は唖然とした後……。
「ふざけるな! 貴様の失態だろうが!」
「中規模とはいえ、ノーマルランクに全て渡すだと!?」
「私に寄越せ! 私はゴールドランクだ! 私の方がふさわしい!」
「いいや! 俺の方がふさわしい。俺のものだ! 俺のものだ!」
うるさくなってきたあたりで、械遊はパンッ! と手を叩いた。
「……この時点で、このホワイトシティは俺のものになってるのか?」
械遊は宝吾の傍にいる白服に聞いた。
白服は頷く。
「もちろんです。『全権』を、六車械遊様が持っています」
「そっか。じゃあ……全員出ていけ。従業員に手を出さず、荷物をまとめて、一刻も早く出ていけ。ここは、『俺の私有地』だ」
「クソガキが! 独占するつもりか!」
「青二才が調子に乗るなよ!」
「忌々しい! 忌々しいいいいいいっ!」
械遊は呆れながらもつぶやく。
「ああ、そうか、罰を設定していないから調子に乗るわけか。なら……十分以内に出て行かない場合、アンタたちが次に獲得するコアカードを1枚。俺のものとする。不退去罪として設定しよう。白服さん。それは可能か?」
「可能です。そのための『私有地』ですから。というより、不法侵入や不退去罪に対し、コアカードを要求することは珍しくありません」
「なら、それを今から適用しよう。俺が出て行けって言っても10分出て行かない場合、白服の応援を呼んで物理的に叩き出すとともに、次にアンタたちが手に入れたコアカード1枚を貰う。可能か?」
「お優しい方です」
……ひどいとどうなるんだろう。100枚くらい要求するんだろうか。
「というわけで、出て行ってくれ。今から10分スタートな」
デュエルディスクのタイマーをセットした。
それと同時に、男たちが舌打ちしながらもパーティー会場を出ていく。
最後に、宝吾が械遊の横を通りながら……。
「あまり、我々を怒らせないことだ」
「……本気を出す才能がない奴を、俺は恐れたりしない」
何としてでも奪う。
そういう、『精神的な意味での全力』が、本気というものだ。
それがあれば、アリの巣のデュエルは勝てる確率がかなり上がる。
カウンターに対するカウンター。
それができなかったということは、要するにそれまで。
ノーマルランクだろうとプラチナランクだろうと、そこは変わらない。
……全員がパーティー会場を出て行った。
「さてと……」
械遊は鉄板に固定された青井由香のところに来た。
口も膣も精液だらけで、無残な姿になっており……。
「もしかしてアイツら、鍵をそのまま持って帰りやがったか?」
「「え……」」
愛智と由香が同時に声を漏らす。
鉄板にいくつもある鍵穴。
ロックを解除しないと出せないようになっているのだろう。
「えーと……あ、丁度いいな」
宝吾から奪ったコアカードの中で、タイミングがいいカードが1枚。
「黒子。よろしく」
常盤台中学の制服を着た白井黒子が出現。
「これくらい簡単ですの」
そう言って、由香に手を当てると、彼女の体が転移し、鉄板から解放される。
「うわっ……」
そのまま解放された由香の体を抱える。
「それで、どうしますの?」
「そうだなぁ……とりあえず、この町にいる従業員を集めようか。多分監禁されてるだろうし」
「その後はどうしますか?」
「スレイブヒロインをここで全員解放しよう」
械遊は少し、歪んだ笑みを浮かべている。
「この町の従業員とスレイブヒロインたち。俺の私有地で、俺の所有物たちの牢獄、『プロパティ・プリズン』を作るんだ。フフッ、きっと楽しいぞ」
そんなことをつぶやきながら、械遊はパーティー会場の出入り口に向けて歩いていった。
ルール調整にめちゃくちゃ日数がかかりました。ギュッと詰め込むのも考え物ですね……。