次話からイチャラブしていくので待っててクレメンス。
初めてこういう小説書くので、至らないところがあったらどんどん指摘して言ってください。
森の奥深くをまだ幼い少年が歩く。
少年は近くの村に住んでいたが、母親が流行病に倒れそれを治療する薬が足りなくなり、思い立った少年がその原料となる薬草を取りにこの森に入ったのである。
しかし、この森はサキュバスが跋扈する危険地帯として、村人、特に若い男は絶対に立ち入ってはならないとして言い伝えられていた。
それでも少年は母親を助けるために自らの棄権を顧みず、この森に入ったのだった。
少年は何度も周りを見渡し警戒を緩めず森の中を進んでいく。
少年の腹が鳴る。
彼は森に入ってからは何も食べておらず、疲労と空腹で今にも倒れそうになっていた。
周囲を警戒しながらのため遅遅として歩みは進まず、ただただ時間だけが過ぎていく。
薬草もまだ見つけていないし、それに彼は迷ってしまい、帰り道ももう分からない。
陽ももう沈む頃になり、辺りは少しずつ暗くなっている。
「ど、どうしよう...」
夜になればそれこそ危険だ。彼女達は曲がりなりにも魔族だ、夜はすなわち彼女達にとって絶好の狩りの時間だ。
夜の暗闇では視界も効かなくなるし、そもそも彼は明かりとなる物を持っていない。
夜になれば終わりだ。
焦りが彼の心を埋めつくし、自然と歩く足が早くなり警戒心も薄れてくる。
と、木々の隙間から光が見えた気がした。
その見えた方向に小走りで向かうと、そこには古いが村育ちの少年から見れば豪奢な一軒家があった。
窓からは明かりが漏れている。
「よ、良かった...」
少年は玄関に立ち、扉を叩く。
扉の向こうから微かに椅子を引く音、そして扉に近づいてくる足音が聞こえてくる。
どんな人が出てくるのか、少年は少し身構えた。
扉が開く。
「...え?」
「...何?」
扉が開くと同時に出てきたのは彼と同じ背丈の少女だった。黒を主体とし、所々に金の修飾のあるドレスに、それにアクセントを付けるかのように長くまるでシルクの如く流れる銀色の髪、これだけ見ればただの美しい少女なのだが、少年とは明らかな違いがあった。それは髪の間から伸びる一対の角、腰の当たりから生えているコウモリのような翼、スカートの下から少しだけ見える同じく蛇のような尻尾。
見るからに自分と違う存在である彼女を見て思わず身が竦む。
「...何故お主のような
「えっと、その、」
「...まあ良い、取り敢えず入れ、妾はお主を取って食おうなどと思っておらん。続きは中で話せば良い」
僕は目の前の女の子に案内されて家に入った。
リビングはとても綺麗で今までこんな豪華な部屋を見た事ない僕は思わず立ち止まってしまった。
「...何をしておる、早う座らんか」
「あ、うん」
女の子に言われて急いで椅子に座る。
あの子はキッチンに行った見たいだけど、あの子は一体誰なんだろう。
(綺麗な子だったな...)
何て考えながらぼうっとしていると、あの子がキッチンから湯気を立てたカップを持ってきた。
「ほれ、飲め」
「あ、ありがとう」
目の前に置かれたカップを持ち、少し息を吹き冷ましてから飲もうとしたけど、ちょっと怖くて飲めなかった。
「心配せずとも、何も入れてはおらんよ。安心せい」
僕が心配しているのがバレちゃった。
ちょっと悪い気がして直ぐに紅茶を飲み干す。
「さて、話してもらおうか」
そして僕が話そうとした途端、お腹からぐぅ、と音が鳴った。
彼女は目を丸くしている。
恥ずかしくて顔が熱い。
「なんじゃ、腹を空かしておったのか、それならばそうと早く言え」
そう言った後、料理を持ってきてくれて僕はお腹いっぱいになった。
「さて、話してもらおうか、何故お主のような男子が、この森にいるのか」
僕は理由を話した。お母さんが病気になったこと、薬が足りなくなってお母さんの分がないこと、その為に薬草を取りにこの森に入ったこと。
「...成程、薬が足りなくなったのか。」
すると女の子は立ち上がった。
「少しここで待っておれ」
女の子は部屋を出ていく。
何か失礼なことをしてしまったのかな、と不安になる。
少し経った時、ドアを開けて部屋に入ってくる。
左手には袋、右手には小瓶が握られていた。
「ほれ、薬じゃ」
「え?」
「本来ならば足りるはずの量だったはずだが、まさか足りなくなるとはのう」
薬の入った小瓶と袋が渡される。
「この袋は?」
「念の為で作っておいた予備の薬じゃ、持っていくといい」
「...ありがとう、ありがとう!」
これでお母さんの病気が治ると思うと涙が出てきた。
本当に良かった...
「しかし、この時間では危険じゃ、妾が送ってやろう」
「あ...何かお礼しないと」
「要らぬ、お主が気にすることではない。そもそももう会う事も無いじゃろうて」
「えっ...」
「本来であればお主がここに来ることは無かった。なぜならここには認識阻害、つまり無意識にこっちに来るのを避けるようにする結界が張られておった。恐らく結界に綻びが出てしまったのじゃろう」
彼女が立ち上がったので僕も立ち上がる。
「じ、じゃあせめて名前だけでも」
「...リーディア、リーディア・ノーツテイル。リーデでよい」
「リーデちゃん」
「...一つ言っておくが、妾はお主よりも何倍も年上じゃぞ」
「え?...じ、じゃあリーデさん」
すると突然僕が来た時よりも強めに玄関のドアが叩かれる。
それを聞いたリーデさんの顔が強ばった。
「こっちに来い」
「え、わっ」
突然手を引っ張られ、そばにあったクローゼットの中に押し込まれる。
「何があっても出るでないぞ、妾が良いと言うまでな」
「う、うん」
クローゼットが閉められ、足音が遠ざかって行く。
リーデがクローゼットを閉める。そして玄関に歩いて行き、ドアを開ける。そこには同族であるが彼女にとっては嫌いな人物「シェリアーナ」がいたため、眉根を寄せる。
「はぁい、リーデさん♡」
「...何の用じゃ、シェリア」
まさに月の如き金髪、ひらひらと手を振ってニコニコと憎めないサキュバスの代名詞とも言える美貌を遺憾無く発揮して笑顔で挨拶をしてきた彼女を見て溜息をつきながら話を続ける。
「あら、用がなけりゃ来ちゃダメ?」
「はぁ...、さっさと用件を言え、そしてさっさと帰れ」
「チッ...相変わらずムカつく態度ねクソチビ。どうしてアンタみたいな混ざり物が何故あの御方に気に入られているのかしら」
「ふん、そのような思想だからに決まっておるだろう」
「何ですって?」
「良いか、当代のクィーンはハーフや混種のサキュバスも同族として、差別意識の撤廃を目指しておる。お主はまさに純血主義の塊のような女じゃ、気に入られんのも当然じゃろうて」
そう、当代のサキュバスクイーン『ジェルミアナ・ペイルハーツ』は珍しい純血主義では無い聡明で穏和な性格であった。
穏和な性格であるが、実力は魔族の中で最強とも言える力を持っており、魔族のサキュバスの地位を上げた。
故にジェルミアナはサキュバス達の絶大な信頼と人気、支持を集めている。
「更に、合意無しのドレインの禁止。お主はそれを何回も破っておるだろう?」
「ッ...!そ、それは」
今まで人間の死因で多かったのは、魔族との戦争を抜きにすると圧倒的にサキュバスの合意無しのドレインによる男性の衰弱死が多かった。
ジェルミアナはこの事を重く受け止め、政策として合意無しのドレインを禁止した。
この政策により、人間とサキュバスの関係は戻りつつあり、ある程度の共存が出来るようになった。
だが数は大きく減ったものの、依然として合意無しのドレインによる衰弱死が相次いでおり、未だに根絶は出来ていない。
「で、でもね、確かに無合意ドレインの禁は何度も破ってる。だけどそこまで被害は出してない!」
「...」
「それを言うならアンタはどうなの?合意の上だけどこれまで5人は吸い殺してる。私にそんな説教出来る立場?」
「...だからこそ妾は」
「こんな風に隠居生活ってワケ?アンタがどれだけこんな事をしても、今までの事が精算出来るわけじゃないのよ」
ニタリとシェリアーナが嗤う。
「近くの村に流行病の特効薬作って渡して人間に罪滅ぼしって?片腹痛いわね」
「...妾はもうドレインはせん。このまま枯れゆくのを待つのみじゃ」
「はっ、その意気がどれだけ続くかしらね?」
笑みを崩さず、腰に手を当て顔をリーデの顔の鼻の先まで近づける。その顔は喜悦に満ち溢れていて、男であれば数秒で恋に落ちるであろう顔であった。
「私達サキュバスにとって、精気は生きる為に必須なもの。人間で言う空腹感が無い代わりに、精気不足は想像を絶する苦痛みたいね。アンタがどれだけ耐えれるか、見物だわ」
「...妾は耐えてみせる。それがどれだけの苦痛であろうとも」
「てか、気づいてる?アンタ。それ」
シェリアーナが指さした先、リーデの下腹部。服で隠れて見えない下のソレは薄らとピンク色に光り、甘く疼いている。
「残念だったわね、同じサキュバスなら服で隠されていたって、そこまで渇いている淫紋、丸わかりなのよ」
淫紋。それはサキュバスが全員持つもの。
要するに精気を魔力に変換し貯蔵する外に見える内臓のようなものである。
これが鮮やかなピンクに光れば光るほど精気不足の目印なのだ。
「...黙れ」
「そこまで渇いているなら時間の問題ね。我慢しすぎて爆発。手当り次第にドレイン、そして犠牲者を増やす。詰みね、アンタ」
「黙れッ!!!」
「アハハハハハッ!!もう爆発寸前じゃない!あー面白い。」
「貴様ッ...」
シェリアーナは窓を開けるとそこに足を掛ける。
さらに邪魔になっていたため縮小していた翼を元の大きさに戻し、大きく広げる。
「じゃ、頑張ってねー♡」
シェリアーナはそのまま飛び去る。
静寂が訪れる。
「...もう出てきて良いぞ」
ゆっくりとクローゼットが開かれる。
少年の顔はリーデの過去を聞いてしまったため、とても心苦しそうにしている。
「お主が気にする事ではない。どうせもう会うことも無いのだからのう」
「で、でも...」
リーデはゆっくりと少年の元へ歩き、顔をゆっくりと包むように手を差し出す。
少年の目には、ただの美しい少女にしか見えなかった。
「その気持ちは嬉しい。だがその気持ちはお主が本当に与えても良い者に捧げるのじゃ。きっとそれがお主にとって良い事なのだからな」
「ぼ、僕はリーデさんの事が」
「馬鹿者」
「あいたっ」
リーデが少年の額をコツンと軽く指で突く。
「お主はちゃんと人と愛し、人として生を全うせよ。良いな?妾のようなサキュバスでありただ長生きしとるだけの婆に、執着せず...な」
だが、と言葉を続ける。
「くふふ、このような婆を少しでも好きと言ってくれたのは好ましいのう。」
「さて、お主はこれから眠りにつき、目覚めればお主が帰るべき場所に戻る。」
その言葉を聞いているうちに意識が薄れてくる。
「ま、待って...」
「これはちょっとした褒美じゃ。では、強く生きよ」
薄れていく意識の間、微かに唇に柔らかい感触を感じた、気がした。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
僕が目を覚ました時、いたのは僕が住んでいる村の門の前だった。
あれは夢だったのかと思ったけど、右手に持っている袋を見てやっぱり夢なんかじゃないと思った。
「ロイ!良かった...無事で本当に良かった...」
そんな僕を見つけてお父さんが駆け寄って抱きしめてくれた。
「ごめんなさい、お父さん。どうしてもお母さんのために...」
「良いんだ、お前が無事に帰ってきてくれただけで...」
他の人も良かった、大丈夫かって僕の事を心配してくれていた。
「ん?ロイ、その袋は?」
「あっ、これ、薬だよ」
「何!?それは本当か!」
「う、うん」
村の人達もこれで乗り越えられるって口々に言ってた。
僕としてもとても嬉しい。お母さんも村の人達も助かるから。
でも僕の頭の片隅には、あの人、リーデさんのあの悲痛な顔がずっとこびりついていた。
月日が経って流行病の時期が終わり、皆が落ち着いた時もずっとあの人と一緒に居たい。一緒に居てあの顔を幸せにしたいって思いは変わらなかった。
あの時感じた唇の柔らかい感触を思い出しながら。
あの時から何年経ったか...妾は変わらず一人で屋敷にこもり、あの少年が居る村の流行り病の特効薬や、その他薬の調合をして過ごしていた。
「ふぅ...少し、休憩するかのう」
そのままソファに倒れ込む。
頭に浮かぶのはあの少年。
(確実にあの子は、妾のことを...)
そこまで考えて辞める。
自分に人を愛する資格は無いのだ。いくら合意の上でやった事でも、人を殺してしまった訳だ。そんな事許されるわけがない。
自分の罪は、永遠に消えることなく、自分に重くのしかかる。精算など出来るはずもなく、ただの自己満足のためにあの村のために働いているのだ。
(それに、今あの少年に会うのはマズイ...)
精気への渇望が果てしない。
元々竜種などの多混血だということもあり、底知れない魔力と精気の飢餓感によりおそらく普通のサキュバスよりも苦痛が酷い...と思う。
(まだ耐えれる程ではあるが...下手をすれば暴走しかねん)
このまま年月が過ぎて、さっさと朽ち果ててしまいたい。と思ったが、やはり竜種の混血。そう簡単には死ねない。
(ああ...別に混血なのはどうでも良かったが、この時だけはこれ程混血なのを呪った日は無いな)
どうするか...と悩んでいると、玄関の扉が控えめにノックされた。
(む...誰だ。...シェリアの奴か)
ため息をつき、玄関に向かい扉を開ける。
そこに居たのはなんと、あの時の少年だった。
年月が経って歳を重ね、どちらかと言えば青年とも言える容姿をしており、その顔は会えて嬉しいという表情に満ちていた。
「なっ...!お主、何故ここに...!?」