精豪ぐだおくんがマシュを守るために自分を邪魔する他のマスターたちからサーヴァントを寝取って更に最強になっていくお話 作:LLLSTAR
このカルデアには、不幸な青年がいる。
名前を藤丸立香というその青年は、本来ならば人類最後のマスターとしてカルデアの仲間たちと共に世界を救う戦いに臨むことになるはずだった。
しかし……この世界では、彼は人類最後のマスターではない。
十数名残ったマスターの内の一人……この世界では、彼以外にもあの爆発事故で生き延びた者がいたのである。
デミ・サーヴァントとして覚醒したマシュと共にどうにか初のレイシフトを完了させた立香を待っていたのは、本来ならば喜ぶべきそんなニュースだった。
実際、彼も喜んだし、頼りになる仲間たちが増えることに感謝もしていたわけだ。
……だが、そんな立香の喜びは他の誰でもない生き延びた魔術師たちの手によって打ち砕かれた。
あの爆発事故を生き延びた、生き延びてしまった者たちは皆、一様にクズばかりだったのである。
これは別におかしな話ではない。魔術師というのは、往々にして道徳心が欠けているものだ。
人類史が焼却され、世界が滅亡の危機に瀕しているこの状況も、彼らにとっては自身の名を上げるチャンス程度にしか思っていない。
今、冷凍保存されている魔術師たちの中には、きっとまともな考え方を持つ者もいたのだろう。
そうではない、自分以外の人間や世界のことなど屁とも思っていない人間たちばかりが生き延びてしまったことが、この世界のカルデアに不幸をもたらす。
生き残った魔術師たちがまず最初に行ったことは、カルデアの職員たちの買収であった。
レイシフトの優先権、配給する素材の数、有事の際のバックアップ……そういった部分で自分たちを優遇するよう、魔術師たちはそれぞれが持つ財力や権力を用いて職員を抱き込み、派閥を作っていく。
無論、仮の代表となったロマニ・アーキマンやレオナルドダヴィンチのようにそういった誘いに乗らなかった者もいたが……誘惑に負けた職員たちがそれぞれの魔術師についてしまったことで、カルデア内にはいくつもの派閥が生まれ、対立関係が出来上がってしまった。
そこから魔術師たちは己の財力を活かし、信じられない回数の英霊召喚を行った。
より多くの、より強い英霊を配下とするためにカルデアの英霊召喚システムを多用した彼らの下には、その願望通りに大量の英霊が呼び出され、ちょっとした軍勢にも近しい数のサーヴァントたちが集結している。
その中には特定の縁がなければ召喚されないはずのサーヴァントたちの姿も数多くあり、それが彼らの行った召喚の回数を物語っているだろう。
彼らがそこまでしてこの機会に手柄を立てようとしているのには理由がある。
人理焼却の危機を救う戦いの中で名を上げ、英雄となり……デミ・サーヴァントとなったマシュ・キリエライトを我が物にすることだ。
英霊と人間が融合した存在であるマシュは、他に類を見ない希少な存在……彼女を手に入れることができれば、様々な方面で役に立つ。
実験材料にするのもいい。彼女に興味をもつ機関に貸し出すことで相応の対価を得ることだってできる。単純に戦力としても使えるだろう。
何より、彼女は可憐で美しく魅力的で健康な少女だ。
傍に置いておくだけで一種のステータスになるし……デミ・サーヴァントに子供を孕ませることができれば、その子はきっと優秀な素質を持つ魔術師として産まれてくるだろう。
男も女も、生き残った魔術師たちは誰もがマシュを欲しがった。
そんな彼らは最悪の一致団結を見せ、立香を地獄の底へと叩き落す。
まず、一般人である彼はマシュのマスターとして相応しくないとダヴィンチたちに訴え、そのマスター権限を取り上げた。
ロマニもダヴィンチも抵抗したが、多くの職員たちを抱き込んだ魔術師たちの行動の前には成す術がなかったのである。
わずかな抵抗として、マシュのマスター権限は誰のものでもなくカルデア預かりにするということで、彼女が生き残った魔術師のうちの誰かのものになることを避けることができたが……それも立香を救うことにはならない。
レイシフトの中でマシュと立香が深い信頼関係を結んだことは明らか。マシュを手に入れたい自分たちにとって、立香が障害となることもまた明らかだ。
というわけで、魔術師たちは抱き込んだ職員たちを使って彼がこれ以上力を得ることができないようにした。
理由を付けて召喚システムを使わせず、宝物庫や修練場などに向かうレイシフトの優先権も最低にし、どう足掻いても何もできないようにしたのである。
これにより、立香の命運は尽きた。
サーヴァントを召喚できなければマスターとして戦いに出るどころではない。彼は次々とサーヴァントを召喚して力を付ける魔術師たちの後塵を拝するだけの男になってしまったのである。
そんな立香を哀れに思う職員たちもいたが、強大な力を持つ魔術師たちの手前、表立って彼に協力することはできなかった。
育成用の種火や素材の配給も滞り、完全に除け者にされてしまったように見える立香は今、ダヴィンチの工房にやって来ている。
「いつもありがとう、ダヴィンチちゃん。お陰で助かったよ」
「いや……こんなことしかできなくてすまないね。本当に、ごめんよ」
今、立香の手にはダヴィンチがこっそりと回収した概念礼装が握られている。
サーヴァント召喚を連続して行った魔術師たちが不要な物を売却しに来た際、彼らにバレないようにちょろまかしたものだ。
全てが決して上等なものとは言えない礼装ではあったが、何も持たない立香にとっては本当に有難いものでもある。
笑顔を見せ、感謝の言葉を自分に述べる彼の姿を見つめながら、ダヴィンチはこんなことしかしてやれない自分自身の無力さを呪うように俯く。
「……マシュのことだが、できる限りの抵抗はしてみるよ。魔術師たちは彼女のことを実験動物か自分たちの子供を孕ませるだけの雌としか思っていない。そんな奴らのものになってしまったら、マシュを待っているのは不幸な未来だけだろうからね」
「うん、ありがとう。俺もやれることを頑張ってみるよ」
どんな状況でも希望を失わない立香の性格は間違いなく長所だ。
しかし、今の状況ではそれがとても痛々しくある。
今の彼に、いったい何ができるだろう? マシュを守るために努力しようとしている彼のことは認めるが、立香にはそのための力がないのだ。
工房から去っていく立香を見送りながら、そんなことを考えていたダヴィンチであったが……そんな彼女の思いとは裏腹に、神は立香のことを見捨ててはいなかったのである。
幸運その一、この日から間を置かずして、立香の下に特異点Fこと冬木で縁を結んだキャスターのクー・フーリンが召喚されたということ。
これにより立香はサーヴァントを得て、名実ともにマスターとなった。サーヴァントがいないからという理由で止められていた配給も復活し、彼の下に少量ではあるが素材や種火が届くようになった。
幸運その二、立香が希望を捨てない性格であったこと。
生き残った魔術師たちからの執拗な嫌がらせを受けても、立香の心は折れなかった。むしろ、絶対に諦めてなるものかと笑顔の裏で対抗心を燃やすほどだ。
こんな外道たちにマシュを渡すわけにはいかない。絶対に……彼女を守ってみせる。その想いが、立香の中に眠る英雄としての才能を呼び起こし、彼を強くしていた。
そして、最大の幸運は……魔術師たちがまともにサーヴァントを育成していなかったということ。
一気に数十人ものサーヴァントを召喚したはいいが、彼らを育成するための時間や素材には限りがある。
それを理解しながらも召喚を続けてしまったのは、最も優れたマスターとしての座を求める魔術師たちの虚栄心が原因だろう。
そうやって召喚したサーヴァントたちを、ある者はその強さを理由にして、またある者は自分の好みを理由に、育成を優先する順番を決めた。
要するに、このカルデアには召喚されたはいいがマスターたちに相手にされていない英霊たちが数え切れないほど存在しているのだ。
立香からマシュのマスター権限を取り上げた者たちは、同時に彼に一つのひらめきを与えてしまっていることに気付かない。
一度結ばれた契約だとしても……その気になれば解除させることができるということを、彼らは立香に教えてしまった。
決して諦めない心と世界を救うだけの力を持った英雄が、ルーン魔術の達人の力を借りつつ大切な相棒を奪還するためならば何でもしてみせると覚悟を決めた……その際に発揮される爆発力が如何に恐ろしいかということを、魔術師たちは知らない。
彼らが踏みつけ、奪い、嘲った立香が、虎視眈々と隙を伺い、牙を研いでいることになど気付くはずもない。
魔術師たちが手柄を奪い合うライバルたちを牽制する中、立香は最初の標的に狙いを定めた。
強大な力を持ちながらも無能な主の判断のせいで放置されている聖槍の使い手……騎士王の名を冠するそのサーヴァントが立香と出会うのは、彼が覚悟を決めた翌日のことだった。