3の爆発事故イベント(超特殊能力が貰えるところ)のくだりをかなり改変しています。
パワポケ3のイベントで、寺岡さんは赤面しながら『絶倫』を渡してきます(野手だと確か『神速』でしたっけ?)。

初出 ◆Freege5emM 名義で『パワポケでエロパロ17』94-102、2010年10月14日です。
https://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1286203980/

※ハーメルンへのマルチ投稿に関連して、他サイトへの転載情報を下記にご案内します。
pixiv(https://www.pixiv.net/users/3129576)に公開しています。
初出では無題、pixivから改題しました。

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寺岡さんがまだ金属製な1・3主に処女を捧げたかったお話

 

「あーいらっしゃいいらっしゃい、忙しいところわざわざ来てくださって、ありがとうございます」

 

大学の通用門の近くに、薫は立っていた。

暖かそうなセーターと、細い脚がさらに細く見えるシンプルなロングパンツ。その上から、膝下まで裾のある白衣を羽織っていた。

少し前から吹き始めた木枯らしが、長い白衣を軽くなびかせていた。

 

「寺岡さんっ、そ、そんな走らなくてもすぐ行くよ!」

 

門から走り寄ろうとする薫を、小波は制止する。その表情が、いつかの自動車事故を思い出させたからであった。

彼女はひとつの対象に意識が集中してしまうと、他のものに対して注意散漫になってしまう悪癖があった。

彼はその危うさを、一度身をもって知ったことがある。もっとも彼女に自覚があったかは分からないが。

 

小波が薫からの電話を受けたのは、数日前のことだった。

『サイボーグ用のパーツで、すごいものができました。自信作なので、近いうちに大学に試しにきてくれませんか』と彼女は話していた。

彼女の『自信作』という言葉に対して、不安を覚えないわけでもなかったが、彼の足は大学へ向いていた。

彼がプロペラ島へ再び乗り込む日は、そう遠くなかった。彼女と顔を合わせるのも、最後になってしまうかもしれない。

 

「何でも、12月に野球の大会に出るらしいじゃないですか。

 キミにはいつも色々とお世話になってますから、できれば、それに間に合わせたかったんですよ」

 

小波から見て、いつになく薫は上機嫌だった。灰色の秋空の下、休日で閑散とした学内を、彼の腕を引っ張りながら歩く。

高卒でプロ野球選手になった彼にとって、大学は未だに腰の据わりの悪い場所であった。

彼女の研究室を訪ねるときも、彼は足早に構内を過ぎて、何度も彼女の実験の犠牲となった研究棟の扉をくぐっていた。

秋風に乗って、無造作に纏められた彼女の髪から、研究室と違った匂いを感じた気がした。そういえば、いつもの寝癖が直っている。

「寺岡さん、もしかしてあの門でずっと待ってたの? 寒かっただろう」

「え、いいや、そうでもありませんでした。何ででしょうね」

「もしかして、壁の一枚二枚ぶち抜いてるから、外と研究室の寒さが大して変わらないとか?」

「あっ、ひどいですよーそんな言い方。そんなこと言う人には、自分の最高傑作は差し上げませんから」

 

どうやら、薫にとって今回のパーツは相当な出来栄えのものらしかった。

いつも発明品に対しては自信たっぷりの彼女であったが、彼女から最高傑作という言葉を聞いたのは初めてだった。

 

「すごい自信があるみたいだけど、一体どんなパーツなんだい?」

「まぁまぁそう焦らない。今からパーツを持ってきますので、キミはここの部屋で適当に座って準備しててください」

 

薫の研究室は真新しかった。大量の電子機器が隅に追いやられ、かろうじて応接用らしきスペースがある。

また無茶な実験をして、どこかの部屋を吹き飛ばしたのだろうか。どうしてもよくない連想をしてしまう。

それでも最近は、小波は爆発についてうるさく言わなくなった。

慣れ、というのもあったが、実際こんな彼女のきわどい研究によって、彼は命を永らえたこともあった。

そもそも、彼女が研究棟を爆破しなければ、ふたりは出会わなかった。今更諫めるのも気が進まなかった。

座布団の乗せられた回転椅子と、病院によくある革張りの長椅子。座布団は彼女の指定席だった。

彼は長椅子に座って、サイボーグとしての内部機構の確認を行う。出かける前にも念入りに行ったことを、今一度。

大学までの道中では問題なく稼動していた。ショート箇所も無い。かさかさ虫やウイルスもいない。それでも油断は禁物。

いつかなど、放り込まれたキムチの匂いが取れないまま中身を見られて、彼女に笑われたことがあった。

サイボーグになる前よりも、身だしなみ(?)に気を遣うようになったかも知れない。

 

「……って、おい。いきなりノックもせずに開けるなよ!」

「いいじゃないですかー、どうせ自分は、キミの体のことは隅々まで承知してます。

 だいたい、これから腹に手を突っ込まれて中身を弄繰り回される人間が、そんなこと気にしてちゃいけませんって」

「気にするよ! 寺岡さんならともかく、こんなところ他人に見られたら大騒ぎだろうが!」

「その点はだいじょうぶです。自分の研究室は危険地帯扱いですから。立入禁止の紙切れ一枚で、誰も近付かなくなります」

 

ドアを閉めると、薫は悪びれた様子も無く、小波の隣に座った。腕には真新しいサイボーグのパーツが抱えられている。

彼の人工皮膚に手を触れた瞬間から、彼女の目つきが変わる。

うきうきしていた子供のようなそれが、厳しい自戒を背負う科学者のものへと変わっていた。

野球どころか、トンネル工事やボディガードさえこなす彼の身体は、ある意味人間の肉体よりも丈夫である。

それでも彼女は、デリケートな実験器具や精密機械を扱うよりも慎重に、彼の身体に触れていく。

程なくして、彼女のパーツ取り付け作業は終わった。

 

「今回のパーツのコンセプトは、単純な燃費の向上です。12月に、野球大会がありましたよね。

 それまでに、どうしてもキミの役に立つものが作りたかったんです。

 でも自分は、あまり野球について詳しくありません。急激に野球が上手くなるパーツは無理でした。

 だから代わりに、自分の専門分野……エネルギー工学の今までの成果を、そのパーツひとつに集積しました。

 キミの身体のエネルギー効率は、今までの約2倍に向上した筈です」

「2倍……2倍ってあっさり言うけど、それって、実はすごいことじゃないのか」

「……えへへ。伊達に研究費ねだってた訳じゃないですよー。おまけもあるんですが、それはまた後で。

 先に、今取り付けたこのパーツの最終テストを行いましょう。稼動状態に異常はありませんか」

 

小波の隣に座り直した薫が、真剣そのものの眼差しで彼の顔を見上げる。

彼女の声に合わせて、反射的に彼は顔を向けた。下縁の無いハーフリムの眼鏡越しに、息のかかりそうな距離で視線がぶつかった。

疾うの昔に失くしてしまったはずの心臓が、脈打つ幻覚がした。かろうじて残っていた脳が、記憶の洞から呼び出したのか。

先ほど外で感じた匂いが、電子工学の粋を凝らした嗅覚受容器から、電気信号となって知覚される。

彼はそれが、生々しくも懐かしく思われた。生身の肉体を持っていないことを、忘れてしまうほどに。

 

薫の手が小波の頬に触れた。素人目には、人間のそれと見分けのつかない人工皮膚。

しかし血管が通っていないからか、血色が変わる事は無く、また体温も無い。触れた指先から、彼女の体温を奪っていく。

薫はそのまま、もう片方の手を彼の膝上に添えた。長椅子の人工皮革と、彼女の白衣が擦れる音がした。

かすかな機械の稼動音しかしない静かな研究室で、彼女はくちびるを重ねようとした。

がくん、と体勢が崩れるのを薫は感じた。長椅子の脚が小さく軋みを上げる。

一瞬の後、彼女の身体は、小波の腕に抱き止められていた。前歯に軽い痺れが残っていた。

 

「……かっこ悪いですね。初めてなせいか、失敗しちゃいましたよ」

「中腰なんて、そんな無理な体勢じゃ失敗するに決まってるだろ。血出てないか?」

「えぐい鉄の味がしますね。でも、これはキミの味ですよ」

 

薫は顔を赤くしてはにかむと、小波の肩に腕を回した。

彼女の上気した熱が、機械の体に広がっていく。

その熱が、彼の唯一生きていた脳まで伝わったような気がしたところで、薫は口を開いた。

 

「分かってましたけど……冷たいですね、キミの身体は」

「……寺岡さん」

「でも、この中には自分がいます。寺岡薫がここにいた証が、いくつも」

 

薫は小波の胸板に、いとおしげに頬ずりした。その皮一枚隔てた先には、彼女手製の生命維持装置が稼動している。

小波の意識は、ふわふわと下から浮かされていた。幾年振りの人肌の温もりが、ついていないはずの涙腺に沁みた。

 

「無理を承知で、小波さんにお願いがあります……自分を、抱いてもらえませんか」

「寺岡さん、それは」

「ええ、分かっていますよ。サイボーグに水気は厳禁。所謂性行為を行うための機能は、キミには搭載されていない」

 

そのこと自体は、小波が薫と出会って早々に分解されたときに分かっていたことだった。

唐沢博士の技術力を以てすれば搭載も可能だったかもしれないが、博士にはそれを搭載する理由が無かった。

 

「で、でもその、そこらへんはキミの方の経験で何とかならないかな、なんて」

「経験って、俺は一体どんな目で見られてたんだ?」

「いや、その、深い意味は無いですっ、少なくとも自分よりはマシかなーと」

 

小波は薫を抱えたまま立ち上がると、しどろもどろのままの彼女を長椅子に横たえた。

ばさりと広がった白衣。セーターの向こうの肌が汗ばんでいるのが分かる。そのまま彼は彼女に覆いかぶさった。

 

「その、残念ながら、この身体にここまで触れたのは寺岡さんだけなんだ」

「この身体に、というのが少し引っかかりますが……それなら、こういうのはどうですか?

 ほら、キミと出会った時、自分はキミの身体を分解して隅々まで調べちゃいましたよね。

 だから、今度は自分の番です、ほらどうぞ、隅々まで遠慮無く調べちゃってください、なんなら頭蓋骨とか開いて脳を見ても――」

 

小波は人差し指と中指を薫のくちびるに乗せた。荒い吐息が指の腹をくすぐる。

 

「もう一回、キスしていいかな。今度は焦らないで」

「よろしくお願いします……」

 

 

 

 

再びくちびるが交わされる。最初は浅く、次はくちびるを抉じ開けて口内へ舌を滑らせる。

一瞬走った金属特有の痺れさえ、逃さないように、もっと深く、絡み合わせていく。

頭がぼうとして、意識が昂ぶっていく。遠く離れた肉欲の残滓に、深く酔いしれていく。

 

「む、むぐぐっ、むむぅううっ」

 

長椅子を叩く掌の音で、小波は我に返った。薫は、すっかり息を切らしていた。

 

「……ごめん。結構長いことこの身体だったものだから、つい呼吸するのを忘れて」

「し、死ぬかと思いましたよ小波さんっ。それにあんなところまで……」

「隅々まで調べちゃって、というのはやめにする?」

「ちょっと驚いただけですよ。まだまだこれからです、あまり面白くない身体かもしれませんが、さぁ遠慮無く」

 

小波は黙って頷いた。柔らかいセーターを臍下からたくし上げると、薫の素肌が現れる。

彼女が息を呑んでも、彼はゆっくりとした手の動きを止めない。

白衣と同じくらい眩しい下着が、彼の前に晒された。白い肌を彼の陰が包んで、長椅子とのコントラストが淡くなっている。

 

「あ……う……その、変じゃないですか。ほら、自分は、あんまり普通の女性らしいわけじゃないですし」

「ううん。可愛いと思うよ。でも、見ただけじゃまだ分からないことがあるから、もっと詳しく調べようか」

 

フロントホックのブラに小波は手をかけた。経験が無さそうに見えて、こういうところの用意はいいらしい。

あの大学の門で待っていた時から、こうなることを考えていたのだろうか。

触れれば溶けてしまいそうな肌に、小波は指を這わせる。それでも薫の肌は、温みを持って指を押し返す。

やや控えめなふくらみまで手が伸びると、不意に彼女は肩口を強張らせた。

 

「もう少しゆっくりにしようか」

「いや、これは、あれです、た、単なる反射ですよあははっ」

「緊張してるなぁ」

「そんなことは……え、ええ、ありますよ、ありますとも」

 

これ以上ないくらいに薫は頬を紅潮させていた。人工皮膚を通しても分かる熱さと息遣い。

さらに手を伸ばして胸に指を埋めていく。心臓の鼓動が指先から伝わってくる。指先で感じ取って、彼は目前が眩む思いがした。

 

それだけではない。

類稀な才能。それを注ぎ込むための目標。自分の歩む道に対する自信。尊敬できる恩師。温かい肉体。

記憶が戻っていくにつれて、強く渇望するようになったもの。

かつては全て近くにあったのに、いつの間にかどこかへいってしまった。

 

「はぁっ、こ、小波さん、すこし、痛い、です」

「……ごめん。あの、また俺がやり過ぎたら、止めてくれないか」

 

今なら、欲情に突き動かされて止められないなんてことは、きっと無いから。

喉元まで出かけた言葉を、小波はかろうじて飲み込んだ。

 

「いーや、やりたい放題どうぞっ、ほら、高圧電流流したりとか、爆弾プレゼント渡したみたいに」

「そんなこともあったな。やりたい放題って自覚はあったんだ」

 

上気して髪の張り付いた上に、妙に必死な形相な薫を見て、小波は微笑を零した。

爪先でそっと稜線をなぞる。アンダーバストからもっと内奥に近いところまで揉み込む。

呼吸に合わせてわずかに震える頂を扱く。強弱、緩急の幅が広がっていく。彼女の吐息のトーンが変わっていく。

 

「声。我慢してない?」

「そんな、あの、恥ずかしいじゃ、ないですか……あうぅっ」

「俺は寺岡さんの、もっとそういうところが見たいな。今まであまり見せてくれなかったし」

「ひぅ、そんなことはないはずで……んんっ!」

 

不意に小波は、薫の耳朶を指で触った。胸に意識が向いていた中で、これは不意打ちだったようだ。

 

「寺岡さん、今日は最初から髪梳かしてきたよね。触ってもいいかな」

「うう、今までは寝癖がついていても何とも思わなかったのに。キミのせいですよ?」

 

薫の上半身を起こさせ、小波は膝立ちになって彼女を抱き締めた。

ずり落ちたセーターの裾の下から彼女の背中に手を回し、同時に耳元で囁く。

 

「もっと明るいところで調べたいんだけど、どうかな」

「いいですとも……ちょうど、キミの陰になってて暗いなって思ってたところなんで」

 

 

 

 

いつも使っている回転椅子の上に、薫は座っていた。小波は床に膝をついて、彼女と正対している。

皺になった白衣と着崩れたセーターが、部屋の蛍光灯に照らされてよく見える。ひどく倒錯的な光景であった。

研究室で淫らな行為に及んでいるこの状況に、薫も小波も陶然としていた。

 

「そ、そんなとこ舐めてもおいしくないですよ」

「失礼な。サイボーグだってちゃんと味は分かるんだ。しっかり調べておかないと」

「ううう……」

 

小波は薫の臍を堪能していた。敏感なところではないが、細身の彼女は、下腹部から内臓まで愛撫されている錯覚がしていた。

手は両膝の横に。その上から、彼が手を組んで重ねている。少しでも感じようものなら、すぐに分かってしまう。

たまらず彼女は指を強く絡ませる。彼女の膝まで彼は身体を密着させている。ほんのわずかな震えさえ、無防備に伝わってしまう。

 

「くすぐったいですって、そんな、ところばっかり」

「本当に、それだけかな」

「そんなの分かりませんよ……」

 

ついに小波は薫のロングパンツに手をかけた。

彼女は顔だけ渋って見せたが、彼が膝元から見上げてくると、わずかに回転椅子の座布団から腰を浮かせた。

ブラジャーよりやや曇った色合いの、白い下着が顕わになった。もっと手を引くと、薫の細い脚が蛍光灯の光を照り返してくる。

籠っていた匂いが、部屋の中に拡散していく。明らかにそれは女の匂いであった。

 

「あの~寺岡さんこれは」

「あーっ、だから、だから恥ずかしいって言ったじゃないですかぁ!」

 

下着の曇った色合いは、彼女がつけた染みだった。

彼にとっても予想以上の事態だったらしく、まじまじとその場所を見つめてしまう。

サイボーグでなかったら、危うく唾を飲み込んでしまうところだった。意を決し手を伸ばそうとして、彼はあることに気付く。

 

「これは、紐の――」

「いいい言うのはやめてください、こんな下着なんて普段着ないんですから……」

 

普段薫がつけない香水、妙に準備の良い下着、そして薫の反応。

加藤先生に頼ったな、と小波は勝手に納得した。極亜久高校のときといい、あの先生にはつくづく世話になっている。

不慣れな睦事のために、羞恥を忍んで色々やってきた薫が、いじらしかった。

蝶々結びの一端を引っ張る。地味で清楚なはずの白い下着が、ひどく扇情的に見える。

荒い息遣いはひとり分。張り詰めた視線がふたり分。薫の秘所を隠していた最後の一枚が剥がされる。

生まれて初めて異性の目の前に、どうしようもなく火照った女陰を曝した。余韻に浸る間もなく、彼の指が侵食を始める。

反射的に薫が膝を閉じようとしても、既に両脚の間に彼の身体が割り込んでいた。彼女はまったくの無防備だった。

 

「もしかして、外を歩いているときから、こうされるのを想像していたんじゃないか」

「ふえ……どどどどうしてそんなことを」

「最初から、いつもと様子が違ってたし」

 

中途半端に脱がされたロングパンツが、膝頭と一緒にびくつく。単語にならない嬌声が、無機質で静謐な部屋に響く。

彼の指が、慎ましやかな花芯を撫でる。細く白い肢体がわずかに跳ねる。薫愛用の回転椅子が、長椅子より露骨な不平を漏らした。

背もたれにかかった彼女の長い髪が揺れる。彼が秘所に顔を近づける。

臍下から、腿からその気配を感じる。迫ってくる視線に灼かれていく。ついに彼は秘所にくちづけた。

 

「ひゃぅうっ、きゃぁあ……んんんっ」

 

押し殺しきれなくなった喘ぎが、研究室の白壁を叩く。零れ落ちた潤みが、回転椅子の座布団を濡らした。

欠けてしまった物を取り戻すように、ひたすら小波は薫の熱を貪った。

昂ぶりが血を伝って、神経を駆け抜けて、薫の意識を追い詰めていく。

小波は最初のキスよりも容赦無く秘所を責め続けた。

 

「あうう、こ、小波さん、あ、あの、なんだかっ」

「もっとして欲しい?」

 

花芯を舌で舐りながら、秘裂に指を沿わせる。粘ついた水音が、耳から入って脳髄を犯す。

燎原と化した肢体の熱で、じくじくと炙られて溶かされていく。世界が閉じていって、彼の蠢きしか感じられなくなって。

目蓋の裏が眩しい。そのまま自分がどこかに抜け落ちてしまいそうで、彼女は手を強く握った。

すべすべとした彼女の腿が、彼の頬をしめつける。そんな柔らかい圧迫感が、彼には心地よく思えた。

彼女の尖った花芯を直接舌と歯列で嬲りながら、同時に襞に這わせた指で裏手から刺激する。

 

「きゃあっ、もうだめ、だめです、そんなに、いじっちゃっ……!」

 

回転椅子が、またきいきいと軋みをあげた。痙攣してバランスを崩しそうになる薫を、小波は腕や肘を使ってかろうじて支える。

彼女の愛液がしどけない二人の姿を濡らしていく。切れ切れの吐息が、ずれた眼鏡の曇りを上塗りしていた。

激しい口と指との応酬に、彼女は絶頂へと押し上げられていた。

 

 

 

 

服装をある程度整えた薫は、渋い顔で自分が愛用している回転椅子の座布団をつまんでいた。

 

「あーあ、こうやってはっきり痕跡が残されていると、自分の事ながら浅ましいですね。これも洗濯しないと」

 

座布団には、彼女が行為の間に滴らせていた愛液の滲みが広く残っていた。

下着や服の着替えは用意していても、こちらの換えは想定していなかったようだ。

 

「いやに静かじゃないですか。通常の動作に問題は無いと見えますが……まさか、どこかショートしてるんですか」

「少し、ぼーっとしてただけだよ。こういう形で、寺岡さんに触れるとは思ってなかったし」

 

小波は苦笑していた。さっきまで快楽に弄ばれていた姿態は、なまめかしくも蠢惑的であったが、

ほんの少しのやり取りだけで、彼女が紛れもなく寺岡薫であることを実感させられた。

 

「結局、もらってくれませんでしたね、自分のはじめて。どうしてでしょうか。

 他はともかく、ここのところだけはあのパーツが動作不良です。これはバージョンアップが必要です」

「寺岡さん……俺、人間に戻れないのかな」

 

薫はじっと小波の顔を観察した。何かしらの突込みが入ると予想していたのに、また予測を外してしまった。

行為の後の気だるさのせいで感傷的になったのか。あのパーツが一応稼動している以上、この程度でエネルギーが不足することは無いはずだった。

 

「自分にできるか、と言われたら、無理です。まぁ時間をかければ、何か閃く可能性は勿論あります。

 ですが、自分は……自分は、今年中に、カナダの研究所の方に行ってしまうんですね。

 その、サイボーグのパーツとか、勝手に作って売ってたのがバレそうになりまして。

 もうここには居られなくなってしまいました。だから、もし何か思いついても、キミに試すことは――」

「――お金ってもしかして、去年の俺の件かな」

 

小波は、薫がそんな小細工をするような性格ではないと分かっていた。

彼女が研究費をねだるときは、当然のような顔で請求してくるはずだった。

しかし、唐沢博士でさえ切り詰めて200万円はかかると言った生命維持装置を、彼女は開発費用も含めて合計140万円で作ったことになっている。

他にも研究資金を提供したことがあったとはいえ、明らかに計算があっていない。

 

「キミが気に病むことはないです。もともと自分は厄介者ですから。コネとお情けで、かろうじて置いてもらってたんです。

 ……ところで、自分の質問には答えてくれないんですか?」

「今まで、俺は寺岡さんとどこか遊びに行ったり、ご飯食べたり、話をしたり、人間らしいことも結構やってたよね。

 けれどああやって、寺岡さんに触れてると……どうしても、俺の身体は人間じゃないんだって、思ってしまうんだ。

 気持ちと身体がずれてて、他の誰かが寺岡さんを抱いてるみたいだった。それ以前に、キスもまともにできないし」

 

研究室に沈黙が降りた。蛍光灯の唸りさえ聞こえるほどだった。

薫はしばらく黙りこくっていた。小波がさっきの言葉を後悔し始めた頃、彼女は口を開いた。

 

「あの、それじゃあ、自分が、小波さんを人間の身体に戻せたら、その時は今日の続きをしてくれますか?

 それなら、あっちでも頑張れそうな気がしてきますから」

「そうだね。何か必要なものがあったら、言ってくれ。俺も頑張って手に入れてくるから」

「期待、しちゃいますよ。そりゃあもういろんな意味で」

 

薫はそわそわしながらも、はっきりと言い切った。

彼女の研究に小波が投資する。いつものことだった。研究対象が、サイボーグから生体組織に代わっただけ。

 

「ところで、最初に言ってたおまけって何?」

「ああ。それはですね、追加のパーツがあるんです。何ですかその目は。え? 今度は普通の野球用パーツですよ!」

 

 

 

 

世間は慌しい12月になっていた。

乾燥した、抜けるような冬晴れの空。普段あまり外出しない生活だったからか、太陽の光がじわりと熱い。

国際線の乗り入れる空港は、いつでも独特の雰囲気がある。小さなスーツケース一つを引いて、薫は明るいフロアを歩いていた。

 

今頃、彼は遠くの島で戦っている。彼女の作ったパーツは、問題無く稼動しているだろうか?

残念ながら、その野球大会は限られた人間しか観戦できないものらしい。

一度くらいは、彼が野球をするところを見ておきかった。もっと触れ合いたかった。今更詮無い事であっても、彼女はそう呟かずにはいられなかった。

 

「……何が『隅々まで遠慮無く』だったんですかね。結局あなたには、一番大事なことを言えませんでした。

 あなたは、黙っていたことを知ったら怒るでしょうね。師匠にも呆れられるだろうなぁ。

 まぁ、ちょっとやらなきゃいけないことが増えただけです」

 

空港のガラス越しに、また一機ジェットが空へ飛び立っていくのが見えた。

もう少しで、薫が搭乗する便が滑走路にやってくる予定だった。

 

「あきらめたりしませんよ。この寺岡薫、小波さんの依頼に応えられなかったことはありませんから」

 

(終わり)

 

 


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