※この作品はR-18です。

アイマスのアイドルが童貞をもらってくれるシリーズ   作:ふりーじ屋/家庭内禁書

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経験済み輿水幸子さんが担当プロデューサーのお誕生日に童貞を優しく卒業させてあげるお話

 

「ぷっプロデューサーさんへのプレゼントは……ボクですよ! どうです、驚きましたか!」

「えっ」

 

 アイドル・輿水幸子の声は、高く大きかったが震えていた。プロデューサーが目を丸くしたのを見るやいなや、幸子はするりと背を向けて、女子寮のキッチンカウンターを素知らぬ顔で片付ける。

 

(まったくプロデューサーさんは……ボクの担当のわりに、サプライズを仕掛けられる側としての作法、なってませんねぇ)

 

 まな板。包丁。フォーク。すべてすすいで洗いかごへ。キッチンペーパーまでかごへ放り込みかけ、慌てて戻す。鶏もも肉200グラム2枚は余計な脂を剥いでぶつ切りにするまでは済んでいたので、漬け汁入りビニール袋へ突っ込んで空気を抜いて冷蔵庫へ。指先のぬるぬるが少し残っていた。幸子は自分の指が生姜や醤油や鶏脂で臭くなっていないか心配になった。あいにく、流し台に幸子がお気に召すハンドソープはなかった。

 

「女子寮の台所なんですけど、いい匂いのハンドソープ入れてくれるよう、プロデューサーさんから頼んでもらえません? 響子さんやかな子さんがきっと喜びますよ」

「お、おう……そうだな」

「フフーンっ、アナタはボクのプロデューサーさんですけど……いや、だからこそ! みんなにもさりげなく気遣いをしてもらわなきゃ、ですっ」

 

 幸子はプロデューサーの誕生日を祝うために、鶏の唐揚げを仕込んでいるところだった。

 

(もちろん、カワイイボクの手料理ならおいしいに決まっていますが、そこで終わらせないのが輿水幸子なんです。鶏の唐揚げは、ボクが事務所のアニバーサリーで覚えたレパートリーですから、慣れてるし……プロデューサーさんは、舌鼓だけでなく心も打たれるでしょう!)

 

 そう意気込んで、昼間から女子寮のキッチンを占領し下ごしらえに勤しんでいた幸子……だったが、思いがけず彼女の担当プロデューサーが訪ねてきて、顔を合わせてしまった。

 

「それにしても、きょうプロデューサーさんお休みとってましたよね? まぁ夜はお祝いの予定ですが……もしかして、休みの昼もボクのカワイさが恋しくて仕方なかったとか?」

「……うーん、まぁ、それもあるんだが……幸子が寮監さんや寮生のみんなに『キッチン使わせてください』って頼んだって伝え聞いて、様子を見に」

「むっ……火や包丁を使うときは、おとなのひとといっしょにね、なんてノリですか。小学校の家庭科じゃあるまいしっ」

 

 何もやましいことはないのだが、幸子のサプライズ手料理がバレそうになっていた。彼女は会話でプロデューサーの気をそらしつつ、下ごしらえしていた痕跡をそそくさと隠す。

 

(まったくこの人は……ボクが宿題してるときとか、泳ぎ練習してるときとか、平気で見てきますし……間がいいんだか、悪いんだか……)

 

 幸子はテキパキと『痕跡』を片付け、タオルで手を拭って、流し台からプロデューサーのほうへ向き直った。

 

「で、ボクのプレゼントが待ちきれなくて、昼間っからボクを訪ねてきてしまったんですか?」

「お、ぉう、幸子の顔が見たくて、な」

 

 手料理の支度をうやむやにするため、幸子はプロデューサーへ必要以上にずいと迫る。彼の格好は、ビジネスカジュアルな背広とワイシャツ。テレビやラジオの局に馴染みそうな具合。ネクタイはしていなかった。ワイシャツからいつもの洗剤、制汗剤の匂い。幸子の背丈だと、整髪料のそれは少し遠い。

 目前に広がるプロデューサーの姿に対して、幸子は安堵と不満を同時に抱く。

 

(いつもどおりのプロデューサーさんもいいですけど……きょうはプロデューサーさんの特別な日ですよね?)

 

「なんだかいつもと様子が違いますね。『プロデューサーさんへのプレゼントがボクですよ!』って聞いて、そんなに感動してしまいました?」

「か、感動……そうだな、そうとも……言っていいかな」

 

 さらに幸子はプロデューサーへ迫る。かすかな気配を感じ取る。プロデューサーが隠そうとしている気配。彼女自身が何かを隠そうとしているせいか、プロデューサーが隠そうとしている何かを嗅ぎつけてしまう。あるいは、何か隠しているのでは? と投射してしまう。

 

「おやおやおや~?」

「お、おい、幸子……っ」

 

 さらに接近する。触れ合う。気づいてしまう。

 投射は当たっていた。

 

「もしかして……いやらしい想像、シてしまいましたね?」

「さ、さち――ぁ……ッ」

 

 プロデューサーのあずかり知らぬことであったが、幸子はそれを察するにあまりある経験があった。

 

「……お望みなら、シてもいいんですよ?」

 

 幸子はエプロンを脱いで畳んだ。着衣は、肩と胸まで白くふわふわしたブラウス。ウエストから膝丈フリルまでが、紫地に白アクセントのコルセットスカート。私服の中では一張羅だった。

 ちょうどそこが、唐揚げの下ごしらえをごまかす所作と、セックスを始める準備とが重なる境目になった。

 

 

 

「……驚いたわ」

「へぇ?」

「いきなり幸子が背伸びしてきて、びっくりして言葉も出ない」

「なぁーに、そんな『俺は幸子をやらしい目で見たことがない』なんて顔してるんですか、白々しいっ」

 

 幸子は『白々しいっ』と言い放ったくせに、プロデューサーの驚きが本心だと思っていた。オーディションで初めて彼と出会ったときを思い出した。『ボクが一番カワイイ』『世界で一番カワイイ』『ボクをちゃんとトップアイドルにすることが、アナタにできますか? どうなんですか!?』――そう彼にぶつけてみたとき、彼が見せてくれた驚きと似ていた。

 

「……ボクにえっちなコトをシたい、って思う人の気持ちを理解して、それ利用してお金儲けしようってぐらいですからね、プロデューサーさんのやってるコトって」

「それは、その……否定は、しないが」

 

 後ずさりするプロデューサーの腰を、幸子の両腕が捕まえる。彼の腰がテーブルか何かにぶつかって、ごとりと鈍く小さな音が立つ。それと二人の気配以外は、まったく静かなキッチン。

 

「例えば……初めてボクの専用衣装を作ってくれたときとか……ふわふわのフリルと大きなリボンでカワイイ! アピールしておいて、よく見るとスカート丈すっごく短くて、しかも網ガーターストッキングなんて……どこへ視線を誘導させるつもりだったんです?」

 

 衣装のベースカラーが紫だったのも、キュートさよりセクシーさを醸し出すためでは? などと幸子の脳裏に思い浮かんだが、それはさすがに妄想かと思い直す。幸子のノドが押し止める。

 幸子はアイドルデビュー以前もカワイイを追い求めていたが、それゆえファッションもロリータ系の『可愛い』ばかりになっていて、プロデューサーから提案されるいささか煽情的な衣装が新鮮だった。一着まとうごとに生まれ変わっていく心地さえした。

 

「だいたい、『プレゼントがボクですよ!』って、プロデューサーさんがボクにお仕事で何度かやらせたやつじゃないですか。あれ、“そういう”のオブラートに包んだんだ、ってボクは思ってたんですけど……」

 

 プロデューサーが動揺を隠そうとすればするほど、幸子は愉快でたまらなくなった。思えば幸子は、ふだんプロデューサーから仕事で無茶振りされて動揺させられる側だった。それはそれで悪い気もしなかったが。

 いまはどうか。プロデューサーを動揺させて、二人の間で主導権を握っていると感じると、幸子は自分から湯気や煙が溢れ出てるんじゃないかと錯覚するほど高揚していた。

 

(ボクをもてあそんでるプロデューサーさんって、こんな気分なんですか……? フフーン、そりゃ、クセになりますよね)

 

 幸子は、自分の口角がつり上がってしまうのを抑えられない。これ以上つり上がったら『カワイイ』がくちびるの端っこからこぼれ落ちて、ニヤニヤいやらしい笑いになってしまう……笑顔のレッスンのおかげで、鏡なしでもそれが自覚できてしまう。出来損ないの笑顔をプロデューサーに見せてしまう。そう考えても抑えられない。

 

「幸子……」

「はーい、なんです?」

「……大人をからかうんじゃない」

「ボクが子供だとでも? まぁ、世間一般ではそうかもしれませんが……ねぇ?」

「『ねぇ?』って、幸子、きみは」

「アナタ、いままでボクをそんなに子供扱いしてましたっけ。例えば猿ヶ京でバンジーしましたけど……バンジージャンプって、もともと成人の儀式が由来じゃないですか」

 

 湧き上がってくる思い出。高さ62メートルからのバンジージャンプどころか、高さ3810メートルからのスカイダイビングもした。もうちょっと色気のある思い出を引っ張り出そうとする。クレオパトラに扮してシースルーをまとったり、花嫁に扮してウェディングドレスでブーケを投げたりした仕事を思い出す。そういえばだいぶ『不埒な』曲を歌ったことも。

 そのせいで『カワイイ』から遠ざかることもあったが、幸子はそれでも嬉しかった。

 

「それに、えっちシたいって気持ちに、大人も子供もあったものじゃないですよ?」

 

 プロデューサーは、筋肉どころか骨や神経までうろたえたように身震いして顔を伏せた。プロデューサーより身長の低い幸子は、半歩動くだけでその視線の先に入り込める。うつむいた彼の視線を下から突き上げる。

 幸子が手を伸ばそうとする。

 

「わかったよ……認めるよ、幸子」

「何をですか」

 

 プロデューサーは観念した素振り。

 

「幸子と……そういうこと、シたいと思ったことあるよ。でも」

「『でも』? もう、煮え切らないですねっ」

「シたいと、シてもいいは、別だろ?」

「アナタは『シちゃいけない』とおっしゃるんですか」

 

 観念の素振りは半分だけ。半落ちに幸子は呆れて、呆れを顔で露骨に見せた。

 

「……幸子はカワイイから、将来もっといい人がやって来るよ」

「へぇ、プロデューサーさんはその『いい人』にボクを譲ってあげようって言うんですか」

 

 幸子は微笑んだ。さっきと違って、そのままグラビアに刷ってもいいぐらい『カワイイ』笑みが、自然と浮かんでいた。

 

「まぁ、将来やって来るかもしれない、ってのは否定しませんけど」

「じゃあ……え、ちょっと待て。『は否定しません』って」

「ボクがいままで『シた』人に、プロデューサーさんより『いい人』はいませんでしたけどね」

 

 プロデューサーに非処女を告白してみたら、下手なセックスより耳と耳の間が熱くなった。

 

「いませんでしたよ。プロデューサーさんより『いい人』は」

 

 熱くなるのが存外に心地よくて、もう一度言ってみる。うろたえるプロデューサーを見ながら、熱い頭で考える。

 バンジージャンプもセックスも大人にこそふさわしい行為である……というのなら、幸子にバンジージャンプをさせたプロデューサーと、『いままでシた』人と、どちらがより幸子を大人扱いしたのだろうか。

 幸子にとってその疑問の答えは明白だったが、その疑問を抱いたこと自体にモヤモヤしてしまう。彼女はモヤモヤを、プロデューサーの汗と息遣いを嗅いだり体温と肌を触れたりして上書きしていく。

 

「……なるほど、プロデューサーさんには、もう一つボクからふさわしいプレゼントを差し上げますよ!」

「お、ぉう」

 

 熱い頭から弾けて飛び出した提案。

 

「プロデューサーさん、ボクがあなたに差し上げるのは……自信、です!」

 

 

 

 

「自信。どうしたら得られると思いますか? いろいろな考えがあるでしょうけど、ボクは『自分ならなんとかできる! だからだいじょうぶ!』という経験を積むことがいちばん大事だと思うんです」

 

 幸子は、女子寮のアイランド型キッチンでいちばんしっかりとした木造りのイスを選んでプロデューサーに座らせた。ヨーロッパで使い古された家具のように、ビターチョコじみた焦げ茶色の木肌と角の丸められた外見をしていた。なるべく家庭的な雰囲気を出そう、という寮の空間デザインを語っていた。ふだん幸子が学校で座るスクールチェアや、事務所で座るオフィスチェアと比べて、引いたときの感覚ががたがたと重々しく、フェルトキーパーがついているか疑うほどだったが、彼女はそれでむしろ安心した。

 

「……女子寮のキッチンで『シ』ちゃうのは、だいじょうぶなのかよ」

「お人払いしてありますから。このためにしたわけじゃないですけど」

 

 プロデューサーがイスに腰を下ろして、幸子がかがみ気味になると、二人の右頬どうしが指2~3本ぐらいの間隔ですれ違う。幸子は腰に少し負担を感じて、プロデューサーの肩に手を突く。プロデューサーのごつごつした三角筋や僧帽筋が、幸子のしとしとした指先や手のひらに触れられ、かすかに波打つ。

 幸子は、上衣のスクエアネックが緩むのを感じる。顔からデコルテぐらいまで、見せつけてあげられているだろうか。さらに肌を寄せる。プロデューサーの右耳へ、舐めるように迫る。

 

「いまのボクはおかげさまで自信にみなぎっていますが、もちろん生まれてすぐこうだったわけじゃありません。両親や、友達や……アイドルになってからは、プロデューサーさん含めた事務所のみんなや、ファンのみんなや……」

 

 肩と呼吸の揺れで、幸子はプロデューサーの罪悪感を察した。幸子が子供でなかったとしても、アイドルとプロデューサーのセックスは職業倫理を堂々と踏み倒す不埒だ。

 

「いまならこうして言えますけどね、プロデューサーさんと出会ったばかりのボクって、けっこう虚勢張ってたじゃないですか」

「……否定はしてやらんぞ」

「しなくてけっこうですとも」

 

 幸子は、その罪悪感を否定せず包み込む。両腕で、彼の首と肩も包み込む。

 

「さ、幸子……っ」

「まぁ、ボクがこんなにも自信にみなぎっているのは、みなさんとの経験のおかげです。プロデューサーさんのおかげでもあるんですよ、少なからず、ね」

 

 ふと幸子は『最近、ご無沙汰だった』と思い出した。プロデューサーの肌から、久しぶりに至近距離で感じる雄の濃厚な気配を嗅ぎ取った。それにあてられて……いまさら思い出したのか、とおかしくて自嘲した。

 幸子がアイドルとしての場数を踏んで大人らしくなるにつれ、幸子が『いままでシた人』らは自然と遠ざかっていった。彼女はアイドル活動で心身を満たされていて、その隙間風に気が付かなかった。彼らは、的場梨沙あたりがいうロリコンだったのかもしれなくて、でも彼らが幸子に求めていたものはたぶん『カワイイ』と少し違っていて、それゆえ幸子がプロデューサーのおかげで『カワイイ』に磨きをかけてファンを増やしても彼らは遠ざかっていって……そのギャップについても、幸子はいまさら思い当たった。自分への呆れが二重になった。

 

「だから、ですよ」

「だから……え?」

「ボクがプロデューサーさんを自信にみなぎらせるような経験をさせてあげるのも、いいじゃないですか」

「……セックスしたら、自信になるのか?」

 

 幸子は、『セックス』というごまかしのないプロデューサーの言い方を聞いて、もう彼の覚悟はじゅうぶんだと思った。疑問を呈する言い方を聞いて、まだ彼の興奮はじゅうぶんじゃない……とも思った。

 幸子の好みより少し冷静すぎる。

 

「もっともな疑問ですねぇ。ただシたいからするってんじゃ、子供や動物といっしょですから、自信にもならないでしょう」

 

 欲望でパンパンに張り詰めた意識を、幸子はプロデューサーと触れ合わせる。ただ欲望をぶつけ合うよりドキドキした。心臓や肺が苦しくなるほど緊張しているのに、それに身を任せてしまいたいほど心地良い。

 

「それなら、例えば……ボクが『いいですよ』って言うまで、射精したいよぉ、えっちしたいよぉ……っていうのをガマンできたとしたら……どうです? えっちシちゃいけないって思ってたプロデューサーさんなら、ガマンできそうな気がしますよ」

 

 プロデューサーは下手なウインクのように目をぎこちなくぱちぱちさせたが、そのあいだに反論を一つも組み立てられないようだった。

 

「ガマンか……どうだかな。幸子は、世界一カワイイから」

「だからですよ。世界一のボクのカワイイの前でも自制心がじゅうぶん働いたら、この世界に怖いものなんてありません。だからだいじょうぶ! って自信になります」

「自制心から『せい』を抜いて自信に……?」

「シャレじゃないですよ。楓さんや茄子さんみたいなこと言わないでくださいっ……って、あぁー、すみませんね……こんなときに、ほかの人の名前を出すのは、マナー違反でしたね」

 

 幸子は、プロデューサーの噛み殺しきれていない笑いの吐息を肌に浴びて、くすぐったくってしょうがなかった。彼女自身も笑った。『あぁー、すみませんね』……いくらなんでも白々しすぎる言い方だったろうか。それとも、高垣楓や鷹富士茄子とセックスアピールで張り合おうとしている、と思われて笑われたのか、などと邪推。

 

「ん、ぁ……ぷろ、でゅ……っ」

 

 プロデューサーの腕が、幸子の肩に回されて、ぐいと引き寄せてくる。ふんわり膨らませていた肩の白いパフスリーブが押さえつけられる。同時に幸子のハネた毛先が誰かに触れられる。それで初めて、幸子は自分の肩へ回されたのがプロデューサーの『片腕』だけだと気づいた。

 

「ガマンできなかったら? 俺の自制心とやらがじゅうぶん働かなかったら?」

 

 幸子の髪を、プロデューサーの残りの腕と手が撫でている、とも気づく。腕はきりきり力んでいた。指先はそわそわくすぶっていた。シャレで茶化す余裕がもうなくなったらしい。

 

「そのときは、タガを外した責任とりますよ」

「甘いなぁ」

「甘い? ボクがですか」

「幸子が、俺に対して」

 

 プロデューサーのため息の色が、幸子の提案へ流されていた。

 

 

 

 

「まぁ、プロデューサーさんはボクに任せてゆっくりしててください……初めてでしょう?」

「ど……どうして俺が童貞だって言い切るんだよ」

「んー、勘でしょうか。女の勘ですよっ」

 

 幸子の言い草は、『女の勘』の半分がそうであるようにブラフであったが、プロデューサーをまんまと引っかけた。頬がだらしなく緩む――いまは気にしない。頬どうしがくっつきそうなプロデューサーからは見えないはず。

 

「ボクの抱き心地が良すぎるのはわかるんですが、ちょっと離してもらえませんか」

「あ、すまん……んふぁあっ!?」

「おーおー、すごいですねぇ……スラックス越しでも、パンパンになって。こんなところ女子寮の誰かに見られたらどうするんですか」

 

 プロデューサーの腕が解かれるやいなや、幸子は座ったままの彼の下半身へ手を伸ばす。幸子に至近距離でささやかれて、女子寮のキッチンという背徳的なシチュエーションで事に及ぶ……その認識だけで、プロデューサーのペニスは興奮にみなぎっていて、幸子の手にも敏感に反応してしまう。

 

「ここ、女の子に触らせてあげたこと、ないんですか?」

「そ、そりゃあ、まぁ……わぁうっ、そ、そこっ」

「フフーン♪ 初めてがボクなんて、ぜいたくなおちんちんですねー。もしほかの女の人で興奮できなくなったら、責任感じちゃいますね」

「せ、責任を感じているような手付きじゃ……ぁうううっっ」

「背中、こっちに少し曲げてください。ベルト抜きますから」

「じ、自分でそのぐらい……」

「ボクの言うことを聞くの、いまから慣れておいたほうがいいですよ」

 

 背もたれから腰を離してしまえば、座面から腰を浮かせてしまえば、幸子にスラックスを脱がされてしまう。子供でもないしケガしているわけでもないのに、誰かから着衣を脱がせてもらうなんて……とプロデューサーは動揺するが、幸子にとっては序の口のようだった。

 

「何せこれから、プロデューサーさんは……アナタは、ボクの言いなりに……じゃなかった。言う通りに、ガマンしなきゃいけないんですもん」

「おい、いま『言いなり』って聞こえたんだが」

「実際ボクがここできゃあきゃあ騒いだら、プロデューサーさんはいろいろな意味でアウトですよね。どんな言い訳も、このおちんちんの雄弁さには負けますよ」

 

 幸子は、彼の額に自分の額をくっつけて、声を上から垂らすようにささやく。幸子の身長は140センチちょっと。ふだんは首の皮が突っ張るほど目線を上げて彼の目を見ているのに、いまは彼女が見下ろしている。プロデューサーの目つきは、泳いでいるようにも躍っているようにも見える。

 そうして目で上下関係を叩き込んでから、幸子はプロデューサーのスラックスを膝頭まで下げる。

 

「ふ、むうぅ……!? さ、さち、こ」

「カチカチになってるのに、こんなに敏感なんて。まぁ、ここが固くなるのって……血が流れ込むからなんですよね。腫れてるのと同じなら、しょうがないのかも」

 

 下着ごしにも張って見えるカリ首を、幸子が食指だけでくるくるともてあそぶ。赤子の手よりたやすく捻られそうな幸子の指一本で、プロデューサーはうめきを漏らす。

 

「じゃあ、プロデューサーさんのおちんちん、見せてくださいね」

「う、ぐ……あ、く、うぁ……っ!」

 

 プロデューサーは、スラックスを脱がされたときよりスムーズに腰を上げた。幸子に馴らされていくのを止められない。ずり下ろすパンツに引っ張られて、勃起ペニスが苦しそうに傾き、それがゴム張力の縛りから解放されると、ブンルっ! と音を立てて――少なくとも幸子の耳には、その力強くもどこか間の抜けた響きが聞こえていた――幸子へ切っ先を向けていた。

 

「あ、包茎さんなんですか、プロデューサーさん。剥いていいですか?」

「ちょ、幸子、待っ……は、ァ!? ……あ、ぅぐ……ッ」

「フフーン♪ 鼻高々みたいな勢いでおっきくしてるのに、いちばん敏感なところは恥ずかしがり屋さんなんだから……アナタが敏感なままで居てくれたほうが、ボクは楽しめて嬉しいですけどね」

 

 幸子の手付きは、ゆっくりと、しかし否応なしに、プロデューサーの包皮を向いて亀頭を露出させていく。押さえつけられていたガマン汁が溢れてカリ首を垂れ、幸子の指先も濡らす。

 

「お、えらいですね♪ ちゃんと洗えてると思います!」

「う……そ、そりゃ、どうも……っ」

「えっちの準備も万端ということですねっ」

「いや、シなくたって毎日風呂で洗いはするぞ……って、あ、さち……っ!」

 

 幸子が指を絡めたまま、鈴口を舌先でくすぐってくる。幸子がくちづけてきたのは裏筋側で、プロデューサーのペニスが怯えたようにわずかに反り返る。

 

「ガマン比べ、始めても?」

「……い、いいぞ」

「ルール再確認しましょうか。プロデューサーさんが、えっちしたいよぉ……って思っても、ボクが『いいですよ』って言うまでは、だめですからね」

「おう……というか、ふつうのセックスでも『いいですよ』って言ってもらうまで、本当はだめだろ」

「射精、シちゃだめですよ」

「えっ」

「男の人って、よく射精したらセックスが終わりだって勘違いしてるじゃないですか。だからですよ」

 

 幸子がもう一度鈴口へキス。さっきよりくちびるを尖らせ、言葉以外でも宣戦布告。

 

「ん~ちゅっ……ちゅっ……まだ、先っぽにキスしただけですよ~? もう夢中じゃないですか……」

「幸子っ……う、ぉ、ふぁ、ぁ、う……!」

「そりゃあ、ボクはカワイイから、夢中になるのは仕方ありませんよ。ボクのカワイイを作る側のプロデューサーさんからすれば、その感動もひとしおでしょう……ですよね?」

「ぁう、ウぅ……そ、そりゃあ、そうだよ……うぅ、幸子ぉ……」

「ん、ちゅ、れぅ、ちゅっ……本当、ですか?」

「さ、幸子と……ずっと、こうしたいって、思って……というより、思ってた以上のこと、いましてもらってるわけだけど……」

「そうですか! でも……アナタは、ボ・ク・の! プロデューサーさんですからぁ……ガマンしてください♥」

 

 耳元への甘酸っぱいささやきと、亀頭への悩ましいキスを繰り返す。プロデューサーの勃起に負けない勢いで、幸子の愉悦も熱く膨らんで張り詰める。

 幸子が『世界一のボクのカワイイ』と照れずに自称できるほど、彼は彼女にいろいろな経験をさせてきて、魅力を引き出してきたが、その魅力をアイドルとして売り込むための商品とも扱ってきた。

 いまはどうか。未成年の幸子が勃起ペニスへくちづけする姿など、まっとうな商品ではありえない。それをもって、幸子はプロデューサーを快感でリードし、もてあそび、支配している……その愉悦が、彼女をどんどん酔わせていく。

 

「あ、あっ、う、あっ……!? さ、幸子、止めて……で、出て、しまうから……ぁ、ああっ!」

「フフーン♪ ガマンできないんですか? もう出しちゃいたいんですか?」

「だ、出したいけど、だめだから、そんな、な、あぅう……っ」

「……あぁ、そうでしたねぇ。だめでした……♪ ボクがまだ『いいですよ』って言ってあげてないですからね……」

 

 幸子はくちびるを亀頭から離した。長風呂で浴室から脱衣所に上がった直後のように、肌と粘膜がのぼせあがっていた。くちびるを離した代わりに、両手でペニスを包んで軽く握った。びくん、びくんという陰茎の痙攣は、うっかり射精させてしまったのでは? と勘違いするほど激しい。

 

「えらいえらい、さすがボクのプロデューサーさんです……!」

「ぁ、あ……そ、そりゃ、どうも……」

「あいさつのキスは終わりましたので、次はこの手でかわいがってあげますよ……♥」

「あ、あれがあいさつって……そ、そんな、ぁ……ぁ、うぅうっや、ぁ、あ……ッ」

 

 プロデューサーの弱々しい拒絶を、幸子は可愛らしいと思った。このボクに『可愛い』と思わせるなんて、さすがですね……といいそうになったが、止めておいた。『キレイ』や『カッコいい』と違って、『可愛い』は可愛くなりたいと思っている人間以外にとっては褒め言葉とならない、と幸子はかつて彼から教えられていた。

 

「じゃあ、手でやるとき、ボクが、しこしこ♥ しこしこ♥ って合図してあげますからね」

「う、ぅうっ、幸子、ぉ……そ、それ、やば……ッ」

「あれ? ボクまだ手は動かしてませんよ。声だけで気持ちよくなっちゃうんですか? まぁ、こんな耳元からボクの声ですからね……♪」

 

 幸子はペニスを両手でホールドしたあと、親指と人差し指だけでプロデューサーのカリ首をくすぐる。鈴口がほころんで染み出すガマン汁を塗りつけて、にちゃにちゃ、ぬちゃぬちゃと行儀悪く水音を立てる。

 

「んふ……まだ、しこしこ♥ までシてませんけど……気持ちよさそうですね……♪」

「うあぁ! ……はぁっ、あぁ……」

「お加減はいかがですか~?」

「ふゃうっ!? き、気持ち、よす、ぃ……ふぁ、ぉ、……あ、め、ぐ、ぅう、う……っ!」

「ガマン、できますか~?」

 

 プロデューサーの表情が歪む。幸子に見覚えのないほど深いシワが刻まれている。

 

「プロデューサーさんがガマンできなかったら……ボク、とっても悲しいです……せっかく、プロデューサーさんに自信を持たせてあげられると思ったのに……」

「あ、ぁあ、う……め、めんもくない……」

 

 幸子は『のに……』の先をあえて伏せた。言わぬは言うに勝る、ということわざを幸子は知らなかったが、プロデューサーとの経験でその心を悟っていた。

 

(射精をガマンしているのか、ボクがおちんちんをいい子いい子してあげるのおあずけにされちゃってるのガマンしてるのか……もうどっちかわからないですね、プロデューサーさんっ)

 

 プロデューサーの沈黙も雄弁だった。言葉を伏せても、顔も目つきも息遣いも体温も汗も筋肉も関節も、幸子の手コキに引きずられて反応し、快楽に漬けこまれ染まっていく。幸子にはそれらがありありと知覚できる。それどころか、手や耳や鼻を通して、自分までそれらに染まっていく心地がした。

 もし、自分がプロデューサーとそうなれたら……例えば、このいまにも射精しそうな勃起を、自分のものに迎え入れて……。

 

「んっ、あっ……♥」

「さちこ……? ぉ、ふぉっ!?」

「……まだ、ガマンしてくださいね……そう、そう……アナタは、ボクのプロデューサーさんですから……♪」

 

 ひとたび、幸子の脳裏がプロデューサーのペニスを下っ腹に迎え入れるセックスを想像してしまうと、いま彼のペニスを包んでいる手が、ひょっとしたら自分のヴァギナなのでは? と妄想が飛躍してぐるぐる回る。

 

(おまんこ、先走って……ふふ、えへ……いよいよ面白くなって来ましたね……?)

 

 幸子はペニスへ指を絡める。こする。びくびくと喘ぐ勃起を締め付けるのが楽しい。さっさとそれをよこせ、とぐずる膣奥のイラつきも楽しい。こっちもガマンしてるんですからね、と攻めのペースが上がる。

 

「幸子、ぉ……それ、あ、く、ぐぅ……あ、あっ、う、あっ……!?」

 

 プロデューサーの動揺がずるずる深まる。キッチンのイスがぎしぎし不平を鳴らす。

 

「まだ、だめ、だめです、プロデューサーさん……っ」

 

 幸子の呼吸がじりじり火照る。指がぎゅうぎゅうと締め付ける。

 

「んふ、フフーン……♪ そんなに辛そうなのに、射精、ガマンできて、えらいですね……えらいっ♥ えらいっ♥ プロデューサーさんのおちんちんはお利口さんです……♥」

「ぎゃっ!? あ、は、ぁ゛あーッ、さち、こっ……」

「もー、なんですかぁ。褒めてあげてるのに、そんな悲鳴を……ボクがいじめっ子みたいじゃないですかーっ」

「ふぁ、ほおぉッ、あ、め、ぐ、ぅう、う……っ!」

 

 プロデューサーにつられてか、幸子もだんだん焦れていく。もっとしこしこ責めてプロデューサーがあえなく射精してしまうところが見たい。感じたい。そろそろ膣の疼きもうるさくて耐え難い。

 でも追い込んで射精させてしまったら、プロデューサーへ『自信』をプレゼントしてあげられない。

 

(じゃあ『もういいですよ』……? いや、まだ、もっと……うぅ、うーっ……♥)

 

 幸子にとって射精とはセックス強制終了だった。まだ、もっと、できるだけ、ずっと……プロデューサーとこうしていたい。プロデューサーがいま目を血走らせ脂汗垂らしてまでガマンしてくれてるのは、彼もきっと同じ気持ちだからだろう。そう思うと欲望が二倍に燃え立つ。

 

(……プロデューサーさんの気持ち……んん、そういえば……まだ……ふふっ……♪)

 

 幸子はペニスをきゅうきゅう握ったまま、動きを止めた。プロデューサーの肩が大きく上下しているのを眺めていた。彼の鎖骨の浮き沈みがかろうじて落ち着いてきた頃、沈黙を破る。

 

「ガマンの最後は、プロデューサーさんに動いてもらいたいんですけど……よろしいですね?」

 

 幸子は『カワイイ』をかなぐり捨てたニヤニヤ笑いで、息も絶え絶えなプロデューサーを見つめた。

 

 

 

「プロデューサーさんって……やっぱり、ボクのここ、スキですよねぇ……♥」

「ここ、って……」

 

 幸子はプロデューサーをイスから立たせると、自分はキッチンカウンターの座面へ手と肘を突いた。彼女の腰の高さだと、少し厳しくてつま先立ちになる。腹も腰もカウンターへぴったり寄りかからせれば楽なのだが、やめておく。一張羅のフリルスカートはくしゃくしゃに丸めてたくし上げている。

 見えないハイヒールを履いたようなかかと。力んだふくらはぎ。すらりと細い太腿。控えめな丸みのヒップ。

 

「幸子、その、下着、見えて……」

「濡れちゃってます? まぁ、プロデューサーさんといっしょです。シたくなって、濡れちゃいましたぁ……♥」

 

 スカートに合わせた薄紫の下着は、童貞プロデューサーでも膣口が見て取れるほど濡れていた。

 

「太腿、お好きですよね? まぁ、おまんこのがお好きかもしれませんが」

「お、おま……って」

「おちんちんで、こすってみてください。プロデューサーさんの加減で……それでボクがもっとシたくなったら『いいですよ』って言ってあげます♥」

「う、ぅ……幸子にお気に召す加減、俺にできるかな」

「できますよ! どうシてこうシて、ってのはボクがアシストします」

 

 幸子の背中と腰へ、プロデューサーの気配。内腿の肌と膣の粘膜が、武者震いする勃起の接近を確信して騒ぐ。はしたない舌なめずりをこらえる。

 

「あ、もちろん出しちゃだめですよ。お察しかと思いますが、これボクの一張羅なんです。汚されたら、夜のお祝いに出られなくなっちゃいます」

「それは……責任重大だな」

「そのほうが、ゾクゾクするでしょう? 狂気の宴(Lunatic Show)ってやつですよ」

「ヒトの仕事を、あんた……イケない子だ、幸子は。輝子と小梅に聞かれたらどうするよ」

「ボクのお仕事でもありますもん……♪」

 

 反り返るペニスが、肌の汗ばむ太腿へ、愛液に濡れる下着へ迫り、触れる。

 

「ん、ふぁ……♥ ボクまでびりびり、キちゃいます……っ」

 

 内腿でペニスを抱きしめる。幸子が意図したより強く抱きしめてしまう。手よりずっと強い力でペニスを捉えて、離せなくなる。ペニスの角度が跳ね上がって、幸子のへそ下に亀頭らしき熱っぽさが食い込む。

 

「ぐあ、あ、く、ぅ……っ!」

「動いて、動いてくださいっ……早くっ! プロデューサーさんっ!」

「や、ぁ……いま、動いたら、出て……はぁォうっ!?」

 

 幸子は太腿でペニスを束縛しながら、腰をへこへこと浮き沈みさせた。アシストどころか、催促というのも控えめなほどの動き。

 

「は、ぁ……ぅ、く……プロデューサー、さぁん……っ」

「ぁ、あ……さち、こ……その、これは……」

「……あは、アナタが、ボクの邪魔、するなんて、ねぇ……」

 

 プロデューサーが、両手で幸子の腰を掴んでいた。とっさの制止。もっとシてほしいのに――恨めしくて膣奥がすくむ。まだガマンしてくれますか――微笑ましくて顔が緩む。

 

「……本気、出しちゃいましょうかね」

「えっ、さ、幸子……本気、って……」

「本気ったら、本気です♥」

 

 太腿によるペニス束縛が、束縛というのも生易しい圧搾に変わる。男性器を包む感触は、少女の柔らかい肌と肉と体温のまま、逆らい難い摩擦とともに往復して、あるいは左右から押し合いへし合いして、プロデューサーを追い詰める。

 

「あ、あぅ、うゥうぅ……ッ!」

「んふっ、ふぁっ、あはっ……♪ ぷろでゅ……んっ! ふぅ、は、ぁ、あっ……♥」

「ぅあ、ああっ、や、め……幸子、ぉ、おねがい、だから――あぁああっ……!?」

「だめ、もっと、もっと、ボクに……もう、ちょっとで、いま、ぁ、んんぅっ……♥」

 

 プロデューサーが腰砕けになって、幸子にのしかかるようにカウンター天板へよろける。彼女を押しつぶす寸前であやうく手を突く――もう彼女の腰を掴めていない。

 

「……もう、止められないんです、プロデューサーさん……っ♥」

 

 プロデューサーのペニスが、幸子のフリルスカートの内側へ精液を吐き出していた。

 

 

 

「もー、ボクが悪かったって言ってるじゃないですか。元気だしてくださいよ」

「いや、その……幸子は悪くない、俺が……」

「だからぁ、ボクがすっかりガマンのコト忘れてて、『いいですよ』って言うのも忘れちゃってたんです。ボクに本気出させたんだから、たいしたものですよっ」

 

 腰が抜け、女子寮の床に落ちて、キッチンカウンターにもたれているプロデューサーが、幸子には燃え尽きた灰のように見えた。口を開いたら、ため息の代わりに細い煙が出るかも知れなかった。

 

「それに、プロデューサーさんがここに弱いって、ボクにはお見通しでしたもん」

 

 幸子がフリルスカートの紫をたくし上げると、オスとメスの性臭が折り重なって、むわりと二人の嗅覚を襲う。摩擦で赤と白が入り交じる太腿と、すっかりよれよれの下着を、プロデューサーの眼前に押し付けてやる。くいくい、と太腿を揺らし、腰をくねらせる。やり過ぎで、シラフならとてもできないし、釣られもしない挑発。

 

「ぁ、う……幸子、ぉ……」

「プロデューサーさんの口はともかく……おちんちんは、立ち直れそうですけど……ふーらーちーな、キャンバスに―♪ 気がーついたらー描いてるー♪」

 

 幸子が歌を口ずさむが、両手でスカートをたくし上げたままなので、振りのように宙へキャンバスを描けない。膝を曲げて、かかとを鳴らして、腰を捻って、ステップを見せつけるだけ。

 それがプロデューサーの顔を上げさせる。

 

「プロデューサーさんがお好きなあたり、チラチラさせる振りですよね? いつもだいたいそんな感じ。自分の趣味をボクに塗りつけちゃって。ま、ファンに受けるよう落とし込んでるのは、さすがのお点前と思いますが」

「……なんか、自分がすごく不純なプロデューサーに思えてきちまったよ」

「開き直って、こんど周子さんみたいなショートパンツ履いてみますか。フフーン……♪」

 

 コルセットスカートの紐を解く。紫がパサリと落ちて、プロデューサーの膝頭を隠す。

 

「ま、いまはえっちの続きです。ボクが、ガマンできなくなっちゃったんですよ……よろしいですねっ」

 

 プロデューサーはなおも腰砕けのままもごついていたが、顔へ幸子から下っ腹を押し付けられずりずりされているうちに、ペニスがさっきまでの勃起を取り戻していた。

 

 

 

「ぁ、幸子……その、ちょっと」

「どうしたんですか?」

「あの、さすがに、ナマは……」

 

 上からにじり寄ってくる幸子に対し、プロデューサーのペニスはさっきの暴発も拭いきれていない亀頭がむき出しだった。

 

「んー、だいじょうぶかもしれないし、だいじょうぶじゃないかもしれませんね」

「……はぁ!? ちょ、幸子、本当にそれは」

「じゃあ射精ガマン第2ラウンドとしましょう。太腿で腑抜けたいまのプロデューサーさんには、緊張感が必要でしょうし、ねっ」

「そういう問題じゃ……ふっ、んぐぅ、ぁあッ……!」

 

 すでに格付けは終わっていた。

 幸子は有無を言わさず、上からプロデューサーの童貞を奪い取る。プロデューサーを惑わし、奮い立たせ、絡め取った太腿が両脇に退いて、下着をズラした秘所へ主役を譲る。『カワイイ』からかけ離れた、アイドルが見せてはいけない下卑たフットワークが、プロデューサーの意識まで捉える。

 

「あっ……あぁっあっ……!」

「うふ、ぁ、あはっ……フフーン……♥ 卒業おめでとうございます、プロデューサーさん……っ♪」

 

 幸子が膝を畳んで腰を下ろしていく。膣内でプロデューサーのペニスをちょうどみちみちと収めきったあたりで、プロデューサーと目があった――気がした。幸子の目線が少し上だった。

 

「ご感想はどうです、プロデューサーさんっ♪」

「あ、ぅぐ、く……きもち、よすぎて、やばい……さっき出してなかったら、ここまで持たなかった……」

「そうですか……んんっ♥ じゃ……さっき出しといて、ちょうどよかったんじゃないですか?」

 

 プロデューサーを包み込む。抱きしめてやる。汗だくの髪にチクチクされた。ツンとくる匂いが鼻や目にしみた。ぶつけられる鼻息がくすぐったかった。肌や粘膜で感じるそれらが、彼の幸福感だと確信した。

 

「よしよし、よく頑張りましたね……プロデューサーさんの、おちんちんっ、そーれ、いい子いい子……♥」

「あっ、あっ、あっ……!」

「……あはっ、ふぁ……♥ フフーン、そうでした……プロデューサーさん、ボクに耳元でこうされるのも、だめなんでしたっけ」

「う、ぅう、幸子……俺は、も、ぅ……っ」

「だめ、なんですよねぇ……フフーン……そーれ、いい子いい子っ♥」

「お、追い打ちぃ……っ!? う、ぐ、うぁあ、あ、め、ぐ、ぅう、う……っ!」

 

 膣奥までくわえ込んだまま、腰を揺り動かす。しとしと垂れ落ちる愛液も、湿っぽくなっていく肌ずれも、蕩けていく体温と匂いも、ごちゃまぜにしてプロデューサーへ塗りつける。

 

「ひぅ、う……ぁ、くぉ、ほ、ぉ……し、しま、る……っ!」

「んひゅっ♥ ふ、ぁ……っ♥ 手加減、なんて、してあげませんっ! ボク、本気ですから……っ♥ プロデューサーさんだって、本気のボク相手のほうが、ガマンする甲斐、あるでしょう……?」

 

 膣口で激しく貪りながら、耳元へ優しくささやく。

 

「んっ、や、あっ……ふふっ……すごい……っ♥」

「う、ぐ……ふ、うぅ……幸子……ッ」

「いい子いい子したそばから言うのもおかしいですけど……ボク、プロデューサーさんが頑張って、ガマンしてくれるほど嬉しいです……♪」

 

 膣内とペニスは騒がしく擦れ合う。ため息は静かに交わる。今しかないように求め合いながら、永遠のように折り重なる。幸福感以外のすべてが薄れていく。もしプロデューサーがもっとずっとガマンしてくれたら、恍惚で溺れ果ててしまうかもしれない。

 

「幸子は……」

「……はーい?」

 

 瀬戸際で、プロデューサーの呼ぶ声に起こされる。

 

「幸子は……その……気持ちよく、なって……?」

「ふ、ふふっ……なーに童貞さんが、色気出してるんですかー♪ ま、ボクが童貞奪っちゃったんですけど」

 

 『気持ちよく、なって……?』と聞いて、幸子は笑わずに居られなかった。いまの輿水幸子が気持ちよくなっていなかったとしたら、なんだと思っていたのか。笑いが収まる頃、プロデューサーにとって自分が初めて触れ合う女なんだ、と思い出した。

 

(女の子とのセックスに夢見てた童貞プロデューサーさんへ、こんなの教えちゃったら、ますます夢見させちゃってるかも……もう、ボクの『カワイイ』って、罪ですねぇ……♪)

 

 ますます体温が蕩けていく。

 

「ん、ふぁ……プロデューサー、さん……?」

 

 それを掬ったのは、プロデューサーの両手だった。ペニスを突き刺したままの雌肉を捉えるように、幸子の腰と尻を手のひらで覆っていた。

 

「幸子も……」

「……ん、ふっ♥」

「気持ちよく、して、あげたいんだ、けど……」

「えー? だめですよそんなのー。そんなの……んっ……♥ だ、めぇ……」

 

 幸子は、自分が口走った言葉が信じられなかった。『だめ』……? 何がだめなのかわからないまま、プロデューサーにささやきを重ねてしまう。そうしたら、どうなってしまうか。

 

「だめ、だめぇ……♥ だめって言ってるじゃないですかぁ……っ」

「幸子って……いいときこそ『だめ』って言う気がして」

 

 童貞の生意気な言い草が、期待感を煽ってたまらなかった。

 

「んんっ……そんなの、だめですぅ、プロデューサー、さんっ……♥」

 

 深く何度も刷り込まれた記憶が、本能のように二人を誘導し、突き動かしていた。

 

「……幸子が満足したときが、終わりだろう?」

「フフーン……世界一『カワイイ』ボク相手に、できるとでもおっしゃるので……いいですねぇ、自信、ついてきたみたいで……っ♪」

 

 こちゅ、くちゅ、とこもった水音。叱咤代わりに、膣内で軽くペニスをしごいてやる。プロデューサーが呼応するように、さらにひっしと幸子を抱きしめる。

 

(『幸子が満足したとき』……って、なんでしょう。そのときが、終わり……?)

 

 プロデューサーの生意気な言い草と仕草を、幸子は口中の飴玉のように頭のなかでごろごろ転がした。

 

(これが、終わっちゃうなら、満足なんて、いらない)

 

 甘酸っぱさがいつまでも尽きなくて、頭蓋骨の裏側から出るはずのない唾液があふれそうだった。

 

(……いや、まぁ、プロデューサーさんが、望むなら……フフーン、ボクってなんて健気でいじらしいんでしょう……)

 

「……です」

「幸子……?」

 

 脳からあふれたような声が、幸子からプロデューサーへ。

 

だめ、ですっ(いい、です)♥」

 

 プロデューサーの両手が、幸子を掴み直す。

 

「幸子、お前ってやつは、本当に……っ!」

「……ぜったい、ぜったい、プロデューサーさんは……――っ♥」

 

 幸子の念押しに、こんどはプロデューサーのペニスが応じる。

 

「ひゃうっ♥ あっ、あ゛ぁ、ひあっ……そんな、おく、とんとんって、シちゃ、あっ♥」

 

 ペニスをひたすら奥底に押し付けられる。技巧も何もあったものじゃない。苦しいぐらいに求めている――求められている。そう主張するだけ。ぎりぎりでセックスと言えなくもない、性器のぶっつけあい。

 

「あひっ、ぁ、や、ぁ……! ふか、いぃ、の、ぉっ……♥ らぁ、め、かわいく、ない、の、ぉ……♥」

「ぁ、は、ァ……かわいく、ない、だって……?」

「ふっ、くぅ、ぁあッ……らって、こんにゃ、ボク、は、ぁ……ぷろでゅ……――っ♥」

 

 あまりに明け透けなプロデューサーに、幸子はくらくらとほだされていく。

 

「……わいいっ」

「う、うそ、そんな、ぷろ……あ、ぐぅ、やぁあぁ! あ、ひっ――らめ、ぇ……らめれす、ぅ、ひぁ、あ、へぅ、えあぁあ……っ♥」

「かわいいぞ、幸子、ぉ……っ」

 

 膣のどこかが音を上げる。ぷしゅ、ぷしゃ、と射精のような勢いで、射精よりずっとさらさらした生暖かい潮が、プロデューサーと床をびしゃびしゃと濡らしていた。

 

(あ……は……余裕、ぶって、たら……こんなの、ボク……っ)

 

 可愛くないなんてものじゃない粗相を、プロデューサーに見せてしまった。

 

「かわいいよ、幸子っ、さちこっ……」

「あ、ぅ、あっ、あぁ」

 

 粗相を自覚した。

 幸子のタガが外れた。

 

「ぃ、い、です、ぷろでゅ……さー……だし、て……っ!」

 

 男性器を包む感触は、少女の柔らかい肌と肉と体温のまま、逆らい難い摩擦とともに往復して、あるいは左右から押し合いへし合いして――太腿コキではおあずけだった膣内が、こんどこそはと責めかかる。

 

「ぁ――さ、ち……ッ!」

「ひぁ、あ、ふゅ……っ♥ ぷろでゅ、っ……そ、こ、です――ふ、ぅううっ♥」

 

 許した。認めた。

 幸子の心が『プロデューサーにセックスさせてもいい』から『プロデューサーとセックスしたい』に完全にひっくり返ると、幸子の体も遠慮を忘れた。本当に手加減をかなぐり捨てた。

 

「幸子、ぉ……本当に、出て、しま……ぁ、あぁあぁ……ッ!?」

 

 下の粘膜は炙るように烈しくペニスを搾り、上の粘膜は溶かすように甘ったるく嬌声を注ぐ。プロデューサーは気圧される。許されたのはそこまで。幸子の太腿がのしかかって挟み撃ちにして逃さない。神経が彼女に埋め尽くされる。そうなれば、筋肉も骨格もいたずらだった。むしろ幸子にペニスをむさぼるための足場と使われていた。

 

「ひぁ、やぁっ、ん、くぅう……っ! ふ、ふふ……だいじょうぶ、だいじょうぶですよ、ぷろでゅ……んんぁあっ♥ ナカ、だしたって……いつ、だしたって……スキにシちゃって、くださいっ♥」

 

 実際に『スキにシちゃって』いるのは幸子だった。

 プロデューサーは、いままさにペニスから精液を放出して幸子の胎内を満たそうとしているのに、逆に彼女からどうしようもない感情と感覚をパンパンに詰め込まれていた。

 

「そう……いい、ですっ♥ おちんちんは、げんきで……あふぁっ♥ ま、まぁ、いまはおちんちんだけで、かんべんっ、して、あげます……ぁ、ぁううっ、ふぁああ……っ♥」

 

 搾り取られながら、押し出されながら、幸子の膣内へ射精。

 

「ぁ、んふ……ふふ……ぷろ、でゅーさ、あ……♥」

「さち……こ……おれ、は……」

「……ごそつぎょう、おめでとうございます……っ」

 

 幸子は、プロデューサーからもう一度『幸子』と呼ばれるまで、彼の上に居座ることにした……彼のペニスをくわえ込んだまま。

 幸子の魂胆が通じたのか、彼は喘ぎ喘ぎ『幸子』と声を絞り出した。彼女はどいてやらなかった。

 童貞だった頃のプロデューサーとの別れを惜しむように、幸子はプロデューサーのシャツを濡らした。

 

 

 

 

「いかがですか?」

「おいしい……本当においしい、うぅうぅ……」

「しまらない感想ですね。童貞卒業の余韻がまだ残ってるんですか?」

 

 予備のレッスン着に着替えた幸子は、冷蔵庫から下味つき鶏肉を取り出して、油を熱してさくさくと揚げてしまった。お祝いに着ていく服が使えなくなったし、適当な格好で済ませるのも嫌だから、いっそ……と開き直って、夜のぶんまでプロデューサーを先に祝ってしまう。

 プロデューサーは、幸子のよだれや汗や涙や愛液で背広をめちゃくちゃにされていたが、彼女の調理中にいつのまにか着替えていた。車かどこかに予備を置いていたらしい。

 ふと幸子は、もし自分が実家通いではなく寮生だったら……と想像する。寮生だったら着替えを用意して、夜もプロデューサーを祝えただろうか。

 

(無理、ですね。一晩は頭冷やさないと……みんなの前で『プロデューサーさんの童貞もらっちゃいましたぁ♥』って匂わせずに済む自信、ありません……)

 

「ちょっと、下味の付き方が足らない気がしてたんですけど。夜のお祝い直前まで漬け込むつもりだったので」

「それでもおいしい……」

 

 幸子はプロデューサーに頬ずりせんばかりの勢いで顔を近づける。生姜と醤油の匂いがする。下味はしっかりついていた。彼の賛辞はがりがりと鳴る唐揚げの衣に半分隠れて、いまいち聞き取りにくかった。

 

「幸子は……」

「なんです?」

「幸子は胃袋もがっちりつかめるなぁ。将来きっといい人を捕まえるだろうなぁ」

「なぁーにしんみりしてるんですかプロデューサーさん。さっきボクとえっちしてたときの自信はどこへ行ったんですか?」

「……幸子も、最後のほうはけっこうしんみりしてたろ……むぐっ!?」

 

 幸子はプロデューサーから箸を奪い取ると、唐揚げを一つつまんでプロデューサーの鼻先へ突きつける。

 

「はい、あーん♥ あーんですよ、プロデューサーさん♪」

「えっ」

「何恥ずかしがってるんですか。えっちまでシた仲じゃないですか~」

「そ、それとこれとは」

「プロデューサーさんって甘やかしてあげると自信を持ってくれる気がして……あれ? それって、自信を持つというより、つけあがるとか調子に乗るって言うのかも」

「……かもしれない」

「じゃあ、きょうだけはしんみりしてもいいですよ。きょうだけは」

 

 そう言いつつ、幸子は唐揚げをさらにぐいぐいとプロデューサーへ押し付け、口中へねじ込んだ。

 

「あしたからは、また……ねっ」

 

 本当に、プロデューサーが夜にこんなしんみりとしたテンションでお祝いに顔を出したら、もしかしてみんな彼に何かあったと感づいて……と想像しながら、幸子はもう一つ唐揚げを箸でつまんだ。

 

(おしまい)

 

 

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