※この作品はR-18です。

アイマスのアイドルが童貞をもらってくれるシリーズ   作:ふりーじ屋/家庭内禁書

12 / 34
有償依頼56件目です。ご感想くださるとうれしい です。
ご依頼は http://skeb.jp/@freege_affected か、 http://twpf.jp/freege_affected からどうぞ。



デビュー前の安部菜々さんが、男の子の童貞をもぐもぐ(逆転あり)してしまったお話(おねショタ、非Pドル)

 ナナ、1回だけですけど、ぜったいシちゃいけないえっち、シちゃったコトあります……。

 

 

 

 

 

 

「あっはははは! 瑞樹ちゃんったら、それでディレクターさんとこカチこんだの!?」

「カチこんでないわよ! そんなケンカ腰じゃ……ちょっと交渉に……いや、まぁ、その、ねぇ?」

「あのとき、めっちゃ怖かったですよ瑞樹さん」

「こらープロデューサーくーん!」

 

 関東平野にひんやりするからっ風の気配がでてきて、もうすぐ秋から冬になるかな、というある日。

 ナナが……私が一人暮らししている部屋で、川島瑞樹さん、片桐早苗さん、私たちのプロデューサーさんが鍋をつつきながら盛り上がっています。お鍋の具は秋の味覚をたくさん。きのこ、にんじん、ごぼう、だいこん。それらと薄切り肉をくるくる巻いたのとか、鶏団子とかをみんなで作ってお鍋に敷き詰めてるときは「家庭科の授業みたいですね! なつかしぃ……いいえ!? ナナは現役、げんえきじょしこうせい……」って感じのほのぼのした盛り上がり方だったんです。

 けれど、いまや早苗さんが持ち込んだビールや日本酒がだいぶ減っていて、3人ともだいぶ酔っぱらっているようです。おしゃべりする声が大きい。でも、お隣さんから文句とか言われずに済むと思います。この部屋はフリーター時代から借りていますが、私がアフレコの練習とかCD宅録とかしたりホームシアターでアニメを堪能したりするために、広さも防音もなかなかの物件を選んだんです。だからうるさくしてもだいじょうぶ。そのぶん、家賃が張ったりお風呂が古かったりしますが……。

 

「ねぇ聞いてたナナちゃーん、瑞樹ちゃんったらねー、アイドル水泳大会のとき司会枠にされて『それではアイドルの皆さんがんばってくださーい!』なんて言わされるって聞いて……『私だってアイドルなのよ!』ってキレてディレクターさんとこカチこんだんだって!」

「だってそんな役回りじゃ、わざわざ女子アナ辞めてきた甲斐がないもんっ」

「それで俺が『じゃあ、アイドルのお手本として先陣切ったらどうですか、水着ですし』って言ったら、それで納得してプールにドボーンする瑞樹さんって大阪のノリですよね」

「それはおいしいじゃない。最初に、しかも私だけで映してもらえるなんて。あ、その手があった! って思ったわ」

 

 3人が大盛りあがりしている話題は、いままでの人生でいちばんやらかしたこと、のようです。

 まずプロデューサーさんが言わされたようです。アイドルをスカウトしようとしてたら不審者扱いされて警備員に突き出された、と。西島櫂ちゃんに目をつけてプールに出入りしてたときのことですって。プールじゃそうなりますよねぇ。でもスカウト自体には成功しているからすごいものです。

 次に言い出しっぺの早苗さん。警官時代に、刑事課にあこがれるあまり――早苗さんはどうやら交通課だったようです――街中でスカウトなどをしていた内匠プロデューサーを「ぜってぇこいつ詐欺師だ。見た目があやしいし」と思い込んでつきまとっていたようです。しょうじき無理もないかなぁって思います。内匠Pさんって担当アイドルが増えてきたいまでもよく身だしなみ注意されてますからね……。

 続いて瑞樹さん。『女子アナ時代はひたすらお行儀よく仕事してたんだけど、アイドルになって……若い子に負けちゃいけない! って気分が行き過ぎて……』とのこと。それでこのプールのエピソード。このあいだは年齢が半分以下の巴ちゃんと自然にユニットで活動できるんだから、瑞樹さんにもそんな心境があったんだなぁって意外に思いました。

 

 で、これ……最後に私がやらかしを告白する順番でしょうか。

 どうしよう……。

 

「ナナさんはあれですよね。『ウサミン伝説最終章・第4話・その8』っての」

「え、なにそれ。最終章はわかるけど、第4話の、その8?」

「ナナさんの自主制作CDです。最終話って銘打ったときはたたむつもりだったけど、たためなくてナンバリングがずるずる進んでこんなことに……永遠の17歳ならぬ、永遠の最終話ですか?」

「う、ウサミンは永遠なんですって……あはは……」

「ずるずる続く最終盤って滝沢馬琴みたいねぇ」

「たきざわばきん? なんだっけ、名前しか思い出せない」

「南総里見八犬伝を書いた人でしたっけ。抜けば玉散る氷の刃、斬り捨てた敵の鮮血も留めぬ名刀・村雨……!」

「そうそう、その八犬伝! あれ第1輯(集)から第9輯まであって……馬琴はどうしても9輯で物語を終わらせたかったんだけどぜんぜん物語をたためなくって、なんとか完結させたら第9輯だけほかの10倍近くの長さになっちゃったんだって」

「なるほど、ナナちゃんはふるさとの伝説をリスペクトしてたのね」

「ウサミン星は房総半島のどことも関係ありませんからねっ!?」

「瑞樹さんって八犬伝ぜんぶ読み通したことあるんですか?」

「うふふ、大学時代の私ったら……それこそいまの鷺沢文香ちゃんみたいな文学少女だったのよねー」

「……」

「なんとか言ってよ!」

 

 プロデューサーさんのいじりは、結果として私への助け舟になりました。

 助け舟のつもりだったのかな。それとも、私のいままでの人生でいちばんやらかしたことなんてその程度のものだろう、って思ったのかな。

 

 その程度、なんて言い方で片付けられるもんでもないかな。

 メイドカフェでバイトしながら自主制作CDを売る地下アイドル――実際にアイドルになったいまから振り返ると、アイドル“ごっこ”に近い――それで3年どころじゃないあいだ鳴かず飛ばず――いや鳴かず飛ばずって元ネタのヒトはわざと行動を控えていたんでしたっけ。ともかく、アイドルになれたいまだからかろうじて酒席のネタにできるやらかしです。

 

 それと関係してなくもない話なんですが。

 あのころの私、もっとシャレにならないやらかしをひとつ、やっちゃってるんですよね。

 

 

 

 あのころはいろいろなことがきつかったんです。

 中学や高校の友達が結婚したり出産したりってお知らせが届きます。言葉と態度では「おめでとう」って祝ったつもりですが、内心はご祝儀や出産祝いで飛んでいくお金がつらかった。「ふつうに就職してたら、いまごろこの程度の金額でうじうじせずに済んだのかな、素直にお祝いできたのかな」って思う自分もつらかった。実家から「たまには顔を出せ」と言われるのさえつらかった。

 お金に困ってたのは……いま思うと、一人暮らしにしてはぜいたくなこの部屋のせいじゃないか? って思えるんですけどね。いい部屋だから家賃もいい。メイドカフェではシフトめいっぱい入れて、フリーターにしては稼げていた……というか稼がなきゃならなかったというか。あとCD作りすぎたり、声優になるための勉強とか言い訳して円盤買っちゃったり……当時もそういう自分のだらしないところに薄々気づいていて、それが後ろめたくって、でも自分でどうにかする気にもなれなくてつらかった。

 あとは……地下アイドルのステージで回数を重ねるごとにまばらになっていく拍手がつらかった。自主制作CDのネタ切れもつらかった。年下の子がどんどん次のステップに上がっていくのを横目で見るしかできない立場がつらかった。

 

 自分だけなんか勘違いしてるんじゃないか、って不安がつらかった。

 

 そういう心境でバイト上がりの夕方に駅前のパルコを通りかかったとき、ふと昔好きだったアニメのリメイクが上映中だ、ってポスターを見たんです。

 懐かしかった。

 強くてかっこいいアウトローだけどキレイな女の人にすぐデレデレする二枚目半な主人公のお兄さんが、窮地に陥った美女からの依頼を受けて毎回火の中水の中……駅の伝言板ってわかります? 昔の大きな駅には改札近くに、時間や用件や伝言をチョークで書き残すための大きな黒板があったんですよ。携帯電話とかポケベルとかあんまり使われてなかった時代だからそういうのが待ち合わせとかにあると便利だったんです。その伝言板に“XYZ”(後が無い)って書くのが主人公への依頼の合図。私がハマってたころはもう駅の伝言板なんかなくなってて、学校の黒板でこっそりマネしたなぁ。

 懐かしいのと同じぐらい、ショックでした。

 上映前に雑誌やらネットやらで宣伝していたはずなのに気が付かなかった自分が。そんなに周りが見えないぐらい追い詰められてるのかな、って。じゃあ息抜きしなきゃ……って自分に言い訳して、そのままシネコンでチケット買って、昔みたいなワクワク感に浸って上映ブザーを聞いて……

 

 

 

 ……映画館の座席で、めちゃくちゃ泣いてしまいました。

 エンディング近くになるとスクリーンが涙でぼやけてサラウンドしかわからない。グスグスってぐずったら周りのお客さんに迷惑だって自分に言い聞かせるのがせいいっぱい。

 映画は、感動モノとか悲劇モノとかではありませんでした。主人公が危機に陥るけどかっこよく切り抜けるハードボイルドとか、お色気に釣られてドタバタするコメディリリーフとかやったりしながら、最後は敵役を始末してしっかり一件落着。ラストシーンは空港を離陸する飛行機からのエンディングテーマがフェードイン……私がハマってたあのころの雰囲気と声優さんのまま、作画とか音響とか演出とかが現代的になってて、すごく理想的なリメイクでした。

 上映時間が終わると、私は現代に引き戻される。あのころ夢見ていた理想に近づきたくて、もがいているばかりの現代の私に。心が引き裂かれそう。

 エンドロールが終わってランプが点いちゃってもどうしようもなかった。

 

 すると、右隣の席から、男の人……のようけどちょっと高いかなぁって声で「使いますか……?」って聞こえて、ついそっちを向いてみると中学生か高校生ぐらいの男の子がハンカチを差し出してくれていました。やや涼し気な感じの細面が、心配そうに眉根を寄せていました。映画で「やれやれ……」とかぼやきつつ主人公をサポートしてくれるクール系の相棒キャラがいるんです。あと10年経ったらそういう雰囲気を醸し出してくれるかもなぁ……それはそれとして、当時でもけっこう同級生の女の子受けしてそうな男の子でした。

 明らかに年下の男の子に号泣してるところ見られて気を使われて、って小っ恥ずかしくてたまらない。ですがハンカチはありがたく使わせてもらいました。それからその子は「話、聞きますよ」とも……ナンパあしらうのには慣れてたつもりだったんですけどハンカチ汚しちゃったからお茶ぐらいおごってチャラにしておかなきゃな、とも思って駅から離れたカフェにお付き合い。あまり近いとメイドカフェの常連さんや同僚に見られちゃうかもって心配だったし。

 

 

 

 カフェで号泣してた理由を「映画にすっごく感動して……リメイク前から好きで、本当に……」ってごまかして、それから映画の感想やらなんやらで“あの子”――いま、彼をどう呼ぶべきか迷ったままなんで、これで続けさせてください――と意気投合してしまいました。あの子はリメイク前をリアルタイムで視聴していない世代(私もですけどねっ)なんですが、アニメが好きとのことでDVDレンタルして昔の作品もチェックしているとか。いまだったらサブスクで見て……とかになるんでしょうか。

 ハンカチ差し出してくれたころのあの子は、よく言えば落ち着いた、悪く言えばスカした印象だったんですが、アニメの話になると無邪気なほど楽しそうで、聞いてるこっちがまぶしくなるぐらいでした。

 

『あ、ごめんなさい僕ばかりしゃべって……こういう話できる人、あまりいなくって』

『部活とかやってないの? 私は学生のころ漫研だったから、そこでならおしゃべりできる相手いたけど……』

『ナナさんも絵とか漫画とか描くの? 僕のとこ漫研ないから美術部入ってみたけどそういう話題は……というか、ええと、あの』

 

 あの子が言い淀んだのが、なんでか不思議でした。

 

『が、学年は……』

『学年?』

『ナナさんって学年いくつなの? というか、先輩だったら敬語にしたほうがいいかな、とか……』

 

 え、あれ? もしかしてナナ、“本当に”学生に見られてる? って。うれしいけど、勘違いさせちゃってどこかきまりが悪い。もう高校なんて卒業してけっこう……。

 

『じ、じゅう……高校2年生ですっ! 17歳っ!』

 

 つい、メイドカフェや地下アイドルで名乗っている17歳と返してしまいます。あの子は信じてくれるかな、なんて思いつつ。たぶんあの子が言い淀んだのは、女性にずばり年齢を聞くのは……って遠慮したから。学年なら良いのか? という気はしますが、せいいっぱいの配慮だと思えばいじらしい。

 するとあの子は、はにかみながらこう返してきたんです。

 

『偶然、俺もナナさんと同い年っ』

 

 それを聞かされたときの私は、ああ背伸びしたハッタリなんだろうな、でもそこ突っ込むの野暮だし……なんて余裕ぶっていられたんです。あの子、背丈は170ぐらいありましたけど、顔や体つきの線が細くっていかにも成長途上って感じだったし、カフェにも入り慣れていないようすだったし、17歳は逆サバだろうって思ってたんです。

 

『……あれ? なんできみ、同い年なのに“ナナさん”なの?』

『いや、ナナさんってなんとなくお姉さんみたいな雰囲気がして……』

『なんでよーっ! 呼び捨てでいいのに~。呼び捨てにしてよー』

『わかったよナナさん』

『こらーっ!』

 

 

 

 そんなこんなで男子高校生(?)だったあの子と連絡先を交換して、アニメとか漫画とかの感想を中心にいろいろ語り合いました。お互い携帯代が気になったのでなるべくテキストにしたんですが、やっぱり出会った日みたいに作品を通して気持ちが高ぶるとしゃべりたくなって、深夜に通話したり、もうそれなら……とだんだんデートみたいなお出かけを繰り返すように。

 明らかに年下である異性って、趣味の合う友達だと思えば、これほど気楽に付き合える人はなかなかいませんよね。あの子から聞く学校生活――だいたい愚痴でした――なんて話題を、もしJCやJKの口から聞かされたら私はかつての自分とつい比較しちゃったりなんだりって邪念がきざしてしまうんですけど、あの子から聞くとマイルドに懐かしめてしまうんです。あのころの男の子ってこんなこと考えてたんだな~なんて。

 あの子の学校の愚痴に同調してあげたり、あの子のアニメの感想に共感してあげたりしていました。すると、だんだん自分まで高校生か中学生に戻っていく気分になれました。私ってそういう気分になりやすいタチみたいです。メイドカフェだって勤め始めたころはエプロンドレスが物珍しくっておしとやかで可愛いのと、あと時給に惹かれてただけですが、続けているうちにメイド気分がしっくり来るようになっちゃって。がんばったらすぐ褒めてもらえるし。お店では頼りにされてたし。先の見えない不安にかられてつらいつらいと言いつつ自分であのころの生活を変えられなかったのは、メイドカフェを辞めるのが嫌だったってのもあったのかな。プロデューサーさんにスカウトされる前に社員登用の話されてたらどうだったろう。

 メイドはともかく、中学生や高校生気分にさせてくれる人って、あのころの私にはあの子しかいませんでした。若い子はめったにメイドカフェや地下アイドルのステージに来ませんし、後輩メイドの女の子だとどこかに例の邪念がきざすし。

 

 あの子とお出かけするようになってしばらく経ったころの秋、幕張メッセで某声優アイドルのライブがあってチケット予約受付がもうすぐ始まるって告知をコンビニで見ました。声優さんとしては「どのキャラ演じても似たような雰囲気だな」って感じですけど歌唱力がものすごく高くってアルバム何枚か出してて「ふつうの歌手じゃないの?」って活動してる人です。私にとっては名前と出演作いくつかを知ってるぐらいの人でしたが、あの子に話をふってみると、かなり興味を示しつつ「……ちょっと、懐具合が」とためらうようす。

 それを前にした私は、つい彼にチケットをおごってあげてしまったんです。いっしょに行きたいからって。

『メイドカフェでバイトしてるんだ。学生にしては稼げるんだよ? でもきみは来ちゃダメ。お仕事にさわりがでるからね』

 その日からしばらく、私の夕食は具がやけに白っぽい鍋ばかりとなりました。もやしとかお豆腐とか。

 良かったのか悪かったのか、ライブはパフォーマンスも含めてとても楽しく大満足でした。その満足の半分以上は、ライブ直後にあの子の感想を聞けたってところにあったんですが。

 

 そろそろやばいな、と自覚していました。当時も、していたつもりだったんです。メイドカフェのタチの悪い“ご主人さま”みたいになってるって。メイドさんに一時だけキャッキャしてもらうために無理してお金を捻出してしまう。まさか自分がそうなるなんて。

 前は……アニメイト一緒に行ったときとか、曲がりなりにも割り勘だったのに。あの子に円盤や漫画を貸してあげるときは、埋め合わせで私の方でも何かあの子から借りてたのに。まぁ「もう観てるよ、読んでるよ」って作品も未履修なフリしてあの子から借りてたけど。

 

 やらかす寸前で踏みとどまれるって思ってたんです。

 踏みとどまれませんでした。

 

 

 

 

 あの子とサンシャインシティまで出かけた日のことでした。某人気アニメの原画展をやっていて、初日に2人で早起きして電車乗り継いで池袋まで行ったんです。

『東京って意外と行かないよね』

『たいがい千葉か船橋で済むからねぇ』

『ナナさんは、本場アキバのメイドカフェに偵察とかいかないの?』

 入場待機列がシティの外まで続くほど長かったけど――いまだったらアプリで入退場管理する入れ替え制とかになってるんですか?――都内の冬のからっ風に吹き曝しで列に並ばされているあいだ、私は楽しくてしかたありませんでした。というか、長い時間2人で並ばされるの期待して初日に誘ったんです。iPod classicの160GBに何十時間分も曲とかラジオ音源とか突っ込んで、あの子と左右のイヤホンを分けて聞いてたら入場まで時間が溶けていました。よくポップスの詞だと、雑踏とか周りに人がいる場所ほど孤独感が増すって歌われていますけど、2人きり感は他人がいようがいまいがあまり変わらないなぁって思ったのを覚えています。

 原画展の内容は……買ったパンフ取り出して見れば思い出せるはずです。部屋の本棚のすみに入れっぱなしで取り出せなくなっていますが。

 会場を出たのは、なんと夕方になろうかという時間。ファストフードの騒がしいお店で腹ごしらえをしていると、あの子がぽつりとつぶやきました。

 

『僕、アニメーターになりたいんだけどさ』

『うん』

『周りから、止めておけって』

 

 隣や、またその隣の席で、本物の中高生らしき子らがキャッキャしているのに紛れて、あの子のつぶやきはいまにもかき消えそうでした。

 

『……どうしても、なりたいんだ?』

『なりたいんだけど、さ』

 

 私はあまり深く考えずにあの子を励ますつもりでした。

 アイドルもそうですけど、アニメーターって……例えば、学校の先生に進路希望で相談して背中を押してもらえる職業じゃありません。じゃあ専門学校でも探してごらん、知らないけど……で放置が関の山です。オタク趣味に理解のある先生なら違かったのかな? 基本、最初から自分で動かないとどうにもならない。

 励ますつもりで――なんなら、いま池袋だし帰り道に代アニでも覗いてみようか――なんて言いかけて。

 

『……給料安いし、過労死とか多いから、って』

『あっ』

 

 私の浮ついた言葉がぺしゃんこにされました。

 

『……それは、そうだね、うん。最近は海外に外注されちゃったり、なんだり、ね』

 

 あの子の進路相談に乗ってくれているらしい“周り”は、私よりよっぽどリアリストだったようです。

 それが、私には耐え難かった。

 

『ねぇ』

『……ナナさん?』

 

 あの子といるときにまで、なんで私がこんな思いをしなきゃいけないの、って。

 すごく身勝手な都合。でもどうしようもなかったんです。こんな話を聞いてから山手線や総武線やメトロに揺られて黙って帰れと? 冗談じゃない。

 

『きょうは朝から並んで、きみも疲れてるよね。“休憩”、していかない?』

 

 そのとき私が気にしていた現実は、あの子の手の指と、ホテルの入口に見えた値段設定だけでした。

 

 

 

『あの、ナナさん』

『うん』

『僕……その、こういうこと、経験なくって』

『誰でも最初は初めてだよ』

 

 初めてでもだいじょうぶだよ。私も……久しぶりだけど、きみをうまくリードしてあげられると思う。気持ちよくなることだけに集中していて。そうやって言葉に出したつもりですが、あの子の耳に届いていたかどうか。

 とにかく2人きりで、他人とかいう余計な現実が入り込めない空間に避難しなければ収まらなかったんです。映画館でボロ泣きしていたときより切実に。

 

『ま、ここ来たからってえっちなコトをシなきゃいけない、ってきまりはないけどね』

『あ、そうなんだ』

『そうだよ? 女の子のお家に遊びにいって2人きりになれたからって、早合点シちゃイケないのと同じ』

 

 ホテルの部屋は、値段にしては清潔感がありました。ベッドもシーツもぼちぼち。そっちに設備費をふれるだけふったようで、ゲームとかカラオケとかおもちゃになりそうなモノをさっぱり置かない、セックスしかすることがない空間でした。そんなとこ引きずり込んでおいて『シなきゃいけないってきまり、ないけどね』とは我ながら呆れてしまいます。

 

『ところで、私はシたいなぁ。きみは?』

 

 立ち尽くすあの子の胸元にこっちの肩を寄せて、上目遣いを向けます。トップスごしにほんのりおっぱいを押し付けます。お互い冬物の分厚いの着たままだから、あの子がはっきり柔らかいって感じるほどじゃないだろうけど、私の意図は伝わるはず……って。

 シなきゃイケないの。

 

『僕は……』

『うん』

『し、したい、よ。ナナさんと』

『セックス?』

『うっ』

『違うの? 勘違いだったら困るからね』

『勘違い、じゃ、ないよっ。シたい、セックス……!』

『うふふっ。じゃあ、よろしくお願いしますねっ』

 

 シャワーは浴びておきたかったけど、ここまできてあの子とのあいだに壁1枚でも隔たりを感じたくなかったので、一緒に入ることにしました。2人で同時に入ると、狭いけどなんとか手足がぶつからないぐらいのシャワールームでした。良かったのか悪かったのか。

 ハダカのお付き合い。

 

『きみはスマートな体型だと思ってたけど、脱いでみると男らしいとこあるね』

『男らしい、かなぁ』

『肩幅とかは服越しでもわかりやすいけど、骨とか肉のごつごつした感じ? なんかねー』

『ナナさんは……その、あの……』

 

 あの子の視線は主におっぱいに注がれていました。おっぱい大きいね、と目で語っていました。素直にそう思ったのなら、声に出してくれてもいいのに。お互い立ったままの姿勢であの子のほうが身長あるから、私のおっぱいより下は見えにくいのもあったんだろうけど。

 

『やっぱり胸かな。気になる?』

『おっきくて、やわらかそうだな、って。うわ、たぷって揺れた』

『ただの自慢だけど、揺らすほどあるよー。肩がこるし、汗たまって蒸れるし、変な目で見られるし、苦労させられるけど』

『ご、ごめん』

『きみは見てもいいけど、触るのはシャワー終わってからね』

 

 そういう私もあの子の体をチラチラ見ました。しゃあしゃあとお湯を流しっぱなしなのもお家じゃないから気にしない。あの子のおちんちんったらもう血が流れ行って鎌首をもたげ気味でした。頼もしいやら微笑ましいやら。皮は剥けきるかどうかといった具合。

 

『な、ナナさん、その……』

『いいでしょ見たって……見ちゃうんだもん』

 

 いつのまにか、チラチラがジロジロになってしまっていたようです。

 

『ナナさんって、けっこう、えっちなんだね……』

『……あーっ! まさか、私が誰にでもこうだとは思ってるんだー』

『そんなことないよっ』

 

 ドキッとさせられちゃいました。

 

『わかってるって。でも、言葉には気をつけてね』

『ごめん、デリカシーなかった』

『きみのせいだけじゃないよ。私が……ほかの人なら笑って流せる言葉でも、きみから聞いたら、変な気分になっちゃうかもしれないの』

 

 年下の子を相手しててこうなるなんて思っていませんでした。そうなるのは年上相手だとばかり思っていました。ナナは――ちょうどあの子と見に行った映画の主人公みたいな――年上のヒトに憧れる女の子だったから。

 

 シャワーからあがって肌と髪から水気をとったり、喉が渇いたから飲み物を用意してあげたり。あの子のぎこちない視線をバスタオルごしに感じられてウズウズうれしい。さっきと違って、お尻も太ももも見えてるよね。あるいは髪の毛とかうなじとか? アニメーター志望の美術部員だから、目が絵描きさんになってて、そういうところも女らしく思ってくれているかも。きっとそう。

 セックスしかできそうもない部屋なのにスキップしちゃいそう。

 

『あ、そういえば』

『ナナさん?』

『キスってシたコトあるかな』

『……ええと』

『ほら。経験なくって、の経験だよ。危ないなぁ私ったら』

『シたコトが、なかったら……?』

『ドキドキしちゃうよ。もっと、ずっと』

 

 立ったままだと身長差がきつそうだったから、ベッドに寝転がって横寝で向かい合ってもらいました。もうただのキスじゃなくって、セックスの前準備って雰囲気がムンムンになって、でも照れくさくってニヤニヤ笑い合います。

 

『あ、そうだ。腕貸してよ。腕枕して』

『ええと、こうかな』

『……んふふ、いいのかなー利き腕を預けちゃって。未来の商売道具をー』

 

 顔を近づけていきます。軽口を叩けなくなるほど。

 

『じゃあ、お返しにナナさんの将来の商売道具、もらっちゃうよ』

『えー?』

『だって、声優でしょ。くちびるとか』

『あ、そうだね。自爆しちゃった』

 

 目を閉じる。くすぐったくなる鼻息と、切なくなる口臭と、気恥ずかくなるリップノイズ。五感の一つをシャットアウトしたのにかえってあの子の気配が生々しく迫ってきます。ここまで近づくと目なんて開けてても閉じてても大差ないか。

 こんなに他人の気配が近いなんて久しぶり。近くに来て欲しいって思った人はもっと久しぶり。

 涙ぐんじゃう。こぼれるまえに目を閉じててよかった。

 

『キス、シたいな』

 

 そう言いつつ、私からくちびるを重ねに行きます。

 あの子の吐息が、くちびるが、腕が、肩が、胸が、とくんと揺らぐ。

 粘膜が乾き気味でしょっぱい。心に潤って甘い。

 

『ん、ふ……ナナ、さん』

『キスはね……少し、首をかしげるといいよ。鼻どうしが気にならなくなるから。わざとぶつけあうのも、面白そうだけど』

『これが、キス、なんだ……』

『これと、あと“これから”もキスだよ』

 

 あの子のファーストキス。すぐには終わらせない。ちゅっちゅってバードキスから、ぬちゃぬちゃってディープキスまでノンストップで済ませちゃうの。いいでしょ。キスのあとえっちまでシちゃうんだから。

 

『んゅ、じゅ、ちゅ、ちゅっ』

 

 くちびると舌と唾液を触れ合わせてノイズを立てる。軽いキスをバードキスっていうのは、この音が小鳥のチッチッて鳴き声に似ているからだっけ? 重ねる前は遠慮がちだったあの子が、だんだん積極的になってくる。くちびるをむうーってとがらせたり、私の首に手を回してきたり。

 だんだん初めてじゃなくなっていくね。

 

『はうぅ、んぷっ……ちゅっ、ちゅう……んっ、ふふっ、手は、肩に回してくれたほうが、いいかな』

『そうなんだ……』

『ただの、私の好み』

『ええっと、こう、かな』

『洋画だとあっついベーゼで頭に手を回すのあるけど、あれってなんだか強引な気がして……』

 

 くちびるを左右に2-3往復ぐらい触れ合わせてから、こんどは上下に重ねる。ヌメヌメしているようでちょっとギザギザした前歯のエナメル質も味わう。キスはあいさつ、って初めて納得できました。特別なあいさつ、ただのお友達どうしじゃしない行為の始まり、お互いそれを承知し合う合意の儀式。その意味合いが、緩やかに粘膜と体温と触れ合わせているうちに、頭から心臓あたりのじんじん騒ぐところに染み渡って神経が飛んじゃいそう。

 

『れぅ、はむ……んくっ、ちゅ、ちゅっ……んぷ、んむっ』

 

 あの子の舌先を出させて、私がそれをしゃぶったり甘噛みしたり。されるがままにやらせてくれる。調子に乗って舌を突っ込んで歯をつついたら、あの子がびくってあちこち筋肉を縮めて、太ももかどこかに熱く固くなってきたおちんちんの気配がかすめました。

 

『んふっ、ぷはっ……ナナ、さんっ』

『……ふふ、キスばかりじゃ焦れちゃう?』

 

 そう言いながら私も高ぶってきちゃった。

 私があの子にまた顔と肩と胸とを寄せました。ぎゅーって押し付けました。あの子をリードしてあげなきゃ、って意地っ張りだけじゃ、自分を抑えきれなくなってました。

 

『おっぱい、触ってみない?』

『触るっ』

『食い気味だなぁ、そんなに触りたかったんだ。お預けして、悪いことしたね』

 

 あの子にベッドへ座ってもらって、私がその肩にしなだれかかる。おっぱいがいちばんキレイな形に見えて、それでいてあの子が触れるのはどんな具合かな。姿勢を試行錯誤して重心があっちへこっちへ。ついでに二の腕を使っておっぱいむにゅむにゅさせて見せます。ほうら、こんなに柔らかいんだよって。デリケートだから大切に扱ってほしいな。

 

『あう、ナナさんのおっぱいが……』

『あはは、見惚れてくれちゃった?』

 

 あの子の手が武者震いしていて、まだ触れてくれていない。だけど視線でもうぴりぴりキちゃうんです。そんなに見惚れちゃって。敏感になる。あの子と私のあいだに挟まってる空気まで感じられる。

 

『好きなだけ見て良いよ』

『本当に、触っても良い? 現実じゃないみたいだ……』

『触るときは、もう1回触るって言ってね』

 

 おっぱいへのヤラしい視線を感じたとき、たいがいは無視してこっちが歩き去るか、おどけたフリしてとがめるかです。なのに、あの子に許してしまってる。無防備に男の視線を浴びちゃう。心臓がどきどきしておっぱいが震えてしまってはいないでしょうか。ああ、そんな状態なのに手で触れられたら。

 

『きゃんっ……!?』

『あっ、つ、強かったかな……』

 

 アンダーバストに触れられた。あの子の手のひら。あったかかった。自分が反応して、あの子が慌てて手を引っ込めて余韻になってから、ようやくこの刺激を受け止められる。

 

『も、もう、びっくりさせないでよーっ、だからもう1回触るって言ってねって……』

『ご、ごめんなさいっ』

『それで……?』

『さ、触ります』

『ふーん? きみのせいで、まだドキドキしてる。だいじょうぶじゃなくなっちゃうかも、私。ちょっと撫でられただけで、変な声出しちゃいそう』

 

 だいじょうぶじゃないって言っておけば、だいじょうぶじゃなくなっていいでしょ? そんな屁理屈。

 もうとっくにだいじょうぶじゃないのに。

 

『……さっきのナナさん、すごく可愛かったけど』

『優しくしてよー。いじわるしないでよー』

 

 あの子になら、おっぱいにいじわるされるのも悪くないかな、なんてちょっと思っちゃったんです。

 

『優しくしてもらったら、もっと可愛くなれちゃうんだ』

 

 あの子は、しばらく慎重な手付きでした。でも「おっぱいって、向こうに心臓と肺があるんだなぁって」とか言い出して――だって、あんまりにも女の子に不慣れなの丸出しじゃないですか――つい笑っちゃったら、さすがにカチンとキたのか、ふもとから先っぽまで一通りいじわるされちゃいました。笑いながら変な声を漏らしてたら、肌がだんだん熱くなってきて、吐息が勝手に曇っていきました。煽りすぎて、いつの間にか指先みたいな小さいあざをつけられちゃってました。

 

 

 

『んもー、本番前にちょっと落ち着いてもらったほうがいいかな?』

 

 攻守逆転。あの子を座らせたまま膝を開かせて、私がそのあいだに陣取ります。

 むくむく勃起してこっちを向いたおちんちんは、皮に半分隠れた亀頭がよだれみたいな露でてらてら光っていて、もうちょっとでセックスできちゃいそう。

 

『私がシてあげる』

『ナナさん、その……』

『出ちゃいそうなときは、言ってよ』

 

 根本をきゅって握ってあげると、あの子が弱々しく呻く。先走りがじわあって垂れ落ちる。自分であふれさせたのに、なんてもったいないって思ってしまうんです。先走りでこんな気分になるのに射精までさせちゃったらどうなっちゃうんだろう。初めてだったら女のあそこで射精したいかな。でもあそこがほぐれるまで待てないかも。

 いいよね。どうせナマじゃできないし。

 

『ぇふ、ぇう、あ、うっ……!』

『きみは、自分でいじることある? そのぐらいの力加減でやってあげようか』

 

 薄明かりでもわかっちゃう。

 あの子の頬が赤らんでる。視線が右往左往してる。うつむきたくてうつむけないんだ。いまうつむいたら私とまともに目が合っちゃうもんね。

 

『私のおっぱいとか、オカズにシてくれたこと、ある?』

『それは――んっ、っ……ふぅ、は、ぁ、あっ……!』

 

 あの子のおちんちんは熱くて硬くて男らしいけど、声とか表情とか反応がいちいち可愛らしいからいじりやすかったです。おちんちんって本当にパンパンに血が流れ込むと骨にも負けないぐらい硬くなるようですが、あの子のはどこかにぶつけて腫れ上がってしまったたんこぶみたいな雰囲気でした。

 

『痛い?』

『き、気持ちいい……よすぎ、かも……』

『そっかぁ』

 

 頭を下げて、ちゅ、って先っぽにキス。青臭い匂いと味。よだれがあっというまにたまっちゃう。キスらしく閉じておいたまぶたの裏がきらきらする。

 

『あ、ぅ、あぁああぁっ……』

『あれれ、口のほうが敏感になってる。手より口のほうが好き?』

『そ、そんなの、どっちも初めてだから……!』

『私は……口でするほうが、好きかも。おしゃべり、しにくくなるけどね』

 

 上から下までキス。根本のほうは頬ずりするみたいに。顔がいやらしいお汁で汚れちゃう。縮れた陰毛がふわふわくすぐったい。

 舌先で筋をくすぐってあげると、ぷるぷるって気持ちよさそうに震えながらしかめっ面。可愛すぎておかしされちゃう――もうとっくにおかしくされちゃってる――おかしくなったままでいいかな、なんて開き直っちゃう。

 

『出ちゃいそう? まだがまんできる?』

『で、できると、思う……』

『ホントかな? どーしよっかなー』

 

 迷っているふりをシながら、先っぽをぱくりと口に含む。おちんちんの根本はカチカチになってもこっちは柔らかいままだ。舌をもぞもぞさせると、それだけであの子の吐息が波打っちゃう。震える。脈打つ。あぁ、おちんちんって心臓とか呼吸に合わせて震えてるのかな。

 

『ぴちゃ、れぢゅ、れぢゅ……ん、く、ん、んふう……!』

『な、ナナさんっ……はぁ、あ、ぅ、あっ、あ……!』

 

 ちゅうちゅう吸い付いてあげる。キスのときよりずっとお行儀悪く。くちびるとほっぺたの裏でしごく。びくびく。思ったより我慢強い。

 あの子の顔を見上げる。相変わらず苦しげな表情と吐息。あれれ、止めてほしい?

 

『く、ぐぅ、あ、あっ――も、う、あっ……』

 

 あの子の手が私の肩にすがってくる。だめなのか。出しちゃうのか。

 だめなのに、だめじゃない気がしました。

 しこしこ、しゅっしゅっ。どんなに優しくしてるつもりでもあの子を追い詰めてしまう。

 

『く、うぁああ、はぁー、はぁあ……っ!』

 

 ぶぴゅるるっ! ぴゅくっ、ぴゅっ――びく、びく、ぬろぉろ……っ。

 あの子のどろっどろの青臭い精液。跳ねる体温と断末魔を感じて、頭の奥までゾクゾクする感じが2乗3乗になる。

 

『んぐ、んっ――くふっ、けふっ、かふっ』

 

 射精、させちゃった。あの子の赤ちゃんを作るためのものが、私にむなしく食べられちゃった。

 涙が溢れたのは、むせちゃったせい……だけじゃなかったかもしれません。

 

『ううっ……へ、へんなとこ、はいっちゃった、かな……っ』

『あ――ごめんなさいっ、出して……み、水とか、いま持ってくるから……あっ』

『あとで、でいいよ、そんなの』

 

 体は水を欲しがって喘いでいたけど黙殺します。

 水よりも、私はあの子に渇いていたんです。

 

『……私こそ、ごめんねぇ。女の人にさせてもらう初めての射精、お口でもらっちゃって』

『そんな、ごめんって言われても……』

『まだまだ、シちゃうよー?』

 

 仰向けに押し倒したあの子の腰をつかみました。一仕事終えたようにくったりしてきたおちんちんを、おっぱいの谷間でとらえました。

 

『くひっ、ひんっ! はぁぁっ、んぅぅぅっ……!』

『きみ、おっぱいが大好きで、さっきたくさんかわいがってくれたから……おっぱいがお礼したいってっ』

 

 二の腕と肘でおっぱいを圧迫する。おっぱいでおちんちんを圧迫する。あの子の喘ぎがますます女の子みたいに聞こえます。みっしりとおっぱいの肌で包み込むと私までなにか満たされる気がしました。

 

『パイズリ、って言うんだっけ。私はえっちな本とかビデオでしか見たことないけど……こうかな?』

『ぁ、ああっ、う、く、ぐぐ、ちょ、ナナさん、止めて、ぇ……あッ、は、ぅ、ぁあぅ……っ!』

『コンビニとかビデオ屋さんの18禁コーナーって、行ったことある? 私たちはまだ行っちゃいけないハズだけどね』

『ンああぁああ……っ!? あ、ぅ、あぁああぁっ……』

『初めて、あのノレンみたいなとこくぐるときは、緊張して、しかも先客と目が合っちゃって、わーってすぐ走り去っちゃって……きみは、そういう思い出あるかな。聞きたいなぁ』

 

 汗とよだれと先走りと、あと精液の残り。ぜんぶもみくちゃにしてズリズリ。おちんちん気持ちよくしてあげてるってほかに、エクササイズみたいな楽しさもある。あの子の喘ぎが高く大きくなって合いの手みたい。えいっ、えいって力任せにやっても、おっぱいが柔らかいからおちんちん痛くシないで済むだろうし。少なくともこっちが痛くなければ……って調子に乗って、まだまだズリズリ。

 

『あ……ふぁ、あ、んんっ!』

『お、勢いが戻ってきた気がする! うれしいな、私のおっぱいで元気になってくれて』

 

 根本からぎゅーっとおちんちんを絡め取っていくと、きのこの傘みたいに張り出してるところだけ収まりきらずぴょこんと出て、おねだりしてくれてるみたい。

 

『んちゅっ、ちゅぱっ、ぢゅる……っ』

『ぁ……だ、めぇ……も……っお、っ……!』

 

 思わずキスしちゃう。気づいちゃう。パイズリとフェラチオって同時にできるんですね。ノドとか鎖骨とかのあたりキリキリって筋が突っ張ってる姿勢だったから、パイズリもフェラチオもかろうじて……って感じでしたが。あんまりぎこちなくって、再び限界寸前のあの子でも耐えられるぐらい。瑞樹さんや早苗さんぐらいおっぱいおっきかったら同時にみっちりできるんでしょうか。

 

『んふふ、こんどは、我慢してくれたねー。えらい、えらいっ』

『ナナさん、もしかして……ちょっと、Sっぽい……?』

『どうかな? きみが気持ちよくなってくれるのが楽しくって。メイドだし、奉仕者(servant)のSかもよ』

 

 ゴムを着けてもらおうと思ったら、あの子が意外とスムーズに装着できてびっくり。『ほ、保健体育でやったんだよ』……いまの学校だと教わるんだ。教わるにしても、それを覚えていてこの本番で一人でできるなんてすごい。私、こんないい子とセックスするの? っていまさら切なく苦しくなる。

 主導権を握っていられない。ころん、って仰向けに転がって、はしたなく太ももを開く。泣いてるみたいにぐじゅぐじゅのあそこを見せびらかしてしまう。生理じゃなくてよかった。血が出ると盛り下がっちゃう人もいますからね。

 

『じゃあ……きみが入れてくれる?』

『そこまでは、保健体育じゃやらなかったよ』

『なら、10回でも20回でも入れるの失敗すればいいよ』

 

 うまく挿入できなかったからなんだって言うんですか。いまこのときまで感じてきた興奮とか気持ちよさとか後ろめたさとかは、これからがどうであろうと本当のママなんです。

 むしろ10回でも20回でも失敗してほしいと思いました。あの子が失敗シてくれるだけこのままでいてもいい、って錯覚がしたんです。

 

『あ、何回でも入れ損なっていいけど、ちゃんと入れられるところに入れてよ』

『そうだよね。ええと、その……』

『ひゃんっ、あ、あうっ! ほとんどそこだけど、もうちょっとだけ下……っていうか、いきなり触っちゃだめーっ!』

『あ、つ、つい……ごめんなさい』

 

 あの子がおっぱいのときみたいなしくじりでまたとがめられて、勃起したままシュンとなっていました。かわいい。あの瞬間じゃなかったらずっと見ていたい。

 でもあの瞬間はだめ。焦れちゃってたから。

 

『じゃあ……これで、わかりやすくなった? 恥ずかしい、けど、ね』

 

 あそこのぴらぴらを指で開いちゃう。“くぱぁ”って知識はあったけど自分が進んでやるなんてあのときまで想像だにしませんでした。男の人に向かって、私のあそこにおちんちん突っ込んで気持ちよくなってくださいって露骨にねだるポーズ。メイドカフェで“ご主人さま”注文をねだるのとはわけが違います。

 ……うう、煽っちゃうつもりが、やっぱり恥ずかしい……また自爆しちゃってる……。

 

『あ、あのね……ええと、もっとゆっくり!』

『あ、はい』

『ゆっくりしないと切れちゃうんだよ。私のあそこじゃなくって、きみのおちんちんの先、粘膜の話っ! ぱんぱんに張ってるから、下の毛と悪い具合にこすれると、意外とぴーって血が……』

『ナナさんって……いまさらだけど、こういうの慣れてる……?』

『……え、ええと、その』

『あっ』

 

 照れ隠しでじたばたしてたら、思わぬ不意打ち。

 どうしてだろう。薄ら寒い感じにドキッとさせられる。ほかの人なら笑って――少なくとも、顔だけでは笑って――流せる言葉なんだけど、あの子から聞いたから、そうなっちゃう。

 

『じゅ、じゅうなな歳で経験済みって、早い、かな……』

『僕に聞かれても……』

 

 あの子もおかしくなってるのかな。17歳って言ってたじゃん。もうハッタリを打つ余裕もない?

 

『じゃあやめておこうかっ!?』

『それだけは勘弁してくださいっ』

 

 じゃあ、シようよ。えっち。

 もうそれだけでしょ。私たちがいまシたいコトなんて。

 

『あ、きゃんっ! こ、声、出ちゃ……あうっ、うぅぅっ、あうぅ……っ!』

『ナナ、さんっ』

『この、まま……イッちゃえ、イッちゃえっ』

『うぐっ! な、なか、キツ、ぃ……!』

 

 10回よりは少ない失敗のあと、あの子がずぶずぶって入ってくる。要領いいんだなぁ。あんまりしくじってくれてたら私が手でおちんちん誘導してあげるつもりだったけど。これであの子も大人の仲間入り。私みたいな大人だろうけど。

 

『あっ、ゃ、あ、んんっ……ひぁ……! ふふっ、どうしたの……? さっきより、ひどいしかめっ面、脂汗……気持ちよくない……?』

『違う、よ……ナナさんのあそこ、気持ち、よすぎて……っ!』

『手とか、口とか、おっぱいでは加減できたけど……こっちじゃ、加減できないなぁ……』

 

 あの子の童貞卒業したてのおちんちん何往復かで、気づいちゃったんです。私、あの子を気持ちよくさせたいって。あの子が、何もかも忘れちゃうぐらい。

 

『あっ、だっ……お、お、く、や、め……かんじ、すぎちゃうからぁ……!』

 

 あの子の抜き差しが遠慮がちだったので、それを解きほぐしてあげます。あの子の手首をぎゅってつかんで私の腰をつかませます。そうしたら腰のくびれのあたりに、おっぱいよりもきつく指を食い込ませてくれてうれしくってあそこのナカをきゅってシちゃう。

 

『……ぉ、お、っ、しま、る……!』

『だめだよぉ、だめだからね……? そんなにシちゃ……おかしく、なっちゃうから……』

 

 震える猫なで声。泣き笑いの目とくちびる。それにつられて目を合わせてくれたきみから、視線をすうって反らしちゃう。

 きみが動いて、こっちを振り向かせてみて。もっと私をだめにして。

 

『ふぁぁっ……そ、そこっ、キちゃ……んっ、んくっ……!』

 

 あの子がもっと心置きなくおちんちんズポズポ気持ちよくなってくれるよう、とにかく気持ちいい気持ちいいって伝えます。おちんちんであそこの“そこ”をずりずりされると気持ちいい……って何回言ったかわかりません。どこされても“そこ”がいいって言ってたんで、かえってどこをどうずりずりしたらいいかわかりにくかったかも。

 

『きゃふっ!? ほぁ、あっ……! そ、そぇ、だめ、だ、めぇ……や、ぁ……お、音、立てちゃ……っ!』

 

 わかってもらう必要なんてなかったんです。ぎこちないピストンで感じてる演技してたら、本当に頭がじんじんしてきて、お腹も腰も勝手にぺこぺこ媚びて、あそこがじゅぶじゅぶってえっちなお汁だらしなく漏らして、あの子がもっと興奮してくれる。

 私のことだけ考えて、私のことだけ求めてくれる。

 

『も、もう……んやぁああっ、あああっ! い、イク、いっちゃうからっ……』

『う、ぉ――く、ぁっ! も、もう、ナナさん、限界、が……!』

『ぁ、あ、い、イク、ぅ、ぁ、ああぁあっ!』

 

 本当にイカされちゃう。イカせてもらえちゃう。両足の膝とふくらはぎであの子の腰に絡みつく。かかとであの子の腰骨どしどし打って催促しちゃう。私だけ気持ちよくさせるなんて許さない。

 

『い、っくぅうううううっ!! いっちゃっ……っく、イク、いッぐううう゛っ!』

 

 だめでした。

 頭とか、胸とか、お腹の底とか、イケない溶けたり燃えたり弾けたり。ぐっちゃぐちゃにかき回された心も体もお祭り騒ぎで浮かれちゃって許すも許さないもないんです。こんなの10年ぐらい感じたことない。こんなえっちはじめて。

 

『う、ぐ……く……ぅッ……ぁ、ぅ……ッ』

『あぃっ、ひ、ぁ、おぉぉ……で、でて……っ……』

 

 “あ、いま射精した”ってあの子の気配だけでわかりました。私がイッちゃうって叫んであそこきゅうきゅうするまで粘ってくれてたのかな。そうだったらいじらしいですよね。さっきまで童貞だったのに。

 

『……ふ、えへ、ぇへ……なんだか、すっかりリードされちゃいました、ね……』

『ナナさん……イっちゃった、の……?』

『それは、もう……おかげさまで……って、そんなセリフ言わせないでよーっ』

『自分で言ったんじゃん……』

 

 ずるずるっておちんちん抜かれる喪失感で泣きそうになります。抜かれたおちんちんみたらゴムの精液だまりがぶらんぶらん揺れてて、幹の部分が半分露出してました。

 

『あはは、危ないなぁ……これ、一歩間違ってたら外れてたじゃん……』

『わ、本当だ』

『次からは、もっとぴっちりしたサイズにしなきゃだめかもね』

『ゴムのサイズ……?』

『あるんだってさ』

 

 そういうあの子の反応に、どことなくさっきまでと違う余裕がありました。そっか。ゴムありだけど童貞卒業セックス私としっかり最後までできたもんね。私のあそこで気持ちよくなって射精したんだもんね。

 私だけの勘違いじゃないよね。

 

『……試してみる? ここの備え付けだと1種類だけかもしれないけど』

『試す、って……』

『ゴムは1回ごとに取り替えなきゃだめなんだよー』

『う、うん』

『だめなんだよー』

『……ナナさんって、めちゃくちゃすけべ……?』

『きみは、そうじゃないの? 私と違う?』

 

 やっぱり、あのときの私はおかしかったんです。

 好きな男の子とお出かけして、いっぱいおしゃべりして、話題のアニメ原画展もいっしょに堪能して、キスとかえっちとかして、2人とも気持ちよくなれたんです。

 これ以上の幸せが想像できないのに、これ以上何を望んでたんでしょうか。このときよ永遠なれ、と願うしかないじゃないですか。そうなったら、あとはクタクタになるまで必死に引き伸ばすだけです。引き伸ばしきれなくなって苦しむんです。

 

『……じゃあ、パイズリでおっきくなったら、もう1回ね』

 

 あの子のおちんちんは、もう2回射精してるのにすぐ復活してくれました。

 思春期の性欲というか精力というか、とにかくすごいですね。私にもあったんだけどな思春期。

 

『あっ、そぇ……くる、くるくるっ! ……はぁっ、すご、ぉ……!』

 

 なんて余裕ぶっていられませんでした。

 私の予想以上にすごかったんです、あの子の精力。

 

『あはぁっ……はぁっはぁっ、んはあっ……それぇ、されるの、すきぃ……!』

 

 正常位はさっきやったからって、私が四つん這いになってあそことろとろだらだらさせながら挑発したら、ウエストのところガッてつかまれて、こんどは一発でずぶずぶって奥まであっさり届いちゃう。

 私のことそこまで覚えちゃったんだ、と思い込んだだけでイケちゃいます。

 

『あああうっあ゛っ! あひぃっ、んぐぅっ……いいっ、これいいっ、これすきぃっ!』

 

 動物みたいにバックでぱんぱんされて、顔も見合わせられず会話もろくにできないこのときになって、私は初めてあの子に『すき』って言えました。

 あんまり言わせてもらえませんでしたが。

 

『くひぃっ……!! ハッ、はァッ……な、なに……まだ、おっきぃじゃん……』

『ナナさん、こっち向いて』

 

 というのも、膝立ち後背位の要領をつかんだあの子が、こんどは私の肩や首に腕を絡めて、私の上体を起こして引き寄せようとするんです。そうなると膝立ちの立ちバックになるのかな。確かにそうしたらあの子のいるほう向きやすいね。でも、それは……私、ちょっと、それ……。

 

『え、ええ……それは、キツ……んひぃっ、お゛っ、ほぉぉおっ――!』

 

 体そらされて、お腹あたりから胴体ねじられて、あそこのキてなかったとこまで、おちんちんキちゃう。

 なにも考えられなくなっちゃう。

 

『そ、そぇ、や、やめてぇ……かわいくない、こえ、でちゃ……う゛ぅー……あぐ、く、ぁ……も、ぅ……むり、むぃ、です……』

『……ナナさんが、煽ったんだろ……!』

『う゛っ……う゛っあ、いっ、イク、ううう゛……っ!』

 

 膝立ちで立ちバックってされたことありますか。おちんちんで突かれる側からすると、ふつうのバックより重心が高くて支点が少なくて――つまり腰を上下左右にずらせなくて――抜き差しの刺激をぜんぜん受け流せないんです。しかも私よりあの子のほうが体格一回り上だから、おちんちんにはりつけにされちゃって前後にも逃げられない。

 

『ふぅあああっ!? ら、らんぼうに、しない、で……うっ、くぁあぁっ……あ、あおッ!』

 

 背中側から肩を抱きすくめられ、おっぱいまでぎゅうぎゅうってされ放題。腰砕けにされちゃう。いくら手足でもがいても首をふってもムダ。背中であの子にすがるしかできなくなる。

 本当に、どうしようもなくなりました。

 

『わ、わらひ、いった、ばかり――ひ、ぁぁっ! んぐ、ぅあ、ぁあぁァあ、あぁーっ……!』

『それも、お互い様だってば……』

 

 2発出しても硬いママのおちんちんで、あそこの奥か手前か、とにかく私のだいじなところをごりごりとらえられる。自分の体重までかかって壊れちゃう。あそこのほうが先に観念したのか、なにかぴゅっぴゅって恥ずかしいお汁を漏らしてベッドを汚しちゃった。

 

『あ、ぐぅ、やぁあぁ! あ、ひっ――ひぁ、あ、へぅ、あえぇ……っ!』

『ナナさん、ナナさんっ……!』

 

 そうやってあそこを屈服させられながら、細いけど男っぽい腕でぎゅーって抱きしめられ、耳元でささやかれる。

 オチるに決まってますよね。

 

『ふ、ふぎっ、あぅうっ! あ、らめ゛、えっ……んっ、んぶっ! んむう゛っ、う゛っ……っ!』

 

 頭に手を回されて、後ろのほうを向かされて、キス。

 ダメ押し。

 

『も、ぉ゛……む、ぃ……うっ……うっ、あっ……』

 

 まさか、えっちで失神しちゃうなんて。しかも童貞卒業したばっかりの男の子相手に。

 ……私がぐったりしてなかなか回復できなくって、たぶんあの子に門限を破らせちゃいました。

 

 

 

 帰りの山手線外回りに乗ってからは、車両のすみっこに2人で並んで立っていました。

 あの子は黙って窓の外を見つめていました。私が指を引っ張るとこっちを向いてくれるのですが、何も言ってくれません。言葉が見つからないようでした。

 私は背伸びしてめいっぱいあの子の耳に近づいて、周りに聞こえないようにささやきました。

 

『本当に、はじめてだったの……? 私ったら、すっかりやられちゃって』

 

 とりあえず、口火を切ります。

 照れ笑いのふり。いろいろされちゃったけど、照れるぐらいの余裕はあるんだってふり。

 

『……初めてなのは、ウソじゃないですよ』

『んん? いやに含みのある言い方するね』

 

 あの子の耳が遠ざかって、気づけば私とあの子が向き合っていて、ぺこんって頭を下げられました。

 

『ごめんなさい。僕、本当は、ナナさんより年下なんです』

『なるほど。失礼ですけど、おいくつで』

『本当は……14歳、です』

『……え゙ッ』

 

 14……じゅうよん……ふぉーてぃーん? セブンティーンじゃなくて? 本当に?

 私の頭が計算を拒みました。

 

『あのとき、年下だって思われたら、相手してもらえないかなぁって……ナナさん、年上好きっぽかったし、でも18はムリがあるって思って……』

『あ……ぇ……ぅ……』

 

 お笑いですよね。

 あの日のわたしは、出会ったころのあの子に『17歳は逆サバだろう』って思ってたことさえ、すっかり忘れていたんです。

 

『ウソ、ついちゃったけど……でも、僕、本当にナナさんのこと、好きで……だから、これからも……!』

 

 車内アナウンスが告げた次の駅は、秋葉原でした。

 2人とも下りの総武線に乗り換えなきゃいけません。

 

『……ごめんなさい』

 

 だけど私とあの子は、そこで別れました。

 だって、ナナは……。

 

 

 

 

 

「ナナちゃん、なんだか黄昏れちゃってるわねぇ~。お酒、足りてない?」

「うぇひゅっ!? な、ナナは17歳ですから、お酒はノゥッ! ですよっ」

「あはは、そうだったわねっ」

 

 早苗さんににじり寄られて、我に返りました。

 心配しているのが酒席のおふざけなのか、本当に心配させちゃったのか、ナナには判断できませんでした。

 

「あ、もしかして俺の見立て大外れでしたか。『最終章? やらかしにも入らないよ、わかってないなこの男は……』なんて呆れちゃってました?」

「ヒトの……ナナの過去をオモチャにしないでください~!」

 

 プロデューサーさんがとんでもないことを言い出しました。

 あの子とのことは内緒にしてるはずなのに……どこかでボロ出しちゃってたかな……?

 

「永遠の17歳って設定じゃ、やらかしもなにも……」

「設定って言わないでください!」

「だって17歳だとー、オトナがやったらやらかし扱いされることも、許されちゃうじゃん☆」

「免罪符でもありませんからー!」

 

 

 

 あのときのナナは、あの子と一緒にいちゃいけない人間だったんです。

 自分が寂しい思いしたくないからって、あの子をお金やカラダで釣ってこっち側に引きずり込もうとしてたんです。夢を追ってるんだって自分に言い聞かせながら諦めきれない夢に引きずり回されて焦ってもがいて苦しんで耐えきれず現実から逃げて……って、ろくでもない側に。

 

 あれからしばらくたって、あの子と出会ったパルコは閉館が決まりました。カフェと幕張メッセはまだあります。あのホテルがいまも営業してるかはわかりません。

 

 あの子、いまはもう本当に17歳になっているはずです。サバ読んだり逆サバ読んだりしてなければ。

 いまのナナなら、もう少しまともにあの子と付き合えたでしょうか。

 

 ……ムリでしょうね。

 いまだってプロデューサーさんやちひろさんたちのおかげでアイドルをやっていられるぐらいで、偉そうなこと言えないし。

 

 ……断じて、埋まらない年齢差を気にしているわけでは……。

 

 

 

「あーあ、俺も17歳に戻ってオトナ辞めてぇなぁ。他人に甘えさせてもらっておんぶに抱っこで手取り足取り優しくされながら一生暮らしていきたい……」

「オトナ辞めるんならお酒はお預けね」

「いいですよ、もう酔っ払ってますもん。これ以上はいらない」

「ふーん、プロデューサーくんは轟沈か……って、もういい時間じゃないっ。そりゃプロデューサーくんもできあがるか」

「えぇ~、もうおしまい~? まだ時間あるじゃん~」

「ちゃんと帰るまでが飲み会よ。宅飲みだったら片付けていくまでも含めてよ」

 

 一気にお開きの雰囲気になりました。

 

 あ、だめ。いまは、だめ。

 

「……まっ、まだシメが残ってますよみなさんっ」

 

 ナナ、必死で3人を引き止めていました。

 

「ほら、冷凍うどん! レンチンですぐですっ」

「カンペキすぎるわナナちゃん! 最近の冷凍うどんってだいぶモチモチシコシコしてておいしくなったわよねー」

「ここまできてシメを逃すなんて……で、でも、もう……」

「あと、お風呂とおふとんぐらい出しますよー。狭いですけどっ」

「え、泊めてくれるんですか菜々さんっ」

 

 だって、こんな夜に一人きりにされたら……あのころのこと思い出して、オナニーしちゃって……死にたくなるぐらい凹むに決まってるじゃないですか……!

 

「あたしと瑞樹ちゃんはいいけど、プロデューサーくんはちゃんと帰んなきゃだめでしょ!」

「うぅうぅ……そんなぁ……」

「ぷ、プロデューサーさんは……えぇと、その」

「だまされないでナナちゃん! そうやって油断させて、オオカミさんと化してナナちゃんの貞操もぐもぐする魂胆なのよ!」

 

 早苗さんの言葉がぐさっと刺さります。

 そうですね、いまプロデューサーさんと一晩2人きりにされたら……ナナ、タダで済ませられるか不安です。

 

「仲間はずれにしてごめんね、プロデューサーくん……ほら、顔を上げて。お水飲んで」

「……そんなにつらいなら、帰る前にお姉さんの胸で泣いていけー。泣きたい時には涙流してストレス溜めないー♪ って言うし!」

 

 早苗さんったら、自分の胸をばちーんと勢いよく手で叩いて、おっきなおっぱいがゆさってなってました。

 油断するとナナがその胸に飛び込んで泣いちゃいそうです。

 

「飲み会だとすぐに都合つけられないけど……例えば、おやつにお茶会とかどう? 悩みはお姉さんに打ち明けてみなさい! 力になれるかは保証しないけどっ」

「それはぜひご相伴に預かりたいですけど、シラフでここまで自分をさらけ出す自信はありませんね」

「そう? 甘い物の力はあなどれないわよ。ほんの些細な言葉に傷付いたー、だけど甘い物食べて幸せよー♪」

 

 ……仮に、この3人に『14歳の男の子をホテルに誘ってえっちしちゃった』って告白したら、ナナ、どんな反応されるでしょう。

 

「ほら、プロデューサーさんも食べてってください!」

「食べます食べますっ。タクシーしか残ってなかったら経費にしちゃおうかな」

「ほどほどにしときなさいよ。私たちと親睦を深めるのもお仕事だろうけど」

「あら、うちの事務所タクシー券くれないんだ。あれバブル! って感じがするから1回使ってみたいのよ」

 

 今夜は、告白してみるどころか、想像してみる勇気さえでてきませんが……。

 

(おしまい)

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。