アイマスのアイドルが童貞をもらってくれるシリーズ 作:ふりーじ屋/家庭内禁書
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琴歌さんが弟を丸め込んでわちゃわちゃしながら筆下ろしするお話です。フリージアの花言葉は、[Let's Sail Away!!!]によれば「親愛の情」とのこと。
>土と植物を相手にする仕事は、魂を休ませてくれる
↑これは『庭仕事の愉しみ』所収の「庭についての手紙」が元ネタです。エピグラフの詩も同書で読めます。
遊びも 童心も 過剰な花も
みんななくてはならぬものだ
さもないとこの世は小さすぎ
人生になんの楽しみもないだろう。
――ヘルマン・ヘッセ「満開の花」岡田朝雄訳
※
きょう、姉さんがちょっとおかしくなっている。
「そうですか? 私、おかしくなってるつもり、ありませんけれど」
ここは、ぼくの部屋だ。姉さんとぼくで二人きりだ。
外ならともかく……家の部屋で二人きりのとき、姉さんはぼくに“ですます”でしゃべったことなかったのに。
「力、抜いてくださいな。いい子だから」
ぎゅう、と腕をまわされる。あたたかくて、やわらかいおっぱいがわかってしまうぐらい。
だって姉さん下着姿なんだよ。
ともかくも、何も、あったものじゃない……どんなときだって、姉さんはぼくにこんな“はしたない”スキンシップをしたことなかったのに。
「目、閉じてくださいな」
「……どうして?」
「そういうお約束なんです」
「大人みたいなこと言うんだね、姉さん」
姉さんはへりくつをいった。お約束? ぜんぜん理由になっていない。
ぼくは反論しようとする。させてもらえない。
甘ったるい匂いに声をとめられる。濃すぎるんだ。匂いに、ノドをふさがれてしまったみたい。
「んゅ、じゅ、ちゅ、ちゅっ――」
くちびるとくちびるのキス、姉さんに、されちゃってる。匂いより、甘酸っぱい。あったかい。熱い。
悲しくも悔しくもないのに、涙がでそう。
「――んぅ、んっん……ぅぷ、あ、ふぁあ……っ」
「……ふふっ」
「あ、あっ……姉さん……」
「どうしました?」
「……初めて、だったのに」
「まぁ。あなたはお姉ちゃんと、昔したことがあったでしょう。忘れてしまったの?」
姉さんの言葉どおり、ぼくらがもっと小さかったころ、あいさつみたいなキスをした記憶がある。
でも、ぼくはいま初めてキスした気がしてしょうがないんだ。
ひょっとして、ぼくは姉さんよりおかしくなっているかもしれない。
※
『西園寺琴歌は、つかえる。ヌける』
ちょっと前のある日、休み時間に教室の端っこにたむろしているぼくのクラスメイトが、そういった。端っこでぼそぼそ何事かしゃべっていたくせに、そう“いった”のだけ妙にでかい声だった。
『おっぱいデカいよなぁ、もみてぇよなぁ……うらやましいぜ弟くんよ』
どうやら、ぼくにわざときかせたらしかった。
『ぶっとばすぞ』
『いてて、いてっ、もう手がでてるぞ!?』
『ぶっとばすってのは、なぐったりけったりすることだよ。だからまだぶっとばしてない』
誰がきかせたかわかっていた。へらへらしてる顔にイラっときたので頬をつねってやった。ますますへらへらしやがった。
『こら、キレんな、キレんなって、お姉ちゃんゆずりのかわいいお顔が台無しじゃないか』
『きいたのが、ぼくだけでよかったな』
『なんでだ?』
『きかれた相手が悪かったら……つかえなくされるぞ、お前の』
そいつがエロい話をするのは、いつものことだった。ぼくは、ほとんどそれをききながしていた。
興味がないでもなかったけど……そいつからいつもでてくる名前は、三浦あずさとか桑山千雪とか豊川風花とか篠原礼とか、まぁ、優しそうでおっぱいがデカければいいらしい……いつも同じことばかり。その言い草も、いった本人の本心なのかどうか、あやしかった。というのも、そいつの兄が中等部にいて、どうやらその口まねをしてるだけらしいんだ。もうちょっとマシなしったかぶりがあるだろうに。
そいつが、ぼくにむかって姉さんのことをいいだしたのは初めてだった。そうなると、さすがにききながせなかった。
『冗談きついぜ西園寺クン』
『しらん。ぼくがやるわけじゃなし』
そろそろチャイムがなる時間だった……から、しょうがなく、それぐらいにしておいた。
しておいてやるつもりだった。
『しかしよ。おれたち健全な男子には目の毒だぜ。琴歌お姉さんは』
『健全な男子……?』
その時、そいつがすてゼリフをぼくの耳元にささやいてきた。ぼくは鼻でわらった。
『あんた、そもそも精通きてんのかよ。たつのかよ』
そいつはちょっと背のびしないとぼくにささやけないぐらいの背丈なんだ。つまり姉さんよりも低かった。
『西園寺クンは気の毒だ』
『はぁ』
『いくらエロくたってお姉ちゃんじゃ、な……』
それぐらいにしておけなかった。
ぼくはそいつと時間ギリギリまでつかみ合いした。
なんとかギリギリですませられたのは、お説教のなかで……「こいつが姉さんでヌけるとかぬかした」とか、ぼくがいわされたり、そいつがいったりしてしまう……そんな光景が思い浮かんだからだ。
それは最悪だった。ぜったい尾ひれがついて、おもしろおかしくめちゃくちゃな噂話になる。
あとは、まぁ……。
『はした金もらってあんなのとらせてバラまかせてやるなんて、罪作りで物好きだよなぁ。西園寺の名がないてるよ』
『“ヌける”といった口で、そういわれてもな』
……そういわれて、ぼくも、かんがえてしまったんだ。
グラビアで姉さんがきているビキニ。不思議でしかたなかった。あれって下着と変わらない肌の露出度なのに、なんでぼくらがかえる雑誌に載っていたんだろう。もしぼくらが共学に通っていたとして、クラスメイトの女子の着替えをのぞこうとしたら大目玉だってのに。
姉さんのそういう写真を何枚もみたことがあった。姉さんにみせられたことさえあった。でも、写真の中の姉さんは顔つきが別人みたいで、みなれることがなかった。カメラに対して顔は斜めに、視線だけレンズにむけていた。おどおどと、こっちをうかがうような目つき。くちびるがぼうっとした半開き。
ぼくのしってる姉さんは、そんな気のぬけた表情なんてめったにしない。得意顔ならよくする。
そういえば、得意顔も写真にきりとられていた。姉さんがぜんぜんちがった表情をうかべる写真が2枚ならんでいると、ノドの奥あたりがムカムカした。
姉さんがアイドルになったきっかけは、父さんが美城プロダクションに「社会勉強をさせるため」ねじこんだからとか、あるいは「西園寺さんとこの娘さんべっぴんだから見込みありますよ!」ともちあげられて本気にしたからとか……ぼくも、はっきりとした理由をきいていなかった。とりあえず、姉さんが楽しそうにしていた。となると、きくのも水をさしてしまう気がして、きけていなかった。
アイドルって、何をやってるんだろう。前に姉さんが仲のいい同僚アイドルを家につれてくる……ときいたとき、あいさつしにいったら、ぼくより年下の子だったからびっくりした。仕事ときいていたのに。習い事の間違いじゃないだろうか。
習い事みたいなものだと納得しようとして――『おれたち健全な男子には目の毒だぜ。琴歌お姉さんは』――『いくらエロくたってお姉ちゃんじゃ、な……』――教室できいた下らないおしゃべりをおもいだしてしまう。家にいるのに。おもいだしたくないのに。
ぼくはこまっていた。家だと、チャイムはなってくれない。ぼくの部屋で夜にねころがっていると、朝まで何もじゃましてくれない。
※
けさ、姉さんがちょっと心配性になっていた。
「まぁ! しばらくお世話できなかったあいだに、いっそうきれいに……! あなたもお世話してくれたの?」
「ぼくはしてないよ」
うちにある温室は、花が好きな姉さんのために父さんがつくらせたものだ。父さんがうまれるよりも昔、いまよりうちにたくさんの人がすみこみの仕事をしていたころにつかっていた建物1棟をリフォームして温室にしたのだそうな。だから温室といっても、植物園にあるガラスと鉄骨だけの本格的なものとは勝手がちがっていた。
けさ、姉さんから、そこにうえてあるお花のようすが心配になった、といわれた。身じたくや朝ごはんもそこそこに、ぼくは姉さんに手をとられて、そこにひっぱりこまれていた。ねむかったから抵抗できなかった。
「では、手伝ってくださいな」
「何が“では”なんだかわからないけど。ぼく、いそがしいんだよ」
この温室に出入りした覚えは、あんまりない。すすんで出入りした覚えは、ほとんどない。中の空気がだいたいジメッとしてるし、ときどきムワッとしてる。居心地がよくない。あと、匂いがやたらに青臭かったりやたらに甘ったるかったりと極端だ。
そんなふうにおもう場所だから、そこにある植物だってすきじゃなかった。昔に世話をてつだわされてたけど、どちらかといえばイヤだった。だいたい、温室っていつもいつも花が多すぎる。学校のサクラをみならってほしい。サクラはぼくらの上も下も花びらでうめつくすことはあるけど、それも春の一時だけ。匂いもだいぶ控えめだし、風にふかれて、ちっていく。そのぐらいにしておいてほしい。
同じ植物だったら、庭の雨ざらしの芝生のほうがいい。ぼくがゴロゴロころがってもいいから親しみやすい。「まぁ、服をこんなにして」って文句をいわれるぐらいだったから。
きょうの温室は、さほどジメッとしていなかったけれど、とても甘ったるかった。朝っぱらから胸焼けしそうだった。
「い、忙しい……っ!?」
「……そりゃあ、姉さんほどじゃないかもしれないけど」
「聞いていますよ。いろいろがんばっていると」
「そりゃあ……そうでしょ。わかるでしょ、姉さんなら」
たぶん、ぼくも同じ年ごろの男の子よりいそがしいとおもう。勉強もそうだし、運動もそうだし、あとは……それこそ“いろいろ”できなきゃ、格好がつかない。姉さんがそんな感じだったから、うちはそういうもんだとおもってる。
「でも、がんばっているせいか、少しお疲れのようですね」
「……そうみえる?」
アイドルになる前の姉さんもぼくと同じぐらいいそがしかったけれど、家にいるあいだはこの温室の花をお世話していた。アイドルになってからは泊まりの用事がふえて、お世話が他人へおまかせ気味になっていた。ぼくは、てつだおうとしていないし、たのまれてもいなかったけれど。
そういえば、この温室にはいるのとおなじぐらい、姉さんと二人きりになるのが久しぶりだった。
「それでは、なおさら花のお世話をしないとダメ。ダメなのです」
「いや、ゆっくりさせておいてよ……」
「ヘルマン・ヘッセも言ってます。土と植物を相手にする仕事は、魂を休ませてくれる……と」
「あ、そ、そう」
ヘッセといわれても、国語の授業でいつか1回きいたかな、ぐらいだった。だけど、姉さんが大きくて丸い目でぼくをみつめていて、とりあえず、うなずいてしまった。納得はしてなかった。
「で、姉さん。ぼくは何を……」
「まずは……水やりから」
「どのくらい?」
「私のを見ていて、同じように」
温室の中の棚やデッキにならぶ鉢の数を、ぼくは10より後はかぞえていなかった。かぞえる気がなくなるほど、とにかくたくさんあった。赤、白、黄色、紫と色とりどりに花びらをひらいたり、つぼみをうつむかせたりしていた。
「ぜんぶ同じでいいの?」
「だいたいは。ぜんぶフリージアですから」
ぼくは、それらが本当に“ぜんぶフリージア”なのかどうか、わからなかった。ただ、ちゃんと咲いてもらおうとすると、そうなるらしい。姉さんの温室にはたくさんの種類の花をいっぺんにおけない。どんな温度や湿度や光のあたり具合があっているかは、花の種類によってちがっている。この温室はもともと人向けだった建物だから、室内でそうそう温度や湿度をわけられない。何種類もの花が同居しやすい環境にはできないそうな。
「ああ、これを使ってくださいな」
「手袋? 大げさな……」
「鉢は見た目より重いし……刃物を使いますよ。花がらを摘んだり、花穂を切り取ったり……あと、虫の始末も」
「はい、はい」
ぼくと姉さんは、服の上から園芸用の手袋とエプロンをつけた。姉さんは髪をまとめて三角巾におさめていた。これからお花屋さんのおてつだいもできそうだった。
それにしても、温室で植物のお世話をしていて、“魂”が“休ませて”もらえるのだろうか。
「よく見ていてくださいな」
「ち、近いよ姉さん」
「ふふ、いつの間にか……背丈、伸びましたね。来年には追い越されているかしら」
変ないい方になってしまうけれど、姉さんは妙に“お姉さん”ぶっていた。物腰がふだんとちがっていた。しゃちほこばっていて、よそゆきの姉さんみたいだった。
姉さんは仕事のとき、そんな物腰なんだろうか。いつだったか、天気予報のキャスターのマネをしていたときはそんな感じだった。同じアイドルの仕事といっても、グラビア写真の中の姉さんとは大違い。どっちがアイドル・西園寺琴歌なのか。どっちともきまらない宙ぶらりん。
不意に、ふわり、と甘い匂いがした。フリージアの匂いだろうか。赤、白、黄色、紫……どの花も、身じろぎしていない。いや、うごいた!?
……姉さんが腕をのばして茎にさわってただけだった。びっくりした。オジギソウじゃあるまいし。
「……それ、つんでしまうの? まだ、さいているけど」
「この花がこれから枯れると、どうなるか知ってる?」
「しってるよ、そのぐらい。種ができるんでしょ」
この温室は、姉さんの仕事でもつかわれたことがあった。そのときはフリージアだけではなくて、バラとかランとかユリとかシオンとかなんとか、派手な花も地味な花も、とにかく多種多様な花を鉢植えでもってきて、あちこちならべて、文字通りの百花繚乱だったとのこと。そういう画がほしかったらしい。手間がかかってたいへんだ。スタッフの誰かが「温室育ちのお嬢様が世話する温室か」とボソっとつぶやいたのをうちの誰かがきいていて、あとで現場の責任者らしき人があやまっていたとも。まったく、口は災いのもとだ。
口は災いのもとといえば、ぼくをおこらせたあいつ――『西園寺琴歌は、つかえる。ヌける』――は、園芸用のゴム手袋とエプロン姿で花ばかりみている姉さんを“つかえる”のだろうか。いつもの西園寺琴歌はこんな感じなのに。
「種を作るには、とても多くの養分が必要です」
「そうなんだ」
「だから、種を作ろうとしている花をそのままにしておくと、あとに咲こうとする花の養分までとってしまうのです」
いや、いつもの姉さんはこんな感じじゃない……格好はともかく、ようすが……いつもの姉さんじゃない。
なんでこんな理科の先生みたいな口ぶりなんだろう。
「それは……なんだかかわいそうな気がする」
「……かわいそう?」
「せっかくがんばってさいたのに……花がさくのって、種をつくるためでしょ」
姉さんが温室で植物の世話をはじめたとき、よく祖父や祖母や親戚がいっしょに土をいじっていた。それは、単に姉さんにつきあってあげていただけ……ではなかったとおもう。もしそれだけだったら、ぼくまで庭につれていかれることもなかっただろう。たぶん、花がさいて、かれて、そこから種ができて、また次の芽がでて、一粒の麦が地におちれば……麦じゃないけど……そんな情操教育をしたかったんだろう。成果がでてるか、ぼくにはわからないけど。
「ここのお花は、私たちもがんばらないと咲いてくれませんよ」
「そうかもしれないけど」
「例えば……ここは温室だから、ハチやチョウが入れません」
「うん」
「だから、代わりに人が受粉させます」
「そうなんだ」
「やってみますか?」
「……はい?」
姉さんは、エプロンのポケットかどこからか、竹の耳かきみたいな棒をつまんで、ひっぱりだしていた。棒の先っぽに、指先より一回り大きくて白い綿毛みたいなふわふわがついていた。
「昔の人は、こういう道具で雄しべから花粉をとって、雌しべにつけて、受粉させたんですよ」
「そ、そう」
「フリージアは……確か自家受粉できまして……ただ、分球のほうが……」
姉さんは、当然のようにぼくに人工授粉をすすめてきた。学校の先生というより、何かのインストラクターさんみたいだっておもえてきた。妙に丁寧な言葉づかいだから。
「い、いいよ……ほかにもやることあるでしょ」
「せっかくだから」
いつのまにか、姉さんがぼくのほうをむいていた。さっきまで花ばかりみていたのに。
ぼくは、うなずかされてしまう。なににうなずかされているかも、わからないのに。
「やってみましょう」
「いや、ぼく不器用だし……」
「では、手取り足取り教えてあげます」
姉さんはちょっとおかしくなっている……いや、おかしいのは僕のほうなのか?
姉さんには、なんの含みもないはず。ただ植物の繁殖の一段階をおしえてくれようとしているだけのはず。なんでおしえてくれるのかわからないけど。
「ほら、手を」
「わ、わぁっ」
「んっ……もう、お花は繊細ですのよ?」
姉さんが、ずいって、せまってくる。
どうしてぼくは、姉さんにうながされて、雄しべと雌しべをいじろうとしているのか。
それで、なんでこんなにドキドキして熱いのか。
「こちらが雄しべで、あちらが雌しべですね。わかりますか」
「あ、ぅ……姉さん、近い、よ」
「いけませんか?」
ぎゅむ……って。
え。これ。このやわらかいのって。
「……あらあら」
姉さんにもたされた、指でもおれそうなほど細い竹の棒をおとしてしまう。
「姉さん、あ、ふぁっ」
ごわごわした園芸用エプロンや服ごしでもわかってしまう。
下着……というか、ブラジャー……姉さんのおっぱい。それ以外に何があるんだ。わかってしまった。さわったことないのに。水着からこぼれおちそうになっているのは、みたことがあった。写真ごしで。“目の毒”といわれても、正直しかたないとおもっていた。
姉さんにおっぱいをおしつけられてた。頭がくらくらしてきた。
「興奮、してますか?」
苦しい。胸とか、ノドとか。おかしくなってしまう。
こんなこと、かんがえてちゃいけない。やめないと、ぼくは姉さんに園芸用手袋でとらえられて、剪定バサミでバッサリきっておとされてしまうんだ。
「そーれ……っ♥ こんなに近いの、本当に久しぶり……」
でも、ダメだ。自分の頭の中なのに、どうしようもできない。かんがえちゃいけないことしか、かんがえられない。
「だ、ダメだよ、姉さん、はなして……っ!」
「かわいい……♥ あなたも、アイドル、なれたかもしれませんね。身内のひいき目かもしれませんが」
「ふぁ、わ、ああっ」
姉さんから、よりかかられる。バランスをくずしてしまう。ズボンごしに、ゴツって温室のタイルがぶつかってきた。布1枚2枚はさんでいてもひどく固くて冷たい。姉さんとは大違いだ。もう、姉さんはおっぱい以外もやわらかいんだなって、おぼえてしまっていた。
ぼくがちょっと背のびしないと届かない姉さんの視線が、上からのしかかってくる。視線だけじゃない。腕だか足だか、とにかく姉さんのどこかがからみついてくる。顔にも、体にも。にげられない。目をとじることしかできない。
「そんな顔されたら……キスしたくなってしまいます……♥」
匂いにおそわれる。フリージアよりもっとずっと甘ったるい。
体温にもおそわれる。温室なんて目じゃないぐらい熱い。
「姉さん、ど、どうして……っ」
「わかっていますよ」
姉さんにそんなこと、おもっちゃいけないのに。それは説明できないぐらい、とってもいやらしくて恥ずかしいことなのに。ぼくのそんなところが、姉さんにつたわってしまったら……“ぶっとばす”では済まない。クラスメイトと、名前と見た目しかしらない女の人をエッチな目でみるのとはわけがちがう。もっとひどいことになってしまう。
「お疲れのようですね」
「……っ……!?」
いままでの誰におこられたときよりも、ぼくはふるえていた。姉さんがこれ以上ないほど優しげなのに。
姉さんが、ぎゅってだきしめていてくれていた。だきしめて、はなしてくれなかった。いっそほっぺたをつねってくれていたら、震えがとまったかもしれなかったのに。
「あなたの、その重荷。少し、私に引き受けさせてくださいませんか?」
姉さんがいう……けれど、それは、ダメ。わかっちゃ、ダメ。
ひきうけるなんて、かんがえるだけでもダメ。
姉さんは、ぼくが“お疲れ”なのを“いろいろがんばっている”からって、いってくれている。ちがう。ぼくはそんなお利口さんじゃない。
「私、わかっていますから」
熱いのに、震えがとまらない。
「わかっていますから、ね」
ドキドキしてるのに、息がとまりそう。
「今夜、あなたの部屋に行きますから。開けておいてくださいね」
姉さんが花の世話に戻ってからも、息をすって、はいて、そのたびに甘い匂いが頭の中までぐるぐるまわった。
フリージアの甘いのも青臭いのも、もう頭にはいらなかった。
※
今夜、姉さんがおかしなことをいいだした。
「私、あなたに真剣な話をしているんですけどーっ」
姉さんが頬をぷくーってふくらませていた。わざとらしい。ぼくの部屋のベッドに勝手にすわって、膝から下をぶらぶらさせていた。お行儀が悪い。
「真剣な話をする格好じゃないと思うんだけど、いまの姉さん」
「もう、話を聞いていませんでしたね!」
「どうして……」
姉さんは、白いレースのブラジャーとパンツしか身につけていなかった。お行儀が悪いなんてもんじゃない。
部屋にはいってきたときは、いちおうバスローブもきていた……そんな姿で家の中をであるくなんて、だらしなくて、大人にしかられてしまう……そう説得しておいかえそうとして、おしきられて、おしいられてしまった。
「あなたが、お姉ちゃんである私の体に興奮して、おちんちんを固くおっきくしてしまうことについてのお話ですっ」
「おわーっ!? 何いってんだよ姉さん!」
「あなたぐらいの年ごろなら……ちょっと早いぐらいですよ。別におかしなことではありません。男の子なら、みなさん遅かれ早かれ……」
姉さんがおかしい。ちょっとどころじゃない。
ニコニコ屈託なくわらっている。わらっていい状況じゃない。
「だからこそ、あなたに教えておかなければならないことがあるんです」
「いや、服をきようよ」
「……くしゅっ」
「そんな格好だからだよ。服きてよ」
「あなたの肌で温めてくださいっ♥」
「ほぁああっ!?」
姉さんは腕を大きくひろげて、おいかけっこの鬼みたいにぼくにせまって、つかまえてしまう。人にモノをたのむ態度じゃない。そうたしなめようとして、息がとまってしまう。力がぬけてしまう。
やわらかいおっぱい。ざらざらしたブラ。鼻からあっというまに、甘い匂い。姉さんが熱くてしっとりしてる。風邪でもひいてしまったのか。温められて熱くなってしまうのは、ぼくのほうだ。
「ふぅー……♥」
「ひゃっ、おぁっ!?」
耳元に息をふきかけられて、心配が一瞬でけしとぶ。ロウソクの炎よりはかない。
「いいですか?」
「な、なんもよくないよっ」
さわっちゃいけないのに、さわっていたい。姉さんの肌に。目の毒なんて生やさしいもんじゃない。
「西園寺家に生まれたあなたには、いろいろな思惑を持った人間が近づいてきます。その中には、あなたを惑わせて利益を得ようとする不逞の輩も、いるでしょう」
「姉さんがっ、いちばんっ、まどわせてるってばっ」
「まぁ、うれしい♥ 知っていましたけどー」
「うれしがらないでよ!?」
姉さんがぼくのパジャマをごそごそまさぐってくる。手付きがなめらかだ。花のお世話のときに負けないぐらい。
「だって……ほら、あなたのおちんちん……♥」
「きゃふっ!? あ、ぁ、だ、めっ」
「おちんちんって言わないほうがよろしい? でも、陰茎やらペニスやらと呼ぶと、まるで保健体育みたいなので」
「こんな保健体育ありえないよっ」
「でも保健体育と同じぐらいだいじなことなんです、あなたにとっても、おそらく私にとっても」
姉さんの顔がキリってひきしまった。チェロをひいてるときとかの表情だ。
でも匂いは甘くて肌が熱くておっぱいがやわらかいままだった。
姉さんはこんなときだって甘くて熱くてやわらかい。いつもいつも、こんなに甘くて熱くてやわらかいのかな。姉さんの顔をみるたびに、おもいだして……そんなことになったらどうしよう。
ぼくはおかしくなる。
「あなたが、こうされても惑わされないようになるために、あなたはどうしたらよいと思いますか?」
「そんな人には近づかないように……」
「最初から“そんな人”とわかる人は、そう多くありませんって」
ぐうの音もでない。姉さんがこんなことするなんて、ぼくは想像もしていなかった。
「ですから……こうされてしまうのに、慣れてしまったらよいのです♥」
いや……想像したことないといったら、ウソになってしまう。
ぼくらは男の子ばかりの学校につめこまれているから、女の子とすごす機会は少ない。でも、そういうことに興味はある。小中高一貫だから、例のあいつみたいに上からネタを手にいれてくるのもいる。知識だけはあった。それに、『西園寺琴歌は、つかえる。ヌける』とかきかされたし……。
「あ、っ……」
姉さんに、おしたおされてしまった。長くてふわふわした姉さんの髪が、ぼくの頬や首にかかってきてくすぐったい。くすぐったいけど、ふりはらえない。
「西園寺家の男には……こういう誘惑に慣れるために、信頼できる身近な異性の力を借りる……そういった教えが、古くからあるのです……♥」
「そんなの聞いたことないよっ」
それ絶対ウソだろ。
そもそも“ぼくら”の西園寺家は、名前ほど古い家じゃない。ぼくらの曾祖父さんの曾祖父さんぐらいのとき、京都にある本当の西園寺とかその参拝者とか相手の商売をしていて、そこからちゃっかり“西園寺”をなのりだして、明治あたりでなりあがって……まぁ、その、実際よりも良家っぽくしなきゃってところがある。特にぼくは姉さんが――
「子供に聞かせる話ではありませんから。でも、あなたはもうすぐ子供じゃなくなります」
――そういう理屈が、姉さんにおさえつけられ、ひしゃげて、ねじふせられてしまう。
「それとも……いるのですか? あなたに、私以上のふさわしいお相手が」
そんなインチキにふさわしい相手がいてたまるか……! と、口にしかけて、舌がもつれる。
いえない。
「そ、それは……!」
したい、っておもってしまっている。姉さんと。
もし、いってしまったら、姉さんは……。
「……え、もしかして本当にいらっしゃるの?」
「姉さん……?」
姉さんが、いきなり眉根をさげて目をふせた。
ぼくを力ずくで納得させていた視線が、いきなりどこかへきえた。ぼくは、つんのめって、どこか高い所からおちてしまっている心地がした。実際は姉さんに馬乗りにされて、うごけないままなのに。
「い、言わなくてもいいですわ……あ、その……さ、さすが私の弟ですわね、いいお方が……っ」
弱々しい上目遣い。そんなの姉さんにぜんぜん似合わないのに。姉さんにはドーンとかバーンとかって擬音がついてきそうな自信満々な得意顔がいちばん似合うんだ。本当に自信があるときも、実は自信があんまりないときもそうなんだ。ぼくがきいているほうの西園寺家の教えには「人前で泣いたり怒ったりするな」というくだりがある。姉さんはそれをまもっているんだ。
「いやですわ、恥ずかしい……私ったら、ひとりで勝手に浮かれて……」
「や、やめてよ姉さん、そんな……」
「ぐすっ……あ、あの、忘れてくださいまし……ふしだらな姉と、笑って……」
姉さんのことを、わすれようとしてわすれることができたら、ぼくは最初からこんな状況におちいってない。おちいっても、ぬけだせている。
しかも、なんだよ……ひとりで勝手にうかれて、って。
まるで、姉さんもしたい……って、おもってるみたいじゃないか。もし、そうだとしたら、もう……。
「わらったり、しないよ、姉さんのこと」
「だって、あなた……お姉ちゃんのこと、おかしいって」
しまった。そんなこともいった。何回もいった。
姉さん、傷ついていたのかも。傷ついていないふりをしていただけで。
「ぉ……おかしく、ないよ、姉さんは……」
「本当、ですか……?」
「う、ぅん、ええと……たぶん、きっと……」
「きっと?」
姉さんが顔をあげた。瞳に涙がゆれていた。
人の下まぶたって、こんなに涙がのっていても、こぼさないでいられるんだ。
「お姉ちゃんは……あなたが、本当は私のことを嫌がってたんじゃないかって、それが心配で、不安で……」
「そんなこと、ないよ、姉さん」
「嫌じゃ、ありませんでした?」
「うん、うん、嫌じゃなかったよ」
姉さんのまばたきが、やけにゆっくりしていた。まつ毛が長くて、アゲハチョウか何かの翅(はね)模様みたいだった。さすがに涙がこぼれおちかけていた。
「あっ」
涙がおちたのはわかった。
でも、涙のしずくはみえなかった。
「それなら安心です♥」
「ほぁっ!? だましたな姉さーんっ!」
おちたとおもった瞬間、むぎゅってだきしめられてて、頬ずりされてて、ぼくのほっぺたもぬれた。
花の匂いが、花よりずっと強く、ぼくをうめつくした。もう息をとめても手遅れ。頭から息をはくことは、できない。
「もうっ、あなたは私の毒婦ごっこにまんまと引っかかってしまいましたね……」
「“ごっこ”って、おままごとする年じゃないんだから」
「おままごとじゃなかったらたいへんじゃないですか。これだから……教えが必要なんですっ♥」
また、姉さんにおさえつけられ、ひしゃげて、ねじふせられてしまう。
造作もないだろう。ぼくは姉さんのおっぱいよりずっとヤワになってしまっている。
「あ、ああっ、だ、め……っ、姉さんと、こんなこと……」
「いけずなお口、ふさいでしまいますよ?」
姉さんのささやきが、くすぐったい。くすぐったいのに、きもちいい。もっとほしい。
「素直になって、お姉ちゃんと、がんばって勉強しましょうね……♥」
ぼくは、もう心の中でも反論できなくなっていた。
だって……ぼくがいうのもなんだけど、姉さんからこんなことをやられたら……仮にぼくのクラスメイトなら、ひとたまりもなく弱みをにぎられてしまうから。
「さて! あなたがやる気になってくれた……のは、とてもうれしいのですけど」
「姉さん……? はゆっ!? ぎゃっ、どこ、さわって……!」
「これでは、前途多難ですね。あなたのおちんちん、固くて、熱くて……うふふ、やり甲斐もありますわ! 燃えてきますわ!」
ぼくは姉さんにベッドにおしたおされたまま。おっぱいをおしつけられながら、甘ったるい匂いをすわされながら、温かくてやわらかい肌につつまれながら、おちんちんをいじられていた。細くて長い姉さんの指が、つるつる我が物顔でなでまわしてくる。肌から骨まで溶けてしまいそうに気持ちいい。
「ご、ごめんなさい……ぼくが、姉さんのこと、やらしい目で……」
「他人には、内緒ですよ? お父様にも、お母様にも」
「……え。だってこれ、うちの……ぉ……っ……!?」
「内緒にできるなら……」
おちんちんにさわっていない方の姉さんの手が、ぼくの手の甲にやってくる。手首をとってくる。
「お姉ちゃんのおっぱい、触ってもよろしいのですよ♥」
むぎゅ、って。ブラジャーさえもない、姉さんのおっぱい。さわってしまう。さわらせてもらっている。やわらかい。でっかい……重ったい、なぁ。
ドラマや漫画でみたことのある……男の子が女の子の荷物をもってあげなきゃ、ってのは……もしかして女の子のおっぱいが重いからなのかも。
姉さんは、でかけるとき大荷物を無理して自分だけでかかえようとして、とめられる側だけど。
「ね、姉さん」
「お姉ちゃん」
「いや、それは……」
「もう……あ、んっ……♥ ダメですって……もっと、優しく……」
姉さんのおっぱいの先っぽが、ぷくってなってるのを手でみつける。ドキリとする。別におかしなことじゃないのに。おっぱいの先は赤ちゃんがすうもの。先っぽまでヤワヤワしてたら赤ちゃんがすいにくいだろう。
姉さんもいつか、誰かの赤ちゃんをうんであげるんだろうか。
「おちんちんだって、優しくかわいがってもらったほうが、気持ちいいですよね?」
「じゃあ……姉さんも、優しい方が、きもちよくなれるの?」
「……あらあら」
「ぇ、あっ、んくっ……さ、先、は……ああっ……」
姉さんにおちんちんをいじられる。怖くもないのに背筋がゾクゾクしてたまらない。皮をむかれて、指でおさえられる。おしっこがでてくる場所をむきだしにされて、くすぐられる。
「はぁうっ……!」
「気持ちいいでしょうか?」
「わ、わかんないよ……!」
好奇心に負けて、クラスメイトからこっそりみせてもらったエッチな本や動画では、女の人が男の人のそこをいじってあげている。そういうときの男の人は、ぼくよりずっと余裕そうだった。
「続けてもよろしくて?」
「つづけられたら……変な、気分に……ひゃっ、きゃんっ!」
「そういう気分のときこそ、冷静にっ、です」
「えっ」
「悪いお姉ちゃんに惑わされちゃダメです、負けないで♥」
姉さんがニコニコしてる。つられてぼくもわらっちゃう。わらえるほどの余裕なんてないはずなのに。
……で、まどされないでって……そういえば、そういう話だった。
やっぱり……おかしくないか?
「きゃうっ!?」
「がんばりましょう♥ お姉ちゃんがいっしょですよ!」
「あぅ、えぅうううっ……!」
おちんちんを指でなでられ……姉さんはゆったりとした手付きなのに……ぼくはないてるみたいな声をもらしてしまう。じわじわと染みるような、しびれるような、何ともいえない感覚がおちんちんからあふれてくる。腫れぼったいときの痛みみたい? だけど、痛みとちがって脳みそまでじんじんさせられる。心臓が痛いほどはねまわっている。
恥ずかしくってたまらない。
「つらいですか?」
「つらくは、ない、けど……」
「続けても?」
なのに、姉さんにとめられると、つづけてほしい。
つづけてほしくて、たまらない。
「お姉ちゃんのこと、好きですか?」
「す、すきぃ……」
「なんでも言うこと聞いてくれますか?」
「なんで、も……そんなの、いわれても、ぼく……ひゃふっ!?」
「もう! こんなお願い、聞いちゃダメですよ♥ 断ってください。はい、もう一回っ」
「や、やめて、はずかし、ぃ……あ、あっあっ……!」
「あなたは……お姉ちゃんには、いやらしいところだって、恥ずかしいところだって、見せてもいいんですっ」
「あ……あ、あっ、あ、だ、めぇっ、くるっ」
「なんでも言うこと聞いてくれますか?」
姉さんの指が、ぼくのおちんちんにくっついたり、はなれたりする。そのたびに、恥ずかしいのと気持ちいいのがぐしゃぐしゃに、ごちゃまぜになって、そういうので頭がいっぱいになる。痛いの痛いの、どこかにとんでいってしまった。
にちゃ、ぬちゅ……って、手付きが湿っぽくなっている。
ぼくのおちんちんのせいだ。このままじゃ、もっといけないものが、でちゃう。
「あ、あやっ、はぁっ、ああっ」
「なんでもがダメなら……お姉ちゃんのおっぱい、かわいがってくださいな。あなたの手で」
「そぇ、ちょっと、むり、かも……!」
「そうですか? さっきは、あんなに興味津々だったのに」
姉さんのおっぱいをさわりたくて仕方なかったけどダメだった。ぼくの手がいうことをきかない。指を、ぎゅって、にぎりしめていないと、おちんちんの刺激にたえられない。姉さんのおっぱいにさわれない。
「それなら……次は、こちらで。おっぱいはお預けになりますが……」
さわれないって状況なのに、姉さんにそういわれて、ぼくは少し気分がしずんだ。甘くて温かくてやわらかいおっぱいが、はなれてしまった。
「やっぱり恋しいですか? でも、そんながっかりした顔、すぐに吹き飛ばしてあげます」
姉さんが、ぼくの濡れたおちんちんに顔をよせる。細くひらいたくちびるから、ふぅーって息をかけてくる。ヒヤヒヤしてゾクゾクする。洒落になってない。
「かわいい顔にしてあげます♥」
とめる間もなく、おちんちんを舌でなでられ、くわえられてしまう。
フェラチオという仕草も知識だけはあった。
「姉さん、それ、は……ダメ、おちんちん、ダメ、でちゃ、あ……!」
「れぅ、はむ……んくっ、ちゅ、ちゅっ……んふ、ふふっ……♥」
まさか姉さんが、ぼくにフェラチオしているなんて。ぼくとちがって、エッチな本や動画なんて縁遠いはずの姉さんが……!
姉さんの目が、ぼくの膝のあいだでわらっていた。優しげに、ほそめられていた。“お姉さん”らしかった。
ふだんの姉さんは、ぼくより子供っぽいことでフワフワはしゃいだり、きた道をわすれてウロウロまよったりしているのに。特に姉さんは方向感覚がかなりまずい。みかねて、ぼくが案内してあげたことすら一度や二度じゃない。
「出ちゃうって……射精ですか?」
「そ、そうなの、だからっ」
「我慢してください♥ 私の、優しくて頼れる弟なんですからっ」
不思議なことに、“お姉さん”らしいいまの姉さんにも、そんな感じがする。いまの姉さんに何かたのまれたら、どんな無理でも、こたえてあげなきゃいけない気がしてしまう。姉さんが道をわすれたときみたいに、ぼくが先に自分できづいて、すすんでしてあげなきゃいけない気さえしてしまう。姉さんはまるでぼくのお世話役みたいにひざまづいているのに。
もし姉さんが悪い人だったら、ぼくはとっくにおしまいだ。
「んぷ、へう、んぷ、ちゅう……っ」
「ひっ、ぃ、あ……きたない、って……!」
「んぷっ……どうしてきたないんですか? お風呂で、ちゃんと洗ってますよねっ」
「だけど、その……ええ、と……おしっこの穴、だし……」
「おしっこだけじゃありません。おちんちんが興奮して、透明でヌルヌルしたおつゆが出てきて、あとは……」
すわれてる。じゅるじゅるって、人前ではだせない音を、人前ではだせないところから、きかされる。
「精液、ぴゅぴゅって出ちゃいますねっ♥」
「ぁ、ひぁ……姉さん、それぜったいダメだって……あうううっ!?」
「あなたの赤ちゃんの素でしょう。なにかダメなのですか?」
「それは……あれ、体に悪そうな匂いするし……」
「そうなんですの?」
「そうだよ!」
姉さんがフェラチオを中断して、きょとんと首をかしげていた。先っぽから刺激がはなれた。
でも、じんじんするのはおさまらない。なめられている感覚がはなれない。
「なんか……ええと、地面におっこちて、つぶれたギンナンみたい、な……」
「なるほど。あれも種子ですからねぇ。では、出しちゃいましょう」
「ダメぇっ、やだぁっ……ああぁーっ!」
「出しちゃったら、何でも言うことを聞いてくれますよね♥」
「そんなムリ、とおるわけ……! あわっ、うぁっ、んく、ぅううううっ……!」
ぼくは男で、姉さんが女なのに、ぼくは姉さんにやりたい放題いじられて、エッチな動画の女の人みたいな声をだしている。
そんなのおかしいのに、どうしようもなく興奮しちゃってる。
「ふぇぷっ、ふぁ、あ、んぷっ……れりゅ、んぅうっ……」
「もう、もうむぃ、むり、ぃ……!」
「んぷっ……ふふ。精液、だしてしまったら、あなたの赤ちゃんができちゃいます」
「きゃんっ! あ、ひっ、ひあっ……な、なら、とめ、ぇ……ほぉぁああっ!?」
「責任、とってくださる?」
「と、とるから、だから、とめ……お、ねが……とめぇ……えああっ!」
そんな声をだして、体をよじるしかできない。まぶしいとき目をとじるしかないみたいに。へりくつも、いわれっぱなし。
「……ダメですよ。あなたの責任は、我慢することです」
「むちゃくちゃだよ……!」
「我慢して、我慢して……かわいい顔を私にいっぱいみせることです♥」
「姉さんのわがままじゃないか!?」
「姉を満足させるのは弟の務めです」
「それも絶対ウソっ――おっあああっ!?」
「ウソではありませんっ。あなたは、いつも私を満足させてくれていましたから」
「そ、そう……? ひゃんっ、あ、おっ……ああああぁっ! や、やっぱりムリぃ……!」
さけんだり、もだえたり……たまに手と舌がとまったときも、お話にならない。すっかりぼくは姉さんの意のままだ。
もう射精することしか、かんがえられない。射精すれば気持ちいいのはわかってる。いまは気持ち良すぎて苦しい。射精すれば、姉さんのフェラチオもおわる気がする。
おわっちゃったら、どうしよう。
「うぅう、ぅうううっ……!」
「あらあら、泣くなんて久しぶりですわね」
「ほんとに、でちゃうから、やめて……」
「どうして出しちゃったらダメなんですの?」
「だしたらダメって言ったじゃないかぁ……!」
「……あぁ。本当に、あなたという方は……♥」
それ、ぼくがいいたいよ――って、いいかけて、いえなかった。
「んぷ、ちゅっ、ぢゅぅうぅ……! ちゅっ……ぢゅる、んぷっ、ちぅううーっ」
「はうぅっくぅっ!? あ、あっあああああっ!」
さけんだのが先か、だしちゃったのが先か、わからない。
ただ、とにかく、射精してしまった。姉さんの口の中に。
「……んぐ、こくっ、んふっ……ギンナンというよりは、マメナシに近い気がしますね……♥」
姉さんがノドをならす音がきこえた気がした。目をそらしたけど姉さんに頭をつかまれて正面をむかされた。女の人のノドにも、小さなノドボトケみたいな出っ張りがあるらしい、と初めてしった。
※
フェラチオのあと、姉さんはさらにおかしくなった。
「お姉ちゃんのおっぱい、大好きですよね?」
「……あの」
「大好きですよね?」
姉さんは相変わらず裸のままだった。これは部屋におしいってきたときから、ずっとおかしい。
「……優しい姉さんの“ほう”が、好きなんだけど」
「まぁ、うれしい……! けれど、さすがにあざといセリフですよ。もしかして、あなたはいつの間にかお姉ちゃんをたぶらかす悪い男の子に……!」
言動が、もっとおかしくなっていた。
「悪い男の子には、おしおきをしなければいけません」
「な、何をする気なの……?」
「でもおっぱい好きなんですよね? では、射精をよく我慢できたご褒美に」
「いったいどっちなのさ……」
射精した。気持ち良かった。気持ち良すぎて苦しかったのが、いまはだいぶ楽になってた。姉さんのフェラチオもおわった。
姉さんの教育なんだか悪女ごっこだかが、おわらない。
「こんどは、このおっぱいで、おちんちんをかわいがってさしあげますっ」
「ぎゃうっ、あ、あっ……はぅううっ!」
姉さんのでっかいおっぱいに、おちんちんがみっちりされる。フェラチオのときとちがって、奥にもっていかれる感覚はない。けれど、すっかりつつみこまれて、ずりずりって摩擦がすごい。あんなにやわらかいおっぱいなのに、さからえない。脇腹あたりに、姉さんの乳首らしいぽってりがこすれてるのもドキドキする。
パイズリだ。
「あ……あ、あっ、あ、そこ、や、めぇっ……!」
「そこ?」
「おちんちん、また、ダメ、に……あ、ぅ、あぁああぁっ……!」
「またおっきくなっちゃいますか。また射精しちゃいますか」
ぼくは射精させられてから、おちんちんをぬぐっていなかった。姉さんがのみきらなかった精液がのこっていた。それがべちゃべちゃ、ぬちゃぬちゃって、姉さんのおっぱいをよごしている。みえないけど、おちんちんでわかってしまう。
花よりも花みたいだった姉さんの匂いに、ギンナンみたいだったぼくの精液がまじってしまう。
「こんどは、我慢しなくてもいいですよ」
「あ、あぅ、うっ……」
「あなたのかわいい……もとい、我慢強さ、しっかり見せてもらいましたから」
おっぱいって不思議だ。
フェラチオのときと同じぐらい姉さんにおちんちん好き放題されてるのに、おちんちんも固くなってしまっているのに、ぜんぜん抵抗する気がおきない。
「おっぱいでスリスリされるの、気持ちいい?」
「う、ぅ……き、きもち、い、ぃ……」
「いい子ですね♥」
ぜんぜんいい子じゃない。姉さんのおっぱいでおちんちんいじられて気持ち良がる……そんな弟がいてたまるか。
そんな悪態をつけるのも、頭の中の一瞬だけ。タンポポの綿毛みたいに、一呼吸でどこかにとんでいってしまう。だって、そんな弟が、ここにいる。ぼくだ。たまったものじゃない。
「さっきにも負けないぐらい、おっきくなってきましたねぇ」
「う、ぅ……また、でちゃう、よ……っ」
「おちんちん、かっこいいですよ♥ お姉ちゃん、ときめいちゃいますっ」
姉さんはますますおかしなことをおしゃべりしている。フェラチオのとき口がふさがってて、たまってたみたい。
おっぱいでスリスリするのをとめないままだ。上でも下でもいそがしい。
「それっ、それっ……やぁんっ♥ いま、びくっ、ってしましたっ」
「だから、でちゃうって……もう、しらないよ……」
「もう、一回射精したからって、すっかり骨抜きになってしまいましたね……」
「きゃうっ!?」
「おちんちんは固いのに」
姉さんの肌が、どことなくしっとりしてきた。だきしめられたときからしっとりした感じだったけど、もっと。パイズリで体をうごかしてて汗をかいているせいかと思ったけど、どうもそれだけじゃないみたい……。
「もっと、お姉ちゃんと、続きをしてみませんか?」
「続き……?」
「はい♥」
姉さんのおっぱいから解放された。いきなりパイズリが消えて余韻でブルブルって背筋がふるえて、それがおさまる前にぼくは息をのんだ。
姉さんが仰向けにねころがって、両膝と太ももをひらいている。女の人のあそこをみたのは初めてだったけど、その格好の意味はしっていた。
セックスするのか。姉さんと。
「ひぁ、んっ……♥ あら、あなたもしてくださるのですか……?」
「ま、まぁ、うん……へうっ!?」
「あ、ごめんなさい、つい、力が入って……」
ぼくは、姉さんのポーズの意味をまげてとった。クンニしてくださいっておねだりか、って素振りをした。それだけでもセックスと同じぐらいめまいがしたけど、まだしもなんとかなりそうだった。さっき姉さんがしてくれたお返しだ、っておもえばいい。おちんちんへの刺激もなくなるし。
「そんな、まじまじと見られると……恥ずかしい、ですわ……」
「姉さん、ぼくにさっきまで何してたかおぼえてる?」
「するのと、されるのは、別ですーっ」
ぼくは姉さんのあそこをみせてもらっていた。アイドル・西園寺琴歌でも、ぼくのしる姉さんでも、みせないところなのに。今夜の姉さんはさっきから裸で、みようとおもえばみられた。けれど、視界で意識するのは初めてだ。
「なんだか、大人って感じがする……」
「え、まさか……子供の“おまんこ”は見たことがあるとでも……!」
「ち、ちがうよ、あそこに、毛が生えてると……」
「あ……もうっ、びっくりさせないでちょうだい!」
「姉さんが勝手に勘違いしたんでしょうが」
女の人が興奮すると、あそこがぬれる。エッチな本や動画ではそういっていた。
姉さんのあそこは、どうなのか。よくわからない。あそこの毛がぺっちゃりしている気がする。
「んっ、あ、あっ……息、かかって、くすぐったいですわ……♥」
「自分は、ことわりもせず、ぼくのさわったくせに……」
もっと顔をよせる。匂いがする。こんどは自分からとびこむ。髪や首のときに感じた甘い匂いと、あとどこか海の近くにふく風みたいな匂いがまじってる。そういえば前に姉さんは南海の人魚役をやってたっけ。
「あっ、ゃ、あ、んんっ……」
「イヤかな……?」
「もう、誰に似たんですか、そんな言い方」
姉さんのあそこ。割れ目のそばの肌はくすんでいて、でも本当のあそこは薄いピンク色。色だけは、皮をむく前とむいたあとのおちんちんと、にていなくもない。
そっと指をあてて、左右にひろげる。
「ひあっ……!?」
くすぐったいのか、姉さんのお腹や太ももがちょっとびくびくした。割れ目の上のほうにあるぷっくりしたものが、クリトリスというあれなのかな。あそこの中は細かい折り目がついている。姉さんの息遣いにあわせてか、ちぢんだりゆるんだりしている。
鼻をこすりつける。くちびるをおしつける。
「ふぁぁっ……そ、そこっ……んっ、んくっ……」
甘いのか、しょっぱいのか、酸っぱいのか、とにかくぼくの口に、よだれがじわっときた。あごやこめかみまでしびれる。ほっぺたがおちるって、こういうことなのかも。おいしいわけじゃない……少なくとも、食べ物とはおもえない……けれど、もっと味わいたい。
「ぁ、きゃんっ……!? だ、めぇっ、そんな、つよ、く……んん、あぅうっ……♥」
姉さんがエッチな女の人みたいな声をだしている。本当にエッチな気分になったのか。それともさっきの悪女ごっこみたいに、なったふりをしてぼくをからかっているのか。
「やぁんっ、もっと、シて、ください……っ……!」
フェラチオの仕返し、もといお返しをしようとしたけど、勝手がわからない。姉さんのあそこは、ぼくのおちんちんの形とちがって、目立つとっかかりがない。クリトリスは、舌だけでつつめてしまう。ちょっとかわいらしすぎる。
あふれてきたよだれをなすりつけるように、キスしたり、なめたりする。姉さんのあそこや太ももがびくびくする。すると、ぼくまでびくびくする。しらなかった。さわるのも、さわられるのも、どっちもエッチなんだ。
「は、あ、んあ、はっ、あああっ! だめ、です……お姉ちゃん、本当におかしくなってしまいそう……!」
そういいつつ、姉さんはあそこをぼくの顔におしつけてくる。しかも、ぼくの手をつかんでひっぱって、おっぱいにふれさせてくる。下着でもかくすところを同時にさわらせてる。
してもいいんだ、ってきこえた気がした。
「だ、だめっ、じんじん、して……い、いっぺんには、だめ、です……だめです、から、ね……?」
手探りでみつけたおっぱいの先っぽ。のがさないように指先でつねる。
見た目よりコリコリしているクリトリス。舌をおしつけてこすりまくる。
「んくっ、あ……こ、声、出ちゃ……ああああっ♥ はぁっ、すご、ぃ……!」
さわられてもいないおちんちんがしびれる。射精しているみたいに気持ちいい。
「そんな……おっぱいも、おまんこも、せつなくて……がまん、できなく……あっ、あっ、あっ……♥」
姉さんの太ももでぎゅうってはさまれて息をつまらされてなかったら、ずっとつづけてしまっていただろう。
※
ぼくにはどうしようもないぐらい、姉さんはおかしくなっちゃったらしい。
「お姉ちゃん、って呼んでください」
「姉さん?」
「姉さんではありません。お姉ちゃんです」
ぼくは言葉につまった。
「そう呼んでくれたら、入れてもいいですよっ」
姉さんはベッドの上で、裸のまま、仰向けのまま、足をひらいたまま、ぼくにむかってあそこをみせつけたままだった。
あそこやその周りは、目でみてわかるほどぬるぬるして、ひくひくしていた。肌や髪がお風呂上がりみたいに熱くしめっていた。
「あのね、姉さん」
「お姉ちゃんっ」
入れてもいい、というのはセックスのことらしい。
「お姉ちゃん、って格好じゃないでしょ」
「むむっ! 誘惑に負けない心が育ってきたようですね」
「まだそんなこと言って」
ぼくが“お姉ちゃん”と呼んでいたころの西園寺琴歌は、そんなはしたない格好してなかった。おっぱいが大きくなかった。たぶん、あそこに毛がはえてなかった。
ぼくだって、おちんちんを固くしたり、射精したりしなかった。
「セックス、しちゃうの? したくないの?」
「んっ……♥ だ、ダメです、ぅ……ムリに、広げちゃ……」
したくないなら、ぼくの顔や肩をおしかえせばいいのに。さっき強引に部屋におしいってきたときみたいに。
姉さんは、グラビアのときにうかべるより、もっとかよわい目つきでぼくをみあげている。口元に、ぼくが射精してしまった精液の残りがこびりついている。いっこうに抵抗してくれない。
姉さんのあそこにおちんちんをいれたい。
誰もとめてくれない。
「あ、んんっ……ふぅっ、ふぅーっ……んっ、あっ♥ そんな、まだ、呼んでくれていないのに、そんなのって……」
姉さんのあそこをもう一度ながめながら、背中と首をまるめる。
目線をさげる。
腰をちかづける。
おちんちんの先をあてがう。
「あっ、ぅ……姉さんの、なか、ぁ……!」
中が、きゅうってしめつけてくる。フェラチオやパイズリのときより力は弱いけど、例の折り目がずりゅずりゅってこすってきて刺激はもっと強い。
「んんんっ……♥ ダメ、ダメですっ、まだお姉ちゃんがいいって言ってないのにー」
「だって、中が……あぅっ、姉さんのあそこ、すご……!」
「こんなの……れいぷ、れいぷですっ……きゃうっ!?」
乳首をきゅってしてあげると、姉さんはぺろりと舌をだしながらわらった。ぼくのおちんちんがぎゅううってされて、息がとまりそうになった。
「んっ、ふぁぁっ……じょうず、ですよ……♥ えらい、ですっ、一人で入れられて、動けて……んんんっ♥」
「うっ、く……あっう、しま、る……!」
「これなら、立派な男の人になれますねっ」
「あ、あ、あ、く、ぅ……ね、姉さん、ダメ、あそこ、ああ、ううぅっ……!」
ぼくが、エッチな動画でみたセックスをうろ覚えでまねしていたはずだった。いつのまにか姉さんに下からだきつかれて、手と足とあとおっぱいとあそこでぎゅうってされっぱなしになっていた。苦しいのに気持ち良くて、安心して、でもいけないことをしている気もして、もみくちゃだ。
「でも……女の人を喜ばせるのも、立派な男の人の務めですよ?」
「えうぅっ……お、おく……あ、ぅう、あっ、あっ……」
「お姉ちゃんって呼んで。いまのあなたの声で、聞かせて」
もみくちゃのなかで、いってもいいかな、って気がする。いいそうになる。
ダメ。
「お姉ちゃん、お姉ちゃんですよ、ねぇ!」
「あ、うっ、あ、くぁ、あっ!」
今夜の姉さんはよくウソをつく。
うっかり“お姉ちゃん”なんてきかせたら最後、姉さんは……これだから“教え”や“勉強”が必要なんです……とかなんとかいって、また姉さんとエッチなことを……。
「お姉ちゃんのおまんこ、気持ちいいですか?」
「んぁひっ! あっ、おんっ、あっ、あっ!」
「あなたのおちんちん、とっても気持ちいいですっ♥」
……そうなっても、いいかもしれない。
「ぁ、ああっ、う、く、ぐぐ、ぅう……と、とめて、姉さん、また、で、でる……!」
「お姉ちゃんって呼んでくれたら、出してもいいですけど」
いや、ダメ。
こんなこと、やめられなくなる。
「そういう問題じゃ……ぎゃっ、にゃっ、あっあっ」
「……本当に、呼んでくれませんのね」
姉さんの力が、フッてゆるんだ……手と、足だけ。あそこはぎゅうってしたまま。
「呼びたくない理由でも、あるのですか?」
「う、ぅう、それ、は……」
「おままごとではありませんよ。私、正真正銘、あなたのお姉ちゃんなんですっ」
姉さんは汗だくで顔を真っ赤にしていたけど、いつもの得意顔だった。そんなのセックスしている相手にむける表情と言葉じゃない、とわかった。ぼくが、いままさに初めてセックスしている途中だったって、わかることだ。
「……あ、もしかして私、お姉ちゃんでは、ありませんか?」
「え、何いってるのさ」
「エッチなことしちゃった女なんて、もうお姉ちゃんとは認めてくれないんですか……」
「わけが、わからないんだけど……きゃうっ!」
「うぅ、うぅ……さよなら、私のかわいい弟……」
「あそこきゅってしながら返事するのやめて!?」
姉さんは眉をハの字にさげてしょんぼりした顔をしながら、あそこでぼくのおちんちんをもてあそんだ。
悪い女の人ってこんなことができるんだろうか。ちょっとだけこわくなった。あとは何もかんがえられなくなった。
「お、おねえ、ちゃん」
「んんっ♥ なんですか? もっと、近くで聞かせて……」
「お姉ちゃん、お姉ちゃん……」
「はぁい、お姉ちゃんですよ。お姉ちゃんは、あなたのそばにいますよ」
頭をなでられていた。姉さんの手だ。さっきまでぼくをとらえていた手と腕が、いきなり優しくなった。
「あなたが望むなら、またお姉ちゃんに甘えていいんですよ」
「う、ぅう……おねえちゃん……おねえちゃん……っ!」
「だってあなたは、私のかわいい弟ですから」
お姉ちゃんってつぶやくたびに、頭をなでられるたびに、ぼくは“お姉ちゃん”をおもいだした。
「それ、ぇあ、あっ、う、あっ……で、でちゃ……あ……!」
「出しても、いいんですよ♥ 好きなときに、射精しちゃいましょうっ」
おもいだしたそばから、あそこでおちんちんをもてあそばれて、“お姉ちゃん”はどこかへいってしまう。花みたいだけど、花よりずっとねっとりと濃い匂いにつつまれる。
苦しいのに気持ち良くて、安心して、でもいけない……例のもみくちゃにやられてしまう。
いやだ、いかないで、お姉ちゃん。
でも気持ちいい……!
「うぅう、おねえちゃん……!」
「はい、はい♥」
ぼくは本当に射精するまで、お姉ちゃん、お姉ちゃん、とつぶやくのをやめられなかった。
※
次の朝、姉さんはいつもどおりのような顔をしていた。
「腟内で出してしまった? ふふ、心配ご無用です。私とあなただけのおままごとに、他の誰も巻き込みませんって」
どうやら昨日は“だいじょうぶ”な日だったとのこと。
「きょうもフリージアのお世話を手伝ってくださいな」
前の朝にも負けない強引さで、ぼくは姉さんに手をとられて、温室にひっぱりこまれていた。ぐっすりねむれたから抵抗しようとおもえばできたけど、しなかった。
「歳を重ねますと、人は姿も心も変わります。私も、あなたも。けれど花は毎年咲いて、いつか見たように美しくて、まるで変わっていないよう」
温室の中の棚やデッキにならぶ鉢の数は、ぼくと姉さんの歳をあわせた数より多かった。
「フリージアの花盛りは3月ごろ。もうすぐ学年が一つ上がって、一つ大人になろうかという季節です」
鉢をかぞえおわる前に、姉さんに声をかけられた。
「あなたが大人になるにしても……少しお疲れのときには、大人になる少し前の季節に戻っていいのですよ」
そのあとの昼、姉さんの言ってた“教え”なんてうちにないことがわかった。
久しぶりに家族のそろったランチの席で、ぼくが昨夜のことをむしかえそうとすると、姉さんがいきなりわぁわぁさけんで、ぼくの口をおさえつけたから。
「私とあなただけ、って言ったのに……!」
「姉さんのいってたこと、ひょっとして本当かなぁ……っておもって」
それから少したった日は、ぼくの誕生日だった。いろんな人を招待したパーティーをひらいてもらった。
ぼくのクラスメイトたちは、セミアフタヌーンドレス姿の姉さんに微笑みかけられ一言二言しゃべったあと、魂をぬかれたようにぼーっとしていた。いちおう主賓であるぼくが何かしゃべりかけても、しばらくは「うん、うん」とつぶやくだけの上の空だった。
ないはずの“教え”の必要性が、よくわかった。
(おしまい)