アイマスのアイドルが童貞をもらってくれるシリーズ 作:ふりーじ屋/家庭内禁書
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次話はこがたんによる童貞卒業の補習授業です。
「事務所でこがんにヤラしー匂い、させとったんは、なーに?」
283プロ所属のアイドルユニット・L'Anticaを担当するプロデューサーが、あすに誕生日を迎える夜。
彼が目の当たりにしたL'Anticaのリーダー・月岡恋鐘は、表情も声音も、きのうまでに彼が見た恋鐘のそれらすべてより、ずっと艶かしかった。
※
プロデューサーが、恋鐘に性的魅力を感じたのは、きのうきょうに始まったことではない。
その夜の事務所は定時をとうに過ぎていて、プロデューサーだけが残業で机に向かっていた。
(こうして見ると……意外と落ち着いた印象にまとまったな、この恋鐘)
プロデューサーの目線の先は、木と石で造られた露天風呂で半身浴する恋鐘のスナップショットだった。隠し撮りではなく、恋鐘が温泉地を宣伝するため、きちんとカメラマンが撮影した写真を、色校正用の紙に焼いたもの。秋の行楽シーズンに向けた仕事の成果だった。
恋鐘の撮影で使った場所は、長崎は雲仙のとある温泉宿。硫黄泉らしい白濁した水面……もとい湯面に、薄手の白いタオルを巻いた恋鐘が、アンダーバストまで浸かっている。
いつもはウサギをイメージさせるリボンでキュートに結んでいる長髪を、露天風呂ではアップにしてしっとりまとめている。表情はでろでろとリラックスしていて、見る者の気まで抜け出そうなありさま。プロデューサーは「さすが素で温泉好きというだけはある」と恋鐘に感心した。
恋鐘のプロポーションは、公式スリーサイズに93-60-91を掲げるほど豊かだ。ふつうのグラビアなら、男の視線を絡め取り首を捻じ曲げてやまない曲線美を見せつける。
しかしそのスタイルで撮影に臨むと、温泉地のゆったりくつろいでほしいイメージカットとしては、あまり扇情的すぎる。
そこでプロデューサーはディレクションに口を出して、恋鐘のヘソから下は白濁の湯船に沈めてぼかした(恋鐘の豊かなバストがお湯から浮いてしまうのは妥協した)。恋鐘のトレードマークであるヘアリボンもほどいて、落ち着いた印象を強調するようにアップにしてまとめ、うなじや額を出して大人っぽくさせた。あとは恋鐘の表情。これらでだいぶセクシャルな印象を中和したのもあって、ほかの関係者チェックはめでたく通過し、ついにプロデューサーによる最終チェックを迎えている。
(俺が立ち会ったときは、だいぶ興奮させられたもんだったがなぁ)
撮影の終了予定時刻の少し前に、プロデューサーも直接立ち会った。
『いやー、温泉ってただ浸かってるなら極楽でも、お仕事となるとけっこうハードで……あんまり美肌になりすぎて、ゆで卵になりそうたい!』
温泉での撮影は、イメージに反して過酷になりがちだ。
湯気で機材が傷んだり撮影に支障が出ないようにする調整が厄介で、その上に浴室は最初からレイアウトが撮影向きではないので、セッティングの手間やスタッフの緊張感がスタジオとは段違いになる。
さらに撮られる側の恋鐘は、湯船に浸かったり上がったりを繰り返し、のぼせそうな体温と湯冷めしそうな体温を行ったり来たりで、体に大きな負担がかかる。肌のふやけ防止のクリームには多少の断熱効果もあるが、ふんだんに使うと浴槽トラブルにつながる可能性もあり、頼りきれない。恋鐘の『ゆで卵』という言葉も、肌がつるつるすべすべになるだけでなく、中身が固ゆでの黄身のようになってしまうかも、という愚痴まじりだった。
『温泉のおかげかどうかは知らないが、いつもより大人っぽい色気が出てるよ』
『もー、なしていつもがうちの大人っぽくなかって言い方するー!』
そうやって弱々しさを見せている恋鐘のなかでも、特に悩ましげな表情が、プロデューサーをどきりとさせる。西施の顰(ひそ)みと古くから言うように、美しい女の弱々しい姿は独特の色気を醸し出すとされてきたが、恋鐘はふだんが活発なためかギャップが深く、プロデューサーにいっそう強い印象を残す。
『そろそろ、宿のお客さんのためにも、空けんといかん時間ね……まー、よか感じにまとまっとる雰囲気? はあるけん、プロデューサーは大船に乗ったつもりでいるね~』
『気合い入れてくれてたせいか、疲れているように見えるが……体調が悪くなったら、ちゃんと言うんだぞ』
『へーき、へーきっ! プロデューサーが見てくれてるんなら、もうひと踏ん張り……わぁああっ!?』
歩き出そうとした恋鐘の声があさってへ飛びかけ、それを半ば予期していったプロデューサーは腕を伸ばした。
『まったく、言わんこっちゃ……っ!?』
『あ、はは、ごめんね、プロデューサー……』
(……やば、思い出しちまった)
プロデューサーが目を閉じても、もう遅かった。
不可抗力とはいえ、バスタオル一枚の恋鐘とまともに抱き合った感触が、グラビア写真を引き金にして蘇ってくる。バストの火照った柔らかさは衝撃的だった。恋鐘が記憶に焼き付けていったのはその感触だけではない。ほっぺたにかかる悩ましげな吐息も、硫黄を押しのける髪の甘酸っぱい匂いも。
撮影日の夜は『仕事中なんだぞ』と言い聞かせて興奮を抑え込んだ。それで押さえつけたのがぶり返したのか、プロデューサーはほかの恋鐘の記憶より鮮やかに、彼女の艶姿を思い出してしまう。
(恋鐘のおっぱい、やわらかくて、匂いも……)
何かの拍子で恋鐘を思い出すと、つい興奮してしまう。
プロデューサーが自宅でそうなったときは『担当アイドルでなんて……』と罪悪感にかられつつ、ついつい抜いてしまう。記憶だけでオナニーできるなんて思春期以来だ、と自嘲する。
プロデューサーがあすに30歳を迎えるこの夜。
彼は仕事中だったが、あの撮影日のときと違って、恋鐘がそばにいなかった。ほかの人間もそばにいなかった。
(誰もいないし、いっそ……いったん抜いたほうが、落ち着いて仕事もできるだろう)
……そうして、プロデューサーが、精液まみれのティッシュを始末しようとした瞬間、
『プロデューサー、まだおるー? うちやよ、うちー』
恋鐘がデスクに近づいてくるまでにプロデューサーが出来た足掻きは、とっさにティッシュを捨て、くず入れを自席からなるべく遠ざけることまでだった。
『んもー、プロデューサーったら、そんな根詰めてお仕事するんやったら、うちに言わんとー!』
『え、いや、なんで……?』
『はーい、愛情たっぷりのお夜食ー! うちが見てないと、プロデューサーったら平気でごはん抜くけん……』
恋鐘が腕いっぱいを使って抱えていた花柄のクロスを解くと、籐のランチボックスが姿を現す。大きさに目を丸くしたプロデューサーに、恋鐘は『作ってたら、うちもお腹が減ってきて……ま、まぁ、カロリーはなんとかなってるハズ……あとでなんとかするけん』と笑った。
プロデューサーは反射的に出かけたツッコミを押し留めた。プロデューサーも、以前に恋鐘が夜食で手作りサンドイッチを差し入れしてくれたとき、彼は残業を投げ出してその差し入れをバリバリと美味しくむさぼったのだ。
『お! この写真……うちの、雲仙でやったお仕事やんっ』
『最終チェックが回ってきたんだよ。早く返してやったら先方が助かると思って、いま見てるんだ』
『え、じゃあコレ使うん? なぁんか……うち、フニャフニャに写ってない? いつもはL'Anticaで頑張ってカッコよくしてるのに、いきなりコレじゃ変に思われんかなぁ』
『温泉だから、リラックスしてる感を伝えるほうが優先なんだよ』
プロデューサーは、『食べる前に手を洗いに行く』と言いおいて席を外した。手に残った精液の気配を洗い落とすにはごく自然な言い訳だ、と彼自身は安心した。洗面所で焦りも洗い落とした。
そうしてプロデューサーが席に帰り、ランチボックスを開ける前に手を合わせた瞬間。
『ねぇ、プロデューサー』
立ったままの恋鐘が、腰をかがめ顔を近づけて、すぐ近くでささやいてくる。
『事務所でこがんにヤラしか匂い、させとったんは、なーに?』
プロデューサーは、上から見下ろしてくる恋鐘の視線から目をそらそうとして、逃げ場を恋鐘のバストに塞がれていると気づいた。それほど恋鐘は近くにいた。
恋鐘は、淡いクリーム色のオーバーサイズなブラウスを着ていた。彼女は、自分の胸が大きくて人目を引きすぎることを気にしているが、胸に合わせた服を選んで寸胴なシルエットになってしまうことはもっと気にしているらしく、いまはブラウスの裾を結んでウエストで絞り込んでいる。トップからアンダーまでバストのふくらみがしっかりと服から浮き出ていた。
「ヤラしいって……事務所は俺以外みんな帰ってしばらく経つから、むさ苦しいはずなんだが」
プロデューサーは諦めて恋鐘の目を見返した。ついでに、『ヤラしい』を『かわいい』の意味――恋鐘の出身地であり佐世保では、たまに使われる方言である――と、強引に解釈した。
「まー、プロデューサーったら『ヤラしい』し、ヤラしいねー。むさ苦しーっちゃ、むさ苦しかね」
「言いたいことがあるなら、はっきり言ってくれよ。せっかく作ってくれたのに、これじゃノドを通らないじゃないか」
恋鐘がさらに腰をかがめると、プロデューサーの鼻腔に、例の甘酸っぱい匂いが急激に迫る。
「さっき、オナニーしてたねプロデューサー。うちのグラビア、オカズに使ってくれたん?」
「お、おな……っ!? し、仕事中に事務所でそんなことするわけないだろっ」
「へー、ふぅん……」
晩夏の夜風が恋鐘から醸し出したらしきフレーバーが、ゆるいブラウスと肌の隙間から寄せてくる。
「プロデューサーといっしょに食べたかーって思って、使い捨てのお手拭きを持ってきたんやけど、手ぇ拭いたあと、なーんかごみ箱が見当たらんなー、と思ったら……ねー♥」
※
「……恋鐘」
「なーに、プロデューサー」
「ごめんなさい」
「ふーん、ナニが悪いと思ってたん?」
プロデューサーは頭を下げようとしたが、そうするとまた恋鐘のバストが目に入ってしまい、慌てて頭を上げた。
「んふふー、プロデューサーったら、ホントにうちのおっぱいスキやんっ」
「うっ……あまり、からかわないでくれよ、そんな……」
「まー、いろんなヒトを骨抜きにしてきたおっぱいやからねー。そっかー、プロデューサーもか……」
プロデューサーは言葉に詰まった。恋鐘の雰囲気がいつになく艶っぽいせいか、言い回しがすべて意味深に聞こえてしまう。
自分が恋鐘にオナニーでお世話になっていたことも、世の男性がオカズに使えそうな恋鐘のグラビア写真をまた一枚メディアに送り込もうとしていることも、すべてをなじられているように聞こえてしまう。
「ばってん、プロデューサーはうちのおっぱいをえっちな目で見てても、えっちな声はかけてこなかったねー」
「え、いや、そんなことは」
「もー、プロデューサーったら、すら言ゆーたら、みたんなかよー」
恋鐘の立ち居振る舞いと言葉が、プロデューサーの現在も過去もまとめて揺さぶってくる。恋鐘のおっぱい。ついつい目に焼き付けてしまっていた場面が、走馬灯のように湧き上がる。
すれ違う男のすべてを悩殺してもおかしくない、大きくて弾むふくらみ。撮影のポーズで寝転がろうが腋を開こうが、丸々とした豊かさはしっかりこちらを誘惑する。むしろ腋の筋で引っ張られて、胸の柔らかさが増して見える気もした。ダンスでもさせようものなら、何をか言わんや。
だが、恋鐘自身がおっちょこちょいでたまに転ぶので、きわどい衣装は着せにくい。でもそれでいい、肌を出さない衣装でも――ちょうどいまのようなブラウスでも――破壊力はじゅうぶん。
「で、プロデューサーは……うちと、そーゆーこと、シてみたいって思ったことは、あるん?」
「そーゆーこと、って」
「そりゃあ、えっちなコトたい」
プロデューサーは答えに詰まった。言ってはいけない、考えてもいけない答えが本音だった。
「アイドルとプロデューサーが、そうなったら……まずいだろ」
「まずいねー。でも、プロデューサーって、バレなきゃいいって思ってるフシ、あるやっか。うちに隠れてオナニーしてたの見つかってから、謝って……謝るのはいいけど、見つかって謝らなきゃならんと思ってるコトなら、最初からしなきゃよか」
「ご、ごもっとも」
「そがんに、シたかったん?」
恋鐘は舌先で下くちびるをぺろりとして見せた。『からかわないでくれよ』と言ったそばから、からかうような仕草を返される。それでもプロデューサーはドキリとしてしまう。怒ったフリもできない。
「秘密にしたら……それはそれで、こじれるじゃないか。本当は私だけじゃなく別の女にもこうやって……私のほうは遊びであいつへ本気になったんじゃないか……なんて」
「なんか含蓄のある言い回しやね。もしかしてプロデューサー、前にそうやって女の子を毒牙にかけて……」
「そんなわけないだろ!」
「そっちは、オナニーと違って断言してくれるんね?」
プロデューサーにも、『もうコレ以上、恋鐘としゃべっては危ない』ことがいい加減わかってきた。
だが、恋鐘は沈黙を許さない。
「あぁー、プロデューサーが童貞で、うちは安心したたい!」
「……どうして俺が童貞だと断言するんだよ」
「違うん? 童貞さんだと思ってたけど」
プロデューサーと恋鐘は、互いを探り合うように視線を交錯させる。
確かに、プロデューサーはセックスをしたことがなかったが、『童貞でしょう』と面と向かって言われたこともなかった。そこがプロデューサーの腑に落ちない。
「アイドルになってから言うのもおかしな話だけど、アイドルって妙な商売よね。ヒトにえっちな気持ちを催させる仕事でもあるのに、そうそうえっちはできんって」
「……そうそう、って」
腑に落ちないまま浮足立ったプロデューサーの思考を、恋鐘が絡め取る。
「そういう恋鐘は……その、シたこと、あるのか?」
「もー、いくらプロデューサーでも、そがんデリカシーのないコト聞いちゃあ、嫌われてまうよー」
「別に答えなくてもいいけど……恋鐘は俺が童貞かどうか聞くくせに、俺は恋鐘が処女かどうか聞いちゃいけないのかよ」
視線を交錯させたまま、恋鐘がプロデューサーの肩に手をおいて、いよいよ間近で瞳を覗き込む。
恋鐘の大きく丸い瞳に姿を映されるほど。プロデューサーは、自分が恋鐘に囚われた錯覚に陥る。
「で。童貞、卒業したいん?」
「だから、勝手に人を童貞だって決めつけるなって」
「恥ずかしくなかよー? プロデューサーがそういうのおカタいほうって、少なくともうちの周りではみんな察しとるたい。まあ、一皮剥いたらこの通りのムッツリやったけど」
恋鐘の『うちの周り』が誰を指すか考えないよう、プロデューサーは払底しかけた気力を必死で振り絞った。
「んー……つれない顔してぇ。なして、うちとシたくないん?」
「恋鐘、あの……オナニーのこと怒ってるなら、それは当然だけど、でも……だからって、セックスするなんてこと、俺にべらべらと……」
恋鐘の瞳がまっすぐなまま射抜いてくるのと、肩に置かれた彼女の手に入る力の具合で、プロデューサーは確信させられる――恋鐘は、まったく真剣だった。少なくとも、単なる猥談で見せる面持ちには見えなかった。
「プロデューサーがね、L'Anticaの……うちも含めて、みんなアイドルとして、これからもちゃんと面倒みて……そーしてくれるんなら、うちがプロデューサーの童貞卒業、引き受けてあげよっかなーって思ったんよ」
「……恋鐘が?」
「うん」
プロデューサーが泣きたくなるほど沈黙のにらめっこを続けたあと、再び恋鐘が口を開く。
「ねぇ、プロデューサーは、そーしてくれる?」
「俺は……別に、恋鐘とセックスできなくったって、ちゃんとプロデュースはするから」
「ちゃんとしてくれるんなら、うちは、プロデューサーのこと好きなままでいられるんよ」
たとえ『秘密』でもね……と、恋鐘はくちびるだけで続けた。
少なくとも、プロデューサーにはそう読めた。
「お、俺は……恋鐘をトップアイドルにしてみせるって、約束したからっ」
「んふふ、そいで、『うちがアイドルになったからにはあっという間に1番になるけん』なんて、最初のオーディションで言ったねー。懐かしかっ。思ったよりまちっと時間がかかっとるけど、思ったよりずっと楽しかよー!」
恋鐘は救いのような振る舞いで、プロデューサーの逃げ道を塞いでいく。
「しんみりしたところで、おはなし戻すたい。うちが、プロデューサーとシたいって言ったら?」
恋鐘は、プロデューサーと出会ってからすべての思い出を使って揺さぶりにきた。それはプロデューサーへてきめんに効いて、いよいよ自分の全存在が根本から引っこ抜かれる気さえした。
「ねー、プロデューサー」
「……恋鐘」
「恥かかせんでくれると、嬉しかよ」
恋鐘は表情を緩めて笑った。
その瞬間、プロデューサーは意地か貞操観念か、とにかく何かを奥深くから引っこ抜かれた。
「お願いします」
「よかよか、オトコもオンナも素直がやらしかよー!」
どうもプロデューサーは、緩急をつけた攻めに弱いらしかった。
※
「面倒みたげるとは言ったけどねー、調子には乗っちゃイヤたいっ」
「調子に乗る?」
「プロデューサーはそがんことなかと思っとーけど……童貞卒業したばっかのオトコって、ごっといみんな調子に乗らん? こがん、童貞よりずっとタチ悪かよ」
もはやプロデューサーは、恋鐘が何人もの童貞卒業に立ち会ってきたことを示唆しても、気にならなくなった。自分より一回り近く年下の彼女が、これ以上無いほど心強く感じられるほど、おめでたい気分だった。
「もし、恋鐘みたいな美人でおっぱいの大きい子に優しく童貞卒業させてもらったら、そりゃあ男は調子に乗るよ、有頂天だ」
「えー、いまプロデューサー、うちのせいってゆーたね。もう、うちってば罪な女たいっ」
恋鐘は、口ぶりだけぷりぷりと怒った風にしつつ、プロデューサーの隣席からキャスター付きオフィスチェアを引いてきて、プロデューサーのすぐ隣に座る。
「うちの、こんおっぱいがイケないん? んふふー……♥」
プロデューサーの手をとって、ブラウス越しの豊満なふくらみへ寄せながら、冗談を飛ばすほど余裕を取り戻したプロデューサーを引き締めにかかる。
「うちの罪を知ってしまったからには、プロデューサーにも道連れになってもらわんとね」
恋鐘は、シてはいけない行為だと認めた。プロデューサーにもあらためてそう認識するように要求した。
欲望と緊張で、プロデューサーの手の甲にキリキリと筋が浮いた。
「恋鐘、そ、そのっ」
「なんなん?」
「おっぱい、見たい……」
「ねー、プロデューサー。おっぱいってね、ブラがあるとないとで、もみ心地、だいぶ変わるんよ」
「……そうなんだ……」
「どっちも、味わいたいやろー? 触ってん、触ってん!」
プロデューサーは返事の代わりに、ごくりとノドを鳴らしてしまった。
「んふふ、うち、サンドイッチみたいに、ムシャムシャいただかれちゃうんー?」
プロデューサーは、雲をつかむような手付きで、恋鐘のブラウスへ指先を近づけていく。露天風呂で、たまたま一瞬だけ触れた乳房とは違う、意思を帯びた接触。
「あ、ぁ……やわらかい、あったかいな、恋鐘の、おっぱい」
あまりに明け透けな感想が浮き上がってきて、プロデューサーはそれを噛み殺そうとした。しかし、恋鐘が彼の手の甲に上から彼女の手を重ねてくると、半ば義務のようにそれを口にした。
もし触れたらそのままぽたりと落ちそうな声音になっていた。
「だいじょうぶやよ、プロデューサー。おっぱい、怖くなかよ」
「こ、怖いというか、なんというか――」
「――っ、あ……ッ!?」
「恋鐘?」
「ぷ、プロデューサーぁ……ちょっと、指っ、こんどは強すぎたいっ!」
「ご、ごめん、つい……痛かったか?」
プロデューサーは昔、水風船にぬるま湯をつめたり高速道路で空気を掴んだり、女のおっぱいの感触を擬似的に味わえるという細工を片っ端から確かめたことがあった。
それを思い起こして恋鐘の乳房を比べると、かつての細工たちは、柔らかさや温かさといった物理的感覚に限れば、それなりに再現できていた。
「おっぱいはデリケートだけん、よう気をつけてよーっ」
決定的な違いは、恋鐘がおっぱいを許してくれているというシチュエーション。恋鐘の吐息や声に合わせて布と肌ごしに伝わってくる、おっぱいの向こうのゆらぎ。
それをつかもうと、あるいは掬い取ったり包み込んだりしようと、プロデューサーは指と手のひらへ意識を集中させる。
が、集中は早々に破られる。
「プロデューサー……あの、黙って触られると、いくらうちでも、怖かよーっ」
「そ、そうだな、集中、しすぎて」
「そがんカチコチになられると、うちまで緊張してくるわぁ……そうねぇ」
されるがままにしていた恋鐘が、急にプロデューサーの肩へ腕を絡め、顔を近づけてささやく。
「あっちゃん、にう……寝っ転がれるとこ行けば、そういう雰囲気にならん?」
指で指し示さなくても顔を向けなくても、『あっちゃん』が仮眠室だと通じてしまう。
本来は、電車が使えない時間帯や災害のときに使う事務所の設備を、セックスのために私物化することになる。その扉を恋鐘とくぐったら、本当に『そういう雰囲気』になって、二度と以前の二人に戻れないだろう。
「それに、脱ぐんなら、ちょっとでも落ち着いとる部屋がよかね」
見慣れているはずの扉の向こうが、天国であっても地獄であっても、戻れないのはきっと同じ。
※
「それじゃあ、恋鐘、あらためて、よろしく……よろしくおねがいします」
「なーにくすぐったかコトゆうねー! 最初『月岡さん』なんて呼ばれたん思い出すわ、プロデューサーのクセなん?」
「そうかもな。いつもと、心構えが違ってしまって」
仮眠室のシーリングライトはぎりぎりまで絞った。
狭いベッドの上で、オレンジがかった恋鐘の顔がころころと軽快に笑った。
「そいぎん、プロデューサーの手で脱がせてん。ただのブラウスやし、指の準備運動によかよ」
恋鐘のブラウスは、裾をウエストで真結びにして絞り込んでいた。
その結び目を内側から緩めようとして、プロデューサーの指先が恋鐘の素肌に触れる。つるりとした滑らかさから、プロデューサーは「うちのこと、しっかり掴んでいられる?」と挑戦的な幻聴を聞いた。
両指を使ってボタンを外し、恋鐘のバストとブラをあらわにする。ふくらみがかすかに上下して見えるのは、プロデューサーの気のせいだろうか。
「ブラも脱がしちゃって、よかって。外し方、わかる?」
「背中側、か」
「そーよ。あんまり、見んといて。事務所さん来る時ばそーゆーつもりじゃなか、適当に選んでしまったけん」
恋鐘が恥じらって見せると、プロデューサーは不思議と余裕が生まれてきた。
バックホックを外すために、恋鐘と肩どうし胸どうしがくっつきそうなほど近づいても、彼女のかぐわしさに浸れた。
「ん、ぁ……背中、ちょっと、ぞくぞくーって、するたい……そっちも触りたいん?」
「恋鐘は、背中も色っぽいから。露天風呂でも、もっとアピールしとけばよかったかな」
「いまは、お仕事みたいなこと言わんの、ね……お仕事じゃできんこと、するんよ?」
プロデューサーは精一杯ゆっくりとブラを外したが、それでも恋鐘のふくらみはユサユサ、どたぷんと揺れた。
「アイドルが見せちゃいけないところまで、見せてもらっちゃったな」
「見てるだけ、で済ますつもりもなかろー……」
プロデューサーは、どうしようもなく力んでいる指先より、まずは手のひらで恋鐘のふくらみを味わおうとする。アンダーバストが、親指と四本指のそれぞれの付け根に吸い付いてくる。
「ん、ふ……ねー、プロデューサー、うちのおっぱい、やーらかくてきもちいー?」
「……うん、うん」
「きもちーなら、ちゃんと言わないと通じんって」
「頭が空っぽになりそうだ……」
プロデューサーは、恋鐘のバストを両手で下支えしながら、デコルテや谷間に顔を近づける。興奮と安心感の入り混じった奇妙な感慨が、プロデューサーに染み渡る。
「ぷ、プロデューサー……は、鼻息があたってくすぐったいよ……あんまり近づくと、おっぱいで窒息してしまわん?」
「呼吸は、止められないかな……でも、窒息するまで、俺は恋鐘から離れられないかも」
プロデューサーは、恋鐘の乳房を間近で見て、いまさらながら彼女の乳首に意識が向いた。明るく自信満々なふだんの恋鐘と違って、乳首の色素は肌に溶けそうなほど薄く、突起も乳房の豊かさに対して控えめだった。
「吸って、いいか?」
その片方に、プロデューサーはくちづける。
恋鐘の肌いきれに対して、乳首の味はかすかにしょっぱくて、プロデューサーの唾液腺が反射でぴりぴりと痺れた。
「ん、ぁ……♥ しょんな、せせりかた……プロデューサーったら、赤ちゃんみたいっ」
恋鐘はからから笑いながら、プロデューサーの頭を撫でてやる。
彼のうなじは、恋鐘が思っていたよりずっと火照っていて、ゆるんだくちびるから蕩けたため息があふれる。
「不思議な気分ね……いつもは、うちらが頼り切りなのに」
「……そうかな」
「やん、おっぱいくわえたまんましゃべらんのー、行儀悪かよっ」
文句を言いながら、恋鐘はプロデューサーの頭を撫でたまま。
「うちがいつも自信満々だとか、明るくて元気だとか……プロデューサーのおかげよ」
「……恋鐘」
「はじめてのとき、そのままでいいって、言ってくれたね」
プロデューサーは、恋鐘の言葉につられて、彼女を出会ってすぐ採用したオーディションを思い出した。
すごく楽しそうに話して、元気で、自信満々で……あの頃は、それが恋鐘のある一面に過ぎないことを意識していなかった。
「まぁ、あまりしんみりばっかりでもね……で、プロデューサー?」
スラックスの布越しにペニスをつつかれて、プロデューサーはようやく勃起を自覚した。
まだ本調子ではないが、それでも恋鐘の指先を押し返すほどの弾力を帯びている。
「いわせん……これなら安心たい! 元気にならんと、童貞さん卒業できんからね~」
恋鐘の口ぶりに、はしゃぐのと苦笑が折り重なり、プロデューサーの間近でバストがぷるぷると小さく弾んだ。
※
いよいよ下着を完全に外しにかかった恋鐘は、熱心に注がれるプロデューサーの視線をくすぐったがって、肩や背中をわざとらしくストレッチさせた。
「そがい見たら、目玉が飛び出ない? いつもおっぱい見てるときは、ちらちら~、ぐらいなのに」
恋鐘は不意打ちでいつものおっぱい盗み見をとがめたが、プロデューサーはもう目をそらさない。
「……俺の網膜に焼き付けておかないと」
「さっき、うち、『あまり見んといて』って言うたんに、イケズーっ」
恋鐘は報復のように、プロデューサーのスラックスをつっぱらせる勃起へ、露骨な視線を注いだ。
勃起は、恋鐘の素肌があらわになっていくにつれて、ますます勢いを増していく。
「プロデューサーもうちにだけ脱がせんで、脱ぐ脱ぐー!」
しかし、恋鐘の催促にプロデューサーの本体はためらいをにじませる。
まさか自分の服が脱げないわけもあるまいし、と恋鐘がスラックスのベルトに手をかけると、プロデューサーは観念したように脱力した。
「どらどら……あら、敏感そうなおちんちんやんね、剥いてよか?」
「お、おう」
プロデューサーの勃起は、恋鐘の両手をあわせてなんとか握れる程度の威容にみなぎっていたが、大きさに反して先端が包皮に覆われていた。
それを彼のコンプレックスと推察したのか、恋鐘はあえて軽い調子で余った皮をもてあそぶ。
「最近忙しくてたまってたみたいだけど、ちゃんと洗っとるー? もしきさなかったら、お手拭き一枚残っとるから、そいでうちが拭いたるたいっ」
「……さすがに、そこまでしてもらうのは……って、んぐ!? う、ぁあ……!」
「うんうん、手で剥けちゃうたい! 仮性なら、なんのかんので使えるから、うっちゃらかしてる子いるもんね。真性と違って、切るのに保険おりんらしいしー」
恋鐘の指で、包皮をずるりとやられる。そよそよとかすかにくすぐったい感触は、恋鐘の鼻息か。
もしかして、さっきおっぱいにされた意趣返しか、とプロデューサーは妄想した。
入浴のときに洗っていると言えど、露茎より湿りがちで、匂いもこもりがちなはずのプロデューサーの亀頭。恋鐘はそれを、イタズラな笑みを浮かべながら、くりくりといじりまわす。
「うち、これはこれですいとーよ。だって、こっちのママのが敏感、ね……♥」
「敏感って、言われてもな……」
「オトコは、オンナのおっぱいやおまんこが敏感なのは喜ぶくせに、自分が敏感なのはダメだと思っとるよね。そがん、おかしくなか?」
恋鐘が指先で軽く撫でたり挟んだりしているだけなのに、プロデューサーの亀頭はぬめりをまとい、腹筋や臀部のこわばりが、押し殺しきれない快楽を訴える。
「敏感なほうが、可愛がりがいがある! これ、オンナから見ても同じやと思うんやけどー。うちは、すぐに気持ちよーなっとくれるプロデューサーのほうが、嬉しかよーっ」
プロデューサーの熱く張り詰めた下肢を、恋鐘が一撫でする。手だけでなく、豊満なバストのふくらみが食い込むほど。
接触から解放されたはずのペニスがぶるりと揺れる。
「プロデューサーは、目ぇ細めたほうがよかね。そのツンツンした目、きゅんきゅんするたい……♪」
恋鐘のくちびるが、亀頭の間近ににじり寄る。ペロり、と一舐め。そう思ったかと思うと、裏筋に唾を擦り付けられて、先走りがひとしずく漏れて、恋鐘のおとがいまで濡らした。
「うち、プロデューサーの可愛かとこ、見たかよー」
ふだんは歌声を紡ぐくちびると舌が、プロデューサーの亀頭に触れる。ねちゃ、にちゃと音がするほど密着する。甘やかすような、甘えるような、その間をゆらゆらするフェラチオに、プロデューサーはいよいよ力む。
恋鐘は亀頭だけでなく、カリ首や茎の方までくちびると舌を這わせ。じゅるじゅると唾をたっぷりまぶす。
「う、ぁああ……恋鐘、それ、いやらしくて……っ」
刺激は穏やかになり、視覚的な破壊力は激しくなった。
恋鐘のフェラチオによって、プロデューサーは良いように快楽神経をかき乱されもてあそばれているのに、恋鐘の姿勢と表情を見れば、プロデューサーにあらん限りの親愛と恭順を浴びせていた。
「……うんにゃ、まだまだこれからよ……もっと可愛がらせんば……♥」
恋鐘がペニスから顔を離して、少しばかりプロデューサーの快楽神経が凪ぐ。
けれど一呼吸もしないうちに、恋鐘の深い谷間が添えられ、乳肉が左右から圧迫。
「うぉ、ぁ、ぅうぁあっ!?」
「プロデューサーは、うちのおっぱい、ばりばりすいとーね? そいぎん、ひとたまりもなかろー……♥」
優しげな柔らかさや温かさと、強烈な圧迫感や摩擦が、恋鐘の巨乳から迫ってきて同時にプロデューサーを襲う。
重そうな――実際、恋鐘はプロデューサーに「胸が重かよ……」と愚痴ったことがあった――乳を両手で抱えあげ、先走りで胸肌が汚れるのも楽しげに、恋鐘はニマニマ勝ち誇りながらぬちゃぬちゃと責めを重ねる。
このままでは、射精まで簡単に導かれてしまう。
「……出そう? ね、出す時は、ゆーてよ」
「ん、ぐ、く……そんな、すぐなんて……! ま、まだ……」
それでいい、されるがまま……とまで屈服しきれないプロデューサーの意地が、奥歯を噛み締めさせる。敗北寸前でさまよう視線が、恋鐘の顔と髪の毛の向こうで揺れる、長く緩やかな背中と腰の曲線で止まった。
プロデューサーは手を伸ばし、恋鐘の髪を撫でる。
「こがね……恋鐘っ」
「んー、やっぱり出そうなん? あ、また、びくってっ♥」
「……俺も、恋鐘を気持ちよくできたら嬉しいかな」
「へぇ……? んふ、ふふ……そっか、そっかー……プロデューサーったら……♥」
恋鐘はパイズリを止めてやったが、ニマニマした笑みはますます濃くなって、零れ落ちそうなほどになる。
「そんなら……よかコト思いついた、これから入れるおまんこ、プロデューサーに予習してもらうたいっ」
恋鐘はプロデューサーに、仰向けに寝るよううながす。
プロデューサーが従うと、恋鐘は続けてプロデューサーの胸板や腹筋におっぱいをこすりつけながら、再びペニスへ向き合う。
プロデューサーの方には、恋鐘の丸々としたヒップと、彼の想像より慎ましく閉じた彼女の秘所が向けられる。シックスナインの体位だった。
「慣れんうちは、うつ伏せと仰向けで上下になるより、横寝して左右に並んだほうが安定するんよ。やけど、プロデューサーは、おっぱいすりすりされながらのが、よかと思ってっ」
お互いの性器を、本来の場所ではなくあえて口で味わおうと――それも同時に――する姿勢をはじめてとらされて、プロデューサーは「ひょっとすると、ふつうのセックスよりいやらしい姿勢では?」と、童貞らしからぬ思考が浮かんだ。
その思考のまま、プロデューサーのくちびるが恋鐘の陰唇に吸い寄せられる。
「ん、ひぁ……っ!? プロデューサーっ、するなら、先に言わんと! こっちからは見えんのに」
「す、すまん、つい……」
「まぁ、力加減は、そのぐらいでよかよ……そー、くすぐったいぐらいで……んふ、ふふっ……♥」
プロデューサーにとってはじめての女性器は、見た目はいくつもの襞が見え隠れしたりうごめいたりとするようすで、見慣れぬよそよそしさを感じさせた。それでいて、目を閉じてくちびるや舌を這わせると、おっぱいより少しだけ塩辛く少しだけ淡い酸味の粘膜と触れ合える。恋鐘の髪の毛や胸で感じた体臭と比べると、とっつきにくい風味だったが、それはそれで親近感が湧いた。ひたひたと膣粘膜に絡むぬめりで、プロデューサーは、かつてふざけて舐めてみた自分の先走りを連想した。
恋鐘もセックスをするんだ、とあらためて実感する。
「んや、ぁ、ふ……♥ クリも、舐めて、みて……っ」
自分の欲情を目前の恋鐘へ押し付ける想像が、プロデューサーを興奮させる。
それを知って知らずか、恋鐘はくすぐったいぐらいの手コキで反撃しつつ、言葉と腰使いでクリトリスへのクンニをねだる。クリトリスがぽってりと勃起していって、例の想像がますます濃くなる。
「あっちゃ、ふぁ、ああっ……♥ プロデューサーぁ、不意打ち、や……あまーい声、出ちゃったね……♥」
「でも、恋鐘ので……興奮する、よ」
「やろー? 感じさせるのも、気持ちよかって……うちも、プロデューサーの可愛い声、聞きたかよ」
プロデューサーは、無心に恋鐘の陰唇や陰核を舐めたり、勢い余って彼女のヒップを鷲掴みにして「デリケートってゆーたんにーっ!」ととがめられながら、一体感に没入していった。
※
「そろそろ、プロデューサーも限界ぎりぎりに見えるたい……童貞さんなのに、ば~り我慢してくれたね……♥」
プロデューサーのスラックスから引きずり出された財布には、カードポケットの隙間にコンドームが2枚だけ忍ばされていた。
その包みの端に恋鐘が爪先を立てて開封しようとしながら、ぽつりとつぶやく。
「プロデューサー、このゴム使用期限がきれそうたい」
「あ……使う予定、なかったからなぁ」
プロデューサーは、さっき恋鐘に包茎ペニスを見られた時よりもはなはだしい羞恥を覚えて、つい顔を伏せた。
「よかよか。これからも、ちゃんと常備するんよ? ゴムのあるなしは、甲斐性のあるなしやけん……って、プロデューサー、それ、向きが逆たい!」
羞恥をこらえつつ避妊具を装着するプロデューサーに、恋鐘の追撃が入る。
「ゴムの……裾? って言っていいかわからんけど……それ、内側に巻き込むと、とれやすくなるたい」
「うぅ、もう、面目次第もないな……」
「そこは恥ずかしがるとこじゃなかよ。えっちはどれだけ慣れたって『ひとりでできるもん!』とはならんやっか。うち以外の子とするときも、かっこつけるより素直に聞くんよ」
プロデューサーは、恋鐘の『うち以外の子とするときも』という響きで、まるで姉と――プロデューサーに姉は居なかったが――セックスでもするかのような背徳感がちらりと湧いた。
それもプロデューサーの欲望を後押しし、ついに恋鐘を押し倒す。
「うちのおまんこ、入れる場所、わかる?」
「……予習のおかげさまで」
「そー思っとったよー。準備のできた顔、しとったもん……♥」
恋鐘に向けられたプロデューサーのペニスは、彼自身がみたことないほどいきり立っていた。
ゴムごしではあるが、恋鐘の膣内でどこまで耐えられるか、想像もつかない。
「じゃあ……入れさせてもらうよ、恋鐘」
「あーい♪」
それでも、恋鐘が腕と脚を広げて迎え入れてくれる仕草に導かれ、プロデューサーは切っ先を押し進める。
まずは鈴口が、次にカリ首、そして茎が、恋鐘の女性器に抱擁される。
「んふふー……プロデューサー、卒業、おめでとー……♥」
「ん、くっ!? こ、恋鐘っ」
恋鐘の膣内は、まるでそれまでが遊びだったかのような勢いで、ひしひしとプロデューサーに絡みつき――
「……んっ、う、あっ」
「加減できんで、ごめん……可愛いとこ、見とうて、ね……♥」
――三こすり半というのがけっして誇張でないことを、プロデューサーは童貞卒業と同時に思い知った。
「プロデューサーって……ユルユルしたあとに、キュってされんのに、ホント弱いねー」
「恋鐘にソレやられて、強い……強がれるやつ、いるのか?」
「さぁ……」
恋鐘はペニスを離さないまま上体を起こして、「うちがそがんシたんは、プロデューサーだけやよ♪」とプロデューサーへささやいた。プロデューサーは、恋鐘のささやきが真実か優しい嘘か一瞬だけ判断に迷ったが、嘘でも幸せだと気づいて考えるのをやめた。
「ま、早いのは気にせんと! 初めてだと緊張で勃たん子もおるし……勃って入れてくれただけで、上出来たいっ」
そう言いつつ、恋鐘は精液だまりがぷよぷよに膨らんだコンドームを引っ剥がし、白濁にまみれてだらりと垂れ下がる亀頭を指先で撫でる。
「おーちゃかせんと、ちゃんと替えるんよ? せーえきたっぷりぶち込むと、破れやすくなるやけん」
そう口を尖らせつつ、恋鐘はプロデューサーの鈴口にくちびるを重ね、ちゅるちゅると出し損なった精液まで絞り出そうとする勢い。
射精したばかりで敏感なところにお掃除フェラを畳み掛けられる。プロデューサーは童貞を喪失したばかりの余韻で、抵抗する気力が尽きていて、強すぎる性感に悶えを噛み殺すだけ。
「プロデューサー、もしかして……アンコールたい?」
「……ふざけたアンコールもあったもんだな」
「さっきオナニーでも出してたんに……ふふっ♥」
そのうち、ギリギリ20代のプロデューサーの性欲は、それをまともに受けて、再び燃え上がる。
「しょうがなかねー……まだよー? もっとおっきくするー! 仮性は、さっきぐらいバッキバキに勃起しないと、皮が戻っちゃうかも知れんもーん♥」
※
恋鐘の『次はうちに任せてみん?』という、提案とも指示ともとれる言葉に従ってプロデューサーが仰向けになる。恋鐘はニマニマと緩んだ笑みを浮かべつつ、例の巨乳をゆさゆさと見せつけながら、プロデューサーの腰の上にまたがる。
プロデューサーが下から見上げる恋鐘の乳房は、美しいとか扇情的とかいう形容を通り越して、壮観とさえ感じられた。
「プロデューサーって、ホントにスキやね、おっぱい。まったく……」
「つ、つい、目が……すごいなって」
「霧子みたいんことゆー! 見てるだけのヒトはよかけど、うちはこれのせいで入れづらくて……プロデューサー、下も見といてよー」
ついさっきまで童貞だったプロデューサーから見ても、恋鐘は上からの挿入をやりづらそうにしていた。豊かなふくらみに遮られて、下腹部を直視できないらしかった。
ただ、恋鐘は慣れているのか、素股のように秘所や太腿をぴたぴたとペニスに擦り付け、その上でカリ首を指で挟んで微調整。触り心地を頼りにしてぬるりとペニスをくわえこむ。
さっきとベクトルの違う挿入感に、プロデューサーは息を呑む。
「こっち触りたいんなら、触ってもよかけど……ちゃんと、優しくよー?」
プロデューサーが見上げてくる目線をなぞるように、恋鐘は彼の手を引いて、バストのふくらみへ導いてやる。
「わ、わかってるよ、恋鐘……優しく、やさしく……」
プロデューサーは、敏感そうに勃起していた乳首をあえて避け、体温のこもったアンダーバストを手で覆う。
「……あっ」
「んんっ、そ、そこっ……♥」
「恋鐘……もしかして、心臓、どきどきして……」
「やぁん、優しくって言ったやんっ」
「え、や、優しくって」
「乙女のココロ、いきなり触ったやん!」
プロデューサーは、恋鐘がいやんいやんと自身の胸を抱いて身をくねらせるのを見て、素の羞恥か演技のジェスチャーか判断に迷った。その判断が下される前に、恋鐘が逆襲に出る。
「そがんイケないプロデューサーは……こーしちゃうっ」
恋鐘が不意に上体を倒して、プロデューサーにのしかかりながら、上からくちびるを奪った。
「こ、こが……んぷっ!?」
「ちゅぅぅ、はむっ……んぁむ……ちゅっ、ちゅっちゅっ……ちゅぅぅ……♥」
かちり、と軽く前歯が触れ合うのも構わず、恋鐘は舌を伸ばしてプロデューサーのくちびるをこじ開ける。フェラやクンニをしたばかりというのを気にしないでもなかったが、それより胸の鼓動を悟られるのが恥ずかしかった。
くちびるを重ねたままずらす。ぬるぬるとしているのは、唾液か、先走りか、それとも愛液か。
「はーっ、んっ、はぁー……♥ プロデューサー、まっと、したか……♥」
息継ぎとささやきのあと、さらに念を押す。
「んっ、ちゅっちゅっ、ふっ、んぁ……んむ……♥」
恋鐘がねじ込んでくる舌先も、垂らしてくる唾液も、プロデューサーは受け身ばかり。彼から恋鐘への反撃は、頬をくすぐる荒れた鼻息ぐらい。胸から遠ざけられて所在なさげな両手が、恋鐘の肩に添えられるが、それで彼女を制止する素振りもなく。
くちびるだけでなく、胸や腹部の肌も、汗を挟んでぺたぺたとくっついたり離れたり。その感触が恋鐘には心地よかったし、プロデューサーもきっとそう感じてくれていると信じた。
「ぷふ、ふぁ、あ……♥ んふ、ふふ……って、あれ、どしたん? おとなしゅーなって」
恋鐘はキスをたっぷりと味わった。童貞喪失の面倒を見る代わりに、L'Anticaの面倒を見てもらう……誓約のキスにしては情熱的すぎたが、恋鐘はふと思いついたその解釈をとても気に入った。
もうどきどきが伝わってしまっても、同じぐらいのリズムなら羞恥でさえ心地よかった。
が、恋鐘の味わっていた甘ったるい余韻は、彼女の予想だにしない方向から破られる。
「あの、俺……」
「んー、ずいぶんかしこまっとるね」
「き、キス、はじめてで……」
「……えっ、う、うっ……嘘やろー?」
恋鐘の膣内がきゅっと締まったのを感じて、いま彼女が素で驚いたのだ……と、こんどはプロデューサーもすぐ判断できた。
「うぅ嘘ばいっ!? プロデューサー、そがいに女の子さん不慣れに見えんたいっ。咲耶とか、結華とか、摩美々とか、ナンパで事務所に引き込んだって聞いとるもんっ」
「な、ナンパじゃないぞ! スカウトは、その……社長とはづきさんに言われて、プロデューサーとしての仕事だって心構えを作ってたから、できたわけで……」
恋鐘はなおも訝しげな視線を上から注いだが、プロデューサーに下から見返されると、かえって気圧された。彼に胸を揉ませてやったときとは、立場が真逆近くにひっくり返っていた。
「ばってん、さっきうちにクンニしとったよね……そっちは?」
「くちびるどうしじゃなきゃノーカンだと思って……それに、せっかくだし……」
「せ、せっかくって、あんた」
もうプロデューサーが目を凝らさなくても、恋鐘の巨乳は心臓か肺かで、とくんとくんと輪郭を揺らされている。恋鐘も、それを隠していない。
「……チューもしとらんくちびるにクンニさせたんは、さすがに初めてよ」
「へぇ……恋鐘も、はじめてか。嬉しい、な」
恋鐘のおっぱいに触れて以来、射精直後以外は緊張でガチガチになっていたプロデューサーが、射精していないのにふっと表情を緩めた。その移り変わりが、恋鐘を不思議とときめかせ、『筆下ろし』という名分さえ忘れかけた。
セックスの喜びに浸っていた。
「……恋鐘?」
「も、もーっ! 調子よかこと、ゆーてっ!」
プロデューサーの心配気な声で、恋鐘の使命感と羞恥心がいきなり復活する。
膣とペニスの摩擦が急にきりきりと強まって、二人の悶えが曇りそうなほどの熱っぽさで混ざり合う。
「そがん言うなら、プロデューサーが動いてみせろさっ」
「お、おう……」
恋鐘は、両手をプロデューサーの腿あたりに突くよう体勢をずらす。
重心が後ろに寄って、背中はそらし気味に、強調された乳肉がふるりとうなずくように上下する。
「うちの掛け声に合わせて、腰を動かすんよー。イチ、ニー、イチ、ニーって」
「突っ込んでいる最中にしゃべったら、舌、噛んじゃわないか」
「舌を噛んで痛い痛いってなる具合だと、勢いのつけすぎたい! おっぱいが揺れるのと掛け声があったら、ちょうどよかかもね……さぁ、練習練習ばい~!」
「う、ぁあっ、こ、恋鐘……っ」
たん、たんっと、恋鐘の肉厚なお尻が、プロデューサーの下肢にリズムを刻む。体に叩き込まんとばかりに、柔らかく軽快に、けれど圧倒的に濃密な膣壁摩擦の快楽を重ねる。繰り返す。
「そーれ、イチ、ニー、イチ、ニーっ♥」
まるでダンスレッスンをリードするような恋鐘のカウントは、プロデューサーのペニスをきゅうきゅうと搾精しきるまで、おっぱいと一緒に明るく元気に弾み続けた。
※
仮眠室を後片付けしてから、恋鐘とプロデューサーは二人で恋鐘お手製のサンドイッチを食べた。
それからプロデューサーが腕時計を着け直すと、文字盤の示す時刻が寮の門限を過ぎていた。
恋鐘の門限やぶりにどんな大義名分を立てるか考えていると、恋鐘もプロデューサーと同じくらい深刻な面持ちをして彼を見上げていた。
「……寮監さんには、俺がなんとか言っておくよ」
「プロデューサー、童貞卒業はおあずけたい」
プロデューサーは、セックス中と違って、興奮ゼロで絶句した。
自分は恋鐘と、さっきまでなにをしていたのだろうか……プロデューサーは、これまでの人生でいちばんの当惑に襲われた。
「……俺、恋鐘におっぱい揉ませてもらって、クンニもして、ゴム越しだけど膣で射精してるはずなんだが。そりゃ、恋鐘はイカせてあげられなかったけど……」
「そいよ! オンナはイカなきゃえっちで満足できない、って発想が童貞丸出したい! そがんオトコの勘違いで、女はイッたフリしたげるはめになるんたい」
恋鐘は、フグのようにわざとらしく頬をふくらませて見せた。
「……イカなくても、女の人は満足できるのか」
「当たり前ばい!」
「恋鐘は……イッてないけど、満足はしてくれたんだ?」
プロデューサーのつぶやきで、恋鐘は頬をふくらませたまま静かになった。
直前のプロデューサーとちょうど同じぐらい、その沈黙は続いた。
「……そっそれにプロデューサー、事務所でオナニーするし、キスしてないのに平気でクンニするし、おっぱいの可愛がり方も、腰の使い方もまだまだだし……うちが面倒みんと、つまんえっち覚えてしまうかも知れんけん、卒業はおあずけ、補習ばい!」
「……人生で、補習という言葉を楽しみに思う日が来るとは思わなかったよ」
「うちが面倒を見るからには、ば~りよかオトコにならんば、承知せんよ!」
二人は寮までの帰り道で、寮監やほかの事務所の面々をどうやってごまかすか話し合った。
「寮監さんへは……うちが、プロデューサーに日付が変わる瞬間に『ハッピーバースデーっ!』ってお祝いしたかったってコトにすればっ」
「それは通らんだろ……」
「ばってん、満更でもなかー? ハッピーバースデーっ、プロデューサー♥ これからもよろしくたい!」
補習がどうやったら修了となるのかは、プロデューサーも恋鐘も、話し合うどころか考えもしなかった。
(おしまい)