※この作品はR-18です。

アイマスのアイドルが童貞をもらってくれるシリーズ   作:ふりーじ屋/家庭内禁書

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童貞(?)Pがうたた寝する椎名法子さんにイタズラしてたらしっかり搾精されたおはなし

「それじゃ、絶対に風邪ひくだろ、法子」

 

 狭く侘びしくむさ苦しい我が家のリビング兼ダイニング兼寝室で、椎名法子がうたた寝している。座布団に腰を下ろしたまま、小さなテーブルに突っ伏している。

 テーブルは本当に小さい。さっき俺と法子のスパゲティ2皿を載せていた時も窮屈そうだった。今は、法子の肩胛骨ぐらいまでの丈がある長髪によって、天板の半分くらいを覆い隠されている。

 法子が小柄な少女でなかったら、テーブルもきしんで不平を上げていただろう。変な重さのかかり方をしていたら、ひょっとすると脚を折っていたかもしれない。

 

 法子は346プロに所属するアイドルで、俺はその担当プロデューサーだ。

 だから彼女の小柄さについて、プロフィールを引っ張り出して客観的に語れる。身長147センチ、体重38キロ、スリーサイズが76-55-79と公式ではデビュー時からそう示している。この数値はまったくサバを読んでいないが、法子は二次性徴の終わりきっていない年頃だ。

 彼女のデビューからそれなりに経ったいま、スリーサイズのほうはあまり当てにできないかも知れない。

 

 ふだんの法子は、同年代の少女や同僚アイドルと比較すると活発な振る舞いをするたちで、いまの法子は、奇妙なほど静かだった。俺は立ち尽くしたまま法子を見下ろしているが、彼女の寝息は聞こえない。いつもはポニーテールに結んでいる例の長髪は、テーブルだけでなく彼女の顔やうなじや肩も半分ほど覆い隠していて、寝息を立てるときの肩の浮き沈みが見えない。

 俺はしゃがみこんで視線を下げてみる。法子はぶかぶかのワイシャツを羽織っている。シャツの白が、法子の赤みがかった髪に絡みつかれていて、白が土壌で赤がそこから養分を吸い上げる植物のように見える。まだ法子の寝息は聞こえない。あまり静かだから植物などという連想をしてしまったのか。もし法子がちゃんと呼吸をしているなら、胸や腹から息づきが見えるはずだが、ぶかぶかのワイシャツに覆い隠されてしまっている。

 

「法子、寝るならちゃんとベッドで」

 

 法子のほっぺたとあごにキスできそうな距離まで近づいて、やっと彼女の寝息を感じ取れた。甘い匂い。法子が好んでやまないドーナツにはあまり使われない、果物のみずみずしさを帯びた甘さ。それを舐めしゃぶりたくなる衝動と格闘しながら、法子の体を起こそうとする。デリケートなところをなるべく避けて法子の体に触れると、肘まわりや膝まわりの細さが俺をとがめてくる。成人男性の俺自身と似ても似つかぬほど細い。

 この感触を抱えてしまえば、もはや公式プロフィールの数値など思い出す意味もない。

 

 そう葛藤しながら法子を抱き起こして気づく。

 この部屋でまともに寝られるスペースは、シングルベッド一つきりだった。

 

 

 

 

 2時間前、東京の冬空はすでに暗くなっていた。分厚い雪雲と、咳き込みそうなほどの濃度で降ってくる雪のせいで、フロントガラスを見てもサイドミラーやバックミラーを見ても、夕方か夜かわからない。

 バックミラーに映る法子は、後部座席から雪を物珍しそうに見ていた。

 

「東京って、雪、降るんだねー」

「たまにな。大阪は?」

「降っても積もらないぐらい」

 

 タイヤはすでに雪を舐めていた。

 いまシーズン最初に東京へチラついた雪は、天気予報の予測を超えて大降りとなり、雪に不慣れな都民の足を止めた。タイヤをいじるのを面倒臭がったドライバーが何人か事故を起こして、幹線道路を通行止めにした。電車も大きな路線で回送電車が線路をスリップして別の列車に追突したらしく、いくつか運休になっている。復旧のめどは立っていない。

 俺は法子の地方ロケに付き添っていて、きょうの夕方に彼女を女子寮へ送り届ける予定だったが、大雪を察して事務所に連絡を入れたところ「本日中に法子を帰すのは絶望的だろう」と返された。他のアイドルや社員がすでに試みていて、はかどっていないらしい。

 

「うわぁ、見てみて!」

「脇見運転は禁止だ」

「交通情報、赤と黄色とバッテンばっかり!」

「あぁ」

「こんなに電車も道路もいっぱいあるのに、みんな止まっちゃうの?」

「さぁな」

 

 電車や道路より人間のほうが遥かに多いから、とニュースで聞いた。

 法子が生まれ育った大阪と比べても、東京は交通機関の余裕がまったくないらしい。鉄道網は相互乗り入れなどでつながっていて、どこか主な路線が止まれば、振替輸送をしても他の路線で受けきれず詰まってすべてが止まる。道路だって、東京に出入りする車両の大半は物流トラックだからかそうそう止められず、雪が降っても走り続け、どこかが事故った瞬間に流れが詰まってすべてが止まる。

 

「プロデューサー」

「静かにしててくれないか」

「疲れてるんだったら、ちょっと休憩とか」

「雪」

「えっ」

「不慣れなんだ、雪道」

「じゃあなおさら」

「下手に止まると、そこで足止め食って車中泊だ」

 

 言っては見たが、出来ない相談だった。

 営業車に車中泊の備えはなかった。それで寒さに耐えようと暖房つけっぱなしにすれば一酸化炭素中毒まっしぐらだし、そもそもいまの東京で車中泊できる駐車スペースが見つけられるだろうか。

 

「じゃ、じゃあ、プロデューサーはどこに向かってるの」

「俺の家。東京のハズレだから、なんとか行けそうだ」

「……わぁお! 楽しみ~♪」

「すまんな」

「なんで謝るのさ」

「面白いものはないぞ」

「プロデューサーと一つ屋根の下ってだけで、あたし、どっきどきだよー? なーんてっ」

 

 それきり法子は、俺を気遣ってか口をつぐんだ。

 でも、バックミラーに映る法子の顔はニマニマとだらしなく緩んでいて、気が散ってしょうがなかった。車を走らせていた道が、もし使い慣れた辺鄙な通勤経路でなかったら、間違いなく事故っていただろう。

 

 

 

 

「ひゃーん♪ きょうは参ったねぇプロデューサーっ!」

「風呂、沸かしてあるから入ってこい」

「えっ用意よくない? プロデューサー、もしかして……」

「うちは外から沸かせるの」

 

 俺の家には法子の着替えがないので、途中でドラッグストアそばに車をつけて法子に買いに行かせた。雪だけでなく風も強くなっていて、案の定、店と車の往復だけで法子は服を濡らしていた。

 停車中、スマホのアプリでお湯はりと浴室暖房をさせておいた。洗っておけば勝手に閉栓してお湯をためてくれる。大家さんだか運営会社だかが「これ着けとくと成約率上がるんですよ」って自慢していた給湯器だ。それを聞いたとき、俺は「帰りが遅くなりがちな辺鄙な土地のせいだろう」と思ったが黙っておいた。

 

 なんとか、ぶつけたりぶつけられたりせず法子と家までたどり着けてホッとする。気が抜けて、腹が減っているのに気づく。時計を見れば夕食時を過ぎていた。だるい手足に鞭打ち冷蔵庫を開ける。

 

「うーん、ドーナツ、ないんだぁ」

「風呂は?」

「すぐ入るから」

 

 法子も空腹らしく、俺の背後でがさごそやっている。

 

「……ちょうどいい、何か作るけど、食べられないものは?」

「うーん、あたし、ニガテなものあった気がするんだけどなー」

 

 法子はこっちに寄ってきて、俺が開きっぱなしにした冷蔵庫内を見つめていたが、

 

「この中には」

「ないでーす!」

「じゃあ作っとくから着替えて風呂入ってろ」

「えへ、至れり尽くせり……ありがと、プロデューサーっ」

 

 シャワーの水音の聞こえ具合で、自室の狭さをしみじみと感じながら、メシに取り掛かる。

 湯を沸かす。にんにくの皮をむいて潰して鷹の爪の種を抜いて刻む。ナスを切って皿に乗せてオーブンレンジ600ワットへ。玉ねぎも皮をむいてみじん切りにしてフライパンを火にかけてサラダ油4周ぐらい引いてさっさとにんにくを放り込む。朝食用だったベーコンを引っ張り出す。

 

「ふんふんふ~ん♪ がーめんのなかーのおんなのこー♪ かわいすぎー……♪」

 

 水音を伴奏に従えるように、法子の鼻歌が聞こえてくる。一人住まいに愛らしい来客がいると実感させられ、テンションが浮かれてベーコンの切り方が荒っぽくなるがベーコンなので気にしないでフライパンに放り込む。鷹の爪と玉ねぎも放り込んで炒めて、レンジから柔らかくなったナスを取り出してそれも炒めて、最後に缶詰のホールトマトを潰して混ぜて塩コショウコンソメ。匂いはすでに芳しい。

 村上春樹あたりの「僕」ならちゃんとここで醤油だの砂糖だので味にまとまりをつけるところだが、うちにあるのは麺つゆなのでそっちを少しだけ垂らす。火を消してソースを冷ます。

 

「結んで束ねて、一人分を一束にーっ……ははっ」

 

 つぶやきながら、一人暮らしの友・ポポロスパを二束引っ張り出す。そういえば子供の頃は耳に残るぐらい聞いたのに、最近とんと聞かなくて続きが思い出せない。まぁなんでもいい、うまそうな気分なだけだ。

 

「……ん~ん~、ほっぺが落ちちゃう、とろけちゃう~」

 

 冷ましている間に沸騰しすぎたお湯へスパゲティを入れて茹でて、茹であがりそうになったらまたソースを火にかけて、熱さを取り戻したソースに茹でたてをお湯から上げて混ぜて軽く炒める。

 できあがり。

 

「ちゃ~う、ちゃうちゃう――」

「――ちゃ~みんぐ、く~っき~んぐっ♪」

 

 法子の声は、背中に飛びついてくるようだった。

 

「ゴキゲンだねぇ、プロデューサー♪」

「……法子」

「ちょっと子供みたいだけど、あたしは可愛いと思うよ!」

 

 ツインテールをほどいた湯上がりの法子が、いつも俺の使っているライトグレーのバスタオルを巻いてこちらを見上げていた。顔つきだけはいつもどおりなのに、それ以外がひどく大人びて見えた。

 

「服、服を着なさい」

「はーい!」

 

 キッチンから追い返すのがせいいっぱいだった。

 

 

 

 気を取り直して、少し香ばしくなってしまったスパゲティを皿に取り分けて持っていくと、法子がテーブル脇から立ち上がって、

 

「わーい! お待ちかねのおゆはん! プロデューサー、ありがとっ!」

 

 法子はぶかぶかのワイシャツを羽織っただけで、袖をひらひらさせながらパタパタと拍手で出迎えてくれた。

 俺は危うく皿を取り落とすところだった。

 

「彼シャツっていうんだよねー。ゆかゆかが教えてくれたの!」

 

 ささやかな夕餉を、法子は「おいしいよー♪」と笑顔で完食してくれた。

 そうだろう。作ったときはかなりの自信作だったんだ。

 俺も法子といっしょに食べた。味はまったく記憶に残っていない。

 

 

 

 

 法子が洗い物と洗濯を引き受けてくれるといったので、その間に今度は俺が風呂に入った。

 法子はあっさり洗い物を済ませたらしく、自分の着替えを俺が溜め込んでいたふだんの洗濯物と一緒くたに洗濯機へぶち込むようすが見えた。

 風呂場のスライドドアごしにそれを察した時、止めようか迷ったが、俺が言葉を思いつく前に洗濯機が音を立て始め、くもりガラス越しにぼやけた法子の姿も消えた。

 あとは法子の残り湯を意識しないように体を洗うのがせいいっぱいだった。

 

 

 

「それじゃ、絶対に風邪ひくだろ、法子」

 

 そうして風呂から上がってみれば、狭く侘びしくむさ苦しい我が家のリビング兼ダイニング兼寝室で、椎名法子がうたた寝している。座布団に腰を下ろしたまま、小さなテーブルに突っ伏している。

 テーブルは本当に小さい。さっき俺と法子のスパゲティ2皿を載せていた時も窮屈そうだった。いまは、法子の肩胛骨ぐらいまでの丈がある長髪によって、天板の半分くらいを覆い隠されている。

 

 法子の髪を傷めないように、柔らかく温かい素肌に触れないように、甘い匂いを吸い込まないように、彼女を抱き起こす。

 この部屋でまともに寝られるスペースは、すぐそばにシングルベッド一つきり。俺が寝るのにちょうどいいサイズなので、法子をどう寝かせてみても俺の寝るスペースは残らない。

 

 法子は、ふだんはミドルのポニーテールで活動的な印象を与えてくるが、いまはしっとり濡れた髪を下ろしていて、シルエットの印象はだいぶしとやかに塗り替えられる。隙だらけの寝顔は、大人っぽいとも子供っぽいともとれる。閉じられたまぶたからすらりと伸びるまつげは実年齢よりだいぶ色っぽい。ふっくらとしたほっぺたは赤く色づいていてあどけない。薄く開けられたくちびるは……どうだろうか。

 

 法子を眺めているうちに走った身震いは、まず湯冷めのせいかと思ったが、汗が目に入ってきて思い直す。

 暖房の効きすぎかと思うほど暑い。心臓の音がじりじりと騒がしく、鼓動が胸ではなくノドあたりで拍っている気分になる。洗濯機ももうすすぎや脱水まで終えてしまったらしく、雪も風も静かな夜。この部屋は繁華街から遠くて、いつもの独り寝でもこのぐらい静かなのだが、そのせいでいつもと異なる法子の存在がくっきりと浮かび上がってくる。

 

「ん、ふ……んんっ……」

 

 法子のくちびるがかすかに開いたり閉じたりして、前歯の先端のぎざぎざしたところが見え隠れする。このままでは口から呼気が通ってしまって、ノド粘膜が乾燥してしまうかもしれない。けれど俺の指で法子のくちびるを閉じてやるのは、おせっかいで軽はずみがすぎる。

 

「んふ……ぅ……すぅ……んっ……」

 

 法子をベッドに載せたのだから、もう彼女に触れる必要はない。あとは俺の寝床をどうにかして捻り出すだけ。

 にもかかわらず俺は、法子の寝姿を見下ろしたまま。

 

 理性を振り絞って法子のくちびるから目をそらす。相変わらずほっぺたは赤いまま。『えへへへっ。あたしのほっぺた、もっちもちでしょっ?』などと触らせてもらえそうだったことを思い出す。

 法子の頬のふくらみを人差し指でつつく。指の腹が皮膚1~2枚ぶん沈むぐらい。肌は髪の毛に輪をかけてしっとりと指先に張り付いてくる。子供のいたずらのように2度3度つつく。法子のほっぺたがぷるぷると反発して、俺の脱力した指関節がくにゃりと曲がる。

 それで法子が目覚めて、「もー、子供みたいないたずらまでして~」と口をとがらせれば終わり。

 そうだ、これは子供のいたずらなんだ。

 

「んくっ、う、っ……ん、んー……っ、すぅ、んっ……」

 

 法子の首や両鎖骨の間あたりが、ボタンを上から2つ開けたワイシャツで覆いきれていなくて、緊張を孕んで震えるのが見える。とうとうお目覚めかと思って人差し指を引き剥がしたが、俺の予想と裏腹に、彼女はまた小さく消え入りそうな寝息に戻ってしまう。

 もう一度、人差し指を伸ばす。ふわり、とした柔らかい感触。ふっくらと温かく気持ちいい。

 もっと触っていたい。

 

「あまり隙だらけだと、何をされるかわからないぞ……? なにせ俺は『子供みたい』だからなぁ……」

 

 自分に言い訳してみるが、生まれてから今夜に至るまで、俺は寝ている女の子の体に勝手に触った経験など無い。

 ランドセルを背負う前、『お昼寝の時間』で寝付けなくて退屈してこそこそ保育室だかなにかの部屋を這いずり回っていたとき、女の子の寝顔を見た気がするが、どんな顔だったかよく覚えていない。

 そのときから、寝ている誰かに触れるのはためらわれる。いまだって法子に触れる指はおっかなびっくりだ。

 

「うぅ、んぅ……」

 

 寝顔は見てはいけないもの、寝姿は触れてはいけないもの。

 誰に教わったか忘れるほど昔からそう植え付けられている。睡眠は誰にでも訪れる隙で、睡眠中の誰かに手を出してしまえば、自分もいつか誰かに手を出されるなんて妄想が湧いてしまう。

 

「法子、のりこ……っ」

 

 現実は俺の妄想よりさらに悪い。

 法子は小中学生のころの俺よりずっと行儀が良いから、睡眠中の他人に勝手に触れた経験などないだろう。あったとしても正当な理由があってだろう。

 いまの俺は、なんの理由があって法子の肌に触れているのか。

 

「夜に男の部屋で二人きりにされて、よくもまぁそんな屈託なく寝られるよなぁ」

 

 俺は親と同類の保護者だと思われているのか。それならこうもスヤスヤできるだろう。あるいは法子に異性として見られていないのかも知れない。さっき『子供みたい』と言われたことをけっこう引きずってしまっている自分に驚く。

 

「彼シャツを知ってるんだから、男の部屋で寝る意味、知らないわけないよな。なぁ法子」

 

 俺は両手の人差し指から小指までの4本で、法子の両頬をくすぐった。くすぐっただけなのに法子の肌はもちもちと弾力を伝えてくる。法子が起きてしまったらどうしようと恐れつつ、法子が起きてくれと願ってしまう。起きてくれ。いま起きてくれたら子供じみたいたずらで済む。

 

 寝るという動詞は時に性行為の暗喩として使われるが、誰かと二人っきりの密室で寝ることは、誰かと二人っきりの密室でセックスするより、ひょっとするとハードルが高いと思う。セックス中は、抵抗や拒絶が不可能ではない。寝入ってしまうとほぼ不可能だ。

 

「あぁ、法子」

 

 法子の頬から手を退ける。指の腹に彼女の体温と柔らかさが未練たらしく残る。法子の寝息は耳を澄ましても聞こえないまま。俺自身の心臓はうるさいままなのに。

 指先から法子の体温が伝わってこなくなって、目の前の法子が現実感を失う。目に法子の寝姿は写っているが、彼女の姿なんてアイドルとして全国ネットでばらまかれている。俺は視覚以外でも法子を知っていて、目に映るだけだとかえってビデオや写真で彼女を見ているような疎外感にかられる。

 

 法子のワイシャツの着こなしはラフで、ボタンが上から2つ外されていて、襟やボタンや前立てから彼女の匂いがこぼれてくる。すううぅ、と深呼吸すると法子の甘くほのかに酸っぱい肌いきれで満たされる。甘さは甘えで、酸っぱさは恥じらいかもしれない。俺が法子の匂いを盗み嗅ぎしているのに、むしろ俺が法子に呼吸器を通して胸や頭を侵食されている……気がしてならない。

 ワイシャツのボタンを外して前立てをはだけてやったら、もっと法子の匂いを味わえる。

 

「起きないと、法子の……嗅いでしまうぞ。いい匂いだから、もっと、嗅ぎたい……っ」

 

 無意味な質問だと分かっていても投げかけてしまう。起きていなければ聞こえないんだから返事もできない。

 法子が起きて俺を止めてくれることへの懇願。あるいは、俺が「起きなかったからいいんだ」と自己正当化するためだけに口走ったささやき。

 脱がせてしまいたい。俺にとって馴染み深い綿だかポリエステルだかの白が、法子の匂いを封じ込めているというだけで怨敵じみて憎たらしい。なぜお前がそこにいる。

 

「法子……いくら着替えがないからって、こんな」

 

 ボタンを一つひとつ外す。毎日つけたり外したりしているはずのボタンがなかなか外せない。いつもと違ってシャツに正対し手を伸ばしているからか。ボタンを一つ外すたびに、押さえつけられていた法子の匂いを浴びせられ、手が止まる。色香という言葉があるが、匂いを嗅いでいるだけのはずなのに目がチカチカして、「ああ法子の肌の匂いってこんな色がするんだ」と共感覚じみた感動が湧き起こる。法子の寝息さえも見えそうだ。

 

「っは、ふ、ぅ」

 

 法子は、首元の第一・第二ボタンは外しているくせに、それより下は第七ボタンまできっちり止めていた。

 第六まで外すと法子のへそ周りまで見えそうで、ゆっくりとシャツを両側へとはだける。

 

「……きれいだ、法子」

「ん、ぅ、ん……っ」

 

 法子が聞いているはずもないのに、俺は何か絞り出そうとして、やっとひねり出した声は、起きているときの法子にはくれてやったことのない声色と単語。法子のシャツをはだけたのに、自分のタガを外してしまったような気分で、とても気分が軽い。俺は軽くなりすぎて、法子の体温で蒸発したり、法子の寝息で吹き散らされたりするかもしれない。

 法子の仰向けのおっぱい。

 ブラに包まれて寄せてあげられ、寝息に合わせて曲線がかすかに上下している。法子のおっぱいを包んでいるブラは、ドラッグストアで慌てて買ってきたものらしく、機能面はともかくとして、白く素っ気ない色とデザインで、なんだか申し訳なくなる。

 

「ごめんな、慌ただしくって、服も下着も用意させてやれなくって」

 

 まぁ、法子が好みそうな可愛らしい下着を俺が家に用意していたら、かえって気持ち悪がられるだろうが……。

 

「でも、きれいだよ、法子」

 

 法子の胸やウエストは、事務所の高校生以上のアイドルと比べればほっそりとしているが、湯上がりのぽわぽわとした血色の良さや、濃密な甘酸っぱさのおかげで、心細さは感じさせない。きゅっとしまったくびれは、もし法子が二人いても俺の腕でいっぺんに重ねて抱きしめられそうだが、そんなことをしたら呼吸器を通して俺の体内をすべて法子で塗りつぶされる。

 

「細いなぁ。ドーナツ以外、ちゃんと食べてるか……?」

 

 法子のウエストを手のひらでさする。ほっぺたより温かさはじんわりとおだやかだ。肋骨のなめらかな硬さと、筋肉か横隔膜の動きが肌越しに伝わってくる。細くてもちゃんと筋肉や内臓があるんだな。そのなにかの動きで、法子に抗弁された気がする。法子が俺のいたずらに気が付いてるんじゃないかと、頭がカッと熱くなる。

 でも手は法子から離せない。

 

「いっぱい食べないと体がもたないぐらい、仕事してくれてるか。法子は」

 

 プロデューサー視点だったら、法子のウエストはとても悩ましく、とても楽しませてくれる部分だ。

 ふつう、法子ぐらいの年齢のアイドルが、背伸びして女らしさを出そうとすると、バストやヒップは年上のアイドルに押し負けるし、太腿だってまだ細いし……となって、うなじや鎖骨を見せるとか、くびれやヘソをチラリと投げつけてやるとかが多い。

 

 ここから俺と法子の手腕が問われる。

 法子のウエストはキュッとしまっていて、素人ならどう切り取っても『画』になると思いがちだ。でもじゅうぶんに魅力を引き出そうとすると神経を使う。

 ひねり過ぎると鎖骨が浮いた陰が目立ちすぎて不健康な見栄えとなり、法子のぽわぽわと温かそうな血色とアンバランスになってしまう。けれど捻らないとポーズにケレンが足りなくて地味になってしまう。この2つの間をどうするかが基本だ。あとは衣装のデザイン、ポーズは立ちか座りか、寝転がっているか、背景、光源、写真の掲載のされ方、エトセトラ……で具合が変わる。

 そうやって神経を使うのが、法子のことを好きな担当プロデューサーとして、楽しくて仕方がない。

 

「ん、んぁ、ふ、ぁ……ん、んぁ……っ」

 

 プロデューサーとしての楽しみの記憶が、この手のひらへ吸い付いてくる法子の体温に熱されて、ふつふつと燻っている。手を離さなければ、さっきのトマトスパゲティと違って、まずい焦げ方をするだろう。

 

「まぁだ起きないのかよ、法子」

 

 法子のウエスト。プロデューサーの立場では、見ることはできても触ることができないはずだった領域に触れている。それで俺は満足するどころか、法子を求める欲望が増すばかり。

 

「ここまでされてるのに起きないなんて、よっぽど疲れてるのか。心配になってくるんだが」

 

 いま法子が目を覚ましたら、俺は未成年者への淫行でしょっぴかれる。その現実から逃避するのに、法子を心配するのがちょうどよい。

 

「『子供』だって、おっぱいにいたずらぐらいするぞ。法子はそういう悪ガキに絡まれたことあるか? ないかな」

 

 法子へのあてつけで子供のふりをしているうちに、なんだか法子が無性にお姉ちゃんに見えてくる。自分が少年がえりしていく。大人の俺が抱えていた劣情が、熱量そのままでガキ気分の俺へ流れ込む。

 悪いことをしたくなる。いよいよおかしくなっていく。

 

「法子お姉ちゃんっ……なーんて、マセガキはしおらしげな顔をしてやってきて、不意打ちで……」

 

 幼稚園児が先生にいたずらするように、不意打ちでむんずと掴んでやろうとして、アンダーバスト側のブラ生地をがりがりと引っ掻くにとどまる。無邪気におっぱいを掴んで揉むなんて指が震えてできない。こんなドラッグストアで売っている千円も出せば足りそうな安っぽいブラが、法子の肌にくっついているだけで俺を威圧したり誘惑したりする。

 指を広げなおそうとしたら、勝手にノドがごくりと鳴る。

 

「あ、ぁ、うぅ……法子……っ」

 

 俺がもし、体まで年長さんぐらい――それこそ、母親といっしょなら女風呂に入れなくもない年齢――まで退行できていたら、手もちっちゃかったから、法子のおっぱいは乱暴にわしづかみされてもしなやかに跳ね返してくれただろう。

 本当の法子のおっぱいは、俺が五本の指を広げれば、片手で片乳ずつすっぽり収まってしまう膨らみだ。

 

「……やわらかいなぁ、法子のおっぱい……」

 

 指先が確かに触れているのに、感触を味わうどころじゃない。法子に集中しようとして意識をそらし続けていたペニスが、触れてもいないのに痛むほど勃起している。触れているという事実だけでイキそうになる。

 

「あぁ、法子、おっぱい、いいよ……っ」

 

 指と手のひらで法子の両乳を包み込む。ブラ越しなのにふわふわする。指先が敏感になって、肌のぬくもりどころか寝汗の味まで拾い上げられそうだ。

 

「ぁ、ん……んん、ぅ……」

 

 悩ましげな寝息の乱れ。いつもはコロコロとイチゴミルクの飴玉でも転がしてるような幼く甘ったるい声のくせに。裏切られた気がしてブラを乱暴にずらす。

 

「の、法子……!? 乳首、勃って……」

 

 やけっぱちの勢いはすかさずくじかれる。

 法子の乳首は、小さくて、肌色に溶けそうなぐらいうっすらとしたピンクで、見た目では年相応。

 でもブラをずらした瞬間の指先で気づいてしまう。控えめながら、明らかに勃起している。

 

「ん、ふ……ぅ、ふ、ぅ……うぅ……っ♥」

 

 乳首が勃起する仕組みというのは、ペニスやクリトリスが勃起するのと同じように、そこに血が流れ込んでパンパンに膨らむせいらしい。心拍数が上がって血流が増えて……法子は興奮しているのか。何も知らない風な寝顔しておいて。

 コリコリした乳首は、俺が指先で触れると、ツンと可愛らしく押し返してくる。もっと、もっととせがまれて、カリカリと引っ掻いて、きゅうきゅう引っ張る。がまんならなくてくちびると舌でむしゃぶりつくと、胸にこもった匂いは甘ったるいのに、舌にくる味はかすかな塩気で、感覚をかき回されて現実感がなくなる。

 

「んぁ、ふ、ぁ……んぁ、んんぅ……っ♥」

 

 法子が乳首を勃起させて発情している。こんな半分ぐらいしか大人になりきっていない体のくせに。

 ちゅぽちゅぽ、べとべとと俺の唾液で濡らしてしまっている法子の乳首やおっぱい。いまにセックスして孕んで出産してこれと同じぐらいの勢いで母乳を垂らしてヌルヌルにするのだろうか。

 

「ぅ、ふぁ、は……ぁ……っ♥」

 

 手も動かすと乳もぷるんっと揺れて俺を誘ってくる。生意気なようで健気なようで、そんな矛盾した勃起乳首を指と舌でこね回すと、切れ切れの甘ったるくも熱っぽい声が響く。

 

 ……声?

 

「ぁ……ふ、ぁ……ぅ、ふ……はぁ……ぁ……っ」

「法子……?」

 

 顔を上げて法子の顔を見下ろす。

 法子は薄く目を開けている。薄すぎて視点がどこに向いているかわからない。ほっぺたはリンゴのように真っ赤で、くちびるはいつの間にかきゅっと閉じられていた。ごく小さな汗の雫が、あごや首筋を滑って曲がりながらベッドへいくつか落ちた。

 

 これで、本当に起きていないのか。あるいは……。

 

「法子、起きないと、もう……」

 

 最後の第七ボタンを震える手で外す。それからワイシャツの裾をまくりあげれば、法子の秘所が、俺の前に曝される。ショーツがさっきのブラぐらいの存在感なら、もう俺を押し留めてはくれまい。

 ワイシャツをゆっくりとはだける。すらりとした太腿が眩しく、まだ肉付きは薄いが骨盤は女らしく広がっているお尻の曲線がすべて見えて――

 

「……『起きないと、もう……』ねぇ。なーにをしちゃうのかな、プロデューサー?」

 

 ――俺の手首に絡みついた法子の指は、おっぱいと落差を感じるほど細く小さかった。

 

 

 

「あー、いけないんだー! ……ふふ、寝ている女の子に、いたずらしちゃうなんて。プロデューサーって、悪い子だったんだねぇ」

 

 法子は寝転んだまま俺を見上げていたが、彼女の半目は俺を見下ろしているように見えた。

 まるでエッシャーのだまし絵に引きずり込まれた気分だ。

 

「そーそー、静かにね。夜だもんね……動いちゃ、だめだよ。あたしがおとなしくしてたみたいに、ね」

 

 ゆるゆると肩を起こした法子が、顔を近づけてささやいてくる。

 いたずら盛りのフリが完全に消し飛んで、あとは理性のへし折れた大人だけが残る。

 それでも欲望に任せて法子を貪らなかったのは……。

 

「プロデューサー、すっごくえっちな声とか触り方とか、してたねぇ……いつもとぜんぜん違うじゃん。違うのは……これかな? これがイケないのか、これがー!」

 

 法子が、俺の勃起ペニスを指先でつついているらしい。どの指でどんな具合か見ようとしたら、大きく見開かれた法子の瞳が視線を突き刺してきて、俺の頭と首は中空に磔とされた。

 

「おっきいなぁ……あたしの指で、にぎにぎできるかな? さきっぽだけなら、指で輪っかを作れば……ドーナツみたいなんて思わないでね? ドーナツはこんないやらしくないもーん」

 

 亀頭からカリ首まで先走りを塗り拡げられながら、クリクリと優しくしごいてくれる。ちゅこちゅこ、ぐちゅぐちゅと淫らな刺激と響きがする。

 

「あ、ぅう、のり、こ……っ」

「そんなしんどそーな顔しても、やめてあげないよー?」

 

 けれど視界は法子のニコニコした明るいトーンの笑顔ですべて占領された。

 法子はアイドル活動でドーナツ好きをアピールしていて、地元発祥のドーナツ専門店チェーンとコラボしたこともあった。ライブでファンにプレゼントするハンドサインも、定番のハート型ではなくドーナツの丸形が多い。

 そんな手付きが、俺の亀頭をしごいている。濡れた鈴口まわりは優しく、裏筋やカリ首をならすようにこすってくる。

 

「やめてーって顔されると、やめたくなくなるんだー。いま気づいたんだけど、あたし、けっこうあまのじゃくかも……『起きろ』って言われると、起きたくなくなったし、ね……」

 

 法子に目線で貫かれたまま、俺の脳髄は興奮と戦慄でめちゃくちゃに揺れる。

 法子は、とっくに気づいていたんだ。

 

「こしゅ、こしゅ、すりすり……やさしー具合がすき? それとも……こりゅこりゅ、ずりゅずりゅって、強くしてあげよっか」

「あ、ぁ……それ、はぁ……っ!」

「ふんふん、そーかそーかぁ。これがイケないんだね、やっぱり」

 

 法子は俺のリクエストを聞く素振りを見せながら、俺が声を上げる前に手コキ愛撫の具合をひらひらと変えて、それだけで俺は踊らされる。声も出ない。息さえままならない。手玉にとられているとはこのことだ。

 

「間をとって、しゅこ、しゅこっ、ぐらいがいいかなー? あたしがどう触っても、びくびくして、ヌルヌルしちゃってるから、わかんないよー」

 

 法子の手コキは、けっして激しくはない。射精を急かしてこない。ペニスを射精へ追い込む力だけだったら、自分でしごいていたほうがよほど大きい。

 それでいて快感は、法子から与えられるものが段違いに大きい。男性器を支配されている。こんなちょっと前までランドセルが似合っていた少女に。

 

「ふふー、顔はつらそうなのに、こっちは……嬉しそうだねー。あっつくて、かたくて……不思議だなぁ。嬉しい? プロデューサーは……」

「あ、ふぁ……う、うれ、し……法子、の……て、が……」

「そうかぁ! あたしもうれしーよ? 嬉しいの、手で渡してもなくならないなんてっ」

 

 そういえば、法子の初めての宣材写真は、ドーナツを手渡すポーズからカメラに収めた。最初、さすがの法子もドーナツといっしょに映るつもりはなかったようだが、俺やカメラマンさんとの雑談のなかで、法子が小さい頃の写真を思い出したのをキッカケに、ドーナツを手に持たせた。

 

……『あたしの小さいころの写真、いつもなんか持ってるポーズばっかりだった!』

 

 いまさらながら、アイドル・椎名法子と淫行に及んでいる、という状況が背筋を突き上げてくる。

 

「プロデューサーは、ココに、もっときもちいいの、ほしい? ねぇねぇ、ほしーい?」

 

……『あたし、あげたがりだったのかな……楽しいものやおいしいものって、つい人にあげたくなっちゃうもんね』

 

「んふ……むむぅ、こっちのヌルヌル、しょっぱいなぁ。ファースト・キスみたいにレモン味、とはいかないんだねー」

 

 法子が、俺の先走りで濡れて糸を引く指を、くちびるでくわえて苦笑した。

 エッシャーのだまし絵があどけなくほころんで、俺はやっと息をつく。

 

 

 

「プロデューサー、さっきあたしに『きれいだ』って言ってくれたね」

「……あ、ぁあ。言った……聞いてたのか」

「お仕事のときより、ずーっと気持ちがこもってた風に聞こえたけど、気のせい?」

「それ、は」

 

 法子の言うとおりだった。

 別にプロデューサーとして仕事中だって、褒めるときは心から法子を褒めている。

 ただ、仕事中は抱いちゃいけない気持ちにフタをしていて、いまはそのフタが外れているだけ。

 

「これがイケないのか、これがー。それとも、これがイイのかなー?」

 

 法子の投げキス。アイドルらしく堂に入ったそれが、先走りで濡れたまま、俺に……俺のペニスにぶつけられる。

 

「あたしのおっぱい、ちゅうちゅう吸ってくれちゃったからね……仕返し、しちゃうよっ」

 

 法子の顔が、ふたたび俺に串刺しの視線をくれながら、ひたひたと亀頭ににじりよって、舌先と半開きの両くちびるで包み込んでくる。

 

「ぉ、うぉ、ぉ……!?」

「むちゅ、あーむっ……ふふっ、やっぱりしょっぱい。へんなにおいもするー。せっかくお風呂、入ったのにねー」

 

 舌先が、鈴口をこじ開けるようにこすってくる。柔らかく、温かく、優しげな感触なのに、それが有無を言わさず強引にペニス快楽を煽り立ててくる。

 

「あ、もしかして……いまのやりかた、好きだった?」

「う、ぅう、法子、そんなこと、は……」

「好きじゃなかったってんなら、やめちゃおうかなー」

 

 法子の手玉に取られたあとは、法子の舌先三寸で振り回される。

 

「あ、ぅ……! す、す……」

「すー?」

「すき、だ……法子に、そう、してもらうの……」

「イケないコなのに、素直なんだねーっ! じゃあ……んじゅ、りゅ……がまんしないで? がまんしても、あたしにはわかっちゃうから……ふふ、ちゅぴ、れろ、はぷ……ぢゅーっ」

 

 ペニスはカチカチに固く勃起しているのに、法子の柔らかいフェラと手コキに包まれると、亀頭から根本までまったく抵抗できない。めちゃくちゃに濃密な快楽が下腹部から脳ミソまでノンストップで浸透してくる。柔らかい材質より硬い材質が音をよく伝えるように、ペニスが勃起し筋肉が緊張して固くなればなるほど法子からの快楽が生々しく伝わってくる。

 

「……根本、指できゅっきゅってしながら、先っぽはベロでされるの、すき?」

「す、すきだ……法子の、が……」

「でも、そうやって、すきすきーっ♥ ってされすぎると、男の人って、出しちゃうんだよね」

「ぁ、ああ……っ、法子……?」

「せーし、出しちゃうんだってね。赤ちゃんのもとになるやつ。保健体育でやったよー」

 

 いったい近頃の大阪の中学生は、どんな保健体育の授業を受けているのだろうか。

 

「このまま出しちゃったら、赤ちゃん作れないねー。まー、しょうがないか。プロデューサー、さっき赤ちゃんみたいにあたしのおっぱいちゅーちゅーしてたもんね」

「あ、ぁあ、ぅう……」

 

 法子は明らかに俺をからかっていた。『子供みたい』がからかい半分なら、これは99%からかいだろう。

 ふだん年長の保護者づらを見せていた相手に赤ちゃん扱いされて、屈辱感で本当に胸が張り裂ける。

 

「……やっぱり、イケないこっちのほうが、素直だなー。それじゃ……あたしもちゅーちゅーしてあげるっ」

 

 そして、その屈辱感にふさわしく情けない自分を、そのまま法子が受け入れてくれる。人間、切羽詰まった時に逃げ道があると、じゅうぶん立ち向かえる脅威からも逃げてしまうことがあるという。

 俺も安堵感に沈むまま。もがこうとも思えない。

 

「はぷっ……わぁ、さっきよりびくって……れちゅ、むあっ、ぇぶっ、ふぅー……」

 

 法子の口腔がペニスを飲み込んでいくのを見て聞いて粘膜で感じていると、男としての根源的な欲望すべてまでが法子に飲み込まれていく気になる。安堵感がますますズブズブと俺を溺れさせる。

 

「法子、きもち、いい……っ! それ、ほんとうに、きもち、ぃ……ぁあぁっ!」

「んむ、もっ、ぷふっ……出しちゃおっか? お行儀はよくないけど、あたしの手と、口で……」

 

 法子の刺激は、ゆるり、ゆるーりと緩慢になった。けれど刺激はどんどん熱く深くなっていく。

 裏筋か、鈴口か、カリ首か、弱いところの弱い責められ方を見抜かれている。ペニスそのものが熱と快楽になってはち切れるのではないか?

 

「う、うぅううぅうっ……!」

「出ちゃいそうなときは、言ってね」

「え、法子……?」

「飛び散ると、イケないからね……って、もう、そんな余裕もなさそうかな」

 

 ぱっくりと飲み込まれる。吸い付かれる。法子には似合わないはずの、頬をすぼめて男性器に吸い付く下品なバキュームフェラ。

 

「ぁああおっ、あぅおっ、はおっ!」

 

 俺が、商売っ気からとはいえ、美しく育ててきた少女が、淫らな奉仕で俺を追い詰める。いや、育ててきたなんて思い上がりだった。法子は、俺の知らないうちに、こんな……。

 

「ぃ、あ……ぁ、は……ぃ、ぃく――いくううっ!」

 

 イク、と叫びながら射精したのは、人生で初めてだった。

 精液を口腔にぶちまけられた法子は、眉をハの字にしかめつつも、くちびるを先走りで濡れた指先で押さえながら、んくっ、んくっ……とノドを鳴らして、精液を飲み下していった……。

 

 

 

 

「うーん。せーし、おいしくなーいー! プロデューサー、ごはんはおいしかったのに」

 

 精子がおいしかったら、いろいろとまずいだろ……という返事は、声が出ないままくちびるだけで消えた。

 

「それともー、満足するまで出し切らなきゃ、だめ? おっきいままだし」

「大きいのは、その……」

「その?」

「法子が、エロい、から……」

「プロデューサーがいやらしーからでしょー?」

 

 法子はぬらぬらしたままのくちびるで笑いながら、手振りで俺に寝転がるよううながした。俺が仰向けに寝転がると、やっぱりこのままおネムとはいかず、法子が俺の腰にまたがってくる。

 法子のワイシャツは第七ボタンまで外れていたが、ショーツはよく見えない。彼女の女性器あたりが、よりにもよって俺の勃起ペニスで邪魔されて隠れている。

 いや、もしかして、もう法子は下着を脱いで……?

 

「あたしのあそこ、見たかった? さっきも、すごい目で見てて、びっくりしちゃった」

「み、見たい……法子の、あそこ……っ!」

「どうしても?」

「見たいっ、法子の……」

 

 もう恥も外聞もない。

 

「見るのは、またこんどね」

「あ、ぁあぁあぁ……っ」

 

 法子の軽い却下に、俺は『あ』の音とともに魂が抜けていくようだった。エクトプラズムでも吐き出してしまってるんじゃないだろうか。

 

「そっちを見る余裕がないぐらい、気持ちよくしてあげちゃうから」

 

 法子が腰をあげて、俺のペニスにこすりつけてくる。かすかに「そうかな?」と思えるぐらいの薄い陰毛。クリトリスか、陰唇か、とろりとしているのに舌よりひっかかる粘膜。

 素股、だ。

 

「そーれ、そーれっ♥」

 

 法子は、体全体を小刻みにグラインドさせて、おっぱいや髪の毛先をふわふわと揺らしている。いや、法子が全身を使っているから小刻みに見えるだけで、俺のペニス――それと、おそらく法子のおまんこ――への摩擦は神経にびりびりと尾を引いて長く居座る。その上に、温かく不規則な次のグラインドが上塗りされ、射精欲が指数関数的に高まる。

 

「の、法子、ぉ……っ」

「なーに、プロデューサー?」

「い、いれ、たい……!」

「えー。こっちは気持ちよくない?」

「いやっ、そんなわけ、じゃ」

 

 もうそれは純粋な射精欲とは言えなかった。法子に口内射精して、快楽とともに彼女を汚す悦びを知ってしまった。その欲望をふたたび満たすには……。

 

「ふーん、やけに焦るんだねぇ……」

 

 法子は俺をあざ笑うかのように、俺の根本へぴったりとおまんこをこすりつけつつ、指で自分の秘所を開いて――見えない、どうしても――ぷっくりとした恥丘の弾力で抱きしめられ、こすられる。

 

「あっ、あっ、あっ……!」

「プロデューサー、もしかして童貞さん?」

「そ、それは……」

「滑ったフリして入れられちゃったら困るなーって。童貞さんなら、入れる場所がわからないから、安心して、こすこすーっ♥ てできるし」

 

 童貞だと認めれば、この『こすこすーっ♥』って、もっと、法子がしてくれ……俺の理性や欲望は、法子にとっくにめちゃくちゃにされて崩壊していたと思ったが、どうも違うらしい。崩された後、法子にあわせて作り変えられている。

 

「違うの?」

「お、大人をからかうのはやめなさいっ」

「童貞さんじゃないんだ? ま、それなら……」

 

 法子が、おまんこで俺の茎をくわえながら、腰を徐々にせり上げる。おまんこが、裏筋に、カリ首にこすられて、亀頭……もう少し、もう少しで、法子のおまんこが見られて、ペニスをねじこんで……。

 

「その代わりに、さ」

 

 法子のささやきが俺の首を捻じ曲げた。

 まるでアゴを指で掴まれたように、法子の顔を見上げさせられる。

 

「あたしを、プロデューサーの最後の女にしちゃうもんっ」

 

 ペニスを握られる感触がしても、法子の視線から顔をそらせない。

 にちゅ、ずぷり、つぷ。 擦れ合っている。手よりも熱く、ぬめぬめして、そわそわとせわしなくて、なまめかしい、ペニスを包み込む感触。きつく、ひくひくとうごめいて、きゅうきゅうと締め付けてくる。

 

「あっ……あぁっあっ……!」

「んぁ、ふ、んんっ……ほんと、もー、しょうがない、なぁ……♥」

 

 挿入してしまったと、はっきりと分かった。椎名法子と俺は、つながってひとつになっている。

 

 

 

「の、のりこ、のりこっ……!」

「あはっ……プロデューサーがそんな顔見せてくれるの、はじめてじゃない……? んふ、ふふ……♥」

 

 欲したものを、求めて、与えられた。赤ん坊の頃から変わらぬ充足、歓喜、安息……救い、だ。

 

「ゆっくりする? 激しくしちゃう?」

「えぅ、う、ふ……」

「あー、だからあそこ見んの『またこんどね』って言ったのにーっ」

 

 男にまたがってペニスをくわえこんでおきながら、法子はおまんこを手で隠す。女の淫らさと少女の恥じらいが二重写しになる。きっといましか見られない法子の艶姿だ。

 

「もう、プロデューサーなんかしらないもん、あたしが勝手にしちゃうもんっ。えい、えーいっ♥」

「ふぉ、ほ、ぉ……っ! 法子、ぉ……!」

 

 馬乗りになったまま、とすん、とすんと腰を上下させる。腰の動きは軽快なのに、ぐちゅ、ぶちゅと果実を潰したのに似た音が聞こえてくる。ペニスに腟内がねっとりとしゃぶられる。

 

「や、ぁ……あんっ、もー、こっちばっかり元気なんだからっ♥」

 

 営業車を運転していたり、夕餉を振る舞ってやったりしていたとき、俺は立場の上でも精神の上でもちゃんと法子の保護者だった。それがもう遠い。

 

「ご、ごめん、な……法子、俺は……」

「ん、くぅ……♥ って。ち、ちがーう! そういうときは」

「あ、そうだな。ありがとう、法子……」

「しあわせなときは、ありがとーっ! だよっ」

 

 慈悲を注いでもらっているのが、温かくて、自分が溶けていく。現在も過去も未来もあまねく照らしてくれるしあわせ。

 法子へ手が伸びて、抱きしめる。あまりの幸福感で、もう射精してしまったか……射精したかどうかもわからない。

 

「あっ、あっ、あっ……♥」

 

 法子の呼吸が、膣内とともにきゅっと細くなって、背中がびくびくと反れていく……法子の反応を腕と胸でも感じられる。やっぱり細い。でもしっかりと脈打っている。

 

「ちゅっ、んむぅ……ふぁ、んむっ……」

 

 なんのモーションもなく、くちびるを重ね舌先をつっついてくるキス。さっき俺にフェラして精液を飲んでたはずなのに法子のキスが甘酸っぱい。よだれで洗い流されてしまったのか。少女という生き物はいつもこうなのか。

 

「ちゅ、ちゅっ、んぅ……んぁ、ぁ、んーっ」

 

 舌先を吸って、前歯をこすってやって、それで法子が口を少し開け気味にしてくれたら、歯の裏や口蓋にも入り込む。彼女の肩や背中が、ぷる、ぷるっと緊張したように震える。

 

「プロデューサー……動いても、いいよ……♥」

 

 もうどこをペニスで突いたら、という感じだった。それは困惑ではあったがしあわせな困惑だった。ペニスと膣内だけで触れ合ってるんじゃないんだ。顔も髪も手も胸も腰も尻も足も触れるじゃないか。

 

「あ、んっ、んっ、んあっ……♥ ぎゅって、ぷろでゅーさー、ぎゅって、すきなの……?」

「法子が、ぁ……法子が、さ……ぁ、ぅううっ」

「うん、うん……っ♥」

 

 動くと言っても、腰を動かす気にならなかった。法子の奥にぶっさせるだけ深くぶっさしたまま、尻や足の筋肉を使って、体全体を揺する。もちろん法子が離れないように抱きしめたまま。

 

「んっっ、んあっ、あっ……! ふ、ふかい、よぉ……♥」

 

 奥底のポルチオに響いたのか、クリトリスがずりゅずりゅと擦れたのか、とにかく法子の敏感なところに強い刺激が届いたらしい。法子がびくびくと痙攣するわ、背中をそらして嬌声を漏らすわ。俺が抱きしめたままだから離れなくって、痙攣がまた刺激を呼んでしまう。

 

「は、ひぁっ……ふぁっ、あはっ……♥ ぎゅって、され、てぇ……っ!」

 

 それを繰り返していると、とろとろよりも、もっとねっとりした濃厚さが膣奥から溢れてくる。見えたわけじゃない。感じ取れてしまう。

 

「んふぁ……は、ぁ、あああ……ぁふ、っひぁ、っぁあっ……♥」

 

 法子のろれつが回らなくなった。ふぁああ、という熱く蕩けた吐息が俺の耳あたりにかかった。

 限界だった。

 

「い、いく、法子、ぉ……っ!」

「ぁ、んぁ、ぷろ、でゅーさ、あ……♥」

 

 ほんの数呼吸ぶんぐらいだけ、俺と法子の絶頂感というか幸福感の波打つ形が重なった。ただ呼吸とか心臓のペースが重なっただけかも知れないが、それでもよかった。

 そんな細かな符合を感じ取れるぐらい、法子が近くにいて、肌と粘膜と体温をゆだねてくれているんだ。

 

 

 

「……あったかいね……ふふ、あははっ……♥ なんだか、ほっとしちゃう……えっち、してるのにね……?」

「あぁ、うん、法子、のりこ……」

 

 法子がそっと抱きしめ返してくれた。

 生まれてきてよかった。驚きと感謝の念が、ひたすら安らかに体の中を流れている。法子の吐息以外はしんと静まり返っている。言葉もなかった。こうなるために生きていたんだ。

 

「泣けて、きちゃうね……えへ、へへ……」

 

 ただひたすら、空気や体温がきらめくほど底知れない幸福感の中を、永遠と思えるほど漂っていた。

 

 

 

 

「東京の雪ぃ? すごかったわーもー! 道路まっ白んなって、どっこもかしこも渋滞しててなー」

 

 翌朝、法子が携帯電話でしゃべっているのを聞きながら、俺はキッチンを眺めていた。ことばの調子からして、法子の親が東京の大雪ニュースを見て、娘を心配し架けてきたらしかった。

 

 さて朝食だ。

 食パンはあった。けれど冷蔵庫内で朝食に使えそうなものが卵ぐらいしかない。せめてベーコンを温存しておけばよかった。

 コンビニぐらいなら営業しているだろうが、外は見るからに寒く、雪が積もったまま。想像しただけで億劫になる。とりあえずオーブンレンジに食パンを放り込む。

 

「あんなぁ、カッターシャツのアイロンってどうやってかけるか、こんど教えてほしいのー。ちょっと覚えたほうがえぇかなって……」

 

 油を引いて卵を割り入れる。片方は黄身が2つだった。

 

「……ううん、なんでもないんよ。なんでもないったら。はいはい、またねっ」

 

 電話を切った法子は、オーブンレンジのターンテーブルで回る食パンを珍しそうに見ていた。

 

「薄くない?」

「8枚切り派なんだよ」

「え、うち5枚切りなんだけどっ」

 

 食パンは薄切りのほうがカリっと焼けるのだが、法子は厚切りのもちもちさが恋しかったようだ。

 

「こんど、くしゃくしゃにしちゃった時は、あたしがあれアイロンかけたげるね」

「あれって?」

「カッターシャツ。そういえばこっちではそう言わないね。ゆかゆかにも通じなかったっけ」

 

 法子は、洗濯カゴでくしゃくしゃになっているワイシャツを指差した。

 

「またここでくしゃくしゃにするつもりなのか」

「えへへっ」

 

 『こんど』までに、法子の好きな料理を聞いて練習しておこうと思った。

 

 ドーナツは……法子が持ち込みそうだから、候補から外しておいて。

 

(おしまい)

 

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