アイマスのアイドルが童貞をもらってくれるシリーズ 作:ふりーじ屋/家庭内禁書
「ねー、おじさま、昨日は……すごかったね……♥ おじさまのだいじなもの、もらっちゃったーん……♥」
「おーおーそらそうだろね、俺ぁアンタのせいで現在進行系で寿命がひゅんひゅん縮んでるよ周子」
「叔父さんが縮んだぶんあたしの寿命が延びてるかなぁ。あたしがすっごく助かったのは確かだけど」
「それと“おじさま”はやめてくれ、一応まだ20代なんだ」
一人暮らしのむさくるしい侘び住まいに、夢のような美少女が顔を出している。日本人離れした銀髪ショートレイヤーは、寝起きなのが信じられないさらさらつやつや加減。対して彼女の顔は額も頬もあごも日本人らしい白である。これが白人の白い肌だと、日本人から見たら白というより半透明で、うっかりすると血肉が肌からピンクに透けて見える印象になってしまって、写真集などではレタッチすることもあるらしいが、彼女はすっぴんのいまでもまったく小細工無用だ。
彼女の目は眠たげに細められているのに、マスカラの広告のようにまつげが長くカールしているので、まるで誘惑されている気分になってしまう。
「それに、そこもくれてやったわけじゃない。アンタが寝るから貸してやっただけ」
「いけずー。毒を食らわば皿まで、って言うやーん」
「自分が俺の目にとって毒だ、って自覚はあるのな」
“毒”は塩見周子という名前だ。
目尻が上がり気味のキツネ目。にやにやした口元が、可愛らしくもちょっぴりはしたない。はしたないといえば、格好もだ……いや、とてもはしたない。俺のカッターシャツを羽織っている。俺より頭半分ほど周子は背が低く、長袖のカフスで両手のひらが半分ぐらい隠れている。前の合わせ目は第2ボタンまで外してしまっていて、顔と同じように白い肌のデコルテや、ふっくらと女性らしい胸の谷間が見えてしまっている。弓型の裾(ラウンド・テイル)からは、すらりと長い太腿が伸びている。
着衣はそれきりらしい。もう少し何か着ろ。
「ふぁああ」
「眠そうだねー」
「昨日アンタと“すごかった”もんでね、すったもんだがね」
「そんなおじさまには、朝からしゅーこちゃんの朝餉にご相伴する権利をあげよー♪」
「あさげ……? よーメシなんぞ作れたな周子」
「ぶー! あたしの家事スキルなめちゃあいかんぜよ、家でぬくぬくする魂胆だった女の子なんだよー?」
「いや、うちの冷蔵庫の中身的に。なんもなかったろ」
「それは思ったわ」
サバ缶に、みじん切りの細ねぎと、どこかから発掘したらしき白ごまと、たぶんチューブから絞り出した生姜を添えて、温かい汁物。へぇ、缶詰の煮汁、塩、みりん風なんとかが揃ってればダシがなくてもなんとかなるのか。
「いただきます」
「めしあがれー♪」
自宅で誰かと温かい朝食をとるのは、ひょっとすると学生時代以来かもしれない。
『――さん、おそーい! こんな時間までカノジョを待たせるなんて、この甲斐性なしーっ』
周子の言うとおり、昨夜は確かに“すごかった”。
会社の少し年上な先輩との付き合いで、いままで行くことを考えたこともないダーツバーに連れて行かれたと思ったら、ブルーのタイトなフロントボタンワンピースをなびかせた若い“美女”が駆け寄ってきて、俺の名前を呼んで、腕を引っ張ってきた。
誰だこいつ、いま俺の名前を呼んだな? なんで知っているんだ?
『へぇ? “カノジョ”って聞こえたけど、――クンも隅に置けないねぇ』
俺の横に会社の先輩、小指を立てて勝手に訳知り顔をしていた。3割ぐらいは“カノジョ”と信じていそうな声音……え、俺の“カノジョ”? そんな女は存在しないはず。
ついで謎の美女の後ろには、あまり柄のよろしくなさそうな若い男が2人歩いていた。妙なシチュエーションに戸惑って、もう一度、謎の美女の顔を見る。
『あっ』
周子か、と口走りそうになった。その美女は9割がた塩見周子だと思った。しかし周子の名前と姿が、過去の記憶ともいまのシチュエーションともズレていて、残り1割がつながらない。
俺から見て周子は姉の娘、つまり姪にあたる。といっても俺と姉は一回り半も年が離れていて、俺は姉よりも周子のほうに年齢が近い。
『――さん? なにぼーっとして……疲れたの? もう帰る? いいよ、もう帰ろ』
周子と最後に顔を合わせたのは、俺が4回生のころ。年始のあいさつにいったら塩見家からどっさり就職祝いをもらってしまい、姉の嫁ぎ先からそんなに……と重荷に感じてしまって、もらったぶんだけ塩見家で一番小さかった周子にお年玉だか中学校入学のお祝いとしてくれてやってしまった。
いまダーツバーで俺の腕を引っ張っている美女が塩見周子だとすれば、なかなかの変貌ぶりだ。小学生か中学生だったころは髪を肘ぐらいまで伸ばしていた。高校生ぐらいまで背伸びした美少女、といったふうの顔立ちで、身長はすでに160センチぐらいあったが、肉付きは少年のようにほっそりしていた。いま低演色性なダーツバーの照明を浴びる女体は、そんなタイトでもないワンピースなのにバストの膨らみやウエストのくびれをうかがわせる。
それより目つきが違かった。昔の周子の目つきは、くりくりと可愛らしくも如才なさそうな雰囲気。塩見家は和菓子屋で、店番を手伝っていると聞いたからそのせいか。
いまの周子(?)の目つきは、とろんとしていて、よく言えば色気があり、悪く言えば退廃的だった。
『帰る……ねぇ。そういや、こんな時間か』
俺が連れて行かれたダーツバーは梅田のちょっと外れで、周子が帰る塩見家は、確か京都洛中のど真ん中、近くに東寺があったような、うまく快速に乗れても1時間はかかる距離だ。“カノジョ”が本当に塩見周子なら、未成年だし、そろそろ電車に乗らなければならん時間帯だった。
『ほら、帰ろ、帰ろっ』
別にダーツバーも楽しくなかったので帰ることにした。
柄のよろしくなさそうな若い男は、“カノジョ”にしつこく絡んでいたナンパとのことだった。
先輩は『お嬢さんいい嗅覚してるねぇ、――クンは送り狼とかできない子だから』などとおせっかいを言ったのでダーツバーに置き去りにした。
『周子、だよなぁ?』
『えー!? 叔父さん、しゅーこちゃんのコト忘れちゃったの? ショックだわー』
『えらく別嬪さんになってたもんで』
『あぁ、そー。それならしょうがないねー』
“カノジョ”は周子だった。
じゃあ周子は京都線使えばいいから送るのは駅まででいいか、『気をつけて帰れよ、もう遅いんだから』……と言ったのに、なぜか周子は俺の背中にくっついて環状線へ。
『まだ終電あるだろ』
『うん』
『足代ないのか?』
『しゅーこちゃんは、おうちを追い出されちゃったのですよ、おじさま』
『はぁ……はぁ? 追い出されたァ?』
『おじさまんとこ泊めてーん? じゃないと、おじさまの可愛い姪っ子が、さっきみたいなわるーいオトコに引っ掛けられちゃうの……っ』
周子は涙目になっていた――正直、まばたきを我慢して無理やり涙を出しているように見えた――が、泣く子と地頭には勝てない。環状線からメトロへの乗り換えまで着いてきやがったあたりで、断るのを諦めた。
昨夜の周子は、まだまだすごかった。
『ただいまぁ』
『ぶぇえっ!? お、叔父さん、もしかして……ホントは彼女さんとか、いるの……?』
『いないよ、電気消えてたろ』
『い、いや……もしいたら、上がり込みづらいじゃん』
俺の一人暮らしのむさくるしい侘び住まいで、遠慮がちに敷居をまたいだかと思ったら。
『ではではー、しゅーこちゃんとおじさまの再会を祝して、かんぱーい!』
『勝手に人んちの冷蔵庫の酒を開けるな。それに、賞味期限だいじょうぶか?』
『え、賞味期限……わぁあああっ!? 缶の飲み物で賞味期限切れてるなんて初めて見たんですけどー!』
ストロング系チューハイを勝手に開けやがった。といっても、ちょっと前に話題になったときに俺が流されて買ったはいいが、そのまま冷蔵庫の肥やしになっていたシロモノだが。
『あーあ、もう開けちまったんなら……よこせ、捨てるから』
『飲まなきゃやってられないのー。追い出されちゃったのー!』
『周子は未成年だろが』
『おカタいねー叔父さん。さすが母さんの弟、そっくり~』
『に、似て……って。てきとう言うんじゃないよ』
周子のほうこそ姉にそっくり……と、親戚のあいだでも評判だった。俺もそう思う。周子の母親――つまり俺の姉――の20代のころを知っている俺からすると、いまの周子はほとんど生き写しだ。俺は姉と似ているなんて言われた記憶は……あまりない。まぁ性別の違いだろうが。
『てか叔父さんち、すごく片付いてるね。モノすくなっ。まるでしゅーこちゃんをお迎えするために空けてたみたいー』
『一人暮らしの男なんぞそんなもんだ』
歯を磨いて顔を洗って、さっさと寝支度に入る。慣れないダーツバーから、わけのわからないシチュエーションで姪っ子を拾って、シャワーを浴びる余裕がなかった……というのは理由の半分だけ。
残りは、周子をそのままにして自分だけひとっ風呂というのは気が引けるし、かといって周子に『風呂入っとけ』と言うと自分で下心を感じてしまうし、周子が風呂に入ってしまったら着替えがないしで……考えるのさえ面倒くさかった。
気力を振り絞ってマットレスを引っ張り出す。
『俺ぁもう寝るよ。アンタはこっち使え』
俺の借りている侘び住まいには、寝室兼リビング、キッチン、風呂、トイレとは別に、幸いあと一つだけ部屋がある。可愛い客人にベッドを譲ったら、俺はそっちで寝るしかない。
『……ねぇ』
『なんだ』
寝室兼リビングから出ようとする俺の腕を、周子がまた引っ張ってきた。
『……しゅーこちゃんさぁ、“家賃”、前払いしておこうと思うんだけど……?』
ワンピースのボタンが外されていて、胸の谷間と、ブラと、うっすらした肋骨と、細長いへそと、あと下着も見えて――まずい。
『“家賃”って、何日ここに泊まるつもりだよ』
目をそらしながら吐き捨てる。
周子が本当に追い出されたんだ、と察した。
『あ、コーフンしてるんだ、叔父さん』
『服を直せ。嫁入り前の体を安売りするんじゃないよ、あほ』
「――叔父さん、叔父さんっ」
「ん……えぇ?」
寝室兼リビングの小さいちゃぶ台は、俺と周子の朝食を並べたらいっぱいいっぱいだ。
まだ寝ぼけてるのか、夜と朝の周子がごちゃごちゃしてる。
「朝ごはん……おいしく、なかった?」
「ふだんの百倍、いや百万倍はうまいよ」
「あはは、ふだんどんだけ粗食なんよー」
並んで食卓を囲むと、いわゆる彼シャツ姿の周子が近くて、寝汗の匂いが嗅げてしまいそうだった。やっぱりこいつは毒だった。
※
朝になって周子がシャツ1枚なのは、あれからけっきょく、周子がブルーのフロントボタンワンピースを脱ぎ捨ててしまったからだ。
俺は『自分の体をもっと大切にしろ』なんて空々しい説教をかました。
本音を言えば、そこにいる美少女が塩見周子でさえなければ、俺はありがたく“家賃”をもらっていたと思う。疲れていたとは言え、そのぐらいの性欲はあった。
けれど、自分の姉に似ていて――姉って言ったって俺が鼻水垂らしてたころにはもう、いまの周子より少し年上だったが――周子を美しく退廃的に感じれば感じるほど、俺はどんどん後ろめたくなった。タイムスリップして若い姉とセックスするような近親相姦じみた……いやいや、実際に叔父と姪なんだからごちゃごちゃ言わんでも立派な近親相姦である。
俺があまりに必死に見えたのか、周子からは『叔父さん、もしかして童貞?』と煽られた。
図星だった。
『姪に童貞だってバレたからどうなんだよ』
そこにいる美少女が塩見周子でさえなければ、俺は童貞を否定していたと思う。10歳も年下の異性から童貞煽りされるのはさすがに認めがたい。だがそこにいるのは姪・塩見周子である――若いころの姉の顔をした女である――なんだか自分まで10歳か15歳か若返った気がした。それなら童貞でも別に恥ずかしくない。姉――ここで服をはだけて俺を誘惑しているのは姪だが――に童貞だとバレたからどうなんだ。本当にそうだ。
『ねぇ……しゅーこちゃんが、さ。叔父さんの童貞、卒業させてあげよっか』
やっぱり、そこにいる美少女が塩見周子でさえなければ、俺はありがたく童貞卒業のめんどうを見てもらったと思う。
そこにいるのが塩見周子なせいで、ペニスが勃つより腹が立っていた。
『周子、アンタおうちで何をやらかしたんだよ』
『話、そらしちゃやーよ』
『俺に据え膳を食わせて弱みを握りゃ、俺がアンタのこと塩見にチクれんだろって算段だな』
『……それは、その』
『あほ。ここ泊めてる時点で手遅れだわ。童貞はもういいから、そっちの事情を話せっての。あ、もう眠くなってきたから手短にな』
周子の“手短”な説明によれば、彼女は『高校出てから、実家の手伝いでぬくぬくして……別にやりたいわけじゃないけど、まぁ慣れてるし』と思っていたら、そのしょうもない魂胆を母か誰かに感づかれて家を追い出され、女友達の家に転がり込むもその友達が彼氏と同棲することになって居づらくなり、行くあてもなく大阪までやってきて俺をとっ捕まえたのだ、と。
なるほど、“家賃”と称して股を開くだけの切羽詰まり具合、というわけだ。
けっきょく『さすがに、家主をさしおいてベッドは……』と周子が言って、俺がベッドに寝て、周子があちらの部屋でマットレスを使った。当然、ろくに眠れなかった。
「あのお部屋、さ」
「狭かったろ、ごちゃごちゃしてて」
「あっこ明らかに寝る部屋じゃないでしょ? 寝転がるどころか身の置き場がソファ1つしかないし、あとはおっきなスクリーンとかスピーカーとかなんかわけわからん機械がいーっぱい……機械だから下手に動かせんしー」
昨夜に俺が寝ようとして、実際には周子が寝た(?)部屋は、俺の可処分所得の大部分を食い潰している……シアタールームというか、オーディオルームというか、そんな感じのスペースだった。
「あれは俺の仕事部屋よ。ふだん仕事で“わけわからん機械”を売り込んで回ってるの」
「……ほんまに?」
「半分は趣味である、ってのは認める」
周子は舌先をちろちろとはみ出させて上くちびるをなめた。
「ごっそさん。俺は仕事行ってくるから、寝られんかったならベッド使って二度寝していいぞ」
「お気遣い痛み入りますわぁ」
「寝直して、あと服洗って乾かしたら家に帰れよ」
「はぁーい♪」
眠気をこらえながら仕事を終えて帰ると、俺の部屋に電気がついていた。
「おかえりー♪」
「……おう」
“毒”の塩見周子に毒気を抜かれるとは、たちの悪い艶笑小咄もあったもんだ。なんだか照れくさくて、ちゃんと顔も見られないし返事もできない。
「おかえりーっ!」
「……ただいま」
思い出した。姉も、ちゃんと俺が遊びや習い事から帰ったとき『ただいま』と言わないと承知しなかった。ちゃんと言わないといつまでも“おかえりー”しか言ってくれないので俺はすぐに折れていた。周子め、そんなところまで似やがって……いや、ただ周子もちゃんと『ただいま』と言え、と教えられたのだろう。たぶん同じ教えられ方をしたのだろう。
「お風呂? ごはん? それともしゅーこちゃーん?」
「……メシぃ? 冷蔵庫にそんなもん……」
玄関でかぐ匂いから判断すると、周子が支度してくれていたらしき夕餉は、けさこの部屋には存在しなかった食材が使われていた。
おかしいな、俺、周子にそんなおこづかいは渡していないはずだが。
「おじさまに、おいしーいごはん食べてもらいたいと思って……♥」
「え、じゃあアンタお金は」
「おじさまに、おいしーいごはん食べてもらいたいと思ってーっ!」
こっちの“家賃”には、不覚にも琴線をぴりぴりやられた。クリームシチューに白いごはんをつけるかどうかで少し悶着したのさえ心休まった。
もっとも、その暢気な感慨はすぐにふっとばされたのだが。
「お背中お流ししまーす♪」
「うぉい待てや周子っ」
バストイレ別とはいえ、俺の安月給で家賃をまかなえて、かつあの部屋があるとなると、浴室は一人でもちょっときゅうくつだ。2人同時に入室したら、もうだいぶきゅうくつだ。
「んふー? なーに、おじさま。慌てちゃって」
「もうちょっとゆっくり入らせろよ」
俺がバスチェアに座ったままにしていると、背中から周子に細い両腕を回される――周子の素肌、と察してしまう――もはや身を清める本分を果たせるかあやしい。
「別に、どうぞ、ごゆーっくりしてくださいな。そのあいだ、しゅーこちゃんの柔肌で、お背中きれいきれいにしたげるから。うれしーサービスでしょーっ」
「どこで覚えたんだよ、これがサービスって」
鏡を見ると、イスに座っている見慣れた俺の裸に、中腰の周子が後ろからにやにや笑いながら絡みついている。彼女の両手から白い泡が広げられていくと、彼女が泡姫のように見えてくる。俺と昨日あのダーツバーで再会しないで、実家に帰らず夜の大阪をふらふらしていたら、こいつ本当にソープ嬢になってたんじゃなかろうか? いやソープランド行ったことないから知らんが。
「“おじさま”は、やらしーことなんて考えもしないよねー?」
「そこまでうぶじゃないわ、あほ」
細い指先が、太腿を撫でてきた。耳元に火照ったささやきを注がれた。じゃあ、肩に押し付けられた感触は……“やらしーこと”しか考えられなかった。
「お客さーん、かゆいとこ、ございませんかー♪」
「それは頭を洗ってやるときのセリフじゃないか」
「んふふ、こまいこと気にせんでえーやん。洗ってほしいところがあったら、言ってーん?」
ぎゅう、と肩に押し付けられる。どう気をそらそうとも間違いなく胸だった。わざわざ両肩にそれぞれ両乳が当たるようにしてきやがった。
「ん、ふ……しゅーこちゃんがのぼせんうちに、ね。お願いよ」
「俺が先にのぼせるわい」
「“ゆっくり入らせろよ”って舌の根も乾かんうちにー?」
もはや俺の肉体も意識も、それを入浴とは感じていなかった。昨日の夜ときょうの朝、周子がちらりと見せてきたときのデコルテや乳房は、まだ叱りつける余裕があった。その記憶を踏み台に、背中のやわらかい感触がすり寄せられている。
「あんね、こーしてると……しゅーこちゃんも、ドキドキしよるん。もしかして、伝わっちゃってる?」
胸を押し付けられている。しかもおんぶして運んだとか転んだのを支えたとかそういう偶然ではなく、周子から意図的に乳房を押し付けられている。若い女の肌を許されている。皮膚から意識をそらそうとしたが、耳からは周子の吐息とささやきが来るし、鼻にだって周子の桃みたいな甘ったるい匂いが迫ってくるし、目にはあの色気があるような退廃的なような顔と視線を鏡越しに突き刺される。
「……わぁお、お腰のモノがご壮健で……♥」
触れられてもいないチンポが、隠しようもないほど勃起していた。
「ねぇ、触っていい?」
「あんねぇ、周子」
「なぁに?」
「風呂に入ると血行がよくなってこうなるの」
「勃起ちんちんぐらい知ってるよー?」
苦しい言い訳は、後ろから甘ったるい声でバッサリ切られた。
「いくらあたしだってねー、もし処女だったら、家賃カラダで払いますーなんて言えませんーっ」
「……まぁ周子なら相手には困らんか」
「清い童貞の“おじさま”からしたら、ふしだらなしゅーこちゃんは、汚いって思っちゃうかなぁ」
しおらしげな声音のくせに、胸をきゅうきゅう押し付けながら、脇腹から両手を忍び入らせて勃起をくすぐってくる。鏡の向こうで周子の顔が俺の背中側に隠れた。直視しなくてもだいじょうぶってか。余裕すぎだろ。
「叔父さん、カラダ、がっしりしてるねぇ」
「っ……周子と比べりゃ、そうだろう、よ」
周子が、まず親指と人差し指で勃起をマッサージのように圧してくる。陰茎を圧迫されているのに、さらにそこへ血が流れ込んでパンパンに硬く張り詰めていく。両手のひらや、中指、薬指、小指も使って包み込まれる。
「で、おちんちんはその気のようだけど……本音は、どうかなー」
「は、はぁ……?」
周子のような魅力的な若いオンナに迫られれば、ホモかEDでもない限り男性器が勃起してしまう。これは生理反応なのだ……というのは、ご承知のようだった。
「しゅーこちゃん、押し売りはイケないと思うんだー。だからおじさまが、これはおちんちんが勝手におっきくなってるだけですー、しょうべん垂れんのと同じですーってんなら、やめちゃおうかなぁーって思うんやけど……」
指先でペニスをくすぐりつつ、口舌で畳み掛けてくる。俺が希望するなら続けてやろう、と。ここから先の“毒”を食らうも食らわぬもお前次第、と。
「むしろ、一つ屋根の下に2人きりで一夜……って、ふつうにえっちよりハードル高いかもよ? もし、ぐぅぐぅ寝てるときにいたずらされたら……って。縛られたら、こんな手コキじゃすまなくて、無理やりレイプされちゃうの。濡れてもいないおまんこにぶち込まれて、ひぃひぃ泣かされるの」
俺は、欲望に耐えきれなくなって周子を犯した自分を想像した。フロントボタンワンピースを引き千切るように脱がせると、その下は発情した雌の体温と汗でこの風呂場よりも蒸れている。太腿。白くほっそり優美な曲線のくせに触るとむっちりしている。周子は泡を食って逃げようとするがどこか縛り付けているらしいので叶わないだろう。両太腿を手で抑えてしまうと、男の性欲の気配だけでマンコが屈して、周子の意思に反して雌汁を漏らすか噴くかして下着も用をなさなくなる。周子は哀れっぽく痛々しく悲鳴をばらまくが、周子を入れたここは5.1chだって余裕で堪能できる防音付きだ。俺の征服欲を楽しませるだけだ。
「う、ぐ……っ!?」
「おぉー、おじさま、びくびくって、してぇ……♥」
レイプ妄想はささやきと手コキで中断された。
「いくら周子がいいオンナだからって、一発ヤッてそれでブタ箱で臭い飯は割に合わんよ」
「……あたしが、レイプされちゃいましたぁ、って言ったら、叔父さん、たとえ無実でもそうなっちゃうかもよ」
おっそろしいことを言う。まぁ俺が昨日“ここ泊めてる時点で手遅れ”って周子に言ったんだが。
「つまりさー、同意のうえならしゅーこちゃんとえっちシたい? ってことよね」
そうとられてもしかたない。どうしようもない……まずい。周子を拒む理由が、どこへ。見つからない。
「ガッチガチやねー……おちんちん以外は柔らかくしよー? リラックス、リラックスー」
陰毛でくしゅくしゅ泡を立てられている。いつもの刺激と変わらないはずなのに、周子から与えられていると意識するだけで完全におかしくなっている。
「……あったかいね」
「そら、周子のおかげさまで、血ぃ流れ込んでますからねー」
「じゃあ一発ヌいちゃおか」
もうまともなやりとりができない。
まともに会話したら、チンポだけでなく頭の中まで周子になびいてしまう。
「おっぱい失礼しますよー」
あらためて、むにゅん、という反発。想像よりくいくいと強い弾力が、肩甲骨に押し付けられる。首も肩も細っこいくせに乳はとんでもない存在感だ。ずりゅ、ずりゅ、往復、心臓が痛い。チンポ手コキが刈り取りきれなかった俺の理性を、おっぱいが体の底までさらっていく。
「それに、おじさま一人暮らしの男なんだから、オナニーするでしょ?」
「お、おう、するとも」
「オナニーしてるときにしゅーこちゃんが居合わせちゃったら気まずいしー」
こいつは言い訳がうまい。傍目から聞けば噴飯ものでも、俺が聞けばうなずくしかない言い様だ。
「オナニーのとき、どうやってこするん? しーこっ、しーこっ♥ ってこんな感じ?」
手コキしていた指が離れる。すぐそばで、卑猥な上下運動のパントマイム。チンポが反応してしまう。触れられてもいないのに支配されている。
「ぁ、ん……? おじさまー?」
耐えきれなくなって、周子の手を握る。
「やわっ、指ほそっ」
「……そりゃー、もー」
「俺の手と違いすぎるわ。加減、周子にお任せしていいか」
「いいよ。おちんちん元気いっぱいだね、ここまでよく我慢できましたね、って、いーこ♥ いーこ♥ って。あとこしょこしょって、いじわるもシちゃって……」
周子の手コキがゆっくりで、合間に言葉責めを挟んでくれたので、3こすり半よりは長持ちした。
「ぬ、ぐっ……!? あ、うぁ、く……も、もう、で、る……!」
「えーよ、えぇから……あつーいの、ぴゅー、ぴゅーって♥ ほらぁ……んふふーっ」
周子は、左手の人差し指と中指を亀頭まわりに絡めて、ぶっ飛ばすような射精を半分ぐらい受け止めてくれた。
「……はぁーい、おつかれさま♥」
鏡の向こうで、俺の肩の向こうから周子がぴょこんと顔を出して笑った。
それから、俺が吐き出した精液を周子がシャワーで流そうとし……おいっ。
「精液にお湯かけんなって、排水口だめにするらしいぞ」
「えっ、それは知らんかったわ」
慌てて止めた。
「あれけっきょくタンパク質だからな。卵の白身や黄身みたいに熱で固まる……んだろ、知らんけど」
周子は、その性的魅力ほどの男性経験はなさそうだった。
※
「あの……なんか、ごめんね? おじさま……」
「なんだよ、いきなりしおらしくなって。可愛いぞ」
「おおきにー……♪ じゃ、なくて」
風呂場の手コキが終わって、狭いベッドで素肌同士になって顔を見合わせると、周子は顔を赤らめながら悩ましげに目を伏せた。
「ごめんなさい」
「アンタから謝られるあてが多すぎて反応に困るわ」
「その……本当に童貞なんだよね、おじさま」
周子の戸惑いが本心なら、たぶん彼女は……処女でないにしても、童貞の生態には詳しくなさそうだった。
俺だって自分が童貞なだけで、童貞に詳しいつもりもないが。
「ぶっちゃけた話、おじさまは童貞じゃないと思ってたんよ。半分ぐらい」
「半分童貞で半分非童貞ってか。なんぞそれ」
周子は白い肌にキツネ目なもんでお稲荷さんみたいだが、だからって俺がシュレディンガーの猫かよ。
「あらためて見ると、おじさまって、しゅーこちゃんに似て……美男子? と言えなくなくなくなくもないしー。もしくは、しゅーこちゃんの誘惑に耐えきれるなんて、おじさま実はおちんちんだめなのかなぁ……とか」
「褒めてるのかけなしてるのかどっちだよ。あと、血筋で言えばアンタが俺に似てるの。一応4分の1は血ぃつながっとるからな」
俺の顔がそんなに姉や周子と似ているとも思わないが、うなずいておいた。
「血ぃ、ねぇ」
周子が、俺の正面からにじりよってくる。肩口に頬ずりしてから、あの目で上目づかいをぶん投げてきて、胸板にそよそよ吐息を漏らす。
「あ、もしかして……母さんとしゅーこちゃん、重ねちゃってる?」
周子の肩をつかんで押し倒した。
「周子、アンタ……俺が姉さんとアンタを重ねてるからヤレんだろ、って思ってるか?」
「ち、違うわぁ、でも……」
「でも?」
「ヤラれなかったら、ちょっと寂しいかな」
周子は俺の両手からつるりと抜けて、ベッド脇に置かれていた買い物袋をごそごそやった。さっき夕飯の食材の一部で膨らんでいた袋から、コンドームの小さい箱のやつを何梱か引っ張り出した。俺に向けられた周子の尻と内股に、お湯らしくない潤みまでちらついていた。
さっきほのぼのした心境で舌鼓を打たせてもらったクリームシチューさえ“毒”だったのか、なんて思わされてたまらない。
「ぁ、きゃんっ……!? だ、めぇっ♥ 着けなきゃ、だめよ……?」
こんどはケツと腰回りをつかんで押さえつける。
「俺ぁ童貞だから、周子おねーさんに教えてもらいたいんですがね……これ、オンナが濡らしてるってやつか?」
周子の内腿をセクハラおやじのごとくなぞる。柔らかいなと思った瞬間、ぶるりとぱんぱんに張り詰める。
「べ、べつにー? おじさまの背中に、おっぱいすりすりーっ♥ ってシただけで、こんな興奮しとらんし……?」
周子はこっちに尻と腰を向けたまま、ウエストをひねってベッドの枕に顔を埋めていた。頭隠して尻隠さず……ってのとはちょっと違うか。
「あたしってさ……あまのじゃく、なのかもね。叔父さんに抱いてもらえなかったとき、すごくムラムラした」
「はぁ?」
「最初は……あのわけわからん部屋にやられて、腹立ったけど……でも、叔父さん正解だったよ。朝ごはん食べたあと、あたし寝直すためにベッド借りてたら、寝床のオトコくっさいのモロに嗅いじゃって」
「悪かったねぇオトコくさくて。あしたコインランドリーにぶち込んでおくよ」
「でも、さ……なんかさ、ホッとしてさ、安心してさ……緊張が解けると、なんかムラって」
「はぁ」
「買い物行く前にオナニーしちゃったわ。あと叔父さんが風呂入ってるときも」
「さっきじゃねぇか。周子アンタ寝不足でおかしくなってるんだよ」
オトコくさいのをくさいと思いながら嗅いでオナニーとか、確かにあまのじゃくと言えばあまのじゃくだ。
さすが、特に居心地もいいと思っていない実家に居座ろうとするだけある……とは言えなかった。
「じゃあ……おじさまも、しゅーこといっしょに、おかしくなっちゃって」
周子にゴムを着けてもらう理性が残っていたのは幸いだった。周子の指がチンポに迫ってきて風呂の手コキを思い出して、チンポに流れ込む血流は増え、そのぶん頭から血が抜けたのか理性は減った。
「……あたしが、上から入れるから……しゅーこちゃんのおまんこで、入れ方、覚えてね……♥」
「助かるわぁ、見せてもらうのも初めてなもんで」
俺があおむけに寝て、周子が膝立ちで俺の腰をまたいでいる。絵に描いたような騎乗位。
「初めての割には余裕そうやねぇ」
「……んー、年の功?」
開き直れていた。
もはや周子の前でええかっこしてもしょうがない……恋人になれるわけでもなし。
昨日一晩セックスを我慢した時点で自分への言い訳も立った。
「あたしが入れたら、あとはすきにしてええよ」
チンポが飲み込まれる。吸い付きだかか締め付けだかがあんまりぐいぐいきゅうきゅう強すぎてかえって現実感がなくて、確かめるように上体を起こして周子の肩を抱く。
「……卒業、おめでとー……♥」
キスしようか迷った。そのあいだに絞られて、持って行かれてしまった。
「これがおじさまの初絞りかー。きょう2回目やけど。こんなぎょうさん……お盛んですねぇ……♥」
抜いた後のコンドームの精液だまりを、周子はいつまでもぷよぷよ指でつついていた。
俺が止めるまでずっと。さっきは精液をシャワーでぞんざいに押し流そうとしてたくせに。
※
塩見家が周子の居場所を知ってるかどうか探るために――あと、警察沙汰になると周子もいよいよ決まりが悪いだろうからそうなる前に――と、姉に連絡を入れておいた。
追い出したのは本当らしかった。あちらにも周子に言いたいことがあったらしいが、そんなに感心する言い分でもなさそうで聞き流した。よくわからなかった。周子といきなりねんごろになったせいか、俺は自分が塩見家とそんなに付き合いがあるわけではない、ってのを忘れてしまっていた。
あちらへ、なんか譲歩してやれよ、とは言っておいた。周子からしたら何の譲歩もとれずじまいでは次いつまた追い出されるかわからんし、そもそもいくら家の手伝いとはいえこれまで店番立たせておいていきなり追い出すとはどんな了見かと、会社だって解雇予告手当ぐらい払うぞ、うんぬん。雇われの身の理屈を並べてしまう。しかしあちらさんは自営業だからこっちの事情なんてわからんかもしれないし、こっちだってあっちの事情をわからんかもしれない。
塩見家に偉そうな理屈を並べておきながら、俺は周子に毎日のようにメシを作ってもらったし、セックスもしてもらった。
「なんだか、お嫁さんみたいやねー」
本当に結婚できる立場だったら、周子はこんなこと言えただろうか。
「とんだ花嫁修業だな」
「ふーん。じゃあ叔父さんは旦那さま修業、がんばろー♪」
こってり搾られてしまった。
「ねぇ、おじさま。美城プロダクションって知ってる?」
「うん、まぁ……どうした」
ある日、周子が神妙な顔で一枚の名刺を見せてきた。
バイト探しで面接に行く途中、背広姿の大柄で強面な男からもらったんだと。そのときは面接の約束が近かったので話は聞けなかったが、周子の語るところによると、つまり。
「アイドルにご興味ありませんか、やって。もらったんよ」
「その名刺、スマホで撮らせてくれんか」
「ええけど」
俺は、名刺に書かれたプロデューサー氏当人には無許可で、周子のもらった名刺を名刺管理アプリに保存した。
次の日からいくらか時間をかけて、勤め先の部署や他部署や、出入りの会社さんに名刺に書かれた“美城プロダクション”について、それとなく話を聞いてみた。勤め先は個人向けだけじゃなく、ショッピングモールやらアリーナやらホテルやら劇場やら映画館やら向けの照明だの音響だのも扱っているので、なんか手がかりがないかと世間話……のつもりが、下手すると本業より熱心になってしまって、“先輩”なんぞはからかってきやがった。
「周子」
「どしたん」
「こいつ本物の“美城プロダクション”らしいわ」
「“本物”の?」
「あ、知らんか。芸能界じゃあちこち手広くやってるとこ。だからてっきり、本物の関連会社のふりしてるヤクザ者かと思ったんだが」
俺はそれなりに安心しつつ、周子の反応でちょっと不安になった。
いくら芸能プロダクションが表に出たがらないとはいえ――連中の売り物は第一に所属タレントの顔と名前であって、俺たちのような自社ブランドの名前を冠した製品じゃないから――美城と聞いてピンと来ないなんて。周子はこれまで芸能界にさして興味がなかったらしい。
「稼げるかなぁ」
「なるほど」
周子は悩んでいた。そうだな。金は命の親、命の敵(かたき)って言うもんな。
アイドルにスカウトされたってんで、ふわっふわに浮かれるよりはずっとマシだろう。
「とりあえず暮らしていけるだけの金……ってんなら、実家戻ったほうがいいだろ」
「はぁ」
「あ、もしかして塩見屋って実は火の車だったりするのか」
「それは、いまのところはないらしいわ」
「じゃあ薄給でこき使われてたり……」
「ちょ、おじさま! しゅーこちゃんに肩入れしすぎだからっ」
そこからさらに周子がぽつぽつ続けるのを聞く。
どうやら実家を飛び出した原因について、周子はだいぶ自分のわがままのせいだと思っているようだった。だからって帰るつもりもないらしいが。
あと、アイドルなんて母親が反対するだろう、と気にしてるようだった。だからって名刺を捨てるつもりはなかったらしいが。
周子の母は俺から見たら姉なんだが、周子の口から「母さん」と聞かされてると俺まで姉を母親と錯覚させられそうだった。
「で、周子はどうしたいんだ?」
「それは……」
「したいんならやったらいいと思うわぁ。アイドル? いいじゃないか。“おじさま”への家賃をカラダで払うよりかはずっと世間に顔向けできる」
「そ、そんなんじゃ……あ、あの、そのっ」
周子のどもりは聞かないふりをした。周子の本心はわからないが。
「姉さんとか、塩見のおうちが反対するの気になるんなら、俺が口を利いてやるよ」
できるふりをした。塩見家がどうでてくるかわからないが。
「……あたしが、ここから出てっちゃっても?」
「当たり前だろ」
平気なふりをした。実際に平気かどうかわからないが。
「叔父さん、あたし」
周子はスカウトに乗る、と言った。
※
周子は上京の準備をしていた(京都の人間が東京へ行くとき「上京」なんて言わなさそうだが、ここは大阪だし)。
美城プロダクションには大阪に関西支社があるらしいが、あえての東下り。
「大阪とか、近いと……“おじさま”にまた甘えちゃいそうで」
などと周子は大人ぶりやがった。
「せいぜいおおっぴらに甘えられる相手を何人か探すんだな」
甘えられる相手がいないと辛いから……と続けそうになって、かみ殺す。まるで俺が周子に甘えられなくなって辛いみたいじゃないか。
「じゃあ、はい。これで」
「おおきにーっ」
周子が美城プロダクションと交わす書類で、彼女の身元保証人欄に署名捺印してやった。本人との関係に叔父と書いたとき、妙にペン先のすわりが悪かった。
「あれ、“おじ”ってそっちの字でいいの?」
「親の弟や妹は叔の字だよ。伯は年上に使うんだ」
書類を返す。家の外で周子の叔父を名乗るのは初めてだった。
「なぁ、周子」
「なぁに?」
「最後、生でシてもらえないか?」
「最後?」
「あぁ」
「あたし、ゴムなしでしたコトないんだけどな」
「へぇ、じゃあ周子の初めてもらえるのか」
「ナニが“じゃあ”よ」
このおかしな関係も、周子がここを出て行く朝で終わりだ。
周子は安全日まで上京を延ばしてくれた。
「保証人の説得に、時間がかかっちゃいましてー……ふふっ」
その日までセックスはおあずけになった。射精も禁止になった。
「よかったねー。下手したら3週間ぐらい待ってもらうところだったけど、それと比べればずっと短くて済みそう……なら、せっかくだし、溜めてもらうよー?」
自分で言い出した提案なのに、頭がおかしくなりそうだった。
「叔父さんがナカダシしてみたいだけじゃないのー? 叔父さん、あたししかオンナを知らないってんなら、あたしが許していない以上、ナカダシ未経験だもんねー」
そういえば夢精はどうやってこらえたんだろう?
「“最後”だもんね」
とにかく、最後の夜までもたせた。
「おじさまから、シて」
周子が「あたし、めっちゃおっきな声だしちゃうかも」とケラケラ笑いながら脅してきたので、うちでただ一つ防音がきくあの部屋――周子を寝起きさせていた部屋――を、慌てて整理する羽目になった。
「はうぅ、んぷっ……ちゅっ、ちゅう……んっ、ちゅぶ……ぷふ、あは……♥」
出発前夜に、周子が風呂上がりにわざわざ俺のカッターシャツだけ羽織ってうろうろしてくれたので、例の部屋に連れ込んで、立ったままくちびるを奪う。キスなんてもんじゃない。これからお前を犯す、という宣言。
「周子」
「うふっ……なぁーに?」
「ベロ出せよ」
「やらしーこと、覚えちゃってからに……んんっ、むふっ……ふぁっ♥」
周子がめいっぱい色白な肌をしているせいか、彼女のくちびると舌は妙に赤く見える。たっぷりの唾液でてらてら光る舌先。その光のうちいくらかは俺の商売道具が照らした反射なんだが。
舌先を指でくすぐって、くちびるでもてあそぶ。周子が舌を逃げるようにくねらせたので、まだ湯上がりの湿気を帯びたショートレイヤーを手で押さえて、逃れられないようにしてから口蓋や舌の根元を犯す。
「んちゅっ、ちゅぱっ、ぢゅる……っ♥ やぁ、はげ、し……んふっ、ぷはっ……はふんっ♥」
ふんすふんすと周子から鼻息を浴びせられる。肩やら腕やら胸にしな垂れかかられる。
薄っぺらな化繊1枚でしか覆われていない周子のおっぱい。シルエットは細くか弱いが、触らせてもらうとさすがに肉と骨がみちみち詰まっているウエスト。
「周子、周子……っ!」
「あむっ……うっ、ふぅんっ……だ、だめよぉ……久しぶりで、びんかん、に……こ、こし、立たなくなっちゃ……っ♥」
腰から下の、意外とむっちりしている尻。両手で我が物のように鷲づかみしてもむ。おっぱいよりもさらにぷるぷる弾んで、パンパン張り詰める。俺の手では奥底まで届きそうもない丸っこいデカ尻。それでも尻肉の下にある骨盤をことこと叩くと、振動が深みに響くのか、周子があぅあぅと呼吸を波打たせた。
「んぢゅっ、ちゅ……はぷっ、んはぁ、あんっ……ちゅるぢゅ、んふ、ちゅ……♥」
そうして従順になった周子を見つめ直し、くちびるをもう一度犯す。がっついてるキスを受け止めてくれて、それに甘えて噛み付いて歯形を残したくなる……のをかろうじてこらえる。
ねろねろ、ぴちゃぴちゃ、舌でつついたり絡み合ったり。
肩か背中あたりをきりきりと引っかかれる――周子しかいない――風呂で手コキしてくれたときに比べて、ずいぶん切羽詰まった力加減がうれしいのに、べそべそ泣きたくなる。
「んちゅ、れりゅっ……ぷはぁっ♥ あは、はふっ……おじさまったら、じょうねつてき-……っ」
「他人事みたいな口だが、よ」
周子が羽織っている――汗でもうぐしゃぐしゃ、肌に張り付いて透けている――カッターシャツのすそをぴらぴらめくる。
下着をつけていないマンコの入り口。ぐしょぐしょにぬれてるし、氷の裂け目(クレバス)というにはぱっくり開きすぎだし、真っ赤だし、熱すぎて湯気が立ちそうだ。
「あぁ、やっぱり」
「あ……うぅっ、は、恥ずかしいわぁ……っ♥ 濡れるの、早すぎ……っ」
「俺はうれしいけどなぁ」
周子が垂らすマンコ汁は透明で、見ている間も次から次へと溢れ、糸を引いて床にポタポタと滴っている。できあがっている。
「は、ひっ、あう、んっ……あ、あぅ、んんっ! えう、んんっ……♥」」
尻をつかんでマットレスへ寝かせる。押し倒すというより、手で誘導してマンコを置かせる、といったほうがしっくりくる動作。主導権は握るが、けっして周子に「流されて抱かれちゃいましたぁ」などとは言わせない。
「よ、よごれちゃうって、あかん、よぉ……」
「気兼ねするなよ、どうせ俺のほうがこっぴどく汚すんだから」
シャツをまくり上げ直し、物欲しげに息づいているマンコに、とっくに張り詰めた生チンポの切っ先を挿入する――素振りだけ。割れ目の表でぬちゃぬちゃマンコ汁を堪能する。
「へ、へたっぴー……っ♥ ちゃんと、入れてよ……じゃないと、しゅーこちゃんが補習授業、しちゃうよー……」
「入れる前に、ほしがり周子の可愛い顔をしっかり見ておかんと」
こっちを見上げていた涙目が、両手で隠される。周子がお手上げして降参したみたいだった。耳や首筋が真っ赤なのはしっかり見えていた。
「は、あ、はひゅっ!? ど、どこ触ってぇ……♥」
「どこって、クリ……ちょっと触っただけだが」
ぽってりしてわかりやすくなったクリトリスを、裏筋でもぞもぞこすってやる。俺にとってはニヤニヤ笑いぐらいの快美感だったが、周子はへそ周りや太腿の付け根をびくびく震わせてもだえた。
「は、はやくぅ、シてぇ……おじさまぁっ♥」
「わーかってるわ、いま、入れるから……」
「あぅっ、うぐっ、んぅぅぅっ、うんぅぅぅっ……♥」
周子が腰や腹をびくびくさせるせいで、素で何回か挿入をしくじりながら、先走りとマンコ汁でぬらぬらどろどろのチンポをあてがい、沈み込ませる。
「はぅぅぅっ、んぅぅぅっ……な、ナマで、いれ、ちゃってるー……?」
「うぉ、お……なま、ナマだよ。確かに……ぉ、お、っ、しま、る……!」
すっかり火照ったマンコ肉がみっしりチンポに抱きついてきて、膣の浅いところから深いところまでごそごそやられて……あらためて、そこが搾精のためのモノと実感する。
周子の骨盤あたりを、両手の指先から手首までめいっぱい使ってとらえる。周子の女体のなかで、ここだけは俺でもつかみやすい。
「は、あっうっ……」
「動くぞ……!」
「だ、だよね……はうぅっ、ううっ、んぅぅっ……あうぅぅぅっ……!」
周子のマンコ肉にいじめられながら、膣内の奥と手前とをまんべんなく、ゆっくり味わう。精液の前に先走りを塗り込んで、下準備みたいな気分だ。
「声、押さえてるのか、周子」
「あうぅぅぅっ……! やぁんっ、もっと、シて……うぅぅっ、んぅぅっ、うぅぅっ~っ♥」
「可愛いぞ」
「ひゃっ!? か、可愛いなんて、いま、言わんでぇ……」
周子の押し殺された嬌声は、可愛いというより悩ましい感じだったが、俺の口から飛び出て周子にぶつかったのは“可愛い”だった。
「うぉおっ!? ……おーい、周子アンタ、マンコ締めて返事かよー」
「ふぅっ、うぅぅっ、んぅっ、ん、うぅぅぅぅっ……お、おじさ……そ、それぇ、だからぁっ……あ、あかん、のぉっ……♥ こ、声、出ちゃ……あうっ、うぅぅっ、あうぅ……っ♥」
一通り周子のマンコ肉にマーキングし終えたので、抜き差しの幅を大きくする。ずりゅずりゅ、ぬぢゅぬぢゅ。シャツごしに周子のおっぱいがゆさゆさ揺れる。シャツは汗を吸わされすぎて、タンクトップやら競泳水着やらみたいに周子の肌に密着していた。
「しゅうこ……もしかしてアンタも、ナマで、興奮してるなぁ」
「そっ、それはぁっ……んぁっ、んんっ、これ、そんな、い、イっちゃ……っ♥」
「腰、がっくがくさせて、汗もよだれもマンコ汁もびちゃびちゃのどろどろで……」
おっぱいのいちばん高い乳輪あたりが、ぽってりと膨れていた。
「あぅぅっ!」
もちろんつまむ。
「ひゃぁぁっ、あっ、んぁっ……おっぱい、まで、ぇ……っ♥」
親指と人差し指でこりこりの乳首をとらえながら、俺の手でもおっぱいをタプタプ揺らす。
「やぁうっ、うあぁん……♥ やあぅぅっ、ちくび、あかんのっ♥ その……あかんて、ゆーて、ぇ……あっ、あっ、あっ……♥」
「へぇ、あかんか」
おっぱいを手で包んだまま動きを止める。しばらくすると、俺の意図を察したのか、周子は太腿を閉じ気味にしながらうーうー細くうなってきた。
「うぅー、叔父さん、いじわる……♥」
「“押し売りはイケない”よなぁ?」
「……なんだぁ、あんな夢うつつなようすだったんに、しゅーこちゃんが手コキしたったときの、覚えてて……?」
「そうだよ、周子……うぐ、っく!? アンタ、中いきなり……本当に、あまのじゃくだな……」
マンコの締め付け具合はぎゅうぎゅうきりきり素直だった。
「はうぅぅっ、んぅぅぅっ……あーっ、あっ、はへっ♥ へぅっ、あううっ、うぅぅんっ♥」
胸ばかりにかまけてるんじゃないぞ、と催促された気もしたので、体重をかけて奥まで、ぐりぐりと迫る。
「はぅ、あ――あ゛っ、あはっあお゛おおっ!? おうぅっ……お、おく……ぅ、ぅう……♥ んぐ、ぅぅーっ♥」
「……いい声だ、あ……チンポに、効く、ぅ……!」
声がこもった。上の口を引き締めて、膣内も引き締めて……となると、代わりにどこかの穴が緩んでしまったのか、ぷしゅ、ぴしゅっとマンコ汁が噴き上がって、俺の腹や胸あたりまで生温かく洗った。
「あぁ、ああぁ……ナマチンポ、だめだぁ、周子マンコで、でろでろにされる……」
そう言ってみたが、おっぱいをいたずらしていた手を周子の下っ腹に戻して、ぐいぐい、どしどし押し込んでみると、なんとか自分の固いチンポの感触が伝わってくる。ああよかった、チンポが溶けてなくなってしまうかと思ってたんだ。
あらためて、いまこの瞬間、本当に周子とセックスしている実感がわく。
「う゛ぅぅぅー♥ ち、ちんぽ、おく、うぅっ♥ くふぅぅっ、お、おくぅっぐりぐりって、えぅ、うううーっ……!」
マンコ汁しとしと雨みたいに垂らして、周子の嬌声は高く飛んだり低く飛んだりした。あしたの天気はどっちやら。
「あああ゛っ、ふわあぁっ♥ も……も、あた、し……あっあっ、おじ……うぁ、あ゛、あ゛ーっ……♥」
射精感に襲われる。射精したさならいままで痛いぐらい感じていた。それどころじゃない。
射精、させられる。この女に。
「し、周子……俺、は……っ!」
周子のびくびく痙攣する腰や腹をひっつかんで押さえながら、チンポを抜いた。潮吹きぶっかけられたお返しのように、周子のへそが隠れるほど、まくりあげたシャツにも引っかかるほど、精液をぶちまけた。
「お゛っ、ひ……う、お、お、く……ぁ、あ、い゛っ、イって、ぅ、ぁ、あ゛あ……! ぁあ、ァあっ……♥」
チンポを抜かれたマンコの入り口が、ずぶ濡れのまましゃっくりでもしているようにひくひく引き絞られたり緩んだりした。収まったようなふりをして、しばらく……10回ぐらいは続いて、俺は数えるのをやめた。マンコ汁がもう少し透明でさらさらしていたら、泣きじゃくっていると見えたかもしれない。
それがいつしか本当に収まったのか、周子が左手を顔からどけて、それで腹にぶっかけられた精液をすくって笑った。
「だいじょうぶな日だ、って言ったのに」
女の“だいじょうぶな日”を信用しちゃならない。俺だってそのぐらいの年は食っている。
だいたい俺と周子は、避妊しようがナニしようが、だいじょうぶじゃないんだ。
「あぁ、聞いたよ」
周子は微笑んだ。ふやけた笑顔だった。例のキツネ目のあたりなんか、文字通りふやけていた気もした。
「しゅーこちゃんに、ナカダシ、シたいんじゃなかったの?」
「周子がお膳立てしてくれたってだけで、なんか満足しちまったわ」
俺のモノにできないなら、いっそアイドルになって、売れに売れまくって、みんなのモノになってしまえ……とは言えなかった。そんなヤケ半分なんて、未練なんかないって言い張っているようで、かえって未練がましかった。
周子がマンコ汁噴き散らかした匂いがなかなかとれなかったので、最後の夜は俺のベッドで2人押し合いへし合いしながら寝た。ろくに眠れるはずがなかった。朝に新幹線の駅まで送ってやったとき、周子も眠そうだった。
「居眠りして乗り過ごすなよ……だいじょうぶか、東京なら寝ててもつくか」
「……叔父さん」
「なんだ?」
「ありがとね」
「どういたしまして」
帰ったら、周子を抱いた部屋があまりに広くて、片っ端から機械を戻して、必要以上にごちゃつくよう置いた。
※
それからしばらく経った。
周子とは関係ないが、給料が上がった。おかげで、あの侘び住まいからもう少し広い部屋に移れた。
とある日、俺は姉から塩見家に呼びつけられていた。
行ってみたら、あらら、義兄さんまでわざわざ……塩見のお店は、人がいっぱいいた。顔と名前があいまいな親戚やら、俺が知る由もない出入りの人やらお得意様やら。お店、きょうの営業はどうなっているのか。
「もう1位と2位の発表しか残ってないんですか」
塩見周子が、アイドルとしての一つの頂点・シンデレラガールを争う総選挙に参戦して――中間発表時点で旭日昇天の勢い、上位どころか1位も狙える――と、“おうち”の人々はいつのまにか手のひら返して浮かれまくっていた。そしてきょうが総選挙の結果発表日で、地上波全国ネットで特番を組んでいるらしい。さすがは美城プロダクション。
それだけなら「景気がいいですね」って軽くあいさつして帰ろうと思ったが――アイドル・塩見周子の活躍ぐらいアンタらから教えられんでも知ってるわぁ――引き留められている。
娘の晴れ舞台になるかもしれないから、世話役(?)として立ち会ってほしい……とかなんとか。
「はぁ……世話役、ですかね」
いや、あの、ほんと、なんですか世話役って。
「そら、新幹線代ぐらいは出してやりましたが……え、姉さん?」
姉に騒ぎの中から端っこまで引っ張られて、こっそり教えてもらった。どうやら俺について、周子は塩見家へだいぶ好意的に伝えてくれていたようだった。おそらく歪曲と言っていいぐらい。
「え、あぁ、1位……周子が?」
ふだんはお店のデジタルサイネージ代わりになっているらしい大型液晶テレビ――とんでもない使い方してやがる。輝度いくつだよ、どこ置いてるか知らんが太陽光に負けるだろ――に、ピンスポットを浴びる周子の姿が大写しになった。
「いい女になりやがったなぁ、やっぱり」
500カンデラもないだろうに、目が熱くてチカチカするほどまぶしい。
俺のヤケ半分の望みを、周子はだいぶ叶えてくれているようだった。
(おしまい)
されば君は世のためにながらへ給ふべき人なり、世の寶なり、幾百萬の人をか喜ばせたのしませ給ふらん。
(だからあなたは世の中のために生きるべき人、世の宝である人です。きっと数百万人だって喜ばせ楽しませるでしょう)
ゆめ一人の人になその尊き身を私せしめ給ひそ。
(けっして誰か一人に、その大切な身を捧げてはいけません)
世の中の人、誰かおん身を戀ひ慕はざらん。
(世の中の人で、誰があなたを恋い慕わないでしょうか)
おん身の才、おん身の藝は、いかなるかたくななる人の心をもくじきつべし。
(あなたの才と芸は、どんなに偏屈で野暮な心が相手でもすっかり惹きつけることができるのです)
――森鷗外『即興詩人』人火天火
※pixivなどではこれがエピグラフだったのですが、なくても良い気がしたので本文から削除しました。